「「ブラック(さん)!?」」
二人は話していた内容が内容なだけにかなり焦っていた。
「どこからだ!?何処から聞いていた!?」
特にシグナムはブラック本人に聞かれていては精神衛生上非常によくないため、何処となく鬼気迫るような迫力を醸し出している。
「どこからって…シグナムの‘そういうお前はどうなんだ’辺りからだが?」
「…そうか、それはよかった。」
「?まあ構わないが…しかし、テスタロッサにそんな相手が…」
シグナムの迫力に押されて一瞬忘れていたフェイトはブラックの一言で先ほど自分が言った言葉を思い出した。
「え?あ”!わ、忘れて下さい!!今すぐに!!////」
羞恥で思わず顔を染めるがブラックの反応は実に淡泊だ。
「別にいいだろう?それに人間である以上、そういった感情は当たり前だし、隠す必要もない。さらに言えば俺にその個人を特定する手段もない。」
「「………はあ…」」
「何故ため息をつく?何か間違っているか?」
「間違ってはいない。ただ…」
「うん…」
「「((女心が分かってない。))」」
男であり、恋愛経験のない司に女心を解れという方が難しい話ではあるが。
「??ああ、テスタロッサ。」
「え?なんですか?」
「さんは付けなくていい。ブラックさんでは呼びづらいだろうし、俺としてもさん付けはあまり好きではない。シグナムと同じようにブラック、と呼んでくれ。」
「は、はい!えっと…ブラック。」
「そうだ、それでいい。その方が気楽だ。ん?どうしたシグナム。」
「…なんでもない。早く食べるぞ!」
「ああ、そうだな。食事は食べれるときに食べておかないとな。」
どうやらシグナムはフェイトとブラックが仲よくコミュニケーションをとっているのが気に入らないらしい。人間変われば変わるものだ。もっとも、当の本人は気が付いていないようだが。
----1時間後----
「そういえば、シグナムに聞きたいことがあるんだが。」
「え?ああ、なんだ?」
食後で三人とも思い思いに過ごしている時のブラックが言葉を発する。
「お前は初めて会ったときに入ったな?”悲願の為に魔力をいただく”と。悲願とは何なんだ?」
「え?守護騎士は主の命令で闇の書の完成させるために蒐集を行うって聞いたけど…」
ブラックの言葉を聞いてフェイトに疑問が出る。
「このままでは…主は下手をすれば今年中に亡くなってしまう!!」
「…え?」
「・・・・・」
シグナムの言葉に呆然とするフェイト。
「それでその人は蒐集を…」
「主は……主は、私達が蒐集活動をしていることを知らない。そんなことはしなくていい、とまでおっしゃられた。」
「それじゃあ何故!?」
「・・・・・・」
シグナムの言葉にフェイトが驚きながら聞く。ブラックは黙ったまま聞いている
しかしシグナムの言葉は続く。
「だが…闇の書が完成すれば主は絶対的な力を得る…生き残ることが出来る…」
「でも闇の書は…「もう一つ聞く」…」
フェイトの言葉にかぶせるようにブラックが言葉を発する。
「…今の主は優しいか?命令に背いてまで救いたいほど…」
「…ああ、我らのことを闇の書の道具ではなく家族として迎えてくれた。他人を不幸にしてまで力なんていらない、そう仰った。」
シグナムの言葉を聞いてブラックが口を開く。
「そうか…ならばシグナム。お前の主とやらに無事を知らせなければいけないな。」
「「・・・え?」」
ブラックの一言に思わず声が出る二人。そしてブラックはポケットから宝石のようなものを取り出す。
「これは、サポートアイテムとして作ったものでな、成功はしたんだがコストが高くて結局一つしかないが、これを使えば一回だけだがお前の仲間…他の守護騎士と念話ができる。」
「そんなものを作れるんですか!?」
ブラックの何気にすごい発明に声を上げるフェイト。
「まあ、原理は簡単だ。つまりは電波における周波数増幅装置で念話の最大有効距離が・・・」
「え?…え?」
「つまり…遠く離れた場所でも念話が出来るということだ。シグナムは主に秘密で来て行方不明では、優しい主とやらが心配するだろうしな。」
「いいのか?ブラック。」
あまりの都合のよさに若干不審がるシグナムにブラックが言う。
「正直、蒐集が主とやらの命令で、強制的にやらされているなら協力するつもりは皆無だったんだがな。」
(まあもっとも、はやてがそんな命令するようなやつだったら俺は友達やってないだろうがな。)
当然ブラックの正体である司はシグナムたちの主がはやてであることを知っている。今回シグナムを助けるのは、友達であるはやての為でもあるのだ。
「お、見つけた。シグナム、つなげるぞ?」
「頼む。」
念話をつなげた瞬間、ブラックが声を出した
「聞こえているかな?ヴォルケンリッターの諸君」
-----守護騎士side-----
「どうすんだよ!?シグナムも見つからねえし、もう時間もやべえ。」
ヴィータが言いたいことはシャマルもザフィーラも解っている。このままでははやてにどう説明すればいいか、説明できてもシグナムがいつ戻るかもわからない。
「落ち着いてヴィータちゃん。いま頑張って探してるから…」
そういうシャマルも内心では焦っていた。居場所さえわかれば助けようもあるのだが…
「…!何か来るな…」
ザフィーラが何かを感じ取る。動物的勘だろうか。
『聞こえているかな?ヴォルケンリッターの諸君』
ブラックの念話が届いた
-----守護騎士side out-----
司君(ブラック)side
『だ、誰ですかあなたは!』
む、ちゃんとつながったな。
「シグナムか赤くて小さい…ヴィータ…だったか?あたりから聞いていないか?ブラックと名乗ったものだ。」
『誰が小さいだ!!いったい何の用だ?!』
おや、本人が出るとは…まあ、わかっていて言ったが。
「そうカッカするな。身長が伸びないぞ?」
『テメーこの間は良い奴だと思ったけど実は嫌な奴だなぁ!!おい!』
うん、こいつは弄り甲斐がありそうだな。
『悪いが、我らはお前に構ってるほど暇はない。戯言なら…』
「お前たちの将、シグナムの居場所が知りたくはないか?」
さあ、どう反応する?
司君(ブラック)side out
シャマルside
『お前たちの将、シグナムの居場所が知りたくはないか?』
「「「っ!?」」」
何で?このブラックという人は何でシグナムがいないことを知っているの!?まさかこの人がシグナムを…
『シグナムは今俺の元にいる。』
まさか…狙いは闇の書!?どうすればいいの?シグナムを見捨てるなんてできない…けど闇の書を渡してしまったら…
『フフフ…言葉も出ないようだな。まあいい、返してほしけれb…痛っ!?お、おいシグナムやめろ!!分かった!軽い冗談だ!』
・・・・・・・・・・え?
シャマルside out
「いや、すまないシャマル。シグナムだ」
『えっと…シグナム?無事なの?変なことはされてない?』
どうやらシャマルはブラックの言葉を結構真に受けていたようだ
「ああ、至って問題ない。どちらかと言えば快適に過ごしている。」
「痛つぅ…いきなり殴ることはないんじゃないかシグナム。結構痛かったぞ?」
シグナムに殴られてうずくまっていたブラックが起きてきた
『シグナム、そこにいるブラックという人は何者なの?今どこにいるの?』
「何者かは不明だがとりあえず敵ではない。この念話もブラックが居なければできなかった。現在地も残念ながら不明だ。」
『そんな…どうすれば…』
「安心しろ、明日、遅くとも明後日までにそちらに送り届ける」
「大丈夫だシャマル。ブラックは人をからかいはするが嘘はつかない。信用できる。」
ブラックの言葉だけなら信用できないが自分たちの将であるシグナムが肯定したのだから大丈夫だと納得するシャマル。
「シグナム、そろそろ限界だ。時期に切れる。」
「そうか…シャマル、主にはこう伝えてくれ。友人と話し込んでしまい遅くなったので泊まっていく、と。」
『わかったわ。それからブラックさん?』
「ん?なんだ?」
『今回はありがとうございました。シグナムをお願いします。』
「ああ。では、また会おう。」
パァン!!
ブラックが別れを告げると同時にサポートアイテムが壊れた。
「ブラック、今回は助かった。おかげで仲間に無事を知らせることができた。」
「何、責任の一端は俺にもあるからな、やれることはするさ。ん?どうした?テスタロッサ」
「・・・・・今回私影薄いなって思って・・・」
「「あ…」」
シャマルside
「ふふ、シグナムがねぇ…」
ブラックは信用できる、か…。昔なら絶対に言わないわね。
「あん?どうしたんだよシャマル」
「ヴィータちゃんにはまだ早いわよ?」
「なんだと〜?シャマルまで私を子ども扱いすんのか!?」
私も一回会ってみたいわね、シグナムにそこまで言わせるなんて…
「おい聞いてんのか!」
「大丈夫大丈夫聞いてるわよ。じゃ、はやてちゃんも待ってるし、帰りましょ。」
ま、明日か明後日には会えるらしいし、楽しみにしてましょうか。