今の時間は地球に換算すると昼半ばといった時間。とは言っても、この世界も時間間隔的には大差ないようだが。フェイトは一人、見晴らしのいい高台にいた。ブラック達とはぐれたという訳ではない。ブラックの予想が正しいならそろそろ管理局がこの世界に辿り着くとのことなので目立つ場所にいた方がいいと思ったからだ。そうして十分ほど待っていると、一瞬空間が歪み、管理局の船‐アースラ‐が現れた。
フェイトside
本当にブラックさ…いや、ブラックが行った通りだ。時間も殆ど正確にいい当てた。ブラックって人をからかうのが趣味みたいだけど、真面目な時はすごく真面目だし、冗談みたいなことを平気でやって、しかもそれを当たり前みたいに成功させる、実はすごい人みたい…あれ?ブラックって結構司と共通点持ってる……司…元気かな…はぅ…。
「フェイトちゃん!」
「なのは!?」
いつの間にかなのはがこっちに向かって飛んできてる。いけない、司の事思い出してたら気が付かなかった。私ってやっぱり司の事、す、す、好き?なのかな。
「フェイトちゃん?大丈夫?」
「あ、大丈夫だよ、なのは。1日くらいしかたってないし、川もあったし木の実もあったから、食べ物にも困らなかったし。」
「いやね?フェイトちゃん、さっきから時々私の声が聞こえてないみたいに見えたから、ついね…元気ならいいの。」
ドキ!!今、漫画ならきっと私の後ろにそんな効果音が書かれてると思う。一人の男の子のこと考えてたなんて言えないよ…
「大丈夫。なのはに会えて安心して気が抜けちゃっただけだから。」
「私も、フェイトちゃんとあえてうれしいの。」
咄嗟に出た嘘で何とかごまかせた。なのはに嘘を突くのは嫌だけど、今回は仕方ないよね…
『フェイトさん、無事なようで何よりだわ。』
「リンディさん!ありがとうございます。」
リンディさんはいえいえ、とばかりに微笑んだ。どうやら、私のことを心配してくれてたらしい。
『フェイトさん、再会して早速で悪いのだけど、あの時一緒に転移された二人の居場所は分からないかしら?』
「いえ、私は見かけませんでした。あの二人の魔力も感じなかったので、探知できないほど遠くにいるか、この世界に来ていない可能性もあります。」
多分昨日のうちにブラック達と打ち合わせしておかなかったら、ここでボロが出たと思う。本当にブラックの予測はよく当たる。
『…そう、ありがとう。なのはさん?フェイトさんも見つかったし、もうこの世界にいる理由はないわ。戻ってきてください。』
「はい!フェイトちゃん、帰ろう、海鳴りに。」
「うん!」
ブラックもシグナムも今はどこに隠れてるかわからないけど、私たちが帰ったら二人とも帰るんだよね。また戦うときは、今度こそ勝ちたいな。
フェイトside out
「どうやら、行ったようだな。シグナム、もう出てもいいぞ。」
ブラックに続いてシグナムが姿を現す。二人とも魔力遮断の結界の中で息をひそめていたようだ。
岩場の影からブラックが姿を現す。
「見送ったのは良いのだが…私たちが帰還する方法は本当に大丈夫なんだろうな?あの船の反応を追う、と言っていたが追跡していたら見つかる可能性も…なんだその眼は?」
シグナムが自分が危惧していることを話していたら、ブラックは心底呆れたような目をしていた。いや、バイザーがあるため目は見えないがそんな雰囲気に見えた。
「シグナム…」
「な、なんだ?」
・
・
・
・
「薄々思ってはいたが…お前バカだろ。」
「なあ!?」
突然の罵倒にワケがわからないといった声を出すシグナム。
「ば、馬鹿とはなんだ急に!」
「いや、すまない。言い方を考えるべきだったな。シグナム、お前は馬鹿正直すぎる。」
「私が何かおかしいことを言ったとでもいうのか!?」
自身の言動におかしいところがあったか慌てて思い出すシグナム。しかし、その作業は次のブラックの言葉によって強制的に中止される。
「アタフタするな。可愛くて思わず撫でたくなる。」
更に巨大な爆弾によって。因みに司は猫や犬など一般的感性で可愛いものは好きだったりする。
「…………」グラッ…
初めて出合った時のように気絶しかけるシグナム。理由は天と地ほどの差があるが。
「いいか?ステルスという戦闘機があった。その名の通り、レーダーに観測されない戦闘機だ。」
「………」
「その戦闘機を発見するのは不可能かと思われた。」
「………」
「しかし、戦闘機が飛べば当然気流が乱れる。」
「………」
「その気流の乱れを観測することによって、間接的ではあるがその戦闘機を発見…おい、聞いているか?」
「ハッ?き、聞いているぞ?ああ、聞いているとも。」
シグナム復帰。
「つまり、直接管理局の船を追うのではなく、管理局の船が通ることによって出来る魔力の流れを辿っていく事で帰還できる、という訳だ。OK?」
「(可愛い?撫でたい?フフフ…勿論…)OKだ。」
訂正 シグナム、相当なダメージを受けている模様。
そして約三分後…
「よし、流れも見つかったし、ゲートもつないだ。シグナム!」
完成した魔法陣のようなゲートを前にブラックが立ち、シグナムに手を差し出す。
「はぐれたら間違いなく帰れない。捕まっていろ。」
勿論ブラックは手を掴めといった意味で手を差し出したのだが…
「…では、少々失礼する。」
何を考えたのかシグナムはブラックが手を差し出したことによって隙間ができた身体に抱きついた。しかも、胸を押し付けるように。
「ちょ!?おい!シグナム?!」
ブラックも慌てるがすでにゲートも機能している。そして・・・
「ぐぇ!」
「ぐ…」
無事に通過できたが…二人して着地を疎かにした。そして…
「何をしているの…シグナム?」
シャマルがいた。
シャマルside
えーと…私は転移の反応とシグナムの魔力を感じたから迎えに来たのよね?この状況は何?目の前にいる二人…自分たちの将であるシグナムと、あの夜に僅かではあるけど見たブラックと名乗る人。二人が一緒にいるのはいい。でも…
「シグナム?何故抱きついているの?」
しかも胸を押し付けるように?
「しゃ、シャマル!?いや、これは…転移中にはぐれるのは不味いとブラックが言ったからで…」
「おいシグナム!俺は確かにはぐれるのは不味いといったが手に掴まるように言ったのであって抱きつけとは一言も言ってないぞ!?」
確かに、ブラックさんは嘘を言ってる様には見えないし…
「シグナム?いいわ。あなたの言う事を信じます。確かに転移中にはぐれるのは不味いものね。」
「そうだ!決してやましいことは…」
でもね?
「転移中にはぐれるのが不味いから捕まったのはいいけど、もう着地しているのに何時まで抱きついているの?」
「……あ・あぁ…」どさっ
気絶しちゃった!?そんなに恥ずかしかったの!?
「シャマルといったな。とりあえずシグナムを引き取ってくれ」
「あ、ハイ。えっと…ブラックさんでしたね?シグナムを送り届けてくれてありがとうございます。」
私はとりあえず挨拶とお礼をかねて握手の為に手を差し出します。
「いや、原因は俺にもあった。そこまで礼を言われることはない。」
あの念話で喋っていたのと同一人物とは思えない真面目な返答。そこまで悪い人ではない、むしろ好感が持てる。この人は人を惹きつける何かを持っているのかもしれないわね。
「では俺は失礼する。確かに送り届けた。」
「はい…できれば戦場じゃなくてプライベートで会いたいものね。」
「……また会うこともあるだろう。」
そう言うとブラックさんはすぐにいなくなってしまった。
「さすがに私一人では運ぶのはきついわね。ザフィーラに頼もうかしら?」
念話でザフィーラを呼ぼうとして思い出す。
「そういえば…」
さっき握手の時に感じたブラックさんの魔力…誰かに似てたような…
そうだわ、はやてちゃんの友達の司君に似ているんだわ。量は随分違うけど質はすごく似ていた。まるで普段は本人が押さえ込んでるみたいに…
「偶然…よね…?」
はいどうも、ガウェインです。更新です。
ちょっとだけ頭の中に浮かんだ没シーン
「ゲート…起動…」
ブラックの言葉に呼応して目の前の魔法陣のようなゲートが独特の起動音を発する。
シャバドゥビダッチ ヘンシーン シャバドゥビダッチ ヘンシーン
最近仮面ライダーに浸食されつつある作者。