小説『異世界転生物語〜え?リリカル?なにそれ?〜』
作者:ガウェイン()

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次回でAs編終了です。



2月13日

『大事な話があるから夕方くらいに公園に来てくれ。全員だ。不参加は認めん。』

「こんなもんで良いか。夕方なら舞夜も大人になるだろうし…」

司がメールを打ち終わり、送信する。そのまま自室から出ようとして、立ち止まる。

「寒いと思ったら…夜のうちに雪が降ったのか…」

司が窓から外を見て呟く。外は雪が降っている訳ではないが少し積もっていた。そのまま司は何時ものようにペンダント…オーラを首にかけ上着を着る。

「司?どこかへ出かけるんですか?」

「光か。まあ、そんなとこだ。」

「気を付けて下さいね。」

司が靴を履くと同時に、何かを思い出したように顔を上げる。

「忘れるところだった。今日は大事な話があるから、夕方くらいに公園に来てくれ。勿論、咲夜と葵、文と舞夜も一緒にだ。」

「大事な話?此処では言えない事ですか?」

「言えないってことは無いが、はやてやなのは達、全員に言わなきゃいけないから。個別に言うのは面倒だ。」

そう言い終わると司は玄関のドアを開き出て行った。

「…司、何か焦ってる…?」

光の言葉を聞いていたものは誰も居なかった。


司君side

「こうしてお前と二人で出かけるのも久しぶりだな、オーラ。」

『ハイ。最近は何かと他の方も一緒でしたので。』

俺は今町を歩いている。何時もとは違う、雪化粧の景色。こういうのも悪くない。

『マスター、足は冷たくないですか?』

「…オーラ、解ってるだろ?」

俺が履いてるのはスニーカーだ。雪が積もっている中で冷たくない筈がない。…普通なら。

「もう、足の感覚なんてほとんどない(・・・・・・)んだよ。何かを踏みしめてるって位しか解らないよ。」

そう、俺の身体はもう限界寸前。恐らくは…今日が限界だろう。

『マスター…少し、お話しませんか?』

「…そうだな。近くに丁度いい公園がある。」

其処は今日の夕方、みんなを呼び出した場所…リインフォースが一度消えかけた場所だ。ベンチに座り、空を見る。…いい天気だ。

「で?何について話す?」

『…マスターは何でそんなに平然としていられるんですか?』

「なんでって…こうなる事はクリスマスの時からわかってたしな。」

『マスターは!!』

オーラが俺に対して怒鳴るように言う。一年以上の付き合いだが初めてだ。

『マスターはもうすぐ…後半日もせず消えてしまうんですよ(・・・・・・・・・・・・・・・)!?何でそんなに…』

「…俺はさ、後悔したくないって思って生きてた。」

そう、人間なんていつ死ぬか解らない。前世だって、交通事故でいきなり死んでしまったし。

「だから俺は自分がやりたいって思ったことを実行した。その結果だ。受け入れるさ。」

『……私は今、文さんや舞夜さんが羨ましいです。私では、マスターに正面から向かい合うことも、抱きつくこともできません。』

「……可愛い奴だな、お前は。」

『知りません!!』

こうして俺はオーラと町を歩いた。今まで見てきた景色を目に焼き付けるように。

司君side out

夕方、公園には司以外が全員集まっていた。

「また呼び出しといて最後に来るの!?司は!」

「アリサちゃん、落ち着いて?」

「そうだよ、司君は夕方って言っただけで時間までは決めてないんだから。」

アリサが声をだし、すずかとなのはがなだめる。

「でも、どうしたんだろう急に。」

「そうやな。緊急ちゃうなら明日でも良いんやし。」

フェイトとはやてが疑問に思う。

「しかし、司が態々呼び出すのだから何もないとはいかないだろうな。」

「…しかもこの場所を指定して、な。」

リインフォースの言葉を聞いて、なのはたちが顔を上げる。

「?なのは、どうしたのよ?」

「なのはちゃん、どうしたの?」

理由がわからないすずかとアリサが問いかける。

「…この公園はね、リインフォースさんが消えようとした場所なんだ。」

「「!?」」

「でも、司がそれを助けた。」

「だからリインフォースさんも司さんに惚れちゃったんですよねぇ。(キスまでしてもらって…羨ましいですよ…)」

「そうらしいわね。」

なのはとフェイトの言葉を文と舞夜(大人var)が肯定する。

アリサ達は魔法の事は聞いていたが事件の細かい内容までは聞いていない。だから驚き、疑問に思っていた事に一つの答えが出た。

「(だからあのリインフォースって人は司に惚れたのね。)」

「(うん、私達と同じだね。)」

自分達と同じ。死ぬ直前まで追い詰められ、命を救われた。それならば納得だと。

「でも本当に遅いね。どう思う?サクにヒカリン。」

葵が寒いからか、いつもより低いテンションで二人に聞く。

「ま、司も暇な身ではないのだ。用事が長引いたのではないか?」

「・・・・・・」

咲夜は葵の問に答えたが光は黙ったまま。

「?どうしたの、ヒカリン。」

「…いえ、用事が長引いているだけでしょう。(出かける前の司は…何に焦っていた?この遅刻は何か関係がある?)」

光は答えが出ないまま、司を待つしかできなかった。

「こんな寒い中待たされてんだ。今度何か奢らせなきゃな。」

「それは悪かったな。だが生憎、奢ったりはしないぞ。」

「「「「「「「「「「「「!!!???」」」」」」」」」」」」

ヴィータが愚痴のように呟いた瞬間、いつの間にかそこには司が居た。確かに驚くだろう。しかし、ザフィーラとシャマルが最早驚くどころか驚愕していた。

「(匂いがない…いや、極端に薄い…?)」

子犬形態ではあるが嗅覚は何時もと変わらない。にも拘らずここまで接近されるまで解らなかった。

「(本当に司君なの?こんなに近くなのに魔力がほとんど感じられない…)」

探知能力が高い二人がここまで接近されて気が付かなかった。その二人(一人と一匹?)の驚愕を余所になのは達が司に話しかける。

「遅かったじゃない!」

「それはすまん。」

「アハハ…司らしいというか、マイペースと言うか…」

「フェイト、それは貶しているのか?」

「ところで司君、大事な話って?」

なのはの問に、大したことではないんだが、と前置きをして話し出そうとする司に聞き耳を立てる。

「まあ、別れの挨拶(・・・・・)くらいはきちんとしておくべきかと思ってな。」

……え…?

全員、司の言葉を、理解できなかった。


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