小説『異世界転生物語〜え?リリカル?なにそれ?〜』
作者:ガウェイン()

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「わ、別れってどういう事よ!?」

一番最初に言葉を発したのはアリサだった。勢いこそいつも通りだが、顔には困惑の色が見て取れた。

「言葉の通りだ。そんな大声出すようなことじゃない。」
『マスター、流石に説明不足かと思います。』

司の言葉の後、オーラが続ける。その言葉を聞いて司が説明をする。

「俺の身体はかなり不安定な状況だ。もうすぐ魔力の粒子になって消えるだろう。」

司の説明はシンプル且つ完結だった。故に、みんな余計に理解できなかった。

「なんでそんな冷静でいられるの!?」
「そうだよ!消えるなんて…」
「そうや!そんな事アカンよ!?」

なのは、フェイト、はやての悲痛な叫び。しかし、それに対する司の反応は淡々としていた。

「なんでって…人は何時かは死ぬものだしな。それに、あの日…クリスマスの日から俺が消えることは決まっていたし…」
「…クリスマスの日から決まっていた…?司くん、どういうこと?」
「まさか、あの時の戦いでダグバから受けたダメージが…」

司の言葉を聞いてすずかが疑問に思い、シグナムが仮説を立てるが…

「いや、それは関係ない。その後の事だ。」
「…まさか…そんな…」

ダグバを倒した後、クリスマスが終わるまでの間にあった事を思い浮かべ、リインフォースがある仮説に辿り着く。全員、どういう事かと思いリインフォースに視線を向ける。リインフォースが仮説を話し出す。

「まさか司…私を助けたから…?」
「…まあ、一応正解と言っておこう。」
「どういうことや!?司君がリインフォースを助けたからって…」

当然の疑問をはやてがぶつける。それについて、リインフォースは自信無さげに自分が思い当った仮説を話し出す。

「司が私を助けた時に使った魔法…‘再誕≪リ・バース≫’は対象に流し込んだ魔力で分解し、再構成すると言っていた。だから私に一度魔力を流し込み分解して、闇の残滓と私自身を分けた。そこまではあっているな?」
「・・・・・・」

リインフォースが司に確認し、司が無言で肯定する。なのは達も納得していた。その時の現場を知らないすずかとアリサは一つの粘土を二つのわけ、また一つに纏めると理解した。だが疑問にも思った。

「ちょっと待ちなさいよ!その闇の残滓ってのはその…今は光達なんでしょ!?リインフォースさんはどうしてもとに戻れてるのよ?分解したんならパーツが足りない筈だわ!」
「その通りだ。司はその後に言った…‘足りない物は他から持ってくる’と。」

その言葉を聞いて、現場を見ていた守護騎士たちは答えに辿り着いた。リインフォースは続ける。

「何故、分解されていた私は兎も角‘司まで使用時に光っていた’?…司は自分の身体を分解して私の足りなかった部分を補った…違うか?」
「「「「「「「「「!?!?!?」」」」」」」」」
「大正解だ、99点をやろう。」

全員が絶句する中、司はいつも通りの態度で声を出した。

「何故…何故だ!?」
「何、100点にするのは少々悔しいからだ。」
「そんな事はどうでもいい!!!」

司のふざけた言葉をリインフォースは目に涙を溜めながら叫ぶように遮った。

「何で自分が消えると解りながら私を助けた!?」

「お前が消えたくないと言ったからだ。」

「…え?」
「お前が消えたくないと言った時、俺は自分の命を諦めた。」
「なんで…」
「俺は価値を認めたものには出費を惜しまない。リインフォース、お前を助ける事にはそれだけの価値があると思った。それだけの話だ。」
「私は…私は…」

司が話し終えると、リインフォースは雪が積もっている地面に膝を付けて泣き出した。司は片膝をついて、リインフォースの耳元で呟くように言った。

‘俺はお前を助けたことを後悔していない’

「ぁ…ぅ…ぅうぁぁああ…!」

リインフォースが司に泣きながら抱きつき、司は困ったように支える。そのまま時間がながれ、10分ほどでリインフォースは吹っ切れたように、涙を流しながらも微笑みかけた。

「ありがとう…司…」


「ま、そんな訳で俺はもうすぐ消える。だからお前らも元気で…」
「納得できません!」

声を上げたのは光だった。

「残された人たちは…私たちはどうすれば良いんですか!?」

それは光の…いや、リインフォース以外の全員の心の叫びだった。

「さっきも言っただろ。人はいずれ死ぬ。その別れが今回は少し早かっただけだ。それにお前たちはもう俺が居なくても生活出来るだろ?」
「あ…?」

‘一か月で家事を覚えてもらう’

光の頭に司が言ったことがよみがえる。確かに、普通ゼロから教えるにしては短すぎる時間。司はこのことを知っていたからこそ一か月と言う期限を付けたのだ。

光が言葉に迷っていると葵が司に飛びついた。

「司…ボク、料理も…ヒック…できるようになるよ?掃除だって…ぇぅ…頑張る…だから…消えないで…一緒にいてよぉ…お願いだから…もう我儘言わないからぁ…」

「葵…光と咲夜もいる。だから泣くな。俺は泣き顔より笑顔の方が好きだぞ?」
「司…つかさぁ…」

「こら葵、司が苦しそうにしてるぞ。離れてやれ。」
「咲夜…お前、俺の事を心配してくれているのか…!?」

司はまるで心底驚いているような声を出した。

「お前の中で私はどんなキャラクターなのだ!?」
「80点だ。」
「は?」
「でもちゃんと‘我’じゃなくて‘私’って言えたのは高得点だ。元は可愛いんだからそうできればきっとモテるぞ?」
「司以外に…」

‘司以外にモテても意味なんてない’

咲夜は司以外に聞こえないような小さい声で呟いた。

「確か、星の記憶達≪ガイアメモリーズ≫は自分にふさわしい主を求めて旅をするって言っていたな?文、舞夜。」
「ええ、そうね。マスターが消えてしまうのなら私達は…文?」
「…嫌です…司さん以外をマスターになんて…絶対に嫌です!」
「あ、文?」
「司さんが消えてしまうのなら私は世界中…魔法世界も含めて司さんを取り戻す術を探します!ですから、待っていてください!絶対にまた会いましょう!」
「……記憶には留めておこう。」

「司!」
「シグナム…まあ、お前とは色々あったが…楽しかったぞ。」

司が思い出しているのは初めて会ってからの今まで。最初は魔力目的で通り魔のような出会いだったが、その後はライバル、そして恋人?と様々な面を見てきた。

「司…」

シグナムが顔を近づけ…

…チュ…

司にキスをした。

「今までで私が愛したのは司、お前だけだ。そしてこれからもな。」
「…俺は幸せだな。」

離れた後お互いの顔が赤くなっているのは語るまでもないだろう。

「お前たち五人には何て言えばいいのやら…」

司はなのは達にかける言葉を探していたが…

「言葉なんていらないわ!」
「フフ、そうだね。」
「「「ねえー?」」」

アリサの言葉にすずかが相槌を打ち、なのは、フェイト、はやてが続く。

「司君、ちょっと目を閉じて?」
「ん?ああ…閉じたぞ?」

…チュ…

柔らかい感触が伝わってきた。五か所に。司が目を開けると顔を赤く染めた五人がいた。

「……何て言えばいいのやら…まあ、ありがとう。…元気でな。」
「「「「「どういたしまして。」」」」」

そしてとうとうその時がやってきた。司の身体がだんだん魔力の粒子となり、それに伴い司の身体が透けてくる。

「こんな時に言うのもなんだが…」

司の言葉を聞き逃すまいと全員集中する。

「‘さようなら’とは言わない。‘また会おう’。じゃあな。」

その言葉を最後に司の姿は消えた。泣くのを我慢していたなのは達の鳴き声が、誰も居ない公園に響いた。


約一年後…

なのはside

司君が消えてから約一年が経ちました。私達は四年生になり、もうすぐ五年生になります。はやてちゃんも足が動くようになり、最近は病院に通いながらも学校に来てくれてます。

「じゃあ、お父さん、お母さん。行って来ます。」

「行ってらっしゃい。なのは。」
「ああ、行ってらっしゃい。」

司君が消えてしまって暫くふさぎ込んでた私をお父さんもお母さんも懸命に助けてくれて、こんなんじゃ司君に笑われちゃうと思って…今は私は管理局員として頑張ってます。

「あ、おはよう!みんな。」

なのはside out

フェイトside

もう司が消えてから一年か…早いなぁ…

「フェイトさん、はい、お弁当よ。」
「ありがとう…行って来ます。‘母さん’。」
「行ってらっしゃい♪」

この一年でリンディさんが私の母さんになってクロノが私のお義兄ちゃんになって、私はフェイト・テスタロッサからフェイト・T・ハラオウンになった。いろいろ変わったけど変わらない物もある。なのはも、私も、はやても、アリサも、すずかも、みんな司が大好きってことが。

「あ、おはよう!みんな。」

今日もなのは達と一緒に学校に通う。戻ってきた時に司が勉強が分からなかったら私が教えられるように。

「おはよう、なのは!」

フェイトside out

はやてside

「主はやて、大丈夫ですか?」
「大丈夫やて、シグナムは心配性やな。」

私の足もだんだん良くなって今では杖なしでも一人で歩けるようになった。ま、少し前までは良く転んどったし、心配なのも解るんやけど…はよ良くなって司君が戻ってきた時、一緒の目線で歩けるようにせなな。

靴を履いてそのまま立つ。今日はなのはちゃん達と一緒に登校や。

「ほな、行って来ます。」
「行ってらっしゃい。」
「行ってらっしゃい、はやてちゃん。」

ほな、行こうか。

はやてside out

放課後、私立聖祥大付属小学校には五人の人影があった。

「じゃあ、行ってらっしゃい。みんな。」
「頑張りなさいよ。」

その内二人、アリサとすずかが三人…なのは、はやて、フェイトに声をかける。

「大丈夫だよ!」
「行って来ます。」
「頑張るわ。」

「「「「「司(君)が戻ってきたときに笑顔でこたえられるようにね」」」」」

「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
「シュベルトクロイツ!」

「「「セットアップ!!」」」

As編 完  

これでAs編は終了です。次回からは空白期に移ります。

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