小説『ONE PIECE【大海に映る月】』
作者:masayuki()

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(side ハルキ)


「ねぇ…これからどうするの?」

「ん、取りあえず情報収集かな。後は船をどうにかして手に入れないと…」

あの船も使えなくなったしな…
と周りには聞こえないように小声で続けながらハルキはハンコックと並んで歩く。

…ルナの言ったとおり、あれから3日程で従者化が解け天竜人は動かなくなってしまった。
取りあえず、近くの島に天竜人と船を置いて、自分達は備え付けの小船でここまできたのだが…

「聞いたかよ?天竜人が……」

「あぁ、大将や中将達も動き出したようだぜ?明日にはこの島にも……」

すれ違う大人達が口々に語るその内容…
まぁ、あんなに目立つ船だったしな…見つかるのは時間の問題だと思ってたけど予想より動きが早いな……と少し驚きながらその話を聞いていると

「…ッ……」

隣から息を飲む音が聞こえそちらを向くとハンコックが緊張した顔をしてこちらを見ていた。
…ったく……しゃあねぇな……

「ハンコック…ほら、笑顔笑顔」

「…でも……」

心配そうな顔で目を潤ませるハンコック。
まぁ、可愛いちゃ可愛いんだけど……

「そうだ、あの店に行ってみよ」

「え…ハルキ?」

何もないところで泣きそうな顔をしてる女性ってのは不自然なわけで…
俺は目立たないようにハンコックの手を引き、近くにある店の中へと入っていった。











(side ハンコック)


「いらっしゃいませ〜」

突然ハルキに手を引かれ、入ったのは可愛いアクセサリが並ぶお店だった。

ハルキは私の手を握ったまま店員さんに会釈して、店の奥へと進んでいく。
私も同じように彼に続いていく。

「よし、ここら辺でいいか…大丈夫?ハンコック、少しは落ち着いた?」

「落ち着くわけないじゃない!いきなりこんな……」

「しー、もう少し音量下げて」

そう言って、私の唇に指を当てる。
その動作になぜだか胸が高鳴り、結果的に彼の思惑通りに私は口を閉ざしてしまう。

…まったく……この人は自分の行動が人にどんな影響を及ぼすのかを考えた方がいいと思う…特に精神的な面で……

「まぁ…そんなに怒るなって、お前の様子がおかしかったから落ち着ける場所に移動しただけじゃん。」

「様子?」

「うん。すごい不安そうにしてた。元々、お前って目立つんだから暗い顔してたら余計目立つからな…」

「目立つ?」

目立つと言われてハンコックは自分の体を見渡してみるが訳がわからず、ハルキに問いかけるような視線を投げかける。

「えっと…な…」

そんなハンコックの視線を受け、言いづらそうに口を開くハルキ。

「いや……その…お前ってなんつーか、見た目、可愛いじゃん?だからさ…それが暗い顔ってか怯えたような顔してたら凄い目立つわけで…さ…」

「かわ…いい?…」

それは今まで生まれてきてから何度も言われてきた、聞き慣れたはずの言葉なのに……
…何なんだろう?この嬉しいような…恥ずかしいような…気持ちは…

「まぁ…そういうことだからさ……落ち着いたんなら…」

「お客様、何かお探しですか?」

「えっと…その……」

突然、現れた店員に驚き、慌ててしまうハンコック。
そんなハンコックの前に立ちハルキは

「あ、すいません。店員さん、実は……」

「なるほど…そういうことでしたか。なら、私にお任せください」

店員に何かを小声で呟き、それを聞いた店員はこちらですと言って案内を始める。
私もそれについて行こうとしたのだが…

「ハンコックはここで待ってて」

「え…でも…」

「すぐに帰ってくるからさ……ね?」

「……うん。」

ハルキはそれを止め、私にここで待っているように言って店の奥へと進んで行ってしまった。









(side ハルキ)


「ありがとうございました〜」

紙袋を手にハルキは店の外へと出る。

「…うっし、ちょうどいいぐらいの時間になったし、そろそろ帰るか。」

………

「あれ?」

隣にいると思っていた人物からの返答がなく、周りを見てみるとその人物ーハンコックは先程の店の入り口で店員と何やら話をしていた。というより…何かを言われて凄い慌てていた。

「おーい!ハンコック、行くぞ〜」

流石にほっとくわけにもいかず俺はハンコックを呼ぶ、すると店員は俺とハンコックに軽く会釈をして、ハンコックも店員に軽く会釈をして、すぐにこちらに駆け寄ってくる。

「ごめん。ハルキ、じゃあ行こっか」

俺に追いつくとそのままそそくさと進んでいくハンコック。

「おい、ハンコック。どうしたんだよ?」

「………」

軽く俺に一声かけた後、何も言わずにそのまま進んでいくハンコック。
俺はそんな彼女に声をかけながらも追いつこうと歩く速度を早めるのだが…

「……おい………」

俺がスピードを上げればハンコックもその分加速し、一定の距離を保ったまま俺たちは商店街を歩き続ける。

…なんか怒らせるようなことしたっけ?…まぁ、一時的にとはいえ、彼女を置いて店内を案内してもらった時、少しは不満そうな顔をしてたけど、その後は普通だったしな…

つい先程の店に入ってから出るまでの流れを思い返してみるが 思い当たらない…強いて言えば……

「おい、ハンコック…お前、あの店員に……ってうわッ、いきなり止まんな…よ?」

いきなり立ち止まったハンコックにぶつかりそうになり、俺は抗議しようとその顔を見たのだが…

…やべぇ…すげぇ怒ってる?…

顔を真っ赤にさせ、こちらを睨むハンコック。

「ご…ごめん。呼び止めて、じゃ、先にすすも…」

「ハルキ…」

その表情に俺は顔を背け、逃げようとしたのだがたった一言、名前を呼ばれるだけでその行動は止められてしまう。

「さっきの店でさ…店員さんに良い彼氏さんですねぇって言われたんだけど…ハルキ、あの人になんて言ったの!?」

「あぁ、そのことか…あの時お前、テンパってたし、男女であんな店に行くのってやっぱり、そういう関係な人々なわけでさ……不信に思われないようにお前に喜んでもらえるようなプレゼントがしたい…って言ったんだよ」

「………」

「いや、まぁ……勝手なことしたのは謝るし、もうしないよ。それに、これ…お詫び…ではないけどほら…」

俺はポケットから先ほどの店で買った2つのペンダントを取り出し、それをハンコックに差し出す。

「これは……?」

「どっかの国の特産で逢わせ石っていって元々、ひとつだった石を二つに割ったものでな…恋人や夫婦…大切な人同士が何かの理由で遠く離れたとしてもこの石が引き寄せてくれるという伝承があるものらしい。」

「逢わせ石……」

「いつかハンコックに大切な人ができた時にでも使ってくれ。ま、片方をもう半分にしてソニアたちに分けてもいいしさ」

「ふーん。そうなんだ……」

とハンコックは二つに割れた石をまじまじと見た後、その片割れを俺の首にかける。

「え?」

「あげる…」

「いや…あげるとかじゃなくて……これは…」

「だ、だから、あんたにあげるの!あんたいつも無茶するし、馬鹿だし、心配だからちゃんと帰れるように私が片方持っててあげるから!」

「あ、ありがとう…」

慌てたように一気にまくしたてるハンコック。
その勢いに負けて俺は思わず頷いてしまう。

「それに……その私……あんたのこと…………」

そんなハルキに何かを伝えようとしたハンコックの声は

「ハルキ!?」

一人の少女の驚きの声によって打ち消されてしまった。










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