小説『ONE PIECE【大海に映る月】』
作者:masayuki()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

まえがき
---------------------------------------------------------
悪魔の実に対する自分なりの解釈が含まれています
まぁ、適当な妄想なので広い心で読んでくださると助かります。
----------------------------------------------------------




(side ハンコック)


「で、あいつはいつ来るんだよ……」

「わからない…もしかしたら…この間のえーっと…なんとかウルフをハルキが倒したから…」

「余興に使う野獣を補充しに行ったって感じか…本当…悪趣味だよな…じゃ、もう少し……」

ーバタンー

「奴隷ども、待ったジョロか?新しいオモチャを持ってきたジョロ。」

「はぁ…」

休もうかとハルキが腰をおろした途端に現れる醜い身体の男、言うまでもなく自分たちが待っていた天竜人だ。

「どうしたジョロ?驚いて声も出ないジョロか?」

そう言って、ジャラジャラと鳴らす鎖の先には複数人の男に拘束された一匹の狼男がいた。
…確か…何処かにそういう種族がいるとは聞いていたけど…ここでそれを見るなんて…

「ハンコック…作戦変更だ。あいつを全員で倒すぞ…まずは生き抜くことを優先だ。」

「うん。わかった。」

狼男の姿を見て、警戒する二人であったが…

「ハンコック、危ない!」

ープシュッー

「え…?」

慌てたようなハルキの声に少し遅れて聞こえてくる気の抜けた音、そして、私がその音の原因を探そうと振り向くと…

「ちき…しょ…う」

私を守るように両手を広げて立っているハルキがいた。

「あんた…」

「すまな…い。はんコ…っく……」

なんであんたが謝るのよ…私を庇ってこんなことになったんでしょ……

「この奴隷が!邪魔するんじゃないジョロ!……まぁ、いいジョロ。動けなくても意識はあるだろうから動けない恐怖を味わうジョロ」

「…っこのッ」

私は倒れかかるハルキを支えながら天竜人を睨みつける。
しかし、天竜人はその視線に気付くことなく、面白いオモチャを見るような目で彼女達をみている。


ーガチャンー


そして、扉が開けられ、ワーウルフが檻の中へ入れられる。
解錠されるいくつもの枷…

「うぉオオオオオオオオ!」

雄叫びを上げ、こちらを見るワーウルフ。
どうやら自分達を獲物と認識し、こんなところまで連れて来られた鬱憤を晴らす気が満々のようだ。
ハンコックはハルキを檻の隅へと運びながら妹達に声を掛け、戦闘の準備をする。

「チッ…ソニア!マリー!いくわよ!」

「「はい!姉様!」」

こうして、狼と蛇姉妹の戦いが始まった。













(side ハルキ)


「きゃあ!」

「ソニア!?」

「大丈夫…姉様、それより……」




「ちき…しょう…」

守ると決めた少女達に逆に守られている現在の状態、それを見ていることしか出来ない自分の不甲斐なさにハルキは歯噛みする。
今までの経験から麻酔の効用時間は約6時間程度…どちらの結果にしろ動けるようになるのは現在、目の前の勝負が終わった後になるだろう…

ードンッー

突然鳴り響く衝撃音。
俺は思考を中止させ、音の原因を探す…

「マリー!」

俺がその原因を見つけると同時にハンコックがそれー檻に叩きつけられ倒れるマリーゴールドに呼びかける。
しかし、マリーゴールドは気を失っているようでぐったりと倒れている。

「ちき…しょう」

動けない身体を叱咤するが動くことはなく、意識が鋭敏になるだけで気持ちだけが焦り出す。
意識を失ったマリーゴールド、傷だらけで満身創痍なサンダーソニア、傷はないが大分体力を消費しているのか苦しそうな表情をするハンコック。
対して、相手のワーウルフには傷一つなく、楽しそうな表情?で少女達を見ている。

…また…こんなことになっちまった…
なんでいつもこうなるんだ…助けようとした相手を助けられず、悲しませて泣かせて…痛い思いまでさせてしまって…マモリの時も今この時も……
自己犠牲じゃ駄目なんだ…俺自身も生き抜かなければ……意味がない…
でも、今の俺には…力が足りない…だから、いつもいつも…同じ結末に……

「俺に……力が…あれば…」

ーやっと、望んでくれたねー

「ん?」

頭に響き渡る澄み切った声。
俺はその声の発生源を探そうとしたのだが…



「え…?何だここは?」

一瞬、目の前が暗転し、次の瞬間には何もない真っ白な空間の中にいた。

「やぁ…ハルキ君…だったっけ?初めまして…じゃなかった……久しぶり…になるのかな…」

目の前にはにこやかに笑う少年がいた。

「すまん。俺、君にあった覚えないんだけどな…」

そう言いながらも目の前の少年に注意を払い、観察するハルキ。
今、この状態を作り出しているのは紛れもなくこの少年だろう…なんの目的があるのかは分からないが油断していい相手ではないはず…

「まぁ…お互いにこう顔を合わせて話をしたのは初めてだしね…そういう意味ではやっぱり、初めまして…なのかな…僕はルナって言うんだ。よろしくね、ハルキくん。」

「ルナ…」

何処かで聞いたことがあるような名前だが思い出せない。

「そんなに警戒しないでもいいよ。僕は君に害を与えるためにきたんじゃないんだから。むしろ、君の手伝いをしにきたんだよ」

「手伝い?」

「そうだよ。君は力が欲しいって言ったよね?その力を僕が与えてあげようと……いや、違うな…゛君は既に力を持ってる゛んだからその使い方を教えるって言った方がいいのかな…」

「俺が既に持ってる…?」

身に覚えのないことを矢継ぎ早に言われ戸惑うハルキ。

「そうだよ?君は食べたんだよね?ほら、えーっと今は悪魔の実って言われてるんだっけ?」

「そりゃ、食べたけど何もならなかったし…海にも…」

「まぁね。それは君が本物の悪魔の実を食べたからだよ」

「は?」

「えーっと、君達が悪魔の実って言ってる果物は大昔にある人が作ったものでね…君が食べたのはその元になったものーいわばプロトタイプ?っていうものなんだよ」

「プロトタイプ?」

「そう…まぁ、それ自体は誰が作ったものっていうわけでもないからオリジナルって呼んだ方がいいのかもしれないけど…」

「で、悪魔の実が作られたってどういうことだよ?今、そのオリジナル?だっけそれ食べた俺には何も起こってねぇじゃねえか」

「まぁ、落ち着いてよ。これからその辺の説明をしてあげるからさ…えーっとね…君達が悪魔の実と呼んでいるものが不思議な力を起こせるのはナノマシンっていうとっても小さい生き物が身体中の細胞を変化させたり、周りの元素とかに干渉して、その現象を引き起こしたりしてるわけ…でも……」

それはある特定の現象しか引き起こすことができず、そして致命的な欠陥があった。それは……

「海…」

「そう…なぜか知らないんだけどね…海の中ではその能力は使えない…それだけじゃなくてその実を食べた人はカナヅチなってしまうってことになっちゃったんだよね…まぁ……」

想像はつくんだけどね…と意味深気に笑うルナ。

「で、俺が食べたのはなんなんだよ?」

「ちょっと…落ち着きなって…彼女達が心配なのは分かるけど、もう少しは保つはずだからさ…ほら…」

ルナは指をパチンと鳴らす。
すると、白い壁にハンコックとワーウルフの姿が映り出される。
ワーウルフの攻撃を避けながら必死に反撃をするハンコック。
その攻撃はワーウルフの硬い鎧を貫通させることはできず、逆に攻撃を繰り出したハンコックの手や足がボロボロになっていく。

「30分ってとこかな…まぁ、急ぎ足にはなるだろうけど説明を続けるよ?」

そう言って、悪魔の実について説明を続けるルナ。
まぁ、まとめてみると…
オリジナルはその名の通り、悪魔の実の元となったものであり、悪魔の実のように一つの実に一つの能力といった制限もなく、海に嫌われるといった現象も引き起こすことはないらしい。
ただ、そんなにいいことばかりではなくオリジナルに含まれるナノマシンは扱いが難しく…適性のないものであれば瞬時に精神が侵され廃人状態になる…また、適性があるものであってもそれを操るためには強い意志と血が必要となるらしい。
…って

「血?」

「うん。それに含まれるナノマシンっていうのは…まぁ…こんな言い方が正しいのかはわからないけど…凶暴でね?宿主の敵だけじゃなくて宿主まで殺そうとするんだよ。だからそれに抗うために強靭な精神力がいるって言うのはさっき話したんだけど…困ったことにこいつは精神だけじゃなくて肉体面にまでちょっかいをかけてくるんだ。」

いや、わけわからん…

「まぁ、ナノマシンにとって必要なのは人の体じゃなくてその破壊衝動を満たしてくれるような強靭な容れ物なわけ…あの狼男のようなね……だから、弱い人の体の情報は真っ先に捨てられてしまう…まぁ、ある程度は鍛え方次第でその期間を長くできるんだけどね…でも、今の君や僕じゃ1ヶ月ぐらいが限界だと思う。」

「で、その限界がきたらどうなるんだよ?」

「まず、人である身体が他のものになろうとするのを拒んで、精神と共にそれを拒否する。まぁ、軽い発狂状態かな…人間の情報ー血が猛烈に欲しくなるんだ…それを越えると身体が自分の意志とは関係なく変化していく…頭は狼、身体は鋼鉄に…みたいにその時点で持っている生物や鉱物、現象の情報の中で最も破壊に適した情報が選ばれてね。それから、しばらくはその状態で暴れまわって、気づけば荒野になった地の真ん中で自分だけが立っている。身体はそれを引き起こした怪物のまま…人に戻ろうとしても戻れず、破壊の化身として生きていくことになるというわけだね。」

「つまり、一定期間ごとに人の血を吸わないといけないのか…それじゃまるで…」

「吸血鬼みたいでしょ?だからオリジナルは真祖の実とも呼ばれるんだよ。まぁ、要約すれば真祖の実はそれ自身が意思を持ち、破壊に適した情報を宿主から自動的に受け取り、宿主の身体をそれに変える。対して、悪魔の実は意思をなくしたナノマシンという感じで一つの現象の情報がインプットされたパッケージっていう感じかな…」

「まぁ、そこらへんは理解したけどさ…どうすれば…」

それを操れるんだよ…とハンコックが劣勢になっていく状態を見守りながら焦りを募らせるハルキ。
その様子を微笑みながら宥めるルナ。

「そうだね…じゃあ、君も限界みたいだし……そこらへんは実践しながら教えていくよ…」

「は?」

そして、再びハルキは白い光に包まれた…









-6-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える