小説『Zwischen??Detectiv?』
作者:銀虎()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

(転涯色)
 
 モノクロの横断幕。毛皮も使わない、貴金属もない、濃い口紅も甘美な服もない。
 笑顔がない。笑っているのは写真の中の硝子だけ。
 天は、黒の礼服を着て正座をしている。
 「ソラ・番だよ。」
 痺れる足で無理やりに歩く。お焼香だ。
 「・・・・・・・・・・」
 道の途中で、天は立ち黙る。
 後ろから、人がぶつかる。
 強い意志が目に宿った。
 そのまま、振り返る。
 
 事は、少し前に話。
 青黒い夜空、それは、夜明けに近い夜空。そこは、利家の家。酒宴の最中、利家も壱も酔いつぶれ大いびきをかいて寝ていた。
 俺は楓と二人になって残った刺身や料理の残りを食べながら、のんびりと談話していた。

 ♪〜〜〜♪〜〜〜

 黒鯛の活け造り、大分過去形だけど箸を伸ばしたばっかりだったけど。それを置いて、携帯に出る。少し留守電になってしまった
 流れたのは硝子の声。

 「天・助けて、剛司が、・・・・助けて。」
 悲鳴が流れる。
 
 
 「なっっ、硝子・今どこ。」
 声を変える。
 「ガコ〜〜。」
携帯が落ち転がる。
尋常な空気に、楓の片眉が上がる。
「どうした。」
楓は、驚きに声を挙げる。
「利家・壱・おきて。」
利家と壱が叩かれる。起こされる。
「なんだよ。」
「なんじゃ。」
「ZZZZ.」
突然の行動に、壱は起きて、楓が疑問を挙げる。利家は起きない。
「硝子が・・・・硝子がぁ。ウィリアムス」
まだ繋がっている携帯電話に、楓は耳を付ける。
波・さざ波の音、風の音、かすかに混ざるエアコンの室外機の音。かなり大量の、そして、かなり古いタイプ。烏の鳴き声。ビニールの音。大きな悲鳴。ポケットの中の携帯を捜査する。
「壱・利家を叩き起こせ。」
楓が叫ぶ、壱は利家に腕に関節をかける。
「ノワッ。」
流石に起きる。
「利家、海賊公園西ホテル横松林。大至急だ。」
「壱は、サイドカー出してくれ。ま所はさっきの通り。」
「なんで、」
「どうした。」
「んんじゃ。」
壱と利家の疑問詞
「緊急だ。いぞげ。」

強い意志。
「おぁ。」
気押され利家と壱は行動する。
そして、パニックに陥る天。
「そら。」
大きな声で、叫ぶ。そして、唇を重ねる。パニックを落ち着かせる。前に受けた以上の衝撃を重ねて何かに集中させる。
強すぎる眼差しが、天に当たる
「落ちつけよ。その子の写真あるか」
低い声だった。

2時間後。
見つかったのは、遺体となった。2人組。
見つけたのは、壱と周りにいた紅葉。
景帝の奥で、
「間に合わなかった。来るンじゃない」
低い声だった。

紅葉にランニングの途中で発見したということで、110番した。


通夜に参列したのは、あの三人のうちで、天だけ。
家の前に呼び出したのは、
「なんでじゃね。」
呼び出されたのは、壱だった。
「あんたが、硝子を見つけた。」
強い強い目をした。剛い剛い言葉
「じゃから、第一発見者のわっちにか。」
壱は笑う。悲しそうに、
「救えんかったん。だからじゃ、胸糞が悪い。」
壱は、天に向き直る。
「わっち、寝技系の武芸者じゃ。人を手で絞め殺す辛さがわかる。」
胸を張る。
「じゃからわかる。やった相手の力がわかる。あれは、柔道の絞め跡じゃ。」
はっきりと言いきった。
「なんで、寝技系の格闘技者の中から柔道と言い切れるんだ。」
天は言い切った。
「絞め技を使う、格闘技は、サンボ・レスリング・日本拳法・合気道、やつらは、二人とも仰向けじゃった。」
壱の言葉は終わらない
「仰向け。」
天は、眉を細める。
「つまり、後ろ向きの相手にかける技に精通しておるということじゃ。」
語調がきつくなる
「そうじゃよ。あれは、柔道の地獄締めじゃった。自分の片手と両足で相手の両腕を背後から制して、絞める技。素人じゃまず外せる技じゃない。キリストのよう十字張り付けになるからの。」
 確信を持ち切ったその言葉。
 「信じていいな。」
 天はしっかりと言った。
 「それはぬしの自由じゃ。わっち、柔道の経験者であって、検視官じゃない。」
 2人の間に、沈黙が流れる。
「お前らしい。」
天は言葉。
「わっちは、わっちより薄雲壱らしい人間を逆に見てみたいものじゃ。」
「あぁ、さがしておくよ。」。

-4-
Copyright ©銀虎 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える