小説『Zwischen??Detectiv?』
作者:銀虎()

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(危険色)
孤軍奮闘。部活が終わった後、天は毎日聞き込みに回った。人込みを歩き、目ぼしい人に声をかける。天は、硝子の彼氏である剛司とは、顔をおぼろげなほどの間柄であるが、楓やほかの人脈から、高校や人脈はある程は把握出来ていた。
 と言っても、人見知りの激しい天にとって見ず知らずの人間に話しかけて質問するのは、拷問に近い物が有った。
挙動不審になってしまう振る舞いは、相手を余計に遠ざけてしまうことになる。時として軟派な輩は、天をカラオケなどに誘ってしまう始末だった。そんな時は、走って逃げると、その輩は追ってはこなかった。

全く困ったものだ。楓は、挙動不審に聞き込み調査・・・・と言っても疑問詞が強調されるが、親友のために動き回る天をずっと遠巻きに見守ってきた。軟派な輩に連れてかれしそうになってしまう時に追いかけられない様に紅葉を使い、しつこい輩には鉄拳制裁。
 実際、天が集めてくる情報の、数十倍の速さと数百倍に精度で、楓に集まってくる。しかし、百足衆の幹部は天に黙っている手前伝える分量も小出しなければならない。
 分刻みで集まる情報を見極めて、楓は天を見守る。
 「難儀な奴。」
利家と壱にそう言い切られてしまった。けど、放置できるはずもなく

 「翼猫も竹雀も、自由に使うがよい。」
壱も利家もそういって、送り出してくれた。しかし、竹雀や翼猫はどうしたって使い勝手悪すぎる。

 「はぁ。」
 天は、深い深いため息をつく。駅前のベンチに腰をかけて落ち込んだ。

 ヒヤッッ

 天の頬に冷えた缶ジュースが、突きつけられる。
 「うわぁっぁ。」
 不意を突かれて驚きに声を挙げる。
 
楓は反応をするものの、片眉を挙げるだけの反応だった。 
 「流石にあれには鉄拳制裁は無理だ。」

 「今日も聞き込み。」
 在賀球児巡査。
 「在賀先輩。」
 天の顔に笑みが戻る。
 「成果は上がった。」
 爽やかな笑みで、在賀巡査は喋り聞く。
 「当たり前のようにありません。」
 天は落胆の表情を浮かべると、
 「そう、協力したいけどしがない下っ端巡査じゃ。情報なんて得られないからね。」
 在賀巡査は疲れた笑みを浮かべた。
 「けれど、狙われているのは。孕石さんのような、スポーツ選手だからね。気を付けるんだよ。」
 
 遠くで聞き耳を立てる楓は、
 「心配しなくても、大丈夫だよ。」
 僕がしっかりと見張っているので、殺される心配はない。もちろん、傷つける心配を要らない。
 そのあと、数十分に渡る談話を終えると、天は、自宅へ帰る為に在賀に別れを告げた。
 2人は、手を振りあう。

 さて今日も、2人の軟派学生を紅葉15人で袋叩きにして、天を守った放課後に終わりを告げる。流石に、通いなれた通学路にまで見張る気もないので、壱の言葉に甘えて翼猫を帰りの足にした。
 
 とんとん
 楓の肩が叩かれる。
 薄青の制服に桜の紋のついた帽子・腰には警棒と拳銃。いかつい風貌。
 「きみ、ここで何を。」
 在賀ではない警察官が、楓に話しかけてきた。早い話が職務質問。
 「何って、人との待ち合わせですが。」
 楓は当たり障りのない言葉を返す。
 「へぇ、今あの子見てなかった。ずっと、」
 あの子とは、もちろん天のことでした。
 “あ〜〜、僕・ウィリアムスと疑惑が浮上中”
 「えぇ、そうなわけでもないですよ。警察官がナンパをしてるのが、珍しかったので見ていました。」
 言い訳嫌味ソース風味
 「うっっ、そうか。」
 無駄に威圧的だった警官も黙ってしまった。
 
 ブロロッロ
 大型バイクのエンジン音がした。翼猫の到着。
 「待ち合わせの友人がきましたので、」
 礼儀の正しい声でそういうと楓は、大型バイクの後ろに座りヘルメットを受け取ると、バイクは発進した。
 
 その日から、毎日・天は在賀巡査と話してから帰路に就くのだった。時に在賀巡査は非番なのか、私服でわざわざ天に会いに来ることもあった。
 年明けの一月の気温は、大変に冷え込んでいた。聞き込みに回る天もだが、チョコチョコと後ろを付けて、見張りに立つ楓はより辛い。以前天と買いに行った濃紺のコートが暖かい。
 ニュースでも、ウィリアムスの話題は上がらない。念の入ったストーカー行為の後に、殺害を起こすのでそんな他頻度に集中して事件は起こらない
警察もストーカーについての対応が若干強化され、商店では対策グッツも売れている。
多分ウィルソンが捕まるまで、天は聞き込みを続けるだろう。日暮れの時間はまだまだ長い。このままでは、ウィリアムス以外の不届きものに襲われる心配まで出てくる。早く捕まってほしいものだ。
在賀巡査は、それでも天に会う。私服の時に一回家まで送り届けたり、害はないどころか、幾分か楓も落ち着く。
そんな最中、大きな一報が入った。

「ウィリアムス逮捕。」
スポーツ新聞の一面はその見出しで持ちきりだった。
そして、ストーカー対策グッツも売れなくなり、警察もストーカー規制もかなり緩くなったころ、

ガタッッ

孕石の家のポストに、一通の小包が届いた。
そこには、天の事を思い書いた言葉がびっしりと書いてあるラブレターが箱に入っていた。枚数は便箋で厚さ5センチ。
それは、名も明かさぬ求愛者から最初の求愛行動だった。

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