＊再会＊
誠凛高校では、部活動の勧誘が行われていた。
「ラグビー興味ない！？」
「日本人なら野球でしょー！！」
「水泳チョーキモチイイ！！」
新入生は先輩達の熱い勧誘になかなか進めずにいた。
「だーっ、進め〜ん！！ラッセル車持ってこ〜い！！」
「さっきから10分で5mも動けてねぇ…」
そんなことをつぶやく1年生もいた。
「それかこう、ブルドーザーでガーッと！！」
「キレすぎだろ…。」
そんな中、誰にも止められることなくすいすいと歩く人影が1人。そこに、
「あ、君本好き？文学部とかどう？」
「いや、コレマンガなんで…」
……後ろの人に尋ねたようだ。
本を読みつつ、人混みをかき分けていると、
「あれ、テッちゃん？久しぶりー！」
と、明るい声が聞こえる。テッちゃんと呼ばれた男は本を閉じ、声のした方に振り向く。
「お久しぶりです、2年ぶりですね光哉君。君もここだったんですか。ということは優奈さんや綾乃さんもここですか？」
と、丁寧な口調で話す。
「相変わらず丁寧語だなぁ。あと、何が“ということは”だよ。間違ってはいないけど。」
と、楓は苦笑いしつつそう返す。
「なら、バスケ部のマネージャーは心配なさそうですね。」
「そう、なんだけどなぁ。あの2人、帰ってきてからやたらくっついてくるから困るんだよなぁ。」
「（相変わらず鈍いのはなおってないんですね、2人がかわいそうです。）まぁ、そこは頑張って下さい。」
「何を頑張るかわかんないけど、そだな。あいつ等は明るいから部活も元気に出来るしな。っと、噂をすればだ。おーい！」
光哉は近づいてくる人影に手を振る。
「ヤホー、光君。それとテツ君久しぶりー。」
「光哉おっひさー！テッちゃんもおひさー。」
上から順に綾乃、優奈である。無論、二人とも楓に抱きつつである。
「お、おい。二人ともやめろって。こーゆうのは日本じゃダメだろ。」
そんな鈍い奴丸出しの発言をしつつ、2人を引き離す。
「「誰かさんが気付いて反応したらやめる。」」
そんな様子を見てテツは、
「はぁ…。いくらなんでも鈍すぎです光哉君。ほら、行きますよ。」
「おう。あ、テッちゃんは部活届け書きに行った？」
「？ まだ書きに行ってませんけど？それがどうかしたんですか。」
テッちゃんは不思議そうな顔をして光哉に尋ねる。光哉は、いたずらっ子のような顔をして、
「いや、テッちゃんの持ち前の影の薄さで気付かれずに出してもらって先輩達を驚かせたいなーと思ってさ。」
と、言う。
「相変わらず好きですね、楽しい事。そういう所、そろそろ直した方良いですよ。」
そんな事を言いながら、光哉に笑う黒子。
「いーの。アメリカでは普通だったし。それに、テッちゃんだって楽しそうな顔してるよ？」と光哉。
「そうそう。人生楽しまなきゃ損だよ。」と優奈。
「でも、ほどほどにしないと嫌われちゃうから加減もね。」と綾乃。
そんな会話をしながら笑いつつ、4人は歩きを進める。
「というか、説明は聞かなくて良いんですか？」
ふと、足を止め黒子は聞く。
「あぁ、そのへんはだ「大丈夫！私調べてあるから。」ということだそうだよ。」
と、苦笑いしながら光哉は答えた。もっとも、答えたのは優奈だが。
「相変わらず手際良いですね…なら、大丈夫ですね。じゃあ、少し待ってて下さい。3人分持ってくるので。」「「はーい。」」「もう1人分は！？」
光哉は黒子を止める。
「え？」
―――バスケ部勧誘場所。
「じゃあ、ここに名前と学籍番号ね。」女生徒が言う。
「はい、後は… 出身中学と動機？」
「あぁ、それは任意だからどっちでもいーよ。はい、あいがとー。またねー」
こんな感じで進んでいた。
「（今の子、なかなかの素材ね…。）えっと、ひぃ、ふぅ、みぃ…。うーん、もうちょい欲しいかなー。（さて、勧誘の方はどうかな？頑張って有望そうなのつれてきてよねー。）」
と、そこに
「来ましたぁ！新入生！！」と嬉しそうな声でで生徒がやってくる。中に浮いた状態で。
「（って、オイ！なんで肩車されてんのー！）そ、そう、ありがと。」
女生徒は困惑しつつ、新入生を見上げる。
「（でっかぁ！けどそれ以上に、なんなの！？このほわほわした感じは）え〜っと、こんにちは。部についてなんだけど…」
と、はじめは微妙に距離を取りつつ説明をしていく。
「…で知ってると思うけど、”誠凛（ウチ）”は去年出来たばっかの新設校なの。だから上級生は2年生だけだから君みたいに体格良ければ…」
「いーよ、そーゆーの。紙下さいっ！名前書いたら帰ります。」「え？」
新入生の男子生徒はニコニコと機嫌良さそうに言う。
「（出身はアメリカ…！？お〜、本場仕込みね。……虹坂光哉君、ね。どっちにしろタダ者じゃなさそうね。）…あれ？志望動機は無し？」
女生徒は不思議そうに聞く。
「別にないっすよ！というか、バスケやるのに必要な理由ってあります？。」
そう楽しそうに呟きながら火神は去っていく。
「…なんか、ゆるいなあの子。あれで高１！？でかいけど。」
一言もしゃべらず座っていた男子生徒は机に突っ伏しながら言う。
「てゆーか、肩車されて帰って来た理由が知りたいわ…。」
女生徒はため息を吐きつつ聞く。
「えっと、それは…ん？これ、集め忘れてるよ。」
男子生徒は起き上がり、自分の下にある紙を渡す。
「えっ？いけない、え〜と…黒子テツヤ？それと女子2人も…？（あれ〜？ずっと机番してたのに覚えてないな…。それに女子なんて1人も来てないし……ん？）って、帝光中！？あと城磐中のマネージャー！！」思わず立ち上がる。
「えぇっ！？あの有名な！？」男子生徒も驚く。
「しかも今年1年ってことは『キセキの世代』の！？あーもう、なんでそんな金の卵の顔を忘れたんだ私！さっきの奴はアメリカ帰りだし、今年の1年ヤバイ！？」
「フフッ。今頃あのマネージャーさん驚いてっかな。」
光哉は楽しそうに笑う。
「光哉〜、あの人カントクだってばぁ。」
優奈が言うと、
「えぇっ！そうなの！？」案の定光哉は驚く。黒子は静かに驚いていた。
「もうっ、調べた中にあったの。先生はただの顧問。カントクはあの女子生徒だよ。」
「ふ〜ん。ますます面白そうじゃん、ここ。よしっ、これからがんばろーっと。」
光哉はにこやかに気合を入れる。だがそこに、黒子が言う。
「今度は1人じゃないですよ。」
「…そうだね。楽しさは追及するし、本気で勝ちにも行くよ。話聞く限り、あいつ等ギスギスしてんでしょ？」
先ほどまでと違い、真剣な表情で黒子を見る。黒子は静かにうなずく。
そして、にこやかに「じゃあ、力を貸してくれよな“幻の6人目”さん」と言う。
それに対して黒子も、「えぇ、こちらこそ。“喪失の7人目”君」と笑って返す。もちろん光哉はそれを否定してたが。
――――これから、彼らの物語は動きだしていく。