小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――Lululululu…


 「はいは〜い今出ますよ〜。」

 着信を告げる八神宅の電話。
 はやてでは直ぐには取れないので受けたのはシャマル。

 「はい、八神です。…遊星君ですか?すみませんまだ戻って…「ただいま。」あ、今戻ってきました。」

 相手は遊星に用が有ったらしい。
 そして絶妙のタイミングで遊星達が帰宅。

 「遊星君、貴方に電話。」
 「俺に?分かった。悪いが2人は買ったものを冷蔵庫に入れておいてくれ。」

 「あぁ分かった。」
 「任せとけ!」

 シグナムとヴィータに指示を出しつつ遊星は子機をシャマルから受け取る。
 なんとも『主夫』が板についている遊星であった…









  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス10
 『時と次元を超えた再会』









 「電話を代わりました、八神遊星ですが…」

 『貴方が遊星君?初めましてプレシア・テスタロッサと言います。今日は娘がお世話になったそうで…』

 電話の相手――プレシアと名乗った女性が言う事を遊星は直ぐに理解する。
 名前から察するにさっき助けた少女の金髪の方の母親なのだろうと推測する。

 「いや、大した事じゃない。俺が好きでやったことだ。」

 『それでも娘が助けられたんですものお礼を言わないなんて事はできないでしょう…『不動遊星』君?』

 「!!!…何故其の名を…」

 プレシアが自分の本当の名前を言った事に驚きは隠せない。
 いや、そもそも何故知っているのかと言う方が遊星にとっては疑問だ。

 『ふふ、アルフはね狼の獣人だからね人間の数倍の聴覚を持っているの。今日貴方が戦った相手が『そう』呼んでいたと教えてくれたわ。』

 「…一体何が言いたいんだ?」

 途端に警戒を強める。
 己の本当の名を言ったプレシアの考えがどうにも読めないからなのだが…

 『ふふ、ごめんなさい。そんなに警戒しないで?只名を偽らない貴方と話したいと思っただけよ。
  クロノく、クロノ・ハラオウン執務官から『事情聴取』の件は聞いているでしょう?用件はそれについて。』

 「確かに聞いているが、何故あんたが…?」

 『彼の母親は私の友人なの。其れでね事情聴取は4日後に私が所有する『時の箱庭』と言う場所で行う事になったわ。』

 「時の箱庭…」

 『当日はそちらには執務官が自ら迎えに行くはずよ。それと…可能ならば『闇の書の主』も連れてきてもらえるかしら?』

 「はやてを!?」

 再び警戒を強める。
 先程の戦いの当事者である自分とシグナム、ヴィータならば理解出来るが『何故はやてを?』と思ったのだ。

 『本当に仲間思いね貴方は。別に何もしないわ。闇の書の主には伝えておかねばならない事もあるの。
  と言っても簡単には信じられないわよね?だから私の命を賭けましょう。』

 「命を…?」

 『そう、もし私が闇の書の主や貴方達に危害を加えるような真似をしたらその場で私を殺してくれて構わないわ。』

 何と言う豪胆な発言。
 いや、己の命を賭してでもプレシアは遊星を時の箱庭に来させなくてはならないのだ。

 「……分かった。皆には俺から話しておく。あんたが言った事を其のまま伝えれば了承するはずだ。」

 プレシアの考えは兎も角、其の覚悟を受け取った遊星は其れを了承する。
 己が命を賭すのは生半可な事では無いと知っているからだ。

 『助かるわ。其れと遊星君、貴方にとって大切な人が此処で待っているわ。』

 「俺にとって大切な人…?誰何だ一体!」

 『其れは当日のお楽しみとしておきましょう…直接会うのを楽しみにしているわ。』

 其処で電話は切れた、が遊星の頭の中にはプレシアが最後の言った事が残っていた。


 ――俺にとって大切な人?まさか、俺以外にもシティから此処に飛ばされた人が居ると言うのか?


 疑問は残るが、

 「遊星〜電話終わったんなら夕飯の準備手伝ってくれへん?」
 「…あぁ、分かった。」

 はやてに呼ばれ疑問は取り合えず捨て置く事にした。






 で、夕食時。


 「と言うことで4日後ははやても一緒に行く事になった。」

 先程の電話での事を要点を絞ってざっくりと説明する遊星。
 ついでに今日の戦闘の事もはやてに説明をしていた。

 「待て遊星、本当に信頼していいのか?もしも主の身に何か有ったら…」
 「それについては大丈夫だろう。彼女は自らの命を賭した、更に今日の執務官の母親とも友人らしい。
  楽観は危険だが、必要以上に構えることも無いと思う。」
 「むぅ…たしかにな。」

 危険性を訴えるシグナムだが、『其の可能性は低い』と言われれば聞くしかない。
 なんにしても遊星の状況判断能力の凄まじさは一般人の其れを遥かに凌駕するのだ。


 「ま、丁度良えわ。この『闇の書』の事はもっとよく知りたいとおもっとったし。」

 「主はやて?」
 「はやて!?」
 「はやてちゃん?」
 「主?」

 予想だにしていなかったはやての一言にヴォルケンズが音速反応。
 勿論はやては只の伊達や酔狂で言った訳ではない。

 「あんな、実を言うとちょっと疑問に思ってたんや、此れが『闇の書』言われる事にな。」
 「はやてもそう思っていたのか?」

 反応したのは遊星。
 如何やらはやてと同じことを思っていたらしい。
 其れに頷き、はやては自分の考えを述べる。

 「私の主観やけど、如何みてもシグナム達が『闇』言うものには思えないんよ。
  もしかしたら『闇の書』ちゅうんは此れの俗称みたいなものやないんかぁ思ってん。」
 「シグナムとヴィータは今日の事で分かると思うが、『闇の力』は人が踏み込んではいけないモノだ。
  俺にはお前達を『闇』の騎士とは考えられない。其れに『ヴォルケンリッター』は訳せば『雲の騎士』、闇とは関係ない。」

 其れを遊星が強烈に援護する。
 此れにはヴォルケンズも驚くほか無い。
 新たな主と異世界の英雄は、驚くほどの観察眼の持ち主だったのだ。
 そして同時に納得もしていた、プログラム生命体とも言うべきヴォルケンズは時を重ねる事でのデータ劣化は免れない。
 真っ先に劣化と破損が生じるのは『記憶』の部分で、事実シグナムを始め全員が何時から此の魔導書が『闇の書』と言われるように成ったかは覚えてない。

 「分かりました、主がそう仰るなら。」
 「任せとけ!はやてはあたしが守ってやるぜ!」

 「だが一応は警戒をしていてくれ。何が有るかは分からないからな。」

 頷き了承。
 こうして4日後の事情聴取にはやての同行は決定した。








 ――――――








 「こんなものが存在していたのか…」

 4日後遊星達は『時空航行艦アースラ』に居た。
 迎えに来たクロノに促され此の船に。
 一行が居るのはブリッジだ。

 「うわ〜ホンマに地球は青いな〜〜♪」

 はやての言うようにブリッジからは地球が見て取れる。
 早い話が宇宙に居るのだ彼等は。

 「時の箱庭は海鳴にある物じゃないのか?」
 「普段はそうなんだけど『時の箱庭』は元々此の『アースラ』と同様に時空航行機能を有した移動要塞なの。
  特に今回の権は本局には知られたくない部分も有るから此のアースラ以外では探知できない所に居てもらっているのよ。」
 「成程な。」

 リンディの説明に遊星は納得。
 其の視界の端でははやてが初めて見る地球の美しさにはしゃいでいた。


 ――痣が疼く…一体何が待っているんだこの先に…


 そんな中でも遊星は1人緊張を高めていた。








 ――――――








 遊星達がアースラで移動している最中、時の箱庭では既に聴取と言うか会合の準備は整っていたのだが…


 「お母さん1つ聞いて良い?」
 「何かしら?」
 「時の箱庭は何時から『日本庭園』に変ったの!?」

 フェイトの言うように此の時の箱庭は何故か景観が日本庭園に様変わりしている。
 フェイトとアリシアの記憶では昨日まで、なのはの記憶では4日前までは此処は西洋式のガーデンを模していたはずだ。

 「そうねぇ、つい1時間前かしら?」
 「何で!?」
 「昨日見た旅番組で京都の日本庭園を紹介してたのよ。美しいわよね日本庭園て…」

 原因はテレビの旅番組だった!
 まぁ確かに日本庭園は独特の美しさがあるが、如何に感銘を受けようとも普通自分の住まいを改造するだろうか?
 尤も全てはプレシアが自身の魔力で箱庭の内部風景を変更したに過ぎないのだが、それにしたって凄すぎる。

 「それに此れくらいの魔力行使は病み上がりの身体のリハビリには丁度いいのよ。……来たみたいね。」

 リハビリついでにテレビの影響を受けて箱庭を日本庭園に改造したらしい。
 其れは兎も角、視線の先には転送魔法の魔方陣。
 つまり遊星達が到着したのだ。


 「…此処が時の箱庭…よく整備されているな…」
 「はぁ〜偉い綺麗な日本庭園やな…」

 転送が完了し、生粋の日本人である遊星とはやては其の庭園の美しさに息を呑む。
 反対にヴォルケンズは綺麗なのは分かっても深い部分までは理解できないようだ。


 「ようこそ時の箱庭へ、不動遊星君と闇の書の主。そして闇の守護騎士達。」

 まずは箱庭の主であるプレシアが声を掛け挨拶。

 「いや、此方こそ。あんたがプレシア・テスタロッサだな?」

 挨拶もそこそこな遊星の問いに頷いて答える。
 同時に遊星はプレシアの傍らに此の前の少女2人が居る事に安堵していた。

 奇しくもなのはとフェイトの存在が遊星の中の疑念を晴らす結果となった。


 ――あの子達が居るならば一先ずは大丈夫だな。なら…
 「不仕付けで悪いが教えてくれないか、俺に会わせたいと言うのは一体誰何だ?」

 あの日の電話以降遊星は其れが気になっていた。

 「せや、其れは私も気になっていたんや。」

 話を聞いていたはやてもまた気になっていたらしい。

 其れを聞いたプレシアは意味ありげに沙羅を指差し


 「彼女よ。」

 其れだけを告げる。


 其れに困惑するのは遊星だ。
 其の女性は少なくとも遊星の記憶の中には無い。
 其れに警戒を強めるも…


 「初めましてって言うべきなのかな?貴方は、私を覚えては居ないよね…?」

 沙羅の切り出しに出鼻を挫かれ警戒が緩む。

 「覚えて…?貴女は俺を知っているのか?」

 質問に逆に質問で問う。

 其れに沙羅は頷き白衣のポケットから1枚の写真を取り出し遊星に渡す。


 「…此れは!!」

 其れを受け取った遊星は心底驚いた。
 写真に写ってたのは目の前の女性と其れに抱かれた赤ん坊、そして…自身の父親である不動博士だったのだから。


 「何故貴女がこれを……まさか!いや、だが本当にそんな事がありえるのか…!?」

 1つの仮説が遊星の中に生まれる。
 同時に目の前の女性の正体も見当が付いていた。

 「俺の考えが正しければ、若しかして母さんなのか…?」

 「正解…大きく立派になったね遊ちゃん…」

 遊星の問いを肯定する沙羅。
 其れを見て驚く遊星。


 沙羅にしてみれば1年と少し。
 遊星にしてみれば実に18年。


 ゼロ・リバースのせいで離れ離れになった親子は時と次元を超えて漸くめぐり合ったのだった…


















  To Be Continued… 

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