小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 闇の書の詳細が分かった直後に出た新たな予言。
 予言の内容は再考するとして、闇の書については一応の対応が決まった遊星達。

 「……クロノ、止めなくて良いのか?」
 「止めるだけ無駄さ。艦長の味覚は、息子の僕でも理解できない…」

 若干、青ざめた顔の遊星とクロノの視線の先には緑茶にたっぷり砂糖とミルクを入れるリンディの姿が。

 「ちょっ、リンディさん!其れ既に緑茶と違う!いや、其の飲み方は緑茶に対する冒涜やで!!」
 「え〜……だって苦いんですもの。」
 「せやったら最初っから緑茶以外の飲み物貰えばえぇやろ〜〜〜!!!!」

 そして其れに、はやての魂の突込みが炸裂していた。









  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス12
 『暴かれた偽善』









 「た、高町……あの味覚、店長の腕で何とかできないのか…?」
 「も、もうやってるの…アレでも前よりは良くなったんだよ?」
 「あ、アレで良くなったって、前はドンだけだよ…」
 「今の3倍は入れてよね…」
 「1回緑茶飲むのにシュガーポッド半分無くなってた。」

 「「「「それはもう砂糖水じゃないか?」やないか!」ではないのか!?」じゃねーか!!」

 突っ込み4発。
 中でもシグナムが受けたショックは相当に大きい。
 『アノ』高町桃子の腕でも完全なる味覚改善には程遠いとは…

 「…お前以上の味覚の持ち主が居たようだな。」
 「ザフィーラ酷い!!」

 「何で、あんな味覚になっちゃたのかしら…」
 「さてね…世界は本当に『こんな筈じゃなかった』事に満ちているわ…」

 「てか、何でアレで糖尿にならないんだろうね。」
 「さぁ…?それよりもアルフ、人間の姿でドッグフードを食べるのは、いい加減止めましょう?」

 リンディの異常味覚のせいで、ちょっとしたカオス空間が発生してしまった。

 そのカオス空間に歯止めを掛けたのはエイミィ。

 「あの〜…何方か転送して来たみたいですよ?」

 先程の予言の件と言い、話を切り出すタイミングが良い。
 だが、何者かが転送されてきたとなると、少々厄介な事が予想される……言うなれば『侵入者』の可能性があるのだが…

 「管理局の転送コードですね。えっと…シリアルIDは……あぁ、一佐です艦長。」
 「「一佐が?」」

 リンディとクロノの声が重なったと同時に、その転送して来たと思われる人物が茶室の扉を開いた。

 「相変わらず、少々変わった味覚のようですねリンディ艦長。」

 そして、現われた人物に誰よりも驚いたのは、

 「お前は!!」
 「貴方は…!!」

 不動親子だった。
 何故か?

 「ゴドウィン!」
 「レクス君!?」

 「久しぶりですね遊星。そして、不動沙羅博士。」

 其れは2人が良く知る人物だったから。
 遊星は嘗て死闘を演じた相手として、沙羅はモーメント開発を共に行っていた仲間として。

 「知り合いかよ遊星?」
 「あぁ。アイツの名はレクス・ゴドウィン。ネオ・ドミノシティ・セキュリティの元長官で、子供の頃の俺達が憧れた伝説の男…
  そして、1度はダークシグナーへと堕ち、俺と……俺達と死闘を繰り広げた。」
 「「「「ダークシグナー!?」」」」

 先程の『事情聴取』の中で知ったダークシグナーの存在。
 目の前の男がそうで有ったと聞き、シグナムとヴィータ、なのはとフェイトも警戒を顕にする。

 「待て、シグナム、ヴィータ。なのはとフェイトも落ち着いてくれ。確かにゴドウィンはダークシグナーとして俺達と戦ったが…」
 「私は君達に敗れ、自らの過ちを知り、ダークシグナーの力も消失した。
  そしてカーリー渚、ミスティ・ローラ、鬼柳京介の3人をダークシグナーから解放し、私は兄と共に冥界へと消えた筈でした。
  しかし私の存在は消えず、気が付くと『ミッドチルダ』と呼ばれる場所に降り立っていたのです。」

 俄かには信じがたい話だが、遊星自身次元跳躍を体験しているので否定は出来ない。
 警戒していたシグナム達も、幾分警戒を弱める。

 「今の話からすると、レクス君は遊星と同じ時代から…」
 「そうなります。」

 話しながら、ゴドウィンも床に腰を下ろす。

 「其の後『時空管理局』に『次元漂流者』として保護され、経緯は省きますが嘱託を経て今では陸士一佐と成っています。
  保護されたのが1年ほど前の話ですから、此れは異例の事でしょう。
  尤も私の『カードを実体化させて戦う能力』は未知のものですから、手元に置いておきたいと言う思惑があるでしょうが。」

 茶を飲みながら、話を続ける。

 「そうだったのか。…ゴドウィン、お前は一体何処まで知っているんだ?」

 「闇の書の対処法と、管理局の上層部……特に最高評議会直属の連中の思惑までは分かっています。
  此処に来たのも、其れを話す為と言うのが目的ですからね。」

 とは言っても、ゴドウィン以外の全員が遊星の提案を聞き闇の書の対処方は決まっている。
 故に対処法については聞かなくとも良いと思ったのだが…

 「尤も、闇の書の対処法については遊星、君は大凡如何するかを決めてあるのでしょう?」

 「あぁ、はやての身体は闇の書の浸食を受けていてこのままだと命に関わるらしい。
  だから、俺のモンスターやシグナム達の攻撃を吸収させて闇の書を完成させるつもりだ。」

 此れにゴドウィンは納得の表情を浮かべ続ける。

 「君らしい方法ですね。ですが其れだけでは不完全です。
  確かにその方法なら、他者に犠牲を強いず闇の書の完成は可能でしょう。ですが其れだけでは足りません。」

 「如何言う事だ?」
 「遊星の案じゃダメなん?」

 「ダメでは有りません。ですがどんな方法を使おうとも、闇の書は完成と同時に暴走し、持ち主をその身に取り込みます。
  やがて、取り込まれた持ち主は衰弱し、死に至る。此れがその魔導書が『闇の書』と呼ばれる所以なのです。」

 思ってもみなかった真実。
 如何なる方法を以ってしても暴走を防げないなど如何しろと言うのか…

 「遊星、幸い君の方法ならば戦力は充分に温存が可能でしょう?」

 「あぁ、攻撃による魔力を蒐集させるだけならそれほど力は要らないはずだ。」

 「そうであるならば、更なる対処法が有ります。それは、闇の書の主である彼女…失礼、名前を伺っても?」
 「はやて。八神はやてや。」

 「八神はやてさんが、闇に飲まれ、尚且つ自我を保ちつつ管理者権限をもって書と壊れた防衛プログラムを切り離し、書の機能を上書きするのです。
  そして、その間、目覚めた暴走体を押さえつけておく必要があります…更に切り離した暴走体は完全に滅する事も必要でしょう。」

 一気に難易度が上がった。
 要するに、実質的にははやて1人で闇の書のプログラムを書き換え、正常に戻さねば成らないのだ。

 無論、遊星も、なのは達も、ヴォルケンリッターも全力で挑むだろう。
 故に対処は不可能ではない。


 そう『闇の書』だけならば。


 「ねぇレクス君、他の脅威も一緒にくる可能性があるのよね?」

 「お察しの通りですよ沙羅博士。恐らくは書の暴走と同時に行動を開始するはずです。」

 「ダークシグナーと地縛神…ですね。」

 表情を強張らせなのはが言う。
 たった1体に苦戦したことを考えると、アレの相手は是非とも避けたい所だが、そうは行きそうにない。
 加えて、遊星の話ではダークシンクロを上回ると言う地縛神なる存在まで居るのだから…

 「既に最初の予言は現実になりつつあります。もう何人もの『法の魔導師』が『邪神の生贄』となっているのです。」

 「何だって!?一佐、まさか最近管理局の魔導師が立て続けにMIA(任務中行方不明)になっているのは…」

 「行方不明者の略全てが何らかの任務で海鳴を訪れ、其の後消息不明と成っていることを考えると、
  恐らくはダークシグナーと戦い、そして敗れ、地縛神復活の為のエネルギーになってしまっているでしょう。
  上層部は勿論この事を知っています……が、敢えてその事実を隠蔽しているのです。自らの思惑通りに事態を進めるために。
  いえ、それどころか、彼等にとって末端の魔導師など『替えの利く消耗品』程度の価値しかないのでしょう。」

 「ふざけるな!」
 「人の命を何だと思っているんだ、上層部は!!」

 余りにも人の道を外れた上層部の思惑に、普段はクールな遊星とクロノが珍しく怒りの沸点を突破した。

 此れまで生きてきた中で、そして多くのデュエルで命の重さを知っている遊星と、
 自らも前線で戦う事もあり、危険な任務もこなして来ているクロノにとって、この考えは許せない。

 「まさか、管理局の腐敗が其処まで進んでいたなんて…」

 リンディも、無論エイミィもショックは隠せない。
 先の『ジュエルシード事件』に於ける管理局の対応から、内包する『闇』を感じ取ってはいたが、よもや此処までとは思わなかったのだろう。

 「加えて、このままでは彼女…八神はやての幼い命までもが管理局の犠牲になるでしょう。」

 「そんな…!」
 「如何言う事だ!!」
 「説明しろ!!」
 「!!!」

 今度はヴォルケンズが噛み付く。
 自らの主が犠牲になるなど、到底容認できるものではない。
 特にシグナムとヴィータは、今にも管理局に殴りこまんばかりの勢いだ。

 「管理局の筋書きはこうです。
  此度の闇の書の主たる八神はやてを監視しつつ、書の完成の為の魔力蒐集を手助けする。
  そして全ての項が埋まったところで、彼女に絶望を与えて暴走を誘発し、暴走体を彼女ごと永久氷結させる。
  この方法ならば、既に起動している為に闇の書の無限転生機能は発動せず、文字通りの『永久封印』が可能になるのです。」

 「冗談じゃない!其れは違法だ!!何の罪も犯していない管理外世界の住人を永久凍結なんて間違ってる!!」

 最早この場の全員にとって管理局は信用ならないものとなった。
 其れは自身が管理局員であるクロノ達も同様だ。

 「10を救う為に1を切り捨てると言う考えはおかしい……命の重さに差なんて無いだろう!
  遊戯さんも言っていたが、人の命を踏み台にする未来なんて、絶対に認められない!!」

 遊星の言葉は誰もが思った事。
 ゴドウィンもまた然りだ。

 「その通りです。管理局最高評議会と上層部の狂った正義を認めることなど出来ません。同時に、地縛神の復活もです。
  地縛神の生贄となった人々は、地縛神を倒す事で解放されますが、闇の書の永久凍結は一度捕らわれたら解放する術はありません。
  何が有ろうとも絶対に阻止すべき事なのです。」


 ゴドウィンからもたらされた情報。
 此れに箱庭に集った全員の気持ちは1つになった。

 相手は地縛神とダークシンクロを操るダークシグナー。
 そして狂った正義を振りかざす時空管理局最高評議会と上層部。

 敵としては強大だが、しかし遊星達に恐れなど無い。
 全てを清算するだけだ……犠牲者を出さずに。


 「ゴドウィン、情報の提供には感謝するが、こんな事をしたらお前も危ないんじゃないか?」

 「心配には及びません。ダークシグナーとしての力こそ失いましたが、私とてデュエリストの端くれ…自分の身を護る術は有ります。
  更に嘗て使った『インティ』と『クイラ』が形を変え、新たなシンクロモンスターとして私の元に有りますから。」

 ゴドウィンの身を案じる遊星だが、心配は無用のようだ。

 「それと遊星、君に此れを渡しておきます。この世界に来た際に持っていたカードですが、恐らくは君が持つべき物でしょう。」

 「カード…?」

 渡された1枚のカード。
 其れは未だ名前もイラストも無いシンクロモンスターのカード。

 「それがどの様な力を持っているのか、其れは分かりません。
  ですが、近いうちに起こる地縛神や闇の暴走体との戦いにきっと必要になるでしょう。」

 詳細は不明、だがその力は今の状態でも感じられるほどに強い。
 それは遊星だけでなく、はやてやヴォルケンズ、なのは達も感じ取っているだろう。

 「例えどんな力だろうとも、俺はその力を使いこなしてみせる!はやての、俺の仲間達の為に!!」

 「なんや難しそうやけど、闇の書の主として私も必ず此れを正常に直してみせる!」

 決意新たに。
 迷い無く、すべき事を見据えたこの面子に不可能など無いだろう。



 当面は『時の箱庭』と『アースラ』を拠点として、活動する事になった。


 思わぬ再会だったが事態は大きく進んだ。








 ――――――








 同刻・海鳴市のとある場所



 「くっくっく……良い感じに力が集まってきた。此れならば…!!」


 薄暗い部屋に佇む、以前遊星達と戦ったローブの人物。
 その部屋の床には、7つの地上絵が……

 「地縛神の復活は近い……全ての力を取り込んでくれる!そしてその時こそが貴様の最期だ不動遊星!!
  全ては闇に!くくく…はっはっは……はぁっはっはっはっはっは!!!」

 薄暗い部屋に、不気味な笑い声が響き渡るのだった。
















  To Be Continued… 

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