小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「アレ?遊星君、如何したのそれ?」
 「マリーか。いや、シグナム達にデバイスの調整と強化を頼まれたんだ。」

 アースラ内でのちょっとした会話。
 なのはとフェイトのデバイス強化以来、遊星とマリーはそっち方面で仲が良い。
 マリーは遊星の技術力と頭脳に心底尊敬の念を持っているし、遊星も遊星で自分の領域の話が出来るマリーはありがたい存在だった。

 「騎士達のデバイスですか!?あの、私も参加していいですか!?」
 「あぁ、構わない。俺だけでなく、他の人の意見も聞いたほうが良いからな。」

 と、普通の会話は此処までだった。
 以降は一般人には理解不能の専門用語のオンパレードな会話。
 精々分かるのはデバイスの名前位のものだ…

 「…マリー、変な事だけはしないでくれ…」
 「遊ちゃん、魔導サイエンティスト…もといマッドサイエンティストにはならないでね?」

 そしてそんな2人をクロノと沙羅はちょいと心配しているのだった…









  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス16
 『ちょっとした日常♪』









 遊星・ザフィーラvsなのは・フェイトの模擬戦から数日、世の中は実に平和であった。

 理由は不明だが、魔導師が行方不明になる事件もぱったりと息をひそめ、ダークシグナーが動く気配は無い。
 更に、リーゼ姉妹が遊星達に付いた事で、実質管理局からの手出しも無い状態。

 嵐の前の静けさ……と言えなくも無いが、現状は平穏そのもの。

 そして平穏ならば平穏で夫々やることは有るわけで…


 「て、店長それは一体……と言うか其れを如何なさるおつもりで?」
 「うふ♪勿論シグナムに着て貰おうかな〜〜って。」
 「全力全壊で拒否させていただく!!」

 此処翠屋ではシグナムが桃子に『新しいウェイトレス服』(メイド、ネコミミ、ゴスロリ等等)を勧められていた。

 「え〜〜〜?」
 「『え〜〜〜?』ではなくて、私にそんな服は似合わないでしょう!」
 「じゃあ、こっちね♪」
 「何故にそう言うモノがポンポン出てくるんですか!?」

 新たに出てきた執事服と矢絣袴に、疑問を投げつけるのは…まぁ当然だろう。
 しかし、こういう事に関しては桃子の方が遥かに上手なわけで…

 「じゃあ、此れで決まりね♪」

 取り出したるは、トドメの1着『バニーガール』!

 「すいません、矢絣袴でお願いします!!」

 …勝者、高町桃子。



 「なのはちゃんのメイド服は勿論の事、シグナムに矢絣袴を選ばせるように誘導するとは…桃子さん出来るな?」
 「はやて、何に感心してんだよ…」

 「相変わらずだね、なのはちゃんのお母さん♪」
 「てか、何処で手に入れて来るのかしらね『あの手の服』を。」

 そんな光景を見ているのはなのはにお呼ばれしたはやてとヴィータ。
 そしてフェイトが連れてきた『月村すずか』と『アリサ・バニングス』

 なのはの発案で、はやてをアリサとすずかに紹介しようと言うことで翠屋に。

 で、仕事を持たないヴィータがはやての護衛を兼て一緒に。
 まぁ、あの『ギガうまシュークリーム』に引かれたという部分も大いに有るであろうが。

 「でも、シグナムは良く似合ってるよ?なのはも可愛いし♪」
 「お?分かるかフェイトちゃん!せやろ?極上の美少女メイドさんと、これまた極上美女の和服ウェイトレス!
  休日限定でも、あの2人がおるだけで、客足増えるんは確実やで♪」

 「…なんか私の仕事が増えそうな気がするわ…」
 「アリサちゃんガンバ♪」
 「アンタも手伝いなさいよ!!」

 どっかネジのぶっ飛んだはやてとフェイトの会話にアリサは自分の苦労が増えることを悟っていた。


 「わぁ!シグナムさん良く似合ってるの♪」
 「そ、そうか?」
 ――まぁ、此れが一番無難だったからな。


 そして、着替えたシグナムをなのはが誉め、


 「良く似合ってるわね。買って良かった♪」
 ――作戦通り♪


 桃子は若干黒かった。


 因みに、奇しくもはやてが言ったとおり、和服シグナムとメイドなのはは『土日・祭日限定の美女コンビ』として有名になるのだった。








 ――――――








 「むん!」

 所変わって、此方はザフィーラが働いている工事現場。
 重いセメント袋を5つも担ぎ上げてザフィーラは現場を行ったり来たり。

 「すげぇよな…」
 「流石はザッフィーさんだぜ…」

 何を隠そう、ザフィーラ、現場では『100人力のザッフィーさん』として仲間から慕われている。

 普通なら持つことさえ不可能な鉄骨を2、3本を軽々担ぎ上げて必要な場所まで持っていってしまうのだ。

 基より人間ではないザフィーラにとって此れくらいは朝飯前の事だが、現場の仲間達からすればそれは超人の業。
 更に、其れだけの荒業を疲労しても息一つ乱さず、しかも寡黙ではあるが仲間の事は常に気に掛けている。

 「おぉ、ザッフィー、相変わらず凄いパワーだなお前さんは!」

 「親方か。…此れくらい出来なくては大切なものを守ることなどできんからな。」

 「か〜〜!真面目だねぇ!!だが、其処がお前さんの良いとこだ!頼りにしてるぜザッフィー!」

 「あぁ…力の限り働こう。」

 親方からの信頼まであつく、ザフィーラは最早必要不可欠な存在となっていた。


 「く〜〜!何処までも格好いいぜザッフィーさん!」
 「ザッフィーのアニキ、俺は何処までもアンタについてくぜ!!」


 …一部妙な連中が誕生してしまったみたいであるがな…








 ――――――








 さて、此方はシャマルがパートとして働いている介護施設。

 「もう少し、頑張って……ゴール!はい、お疲れ様〜♪」

 お年寄りのリハビリなんかもシャマルは実に的確にこなしている。
 この辺は元々サポート役をこなしていた経験の賜物だろう。

 その柔らかな物腰から入居者の受けも良い。

 「いやいや、シャマルちゃんは何時もニコニコじゃの〜。見てるだけで私のような婆さんも元気が出てくるわい。」
 「うふ、私はおばあちゃん達の活力剤になれてるのかしら?なれてたら嬉しいな♪」

 入居者からの評判もよく、仕事も出来る。
 非常に危険なので、厨房に立ち入らせることは出来ないが優秀であるのは確か。

 施設長は実はシャマルをパートではなく正規職員として雇おうかとまで考えている。


 実の所シャマルも此処に勤めるかどうかは別にして、闇の書の一件が片付いたら本格的に介護士の免許を取ろうかと考えていた。

 この仕事について直ぐに通信講座でホームヘルパー2級を取得したが、実際やってみてもっと本格的に学びたいと思ったのだ。
 更に其れとは別に医学的なことも日々勉強を重ねている。
 治癒魔法だけでは対応できない部分を、現代医学で補えないかと考えているらしい。

 実はヴォルケンリッターの中で一番将来を見据えているのがシャマルであった。



 「いやいや、ワシがあと60歳若かったら、シャマルちゃんに交際申し込んでいたわい。」
 「あら、嬉しい。お爺ちゃん若い頃はきっとハンサムだったでしょうから、残念だわ〜。」
 「ふぁっふぁっふぁ、上手いのぉシャマルちゃん!」
 「え〜?此れでも結構本気で言ってるんですよ?」

 シャマルの周りには常に笑顔が溢れていた。








 ――――――








 場所は移って、再びアースラ。


 「う〜ん、シャマルさんのデバイスはやっぱりバックアップ型で直接的な戦闘には不向きですね?」

 「あぁ、彼女の本分は仲間のサポートだからな。だが、ペンデュラム状態での動きの自由さは馬鹿にできない。
  その自由度を生かせる攻撃が出来るようにして、尚且つサポート能力の強化をした方がいいな。」

 「ですね。そうなると残り2人は…」

 「ヴィータとシグナムは、タイプこそ違うがどちらも戦闘に於いては不得手が存在しないからな。
  ヴィータは全体能力を強化しつつ、持ち味である『一撃必殺』を最大限に発揮できるようにするか。
  シグナムは最大の武器である接近戦を強化する意味で至近距離戦闘用の『双剣状態』を追加してみよう。」


 遊星とマリーによる騎士達のデバイス強化は着々と進んでいた。
 どうにもなのはとフェイトのデバイス同様『トンでもない』性能のデバイスが出来上がる気がしてならない。


 「今度僕の『S2U』も見てもらおうかな?」

 遊星の腕前に、クロノは自分のデバイスのメンテナンスもお願いしようかと考えていた。

 「いいんじゃないの〜?」
 「アイツならアンタに最適な調整をしてくれると思うよ。」

 本局の方に出向いていたリーゼ姉妹もアースラにやってきた。
 如何に情報収集のために走り回ってるとは言え、常に管理局上層部を監視しているわけではない。
 寧ろ、連中の目を欺く意味では、管理局での活動時間は出来るだけ短くし、地球かアースラに居た方が都合がいいのだ。


 「リーゼ、戻ってきたのか?」

 「師匠に対して随分な言い方だな?」

 「あ、あぁスマナイ。無事だったか。」

 「ま、連中は私達が監視してるとは思っても居ないだろうからね。っと、ほいクロ助、お父様からの預かり物。」

 ちょいとクロノをからかいつつ、ロッテのほうが何かを渡す。
 それはカードの様な物。

 「グレアム提督が?…此れはデバイス?」

 「その通り、闇の書に対する切り札『デュランダル』。あんたに渡してくれってさ。
  元々は闇の書を永久凍結させる目的で作ったもんだけど、アンタならそんな馬鹿げた事しないだろ?」

 「当たり前だ。何の罪も無い少女を永久に氷に閉じ込めることなんて出来るか!」

 真面目かつ、人一倍正義感が強く、其れでいて物事の本質を見極める目を持ったクロノにリーゼ姉妹は思わず笑顔がこぼれる。

 「?どうかしたか?」

 「いんや。」
 「いい弟子を持ったと思っただけさ。それにしても…」



 「アイゼンは推進力を強化すれば、更に性能が上がりますね!」
 「そうだな。レヴァンティンの双剣状態は左右で長さを変えた方が戦術の幅が広がるな。」



 アリアが視線を向けた先では、相変わらず熱心にデバイス強化を行っている遊星とマリー。

 「本気で何者なんだろうね遊星って。あの技術力、本局は間違いなく欲しがるよ。」

 改めて遊星の技術力と頭脳の優秀さを目の当たりにし、ゴドウィンが『出来るだけ遊星の事は伏せておくように』と言った意味が分かった。

 遊星ならば、独善的な上層部に協力等しないだろうが、だからと言って知ったら上層部が放って置く筈は無いだろうから。


 「そうそう、此れも渡しておくよ。」

 「?データか?」

 「そ。ただ、攻撃魔法を吸収させるだけじゃ効率が悪そうだからね。大きな魔力を持った魔導生物を幾つか調べてもらったんだ。
  調べてくれたのはスクライア族の男の子だけど、役には立ちそうだろ?」

 渡されたデータをS2Uで読み込み内容を確認する。

 確かに此処に記された魔導生物から魔力を蒐集できたら、書の完成は捗りそうだった。



 「遊星さん、いっそのことザフィーラさんのデバイスも作りません!?」
 「そう言えばザフィーラにだけデバイスが無かったな…格闘戦重視の防御型デバイスでも作ってみるか。」

 で、技術室内部ではザフィーラのデバイス作成フラグも発生していた。









 因みに…


 「リンディ、いい加減糖尿になるわよ?」

 「だって〜〜…」

 「だから苦いのが嫌なら日本茶飲むな。」


 アースラ内部の和室では、相変わらずのリンディがプレシアと沙羅にお叱りを受けていたのだった。







 平穏無事な日常風景。
 しかし、大きな嵐は着実に近付きつつあるのだった…

















  To Be Continued… 

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