小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――(今回も)とある次元世界。


 今日もまた、魔力蒐集の為に次元世界へと赴いたはやてと遊星達。
 本日のメンバーは、遊星、はやて、シャマル、なのは、アリアの5人。
 戦力的には申し分が無く、目的は楽に達成出来る筈だったのだが…

 「く…来てるか?」
 「見たくない!」

 只今絶賛逃走中!!
 目的とは全く別の現地生物に追い掛け回されていた。(はやては遊星のDホイールに乗っている。)

 「いや〜ホンマに存在してたんやな…リオレウスとリオレイア。」
 「「はやてちゃん、現実逃避しないで!!」」

 なのはとシャマルが突っ込む姿と言うのも新鮮味がある。

 しかし、はやてが言う事もあながち間違いではない。
 今、彼等を追いかけているのは、巨大な2匹のドラゴンだったのだから。









  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス18
 『幻神獣との邂逅』









 追うドラゴン、逃げる遊星達。
 そもそも、何故逃げるのか?

 それは、遊星とはやてが他の生物から魔力を頂戴する際に『ターゲット以外の生き物には手を出さない。』と決めたから。
 ヴォルケンズは勿論其れには従うし、なのはやフェイトも無用な戦いは出来るだけしたくは無い。
 管理局メンバーも生態系の保全の意味合いでもその意見には賛成している。

 故に、こんな逃走劇が展開されている訳だが…

 「Gyaooooooooo!」
 「Baoooooooooo!」

 正気を失っているのか、このドラゴン攻撃が容赦無い。
 吐き出される炎のブレスは、喰らえば丸焼きは間違いない。

 「くず鉄のかかし!」
 「ホイールプロテクション!」
 「風の護盾!」

 繰り出される攻撃を防ぎながら、何とか振り切ろうとするが中々そうは行かないようだ。
 如何せん、でかい図体の癖に動きまで早い。

 伊達に生態系の上位に位地している訳ではない。

 「く、このままじゃジリ貧だな…」
 「でもなんで?確かに飛竜が居る事は分かってたけど、此処まで凶暴な奴は居なかった筈なのに…?」

 如何に遊星の防御が鉄壁であろうとも、このままでは埒が明かない。
 下手をすれば、目的達成の前にゲームオーバーだ。

 その一方で、アリアは2体の竜の異常な凶暴性に疑問を抱いていた。
 時期的には繁殖期ではないし、自分達が縄張りに入った訳でもない。

 この次元世界に来た直後、突然襲い掛かってきたのだ。

 「えぇい、埒が明かない!なのはちゃん、誘導弾。ただし、あくまで注意をそむける目的で!」
 「分かりましたアリアさん!」

 逃げ続けるのは限界と判断し、アリアはなのはに誘導弾で攻撃するように言う。
 ただし、直撃させずに意識を誘導弾に向ける意味でだ。

 この辺の判断と状況整理の能力は、流石はクロノの師匠と言ったところだ。

 「スティンガー!」
 「アクセルシュート!」

 アリアとなのはが放った誘導弾は、2体の竜の周囲を旋回するように飛び回る。


 少しは注意がそれたか…と思ったが…


 「GAAAAAAAAA!」
 「Gyooooooooo!」

 反って怒らせただけであった。

 「え〜!?なんでなんで!!?」

 「目的はあくまで俺達と言うわけか?仕方ない…来い『マックス・ウォリアー』!」
 マックス・ウォリアー:ATK1800


 遊星もこのままではどうしようもないと考え、ついにモンスターを召喚。

 「しゃあないな。練習がてらやってみよか?」
 「無理はダメよ、はやてちゃん?」
 「無理なんてせぇへんて。大丈夫やでシャマル。」

 はやても、今までに闇の書に蒐集させた魔力、魔法を使ってみようと試みる。

 勿論騎士のシャマルは心配するが、無理はしないと約束。
 シャマル自身も、主たるはやてが決めたことにムザムザ異を唱えはしない。
 すべき事ははやてを守る事なのだから。

 「悪いが少し痛い目を見てもらうぞ!行け、マックス・ウォリアー!『スイフト・ラッシュ』!」
 マックス・ウォリアー:ATK1800→2200


 「次元に消えよ、『ディメンジョン・シュート』!」

 マックス・ウォリアーが凄まじい速さで獲物を何度も繰り出し、はやても覚えたばかりの魔法を使って攻撃。
 それは見事に2体の竜を打ち据え、少しばかり怯ませる。

 「Ga?」
 「Gyw?」

 が、決定打には至らない。
 それどころか…

 「「Gwhooooooon!!」」

 闘争本能に完璧に火を点ける結果になってしまった。

 「強化されたマックス・ウォリアーの攻撃も通じないか。」
 「『アサルト・ソニック・バーン』の方が良かったかなぁ?」
 「それは強力だけど、今のはやてちゃんじゃ、1回撃ったら疲れてバタンよ〜?」

 状況としては更に拙い事になったのだが、遊星がいるせいか八神家は割りと冷静沈着。

 しかし、誰がどんなに冷静だろうと野獣の本能が全開になった竜にはそんなもの関係ない。
 全身全霊を込めたブレスを発さんと大きく息を吸い込む。

 「!!レイジングハート!」
 「All right.」

 其れを見たなのはは、即座に迎撃の為に砲撃魔法を展開しようとし、アリアもまた迎撃の為の魔法を準備。
 遊星とシャマルは攻撃を防御する準備を整える。

 だが、其れは必要なかった。

 『下がれ人間達よ。』

 突然威厳に満ち溢れた声が聞こえてきたかと思った瞬間、


 ――ガシャァァァン!!!


 強烈な雷が2体の竜に直撃した。
 その威力は凄まじく、死んではいないものの大ダメージは必須で戦闘不能は確実だ。

 『去れ、飛竜達よ。此処はお前達の領域ではない。』

 再びの声。
 同時にその声の主が姿を現す。

 「「「「「!!!!」」」」」

 現われたその姿に、遊星でさえも言葉を失って見入ってしまった。
 馬の様な体躯に頭部の角、此れだけを見れば誰もが『一角獣』『ユニコーン』と答えるだろう。

 だが、その全身は銀の鱗で覆われ、頭部の鬣と首から尾まで通っている毛は蒼。
 大きさは競走馬よりも2回りも大きく、見るものを圧倒。

 何よりその全身から溢れ出る、威厳はさながら『神』の如し。

 『…この者達はお前達の敵ではない。正気に戻ったのならば、主等の居場所に帰るが良い。』

 其れに呼応するように、2体の竜は頭を持ち上げる。
 その瞳に先程のような怒りや闘争心は映っていない。

 先程の雷で正気に戻ったらしい。
 だが、矢張りダメージは大きく動けそうには無い。

 『…加減を間違えたか?』

 「大丈夫よ。私に任せて…静かなる風よ、癒しの恵みを運んで。」

 やりすぎたかと心配する一角獣モドキに、シャマルが心配ないと前に出て治癒魔法『静かなる癒し』で2体の竜を回復させる。

 本来ならば、自分達を襲ってきた者を回復してやる義理は無い。
 だが、このキリンもどきの言った事から察するに、如何やら怒りで我を忘れた状態だったらしい。
 ならば、正気を取り戻せば危険は無いし、元々彼等2体と戦いに来たわけではない。

 元の場所に戻れるように回復してやるのは当然とシャマルは考えたのだ。

 「はい、もう大丈夫。」


 「グルル…」
 「グウゥゥ…」

 回復した2体の竜は、低く鳴くと目を細めてシャマルを見て、そして飛び立って行った。
 元々はそれほど好戦的な種ではなかったらしい。

 「見事だな治癒騎士。」
 「流石はシャマルだ。」

 一方でシャマルの手際の良さにはアリアと遊星も感心。
 なのははその高い治癒技術に驚いていた。


 そんな中、はやては自分達の窮地を救った一角獣モドキをジッと見つめている。
 とても真剣な眼差しで。

 『…娘よ、我が如何かしたか?』

 「間違ってたら悪いけど、…若しかして『麒麟』と違うかな?」

 「キリンさん?」

 「ちゃうでなのはちゃん。動物園におるキリンよのうて、御伽噺や神話に出てくる幻獣の『麒麟』や。
  分かりやすく言うならな、ビールのラベルに描いてあるアレが『麒麟』。ちょお違うけど、それなら見たことあるやろ?」

 「あ…うん!それなら分かるの。」

 ナチュラルにボケるなのはに鋭く突っ込みつつも説明する。
 実に的確な説明でなのはも分かったらしい。

 ジッと見ていたのは、どうやら図書館で読んだ本に出てきた『麒麟』と目の前の生き物が合致するからだったようだ。

 「最初はユニコーンかと思たんやけど、全身を覆う龍みたいな鱗にその鬣、それに雷を操る力は『麒麟』以外におらへんやろ?」

 『ほう…博識だな娘よ。お前のような幼い子供が、我を知っているとは正直に驚いたぞ?』

 「図書館で読んだ御伽噺に出てきてな。インパクトが強かったから覚えてたんや。
  神の使いにして、全ての生き物の中で最も神に近いとされる幻神獣やからな。」

 ニッコリ笑い、遊星に麒麟に近づいてくれるように頼む。


 遊星も、窮地を救ってくれた礼を言うつもりだったので、Dホイールを押して近付く。

 「まさか実在しとるとは思わなかったわ。お会いできて光栄です。」
 「さっきは助かった。ありがとう。」

 『大した事ではない。奴等に無用な殺戮をさせたくなかっただけよ。
  娘、我もお前の様な純粋な心を持つ者と出会えたのは幸運に思うぞ?無論、お前の仲間達ともだが…。
  さて…人間達よ、主等は何故此処に居るのだ?主等はこの世界の住人ではあるまい?』

 挨拶もそこそこに、麒麟は遊星達が何故此処に居るのかを問う。
 幻神獣の力なのか、そもそも獣の持つ感覚の鋭さかは分からないが、遊星達がこの世界の住人ではない事は判ったらしい。

 「あぁ、俺達はある目的の為に此処に来たんだ。」

 『ほう?良ければ話してみよ。』

 「実はな…」











 ――皆で麒麟に説明中











 『成程な。その娘が持つ魔導書とやらの呪いを断ち切り、正常に戻すの為に魔力を欲している…か。
  しかも、さらに強大な敵まで待ち受けていると…主等も中々激しい生き方をしているな。』

 感心したように呟く。
 事実、麒麟は非常に長命…不死と言っても過言ではないほどの寿命を誇る。
 故に様々な人間を見てきたが、遊星もはやてもそしてなのはも今まで見てきたのとは全く違うタイプの人間だった。

 『しかし、話を聞くと随分困難なようだが出来るのか?失敗すれば只では済まぬだろう?』

 「出来るかどうかはあんまし問題や無い。」
 「やるかどうか。それで、やると決めたら必ずやるの!」
 「俺達は、呪いを断ち切りはやてを救う。書も元に戻すし地縛神も倒す。仲間との絆があればそれは無限の力になる。」

 麒麟の問いかけにも力強く返す。
 一切の迷いは無い。

 「若いって良いよね…」
 「あなたも若い方じゃないの?」
 「いんや、こんな見た目だけど私もロッテも色々と年寄りだからね…というかお前も似たようなものだろ治癒騎士。」
 「私はまだまだ若いわよ?総合起動時間は10年にも満たないですもの。」
 「実年齢1000歳近いけどね。」
 「言わないで〜〜!!」

 その端では使い魔と守護騎士による漫才が展開されていた。…不毛である。

 『うむ、ますます面白い。目的とした者以外は狙わぬという考えも気に入った。付いて来い。主等が目的としている奴の所まで案内してやろう。』

 「良いのか?」

 『うむ。奴の種族は本来ならばそんなに害のある種ではないのだが、彼奴は変異体でな…知性が吹き飛んでいるのだ。
  あるのは本能的な食欲と暴力のみ。我も何度かその暴虐を止めに入ったが、仕留めるには至らなかった。
  主等がそ奴を倒すという事になんら問題は無い。それにリンカーコアとやらを抜き取れば力も弱くなり暴虐の限りを尽くす事も無くなるだろう。』

 冷静な口調で、遊星達の今回のターゲットについて話す。
 更に、麒麟の超感覚なら場所の特定は容易との事。
 おまけに自分に襲い掛かってくる者など早々居ないと言う、つまり目的地までさっきの竜の様な事態には陥らずに済むと言うことだ。

 「ほな、頼みます。」

 座った状態だが、はやては丁寧に頭を下げる。

 「あぁ、すまないな。」
 「お願いします。」

 遊星となのはもそれにならい、

 「よろしくね♪」
 「たのむよ。」

 シャマルとアリアも同様に頭を下げる。

 『うむ、こっちだ。』








 ――――――








 『そろそろ着くぞ。戦う準備をしておくと良い。』

 移動を始めて1時間。
 別に歩いて移動した訳では無いので疲労は皆無。(遊星とはやてはDホイール。なのは、シャマル、アリアは飛行で)

 目的の場所が近付き、一行は戦闘態勢を整える。

 『む?』

 「どうかしたか?」

 『…奴の気配が無い。いや、しかし臭いはする…。』

 目的地目前で、麒麟がなにやら妙な事に気が付いたようだ。
 其れと同時に、



 ――キュゥゥゥン…



 「!!痣が…!この感覚は…!!」

 遊星のドラゴンヘッドが輝きだし、何かを伝える。
 そしてその痣の感覚に遊星は覚えがあった……悪い意味で。

 「遊星さん!?」
 「如何した遊星!?」

 遊星の様子になのはとアリアは何事かと問う。

 「近くにダークシグナーが居る。」

 「「「「!!!!」」」」

 返って来たのはトンでもない答えだった。

 『主等の敵だったか?まさか、奴の気配が感じないのは…』
 「ダークシグナーに討ち取られた可能性がある。急ぐぞ皆!!」

 Dホイールのエンジンを吹かし、一気に加速する。
 アリアとシャマルも其れに続き、機動力の低いなのはは麒麟に乗せて貰って移動。





 そして辿り着いた場所では…


 「ぬははははは…素晴らしい魔力の量と質だ!此れならば地縛神復活のエネルギーとして申し分ない!」

 予想通り、ダークシグナーがターゲットであるモンスターを討ち取り、魔力を吸収していた。
 横たわる巨大な恐竜のような生き物は既に事切れているだろう…

 「…遅かったな不動遊星。残念だがコイツの魔力は私が頂いた。」

 「矢張りお前だったかダークシグナー!」

 叫ぶが、そこで飛び掛ったりはしない。
 あくまで冷静に状況を分析しようとする。

 「…お前は一体何者なんだ?俺達がゴドウィンを倒したあと、ダークシグナーは解放されルドガーは冥界に消えた。
  其れなのに、何故今またお前のようなダークシグナーが現われる?しかも異なる次元の世界に。」

 最初に戦った時から抱いていた疑問をぶつける。
 ゴドウィンから聞いた話を考えてみても、ダークシグナーが現われた事が分からない。

 「何者…か。そう言えばまだ顔は曝していなかったな。私だよ、不動遊星。」

 ダークシグナーはローブのフードを捲くりその顔を顕にする。

 「…ハゲ?」
 「はやてちゃん!?」

 「何て禍々しいの…」
 「こいつは…やばそうだね。」
 『邪悪な気配をひしひしと感じるな。』

 その顔を見て反応はそれぞれ。
 はやての感想はある意味で最も的を射ているとも言える。


 「ふふふ、驚いたかな?」

 「…成程、確かに消去法で行けばお前しかいなかったな。ルドガーと同様に冥界に消えたかと思っていたが…」

 Dホイールをデバイス状態で再起動し、遊星は男を睨みつける。

 「生きていたのか……ディマク!」


















  To Be Continued… 

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