小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 対峙するプレシアとプレシア(闇の欠片)。
 黒いローブ型のバリアジャケットを身に纏ったその姿はどちらも『大魔導師』『魔女』と言うに相応しい。

 本物のプレシアの方は露出が殆ど無いデザインと言う違いはあるが。


 「…取り敢えず、初めて会ったときに沙羅が思い切り引いてた理由は理解できたわ。」

 「貴女は誰?アリシアは何処なの?」

 会話は全く持って噛合いそうに無い。
 ただ、其れでも一言。

 「…此れだけは言っておくわ。」

 「……?」

 「少しは自分の歳を考えた格好をしなさい!もう40よ!?」


 次元世界屈指の大魔導師は、過去の自分にちょいと幻滅していた。













  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス34
 『闇の欠片を粉砕せよ』











 「一体何を言っているの?」

 「言われても解らないでしょうね。えぇ、解る筈がないわ、貴女の頭の中はアリシアの事で一杯でしょうから。」

 「アリシアを知っているの?」

 アリシアの名を聞いた途端、闇の欠片プレシアの雰囲気が鋭く剣呑なものに変わる。
 其れは言うならば抜き身の日本刀の様な危険な香りのするものだ。

 「過去の自分とは言え中々に凄まじいわ…」

 「言いなさい、アリシアは何処?私にはあの子が必要なのよ…!」

 殺気を撒き散らしながら声を荒げる闇の欠片たる自分に溜息。
 だが、其れでも慌てずに戦闘体勢だけは整え、穏やかに語りかける。

 「安心しなさい。アリシアは何処にも行かない。貴女の傍に居る。
  貴女は…そう、悪い夢を見ているだけ。目を覚ませば愛する娘が笑いかけてくれる筈よ?」

 「…いい加減な事を言わないで!私は…私は取り戻すのよあの日々を全て!!」

 しかし其れも効果なし。
 痺れを切らしたように、闇の欠片は襲ってくる。

 が、病気であり精神に異常をきたしてた頃のプレシアと、健康体になり精神状態も普通になったプレシアでは大きな差がある。
 加えて今のプレシアには遊星が作った『カートリッジシステム』がある。
 という事はだ、

 「仕方が無いわ…捕らえなさい、フィールドバインダー!」

 「!!!」

 広域のバインドで拘束。
 既に罠は張り巡らされていたのだ。

 「さぁ、もう目を覚ます時よ。撃ち抜きなさい、サンダー…レェェェェェイジ!!」



 ――ドガシャァァァァン!



 一撃必殺。
 闇の欠片に触れさせる事もさせずに最大攻撃で撃墜だ。

 「こんなところで…」

 まともに喰らった闇の欠片プレシアは光の粒になって消えていく。
 欠片が砕けたのだ。

 「アリシア…私の…」


 ――シュゥゥゥ…


 完全に消えた。

 「…もし、沙羅と会うことが無かったら私もあのままだったのかしらね…」


 ――ヴィン


 『母さん、大丈夫?』
 『お母さんの近くで物凄く大きな魔力反応があったよ!?』

 過去を振り返る形になったプレシアにフェイトとアリシアから通信が。
 2人とも自分の母親の近くで発生した巨大な魔力反応に、心配になったのだ。

 「大丈夫よ2人とも。たった今、闇の欠片を眠らせただけだから。
  そう言うフェイトは大丈夫?アリシアもくれぐれも無理だけはしないでね?」

 『私は、大丈夫。』
 『無理しちゃダメなのはお母さんでしょ?』

 「ふふ、そうね。無理をしないで頑張るわ。……まだ闇の欠片は現れるわ、気を抜かないでね?」

 『…はい。』
 『うん!』

 愛する娘にそう告げ、通信終了。
 新たな闇の欠片に対処すべくプレシアも動く。

 「アリシアはバックスとして、フェイトはアタッカーとして成長しているようね。」

 己の過去を打ち破ったその顔は、何処か晴れやかであった。








 ――――――








 他の場所でも闇の欠片との戦闘は行われている。

 「スティンガー!スティンガー!スティンガー!スティンガー!スティンガー!スティンガー!」

 此方では最年少執務官が、プレシア同様に己自身と戦闘中。
 同じ攻撃を繰り返してくる欠片に対し…

 「僕はこんなにワンパターンな攻撃ばかりしてるのか?」

 少々、否可也プライドが傷ついている様子。
 だからといって冷静さを欠かないのは素晴らしいと評価すべきだろう。

 「いや、悩んでも仕方ない。先ずはアレを倒す、デュランダル!」
 「OK Boss.」

 直ぐに頭を切り替え、目の前の戦闘に集中。
 と、言うよりもワンパターンな攻撃を捌きながら、既に決着の為の準備は整っていた。

 「ストラグルバインド×5!」

 「えっ?うわぁっぁ!!」

 密かに設置しておいた不可視バインドの五重掛け。
 此れは抜け出せるものではない。

 「頭が冷えれば目も覚める!…此れで終わりだ、凍てつけ!」
 「Eternal Coffin.」


 ――カッキーン!


 絶対零度の一撃が闇の欠片を直撃。
 この一撃で、欠片は霧散し消滅した。

 あまりにも地力に違いが有りすぎたとしか言いようが無い戦い……と呼んでいいのかすら迷うものだ。

 「待て待て待て!幾らなんでも弱すぎる!僕はそんなに弱いのか!?」

 そう思うのも無理も無いほどの圧倒的な差。
 本当はクロノの力が相当に強くなっているだけなのだが、矢張り自分自身というのは何かと面倒だ。


 ――フィン…


 『え〜っと…クロノ君大丈夫?』

 「エイミィか…如何した?」

 『いや、リインフォースさんから通信があって、『闇の欠片』って強さに個体差があってまちまちなんだって。
  本物同様に物凄く強い場合も有れば、劣化コピーとしか言いようが無いほどに弱い場合もあるって。』

 「そうなのか?…と言う事は今僕が倒したのは弱い欠片だったと言う事か?」

 エイミィからの通信で欠片の強さのカラクリを聞いて少し安心したようだ。

 『そうだよ。大丈夫、クロノ君は強いから。士官学校時代から一緒の私が言うんだから間違いなし!』

 「…そうか。ん、じゃあ引き続き、闇の欠片の処理に当たる。バックアップは頼む。」

 『任せなさい!』

 付き合いが長い故にやり取りのテンポも良い。
 お互いに相手の事を分っているからだろう。

 「エイミィ…ありがとう。」

 『いえいえ…』








 ――――――








 「…うむ、欠片と言えども遊星の仲間という事か。本物には大きく劣るのだろうが…」

 此方ではザフィーラが遊星の記憶から再生された欠片と戦っていた。
 その欠片は…

 「キングのデュエルとはエンターテイメントでなくてはならない!見せてやろう、キングのデュエルを!
  レベル5のバイス・ドラゴンに、レベル3のダーク・リゾネーターをチューニング!
  王者の鼓動、今此処に列を成す。天地鳴動の力を見るが良い!シンクロ召喚、我が魂『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」
 「バオォォォォォォォ!!」
 レッド・デーモンズ・ドラゴン:ATK3000


 そう、遊星のライバルであるジャック・アトラス。
 どうやら『キング』としてシティに君臨していた時代のものが再生されているようだ。

 相変わらずのパワーデッキだが『魅せる』事も念頭に入れているのかあまり強くない。
 既にライフは3000を切っている状態だ。

 「ピンチを演出し、其処から華麗に勝ってこそのキング!行くぞレッド・デーモンズよ!『灼熱のクリムゾン・ヘルフレア』!」


 ――ゴォォォォォ


 灼熱の炎がザフィーラを襲うが、其処は『盾の守護獣』、此れくらいならば対処は難しくない。

 「其れは喰らわぬ!烈鋼牙ぁ!!」

 その炎を殴り返し、逆にレッド・デーモンズを粉砕!

 「うおぉぉぉぉぉ!!!馬鹿なぁぁ!!」
 闇の欠片 ジャック:LP3000→0


 そして此れはザフィーラの攻撃でレッド・デーモンズが破壊された事になるのでこの世界のルールに則りライフは0に。

 「ミラーフォースだとぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 「…意味が分らんな。」

 謎の叫びと共に欠片消滅。
 ザフィーラの防御を貫く事は出来なかった。


 ――ヴァン


 『ザフィーラさん。』

 「む、お前か。高町なのは。」

 『あの、今そっちで魔力反応が…』

 「闇の欠片だ。今しがた眠らせた。」

 『凄いです!私も向かおうと思ってたのに!』

 「悪い事をしたとは思わんぞ?」

 通信相手はなのは。
 どうも、同じ場所に向かっていたらしいが、ザフィーラのほうが到着が早かったらしい。

 『じゃあ、私は別の場所に行きますね。』

 「うむ…時に高町なのは、私に敬語や敬称は止めてくれないか?守護獣と言う立場ゆえ、そう言うのは少々戸惑う。」

 『え〜?アルフさ……アルフもそう言うんで…だけど良いの?』

 「そちらの方が、気が楽なのだ。」

 『う〜ん…分りました、じゃなくて分った。その代わりザフィーラさ…ザフィーラも私の事『なのは』って呼んでね?』

 「……善処しよう。」

 守護獣と言う立場も、人知れず難しいものがあるらしい。
 戦闘が起こる場所でもこんな会話が出来るのは、意外と余裕がある証拠なのかもしれない。







 兎に角、特に苦戦する事も無く(唯一の苦戦は遊星と闇の欠片の遊戯のデュエルくらい)一行は闇の欠片を掃討して行った。


 あるところでは…


 「狙い撃ちだ砲撃馬鹿。参ったか!」

 「ち、このロリ騎士が…」

 「煩せーぞ、凶悪デバイス!てか、何でお前そんなになってんだよ!何でミッド語じゃなくて日本語喋ってんだよ!?」

 「知りませんよそんなこと。」

 「あう、レイジングハートが不良になっちゃったの…」

 闇の欠片化でデバイスが凶悪化してたり、







 又あるところでは、


 「はっ、バーカ、お前みたいなガキが闇の書の主な訳ねーだろ!」

 「ほう…えぇ度胸しとるやないのヴィータ…」

 「あの、主アレは一応闇の欠片ですので…」

 思わぬ暴言で夜天の主がキレ掛けたり…







 更にあるところでは…


 「………ふふ。」


 ――ゾクゥ…!
 「しゃ、シャマル怖い…本物と違って言いようが無いほど怖い…!」

 「ふぇ、フェイト落ち着いて!」

 性格が変わりすぎてびびられたり、




 したけれども、順調に欠片は潰されていった。


 此方でも…



 「頼むぞ『スターダスト・ドラゴン』『シューティング・スター・ドラゴン』『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』!」

 遊星が限界突破の星龍3体召喚で闇の欠片ディバインを完全粉砕!
 全く相手ではなかった。

 「だいぶ倒したが…まだ現れるのか?」

 既に相当な数の闇の欠片を処理した。
 だが、アースラからの通信では一行に結界の発生が衰える気配は無いらしい。

 「闇の欠片を倒すだけじゃダメなのか?」

 現時点で、倒した闇の欠片は1人頭10体前後。
 合計では100体近い欠片を砕いた事になるのだが、出現は今だ止まらない。


 ――ヴォン


 『遊星さん、聞こえますか?』
 『聞こえる遊星?』

 「なのはとフェイトか、如何した?」

 『今ね、はやてちゃんから連絡があったの。』
 『一度全員集まった方が良いんじゃないかって言うんだ。』

 なのはとフェイトの言う事に考える。
 確かに闇の欠片を砕くだけでは根本解決になっていない現状では、一度集まって対策を練り直すのも手だろう。

 「そうだな、一度集まるか…ん?」


 ――キィィィン…!


 「此れは…結界!?其れも、今までよりも強い!」

 其れに賛成しようとした矢先に再び結界。
 しかも、此れまで発生した結界とは比べ物にならないほど強い。

 『にゃ、こっちも!』

 『私のほうも…これは何て強さ…』

 更に、なのはとフェイトの方でも結界が発生した様子。

 「気をつけろ2人とも、今までとは違うぞ。」

 『うん!』
 『物凄い力を感じる…!』

 一気に警戒レベルが上がる。





 そして、



 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴ…



 凄まじい力の気配と共に結果以内に現れる『何か』。
 それは徐々に形を露にしていく。


 『えぇ!?』
 『そんな…』
 「こんな事があるのか!?…お前は…!」

 場所こそ異なるが、遊星、なのは、フェイトの3人の前に現れた者。



 其れは欠片など比べ物にならない闇の力を秘めた







 ――3人に酷似した存在だった。



















   To Be Continued… 



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