小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 遊星、なのは、フェイトの3人の前に現れた謎の存在。
 闇の欠片とは違い、その容姿は3人に酷似していながらも何処か違う。

 何よりもその身から発せられる『闇の気配』は闇の欠片のソレとはまるで比べ物にならない。


 「………」
 『………』
 『………』

 故に3人の警戒レベルが一気に上昇するは道理。
 謎の存在達も此方を伺うようにしている。


 未知ゆえに下手に動く事は危険――


 微妙な膠着状態が出来上がっていた。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス35
 『構成素体〜星と理〜』











 「貴女は…?」

 「はじめまして…と言うべきでしょうか?私は闇の書の防衛プログラムの構成素体が一基。
  『理』を司るマテリアル『星光の殲滅者』と申します。以後お見知りおきを…」

 とは言え、何時までも様子見では埒が明かない。

 なので意を決して話しかけてみると、意外なほどに丁寧に返してきた。
 欠片達とは違って独自の人格が形成されているようだ。

 だからと言っても解らない事は多い。
 ただ、一つだけ聞き逃せない事が…

 「マテリアル…?」

 そう、闇の書の防衛プログラム――ナハトヴァールを構成していた一基だと言う事がだ。
 アレは間違い無く砕いたはずなのだから、普通に考えればありえないことだ。

 「はい。確かにナハトは貴女方の手で砕かれました。ですが書に元々備わっていた防衛プログラムと言うものが存在します。
  管制ユニットの切り離しで私達マテリアルはバグとして処理されたはずだったのですが…どうやら生き残ったようです。
  そして、無礼かとは思いましたが外に出るに当たって貴女の姿を摸させて頂きましたよタカマチナノハ。」

 「ソレは良いんだけど…それじゃあ貴方達の目的は闇の書を復活させる事なの?」

 「書の復活、そして『砕け得ぬ闇』を手にすることが我等の目的にして悲願。何処の誰にも邪魔はさせません。」

 「…!」

 予想通り、そしてそれ以上に危険な感じがする『砕け得ぬ闇』と言う言葉。
 なのはもレイジングハートを握る手に力を篭め、身構える。

 「そんなことはさせないの。闇の書の復活はさせない、此処で貴女を止めるから!」

 レイジングハートを向けて宣言すれば、

 「矢張り、我等の悲願達成の最大の障害はオリジナルたる貴女方の存在。
  最大の障害ならば最優先で排除するは道理、此処は押し通らせていただきます。」

 星光もまた自身のデバイスを向け静かに宣言。
 戦闘は避けられない。


 「レイジングハート。」
 「All right.My Master.Buster Cannon Mode.」

 レイジングハートを射撃・砲撃特化の『バスターカノンモード』に変形させ準備完了。


 「安らかなる永遠を、過たず貴女に送りましょう…」

 星光もデバイスを変形させ臨戦態勢。

 「…戦う前に1つ良いかな?」

 「何でしょう?」

 「貴女のデバイス、名前は何て言うの?」

 「我が愛機の名は『ルシフェリオン』。私共々お見知りおきを…」

 「ルシフェリオン…いい名前だね。」

 「お褒めに預かり、光栄です。」


 しばし静寂。



 そして、


 「行くよ…!」

 「参ります…。」


 「アクセル…シューーーート!!」
 「Accel Shooter.」


 「パイロシューター!」

 同時に放った、誘導弾の弾幕を合図に戦闘開始。

 無数の誘導弾がぶつかり合い煙幕が発生。
 ソレが晴れるのも待たずに、

 「ショット!」

 「殲滅!」

 まるで煙幕を払うように、直射型の連射砲撃の撃ち合い。
 星光の殲滅者と名乗ったマテリアルと言う存在――如何やら容姿のみならず能力もなのはと瓜二つのようだ。

 交錯する桜色の魔力は甲乙付けがたい。


 「砲撃戦は互角…レイジングハート!」
 「All right.A・C・S,Drive ignition.」

 遠距離戦では埒が明かないと判断したなのはは即座にレイジングハートに命じて近距離専用の形態を執る。
 この辺りの判断力は、齢9歳にして既に歴戦の強者にも勝るとも劣らない部分がある。

 魔力を炸裂させた推進力で一気に加速し、突撃攻撃を繰り出す。


 「クロスレンジ?…なぜ…!」

 ソレに対して虚を衝かれたのは星光だ。
 遠距離戦から一転しての、カウンターとも言える突撃攻撃に反応しきれず、辛うじてバリアを張って防ぐ。

 そう、虚を衝かれたのだ。
 実は星光の中に『クロスレンジで戦うなのは』の戦術は存在しない。

 何故か?

 其れは地縛神事件に於ける闇の書の魔力蒐集及び最終決戦時において、なのはが只の1度も『クロスレンジ』戦闘を行わなかったからだ。

 「くっ…この…!」

 「っ…きゃぁ!!」
 「Protection.」

 とは言え、クロスレンジはなのはの土俵ではない。
 攻撃終了の僅かな隙を狙われ、至近距離での砲撃を受ける――レイジングハートが即座にプロテクションを使ってダメージは皆無だったが。

 「ブラスト…ファイアー!」

 「ディバイン…バスター!」
 「Divine Buster.」


 追撃の直射砲は、直射砲で相殺。
 どちらも一歩も退かない。

 となれば…


 「「フルドライブ!!」」


 互いに全開フルドライブ!
 なのはも星光も桜色の魔力を迸らせ、その力を引き出す。

 「アクセルシューター・ドライブショット!ブレイク…シューーーート!」

 「パイロシューター・イグニスショット…ファイヤー!」

 先程とは比べ物にならないほどの弾幕合戦。
 その煙幕を突撃するはなのは。

 再度クロスレンジの一撃で流れを掴もうとする。

 「させません!」

 だが、星光も然る者。
 今度は見切り、カウンターでの一撃を叩き込む。

 「かっ…!負けない!」

 其れを喰らいながらも、なのはも連射式の直射魔法を撃ち込む。
 完全に互角。


 「ハイペリオンスマッシャー!!」

 「ビースデストラクション!!」

 フルドライブ状態での砲撃も略互角。

 かち合う砲撃は臨界点を向かえ大爆発!


 「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 「く…うあぁぁぁぁ!!」

 その爆風に吹き飛ばされ2人とも地面に強かに身体を打ち付ける。
 半端なダメージではない。

 互いに全力。

 「はぁ、はぁ、はぁ…つ、強いね…」

 「貴女…こそ…流石は我がオリジナル、はぁ、はぁ…見事なものです。」

 故に限界も早い。
 互いに息は切れている。

 あまり長い時間を戦えないのは明白だ。

 更に、互いに出せる技は略出し尽くした。
 この状態では、幾ら技を繰り出したとて決定打にはならないだろう。










 たった1つ、最大の一撃を除いては。









 「レイジングハート…」
 「All right.My Master.」

 なのはは立ち上がるとゆっくりと上昇し、ある程度の高さまで到達すると魔力の収集を開始。

 「…真っ向勝負…望む所です…!」

 星光もなのはの意図を理解し、自らも上昇し魔力を収集。


 「此れがきっと最後の一撃…行くよ!」

 「解っています。我が魔導の全てをかけて!」

 収集途中で奇襲を掛けるなどの無粋な真似はしない。
 互いにぶつけるべきは最強の一撃。

 究極の超必殺技――集束砲。


 2人に魔力が集束し、巨大な桜色の球体が出来上がる。


 「最大出力!此れが私の全力全開!!」
 「Starlight Breaker.」


 「集え明星、全てを焼き消す焔となれ!」


 集めた魔力は臨界点突破。
 その一撃の威力は想像すら出来そうに無い。

 「スターライト…」

 「ルシフェリオン…」



 「「ブレイカーーーー!!!!」」



 ――ドォォォォォォォォォォン!!



 放たれた大規模集束砲。
 其れは2人の間合いの丁度中央でぶつかり合い、激しくスパークする。

 「く…あぁぁぁぁっぁぁ!!」

 「ん…はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 互いに負けんと更に魔力を注ぎ込む。
 正に互角。

 魔力が尽きるまで戦いは終わらないのか?

 否、其れはない。


 互角の戦い。
 集束砲は互いの切り札。

 だが、なのはには更なる一手が残っていた。

 「レイジングハート!!」
 「All right.Excellion Mode Drive ignition.」


 「!!!」

 この土壇場でなのはの姿が変化する。
 バリアジャケットのボディ部分が黒くなり、スカートのラインも変化し魔力が更に強くなる。
 その増幅した魔力が飽和状態になり火花放電がなのはの周囲に起きている。


 ――エクセリオンモード

 地縛神事件の後でなのはとレイジングハートが編み出したフルドライブの第2形態。
 本来は使用者の負担軽減のために取り付けられている小型モーメントの力までも強化に回した状態だ。

 其れは言うならセーフティを外し暴走寸前にまで強化した状態。
 負担はダイレクトに使用者とデバイスを直撃する為乱用は出来ないが能力倍加は通常のフルドライブの更に倍!
 使用後は一切の戦闘行為が出来なくなる、正に『切り札中の切り札』だ。

 「いっ…けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 その力は凄まじく、拮抗状態は一気に崩れた。

 「そんな…!」

 強化されたなのはの集束砲は、星光の其れを掻き消し、飲み込み迫る。
 攻撃中故に星光は避けられない。

 いや、この超大規模集束砲撃の前には回避は無意味。
 圧倒的な破壊力の余波で、交わしても大ダメージは免れないのだ。

 「まさか、そんな方法が……く…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 強烈な砲撃に呑まれそのまま上空から地面に叩きつけられる。



 勝負ありだ。

 「はぁ、はぁ、はぁ…く…やった…」

 とは言え勝ったなのはもボロボロ。
 ゆっくりと地面に降り立つ。

 もう戦闘行為は不可能だろう。

 「だ、大丈夫…?」

 「大丈夫なはずは無いでしょう…お見事、完敗です。ですが心滾る良き戦いでした。」

 「…そうだね…」

 全力でぶつかったからだろう、2人とも表情は晴れやかだ。


 ――シュゥゥゥ…


 「どうやら此処までのようです。」

 「あ…」

 星光の身体が光の粒になり、少しずつ消えていく。
 なのはに負け、存在が維持できなくなったのだろう。

 「悲願の成就はなりませんでしたか……ですが、貴女のような強い戦士と戦えたことは幸運でした。」

 「…其れで良いの?」

 「構成素体は私一基ではありません。或いは他の誰かがとも思いますが…もし叶うのであれば何時か又貴女と戦いたいものです。」

 「其れは、私もかな。…そんな事は起きないほうが良いのは解ってるんだけど…」

 消え行く星光になのはも言う。
 なのはにとってもこの戦いは『闇の書復活阻止』以上の意味のあるものだったようだ。

 「でしょうね。ですが、私と貴女が再び戦うそのときまで、貴女の歩む道が勝利で彩られる事を祈っていますよ…
  何時か又会えると信じ、今この時は眠りに付くとしましょう。…さらばですタカマチナノハ…」

 「うん…じゃあね、バイバイ…」
 「Take a good journey…」


 ――シュゥゥゥン…


 完全に消滅。
 同時に結界も消え去る。

 「ふぅ…強かった…遊星さんとフェイトちゃんは大丈夫かな…?」

 地面に座り込み、思うは仲間の事。
 遊星とフェイトの2人の前にも恐らくは同じような構成素体が現れたはずだ。

 となれば戦闘は必須。

 負けるとは思っていないが、心配はする。


 「レイジングハート…大丈夫だよね?」
 「All right.No problem.」

 なのはの気持ちを汲んでか、レイジングハートも『大丈夫だ』と告げる。
 それになのははすっかり安心。

 「少し、休むね…」

 流石に激闘で疲れたのか、近くの公園まで何とか辿り着くとベンチにごろり。
 本当に力を使い切ったのだろう。

 「Good night My Master.」

 「うん…おやすみなさい…」

 「Take a good Dream.」

 そのままなのはは回復のために眠りに…



 星と理のぶつかり合いは、大激戦の末、星に軍配が上がったようだ…















   To Be Continued… 




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