小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 1人の犠牲者も無く、無事に終息した『闇の欠片事件』。
 一番消耗したなのはも、一晩寝てすっかり回復。

 アースラも早々に『準警戒態勢』を解除して離脱。

 事件後の世界は平和だ。


 無論八神家も平和そのもの……と言いたいが、実はそうとも言えない事態が起きている。


 「あはは…アカン、身体が言う事聞かへんわ…」(汗)

 「逆融合の後遺症です。…此れを踏まえて危険だと言ったのですが…」

 リインフォースと逆融合を行ったはやてが、反動で一時的に全く動くことが出来なくなっていた。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス40
 『欠片事件のその後で』











 「大丈夫か?」

 「大丈夫とは言いがたいなぁ?まるで全身筋肉痛になったみたいや…こらあかんわ。」

 「そうか…まぁ家事その他は俺達に任せて休んでいてくれ。」

 「すまんなぁ遊星。お言葉に甘えさせてもらうわ。」

 「気にするな。大変な時はお互い様だからな。」

 で、遊星が気遣うのは何時もの事。
 ついでに遊星が居れば家事も余計な心配などしなくても大丈夫だろう。


 「しっかし、悪い事は重なるモンやな…」

 事件の事ではない。
 今の八神家の状態についてだ。

 はやての言う『悪い事』は決してこの家がなくなるとかそういう類のものじゃない。
 簡単に言うならば…

 「ヴィータはまだ幼いですから…その、風邪の一つくらいはひいても…」

 「そうなんやけどな…タイミング悪すぎやろ…」

 そう、ヴィータが事件直後に熱を出してダウンしてしまったのだ。
 シャマルが診察した結果は『風邪』。
 よって今は自室で療養中なのだ。

 薬も飲んでるし、既に順調に回復してるので問題は無いのだが、タイミングは確かに悪かった。

 「ヴィータの方も我々にお任せください。風邪程度ならば我等でも対処出来ます。」

 「食事は俺が作ればいいだろうし…」

 「はやてちゃんとヴィータちゃんの健康チェックは私がしますから。」

 「故にリインフォース、お前は主の傍に居てやってくれ。」

 だが、それも八神家の面々には苦にならない。
 仲間が大変ならば自分が頑張って穴埋めすると言う考え方は完全に騎士達に浸透してる。
 遊星の『絆』もまた大きな役割をしているのは間違いない。


 「言われなくてもその心算だ。流石に身体が思うように動かせないのではな…」

 「あはは…此ればっかりはな…。すぐに良くなるだろうけど、其れまでは頼むわ…」


 闇の欠片事件の後で、八神家では別の事件が発生したらしかった。


 「よ〜し、それじゃ早速…」

 「む!レヴァンティン!」
 「Jawohl.」

 「え?きゃぁ!」

 で、動き出そうとしたシャマルに『何か』を感じ取ったシグナムがレヴァンティンで光速拘束。
 見事な早業だ。

 「シャマル…何故キッチンに向かう?」

 「え〜と…ヴィータちゃんにおかゆでも作ろうかな〜って。」

 「其れは遊星がやるから良い。お前はヴィータの今の状態でも診ておけ。」

 「で、でも〜…」

 「良いからそうしろ。と、言うかお前は病人に止めを刺すつもりか?」

 「え〜〜〜其処まで酷くないわよぉ!!」(泣)

 拘束理由は料理の阻止。
 はやてに引導渡されたはずなのに、まだ諦めてはいなかったらしい。

 「ザフィーラ、私は其処まで酷くないわよね?」

 「…スマンがお前の料理の腕に関してはフォローは出来ん。」
 「それに関しては私も同意だ…」
 「せやから料理だけはアカンて…」

 「リインフォースとはやてちゃんまで!?遊星く〜〜ん!」

 ザフィーラにフォローを求めても無理。
 更にはリインフォースとはやての追撃。
 残る遊星にフォローを期待するが…

 「梅干を刻んで…いや、ヴィータは卵粥の方が良いか?」

 「遊星く〜〜〜ん!?」

 華麗にスルーした。
 しかも此れは狙ってやっているのではないのだから凄いと言えるだろう。

 「うぅ…シャマルさんショボ〜ン…」(orz)

 料理に関してはシャマルに味方等居なかった。

 「料理でなくとも検温や体調チェックがお前の本領だろう。適材適所だ…」

 「は〜〜〜い。」

 適材適所といわれれば確かにそうだ。
 料理は遊星が担当し、ヴィータの体調チェック及び洗濯はシャマル。
 掃除や買い物はシグナムとザフィーラの役目となる。

 こうしてみると八神家は割りとバランスがいいようだ。


 「じゃあ、私はヴィータちゃんの様子を見てくるわね?」

 「あぁ、食事は出来たら持って行く。」


 「では我等は買い物に行くか?」

 「うむ。其れがいいだろう。」

 各々やること開始。


 「皆頼りになるな〜♪」

 「えぇ、本当に。」

 はやてとリインフォースは其れを見て、なんともいえぬ頼もしさを感じていた。








 ――――――








 程なくしてリビングには食欲をそそる良い匂いがしてきた。
 ヴィータ用の『卵粥』だけでなく昼食用のメニューも同時進行で行っているのだ。

 「うん、良い味だな。これは…此れくらいだな。」

 ジャケット脱いでインナーにエプロンの遊星と言うのも何か新鮮だ。
 子供の頃にマーサに仕込まれた料理の腕は健在のようだ。

 其れはもうはやてが驚くくらいのレベルだ。



 「しかし、一時的とは言え動けなくなるとは『逆融合』は相当な代物なんだな…」

 料理をしながら話題をふる。
 その内容は『逆融合』についてだ。

 これ程の反動があるとは流石に予想外だったのだろう。

 「道理を引っ込めるだけの無理のつもりやったんやけど、此処までとは思わんかったわ…」

 「逆融合は融合騎の緊急機能です。本当にどうしようもない状態で無ければ使うことは無いのですから。」

 本当に緊急手段だったようだ。
 まぁだからこそ闇の中枢である『闇総べる王』を圧倒できたのだが。

 「其れを使わないためにも、融合機能を回復させないとな。」

 「あぁ…だが、此れは仕方の無い事なのかもしれないんだが、私の融合機能は完全回復は難しいようだ。」

 「「え?」」

 予想外の答えだ。
 事件後、融合機能を最優先で回復していると言っていたのに如何言う事だろうか?

 「地縛神と共に砕かれたナハト。其れと共に私の機能の大部分もまた砕かれた。
  融合機能はどうやら最もナハトの浸食を受けていたようで…回復したところで本来の70%程しか…」

 「70%…成程な。完全回復やないと融合時の危険性が大きい言う事か…。」

 「そう、なります。」

 素より融合機能は術者の適性に作用される。
 適性が高ければ融合率も安定するが、其れであっても危険は多い。
 安定稼動には実に95%以上の融合率と言うトンでもない適合率が必要なのだ。


 そういう意味では正融合100%、逆融合98%と言うはやてとリインフォースの組み合わせは誂えた様だと言えるだろう。

 しかし其れが70%まで下がるとなると話は別。
 危険性が一気に増す為、事実上融合は略不可能になるのだ。

 だが、リインフォースは先のことを考えてはいたようだ。


 「ですから我が主、貴女には新たな魔導の器を作っていただきたいのです。私の融合機能を受け継いだ子を。」

 「新たな魔導の器…?」
 「お前の後継機…いや、妹と言ったところか。」

 新たな融合騎の作成以来。
 己の融合機能を全て譲渡した存在を作って欲しいと頼んだのだ。

 「私は魔導師・騎士としては活動出来ますが、融合騎としてはスクラップです。
  新たな存在にその力を渡し、共に歩みたいのです……そして可能ならばその子にも祝福の名を与えてはもらえないでしょうか?」

 「祝福の名……せやけど其れやとリインフォースが2人になってまうな?どないしよ…」

 リインフォースの頼みを断ると言う選択肢ははやてには無い。
 しかしながら同名の存在が2人居ると言うのも非常にめんどくさい事も事実では有る。


 こうなると頼りになるのは遊星だ。
 即座に解決策をひねり出してくる。

 「シンクロした時のリインフォースが『アインス』と言う名を冠していた。新たに生まれる子は『ツヴァイ』で良いんじゃないか?」

 ネーミングセンスにやや難ありだが…


 「奇遇だな遊星。私も同じ事を考えていたんだ。私が『アインス』、新たに生まれる子は『ツヴァイ』だろうとな。」

 リインフォースも同じ事を考えていたようだ。

 「『?』と『?』てストレートすぎのそのまんまやな…」

 「ダメか?」
 「ダメでしょうか?」

 はやても『其れは如何よ?』と思ったが、遊星とリインフォースのダブル攻撃には耐えられない。
 ついでにそのままとは言っても決して悪い響きではないのだから否定も出来ない。

 「いんや、2人が考えてくれたんやからなぁ…なんや可愛いし♪ほな、名前は其れにしよ。」

 で、アッサリと決定。
 次いで、

 「よし、いい具合の半熟に出来たな。」

 土鍋の中で卵粥が完成した様子。
 それだけでなく味噌汁や煮物といったメニューが結構出来ている。

 話しながらも手は動かして居た遊星、流石である。


 「それじゃあ此れをヴィータの所に持って行って来る。コンロの火は弱にしてあるが、何か有ったら呼んでくれ。」

 「ん、了解や。」

 お盆にお粥の入った土鍋と、ヨーグルトをかけた桃の缶詰を乗せ遊星はヴィータが寝ている部屋に。
 きっとヴィータの風邪は直ぐに治る事だろう。



 「見事ですね遊星は。」

 「ホンマやな。」

 残された夜天の主従コンビはリビングの日向でマッタリ。
 はやてはリインフォースに膝枕されている状態でご満悦。

 「せやけど、遊星はいつか自分の居た世界に帰ってまう……まぁ当然やけどな。
  リインフォースも其れを見越して自分の後継機の事言うたんやろ?」

 「…はい。シンクロチューナーとなれば融合機能も完全回復しますが、其れに頼り切る事は恐らく不可能ですので…」

 そんな中での会話は、確かにはやての言うとおりだ。
 何時になるかは兎も角として、遊星は何れシティに帰るときが来る。
 明日かそれとも10年後なのか其れは分らないが…

 「矢張り寂しいですか?遊星が帰ってしまったら…」

 「そら正直に言えば寂しいわ。けど、私と遊星は出会ったこと事態が奇跡みたいなモンやからな。
  其れに、1回離れ離れになってもきっとまた会うことは出来ると思うんや。…絆が繋がってる限りな。」

 自身の右腕に浮かんだ『ドラゴン・ウィング』の痣を見ながら言う。
 絆が持つ強さは何者にも断ち切れないというのは遊星が教えてくれた事だ。

 「そうですね。絆が繋がっていれば…そう信じていれば必ず…ですね?」

 「そうや♪……って、いだだだだ!!!」

 で、シリアスぶっ飛ばす突然の悲鳴。
 どうしたのだろうか?

 「だ、大丈夫ですか主?」

 「だ、大丈夫や……あ、アカンて、痣見るために動いただけで此れとは…逆融合は二度とやらんほうがよさそやね…」(泣)

 「そうですね…」

 なんともアレだが非常に和やかな時が流れているようだ。

 「なぁ、リインフォース。時間が許す限り一緒に居てな?」

 「勿論です、我が主。私だけでなく騎士達も貴女と共にあります。時間の許す限り。」

 誓い新たに。
 最後の夜天はきっと幸福な時を過ごすことが出来るだろう。








 ――――――








 因みに、同じ頃ヴィータの部屋では…


 「口に合うか?」

 「おぉ!ギガうめぇ!はやてと同じくらいかもしれねぇ!」

 「なら良かった。」

 遊星特製の卵粥にヴィータが大喜び。
 風邪ゆえに何時もほどの元気はないが、それでもだ。

 「まだ食べるか?」

 「うん、貰う。あ〜〜ん。」

 で、口開けたヴィータに蓮華でお粥を食べさせる遊星。
 まるで仲の良い兄妹の様だ。

 「あらあら、ヴィータちゃんたら甘えんぼさん♪」

 「うっせ、風邪で動けないんだから仕方ねーだろ!」

 其れを見ていたシャマルにすっかりからかわれていた。








 ついでに、街中では…


 「ザッフィーさん、だれっすかその別嬪さん!?若しかしてザッフィーさんの彼女ッすか!?」

 「いや、家族だ。」

 買い物の途中、ザフィーラの現場仲間に出会ってシグナムが注目の的に。
 いや、ザフィーラの同僚が声を掛けてきただけで、ワイルド系イケメンとクール系美女の組み合わせは人々の目を引いてはいたのだが…


 「ザッフィーさんのご家族……自分ザッフィーさんの同僚ッす!以後お見知りおきを姉御!!」

 「姉御…(汗)。ザフィーラ…」

 「気にするなシグナム。工事現場の連中のノリなど大抵こんなものだ。」

 「…濃い仕事場だな。」

 「ベクトルは違うが翠屋も人の事は言えぬだろう。」

 思わぬ遭遇で思わぬことに。
 だからと言って何が如何という事はないのだが。

 「というか、お前ザッフィーさんと呼ばれているのか?」

 「何時の間にかな。」



 12月も残り僅かで年の瀬が迫っている。
 新たな年へもう目の前。

 取り合えず世の中は平穏無事であるようだ。















   To Be Continued… 





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