小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 時は12月31日の大晦日。
 はやてはすっかり回復し、ヴィータも復調してまるで問題なし。

 しかし、大晦日となると最後の1日故にやることも多い。
 その代表格は矢張り『大掃除』。

 1年の締めとなる大清掃は当然ながら八神家でも行われる。

 その大掃除を取り仕切るのは家主のはやてではない。


 「さぁ、準備はいいか?」


 取り仕切るのは、モップとバケツ片手に、(何処から持ってきたのか)グレーの繋ぎを着込んだ遊星だ。
 ボケではない、至って真剣そのものだ。

 その妙な迫力に…

 「うむ……力の限り清めよう。」

 これまた繋ぎを着込んだザフィーラがガチで同意していた。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス41
 『大晦日の一幕』











 野郎2人は既にやる気充分。
 遊星とザフィーラ2人だけでもこの家を完璧なまでに掃除するだろうが女性陣の部屋の事を考えるとそうも行かない。

 まぁ、この2人なら間違いを起こすはずも無いがそれでも矢張り気恥ずかしさはあるのだ家族でも。
 だからと言って全員で大掃除かと言うと其れは否。


 はやてとヴィータ、リインフォースは大晦日&元日の料理その他の買出しと言う役目がある。
 大掃除を行うのは遊星、ザフィーラ、シグナム、シャマルの4人なのだ。


 「にしても遊星もザフィーラも繋ぎ似合うな〜〜。誂えたみたいやで?」

 「光栄です主。」

 「繋ぎは作業服だからな。修理屋をやってる俺や、工事現場で働くザフィーラには確かに似合うかもしれないな。」

 褒められると悪い気はしない。
 よくよく見ればシグナムとシャマルも掃除に適したジャージ姿。
 シグナムに至っては、長い髪が邪魔にならないように三角巾を『あねさま被り』している。
 掃除組の準備は万端だ。

 「うわ〜…気合入ってるな〜。此れなら出来具合に期待できそうや。頼むで?」

 「お任せ下さい主はやて。」

 「頑張っちゃいますから♪」

 やる気全開。
 恐らくは掃除のみならず、扉の不具合や調子の悪い家具も直っている事だろう。遊星が居るし。

 「うん、安心して任せられるわ。ほな、私等は買出しに行ってくるな?」

 「あぁ、気をつけてな?」

 買出し組はそのまま外出。



 ――ガチャ



 扉が閉まったのを確認し、

 「…さて、始めようか。」

 大掃除開始を告げた遊星の目が光ったのはきっと気のせいではないだろう。

 「シャマルは戸棚やカーテンボックスの埃払いと拭き掃除を、ザフィーラは床全体の雑巾掛けとワックスを頼む。
  シグナムはガラス掃除を。俺は絨毯部分や和室の掃除と、ドアや家具の不具合がある部分を修理する。」

 其れを示すように騎士達に次々と的確に指示を飛ばして行く。
 最も効率よく大掃除を完了させる為の筋書きは、既に頭の中でできていたらしい。

 「了解です。其れが終わったらお正月の飾りつけもしなくちゃ。」

 「あぁ。だが、先ずは大掃除を…そうだな主達が帰ってくる前には終わらせんとな。」

 シャマルとシグナムも即時同意。
 特にはやてが帰ってくる前に終わらせると言うのはシグナムらしいだろう。

 「今日の買い物は恐らく何時もよりも時間がかかる…多分2時間ぐらいだと思うんだが、その2時間が勝負だ。行くぞ皆!」

 「「「おーーーー!!」」」

 八神家大掃除…アクセラレーション!
 きっと凄い事になるだろう








 ――――――








 さて、大晦日が忙しいのは何も八神家だけではない。
 ここ『時の箱庭』も同様に大忙し。

 一家総出の大掃除の真っ最中!


 真っ最中なのだが…

 「母さん。」
 「お母さん…」

 「どうしたのフェイト、アリシア?」

 「「……この自動で動いて掃除してる箒とか掃除機は何?」」

 そう、なんでかこのだだっ広い空間には独りでに動いて掃き掃除をしている箒や、同様に掃除してる掃除機が。
 この光景だけ見たらポルターガイストか百鬼夜行だ。

 「あぁ、それね。…大掃除の人手が全く足りないから魔法でね。」

 「うそ!?」
 「何でもあり!?」

 どうやらプレシアが魔法で行使しているらしい。
 『次元世界最強の魔女(暫定)』は何でもありのようだ。

 「自分で作ったとは言え相当に広い場所ですもの。此れくらい手がないと足りないわ。
  現実にネコと狼の手を借りたって全然足りてないでしょう?なら掃除用具自ら動いてもらえば良いのよ。」

 「「確かに。」」

 無茶苦茶極まりない理論だが、ある意味では的を居ている。
 リニスもアルフも頑張っているが、ぶっちゃけまるで足りない。

 コンだけだだっ広いものを作った手前、如何にかしたいのはプレシアのプライドなのだろう。
 その結果が『動く掃除用具』と言う訳らしい。

 「けどさ、確かに此れも凄いけど、遊星にお願いすればロボット式の全自動掃除機位作ってくれたんじゃない?」

 「「……あ。」」

 で、アリシアの一撃はフェイトもプレシアも思って居なかった。
 完全に遊星に頼むと言う選択肢が抜け落ちてたらしい。

 「あらあら、遊ちゃん忘れられちゃった♪」

 「…貴女は遊星さんと一緒じゃなくて良いんですか?」

 「遊ちゃんはもう大人だから四六時中一緒じゃなくても大丈夫。其れに今は会おうと思えば会えるしね。」

 「成程。親子として絶妙な距離感を保っている訳ですか。」

 その傍で沙羅とリニスがこんな会話をしていたとか…








 ――――――








 場所は再び海鳴。

 今度ははやて達『買出し組』だ。


 「伊達巻にかまぼこ、栗きんとん、黒豆、田作り、昆布巻き、錦卵…おせちのメニューはこんなもんかなぁ?
  煮物やナマスは家で作ればえぇし……あ、あとは小鯛の笹漬けとこはだの粟漬けも買っておかなあかんな。」

 「主、今夜使う蕎麦はこれで…」

 「切り餅と鏡餅持ってきたぜ〜♪」

 和気藹々と正月に必要なものを買い揃えている。
 既にカートに乗せた買い物カゴは2つとも満杯。

 遂にはヴィータがもう1つ持ってきたくらいだ。


 「ちょぉ買いすぎたかなぁ?せやけど7人やし此れくらいは必要やな。」

 「しかし、蕎麦9人分は多いのでは?」

 「ザフィーラは3人前くらい食べるやろ?」

 こんな会話も楽しいものだろう。

 「けど結構買ったな?アタシとリインフォースで…まぁ何とかなるか。」

 「あはは、スマンなぁ。大勢と過ごすお正月は初めてやから張り切ってもうた。」

 そう、はやてにとっては少なくとも記憶に残っている限りは大勢で正月を過ごした記憶はない。
 今回の正月が初めてなのだ。


 だが、紅き鉄槌と祝福の風は其れについては何も言わない。

 「アタシ等なんてお正月ってのがはじめてだかんな〜…はやてのおせちが楽しみだぜ♪」

 「ふふ、騎士一同楽しみにしています。きっと遊星も楽しみにしているはずですよ?」

 「そうなん?せやったら腕によりをかけて頑張らなアカンね。と、そうや元旦のお雑煮に使う三つ葉と柚子と鶏肉も買わな。」

 買い物は終始和やかな雰囲気で進んでいる。


 ただ、はやて達は気付いて居ないがこの3人は滅茶苦茶注目を集めているのだった。
 まぁ、車椅子の美少女に其れを押す銀髪美女、果ては赤毛の活発少女は嫌でも注目されるのは当然だった。


 「しっかし、アレやなぁ?任せといて言うのも何やけど、遊星が大掃除取り仕切ったら『モデルハウス』並みに綺麗になるんやなかろか?」

 「あ〜〜〜…確かにありえっかもな?」

 「一切否定する材料がありませんね。」

 的確な予想。
 其れは案外当たっているのかもしれない。








 ――――――








 「如何だ遊星?」

 「少し待ってくれ…………よし、完璧だ。何処もやり残しは無い。」

 八神家では遊星が大掃除の最終チェックの真っ最中。
 拭き掃除、ワックス掛け……ドレをとっても完璧と言って過言ではないほどの出来だ。

 此れならば先ず問題ないだろう。

 「お疲れ様。大掃除……完了だ。」

 遊星のお墨付きがあれば其れは問題なく大丈夫の証。
 確かに文句のつけようがない。

 床も戸棚も壁もガラスも一切の染みも曇りもなく、光沢を放ってさえいる。
 不具合の合ったドアや家具も、遊星の手でまるで新品同様に改修。


 遊星と騎士達、恐るべし…!
 奇しくもはやての予想は完全に当たっていた事になる。


 「ただいま〜〜♪」

 そして実にタイミングよくはやて達が帰宅。
 遊星達もすぐに玄関に。

 「おかえり、はやて。……随分買ったな?」

 「ちょぉ気合入れてしまってな?…ほうほう、凄いなぁ…家の中が輝いてるやん。」

 「皆で頑張りましたので。」

 出会ってから1年と経っていないにもかからず、既に『家族』としての関係が出来上がってることを示すような会話だ。
 いや、実際に血の繋がりは無くとも八神家の『絆』はひょっとしたら一般的な家族の其れを凌駕するのかもしれない。

 「うん!皆お疲れ様や♪これは今夜の年越し蕎麦は思い切り豪快にいかなアカンね♪」

 そう言うはやては満面の笑顔だ。
 矢張り嬉しいのだろう、『家族』と過ごす大晦日と正月が。

 「ほな、早速準備にとりかかろかな?」

 「あぁ、俺も手伝う。」

 「私も手伝いm「「お前はこっちだ。」」…あう。」

 手伝おうとしたシャマルがリインフォースとシグナムに引き剥がされるのもおなじみの光景だ。
 此れもまた平和の証だろう。








 ――――――








 『♪〜〜♪♪〜〜♪』


 大晦日恒例の歌合戦を見ながら、時間はマッタリと過ぎる。


 「「「「「「「ごちそうさまでした。」」」」」」」

 はやて特製の『年越し蕎麦』も食べ後は年明けを待つばかり。

 因みにこの年越し蕎麦、関西風のダシを使い、トッピングに海老、イカ、野菜の天ぷらを乗せかまぼこを添えた豪華使用。
 はやての本気が伺える一品でとても美味しかった。

 「今年ももう終わりやね……」

 「そうだな。」

 「思えば怒涛のような1年やったなぁ…。遊星と出会って、シグナム達に出会って、なのはちゃん達と友達になって。
  次元世界で魔力蒐集して、地縛神倒して、闇の欠片とどんぱちやって…考えられんほどの濃密さや。」

 確かに、これ程までに内容の濃い1年を過ごした者は早々居ないだろう。
 怒涛の1年と言うのも納得だ。

 「充実しているのは良い事さ。」

 「ふ、遊星の意見には賛成だな。充実している日々はそれだけでも価値がある。」

 皆がそう思っていた。

 「せやなぁ……うん、来年も『宜しくお願いします』やね。」

 「主、其れは私達もですよ?」

 新たな年までもう間も無くと言うところ。



 ――ご〜〜〜〜〜ん…



 其れを示す除夜の鐘が。


 「此れが除夜の鐘か…シティやサテライトには無いものだったからな、新鮮だ。」

 「108回ついて煩悩をはらうんやて。まっさらな心で信念を迎えよ言う事やろね。」

 「成程な。」

 リビングの空気はとても穏やかなもの。

 何事にも変えられない『幸福』が、確かにこの場には存在している。


 「今年1年、お疲れ様や。改めて来年もよろしくな?」

 「あぁ、俺のほうこそな。」

 「私の方こそ宜しくお願いします。主はやて。」

 「来年も楽しもうぜはやて♪」

 「新たな年もよろしくね、はやてちゃん♪」

 「次の年もまた、守護の勤めを果たして見せましょう。」

 「新たな年にも貴女に幸福が訪れますように…我が主♪」

 各々大晦日の挨拶。
 実に良い関係だ。



 ――ご〜〜〜〜〜〜ん…



 遠くの神社で除夜の鐘が鳴り響いていた。















   To Be Continued… 



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