小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 怒涛の大掃除と、のどかな年越しから数時間。
 日付は変わって1月1日、つまり元旦。

 八神家では全員が居間に揃って正座中。

 「其れでは改めて…」

 「「「「「「「あけましておめでとうございます。」」」」」」」

 お決まりの15文字で新たな年が始まったのだった。


 「ところで、何で新年がめでたいんだ?」

 しかしながら此れまでの環境のせいで少々ずれている遊星だった。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス42
 『新年らしいですよ?』











 「遊星…まぁアレや、新年を無事に迎えられた言う事はそれだけでめでたいやろ?」

 「成程、無事に新たな年を迎えられたと言うのは確かにめでたいことかもしれないな。」

 正しいかどうかは不明だがはやての説明で一応の納得はしたようだ。

 「本年も宜しくお願いします、主はやて。勿論遊星もな。」

 「うん、此方こそや。」

 「あぁ、よろしくな。」

 ヴォルケンズもシグナムが代表する形で挨拶し、新年の挨拶も完了だ。

 「ほな、挨拶も済んだところでそろそろ初詣に行こか?」

 「え〜〜、はやての御節マダなの?」

 で、初詣に行くわけだが、ヴィータ的には先に御節を食べたかったらしい。
 はやての見事な手際で作られた御節を機能の大晦日に見たのだから仕方が無いが。

 「ヴィータ、楽しみは後でとって置く方が良い。」

 「リインフォース…」

 「その方がより楽しめるって事もあるからな。」

 其れをリインフォースに『楽しみはあとで』と言われ、遊星にも同様に言われては反抗不可。
 と言うか、楽しみはあとでと言われると妙な説得力があったりするのだ。

 「あとでとっておいた方がより美味しい…?」

 「そやで?それに、ちゃ〜んと神様にも新年の挨拶をせんとね。」

 「…分った。先ずは初詣に行く。」

 止めにはやてにも言われて納得。
 この辺はすっかり馴れたものだ。


 外は寒いので、コートやジャンパーを羽織り一行は最寄の神社に繰り出していった。








 ――――――








 「混んでいるのに人が来るのか、人が来るから混むのか…」

 「まぁ、両方で相乗効果やろね。」

 海鳴で一番大きい神社には溢れんばかりの人の波。
 海鳴市民全員が初詣に来ていると言われても納得してしまいそうな光景だ。

 尤も明治神宮の様に歩くのにも一苦労と言うほどの混雑ではないので、はやての車椅子も無事に押せるのだが。

 「あ、はやて!」
 「はやてー!」
 「はやてちゃん!」

 そのはやてを呼ぶ声が3つ。
 なのはとテスタロッサ姉妹だ。

 こういう場所で知り合いとばったり会うのもお約束的なことだろう。

 「なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん!」

 「皆も来てたのか。」

 見ればなのは達だけでなく、高町家、テスタロッサ家の全員が神社に。
 初詣は当然元旦に行うという考えなのだろう。

 「遊ちゃん、あけましておめでとう。」

 「あけましておめでとうございます、母さん。」

 で、不動親子も新年の挨拶。
 奇しくも生涯初めてとなる新年の挨拶だ。

 高町家、テスタロッサ家の面々も夫々に新年のご挨拶。
 すっかり家ぐるみの付き合いだ。

 「遊ちゃん、はい此れ。」

 「此れは?」

 「最初で最後のお年玉。」

 挨拶もそこそこに、沙羅は遊星にお年玉袋を渡す。
 そろそろ二十歳ゆえ、お年玉を貰うような歳ではないのだが、沙羅の言うように此れは初めてのお年玉。
 ゼロ・リバースのせいでこんな事もできないまま離れ離れになってしまった沙羅のちょっとした『親の我侭』だろう。

 「母さん…あぁ、ありがとう。ありがたく貰っておく。」

 だから遊星も何も言わずに其れを受け取る。
 遊星とて母からのお年玉は初めてであり嬉しいものだったのだ。


 「奇遇やなぁ。そや、折角やから皆でおまいりしよか?」

 「「「賛成〜〜!」」」

 で、はやて達の方は一緒にお参りする事を決定。
 はやての決定ならば騎士達は何も言わないし、高町家とテスタロッサ家も娘の決定に異を唱える事は基本なし。
 皆でお参りは決定だ。

 「あらあら…それじゃあ私達も行こうか遊ちゃん?」

 「そうしよう。」

 不動親子も其れに続く。

 期せずして初詣は大人数に。



 しかしながら人が多い。
 はぐれる事がないようにしているがそれでもこの人の多さには驚くものだ。

 並ぶ事十数分、一行は漸く賽銭箱に到着。

 「其処の箱にお金入れてから柏手打ってお参りするんやで?」

 初詣など初めてであろう騎士達にはやてがお参りの仕方を説明。
 まぁ、難しくは無いので皆すぐに理解したが。

 で、皆で並んでお賽銭を放り込む。
 10円、100円…硬貨であるのはお決まりだろう。

 だが、遊星は何を思ったか…

 「此れくらいでいいのか?」

 財布から『諭吉さん』を1枚取り出して賽銭箱に。

 「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」」

 此れには全員びっくりだ。
 紙幣を入れる人が居ないとは言わないが、万札を賽銭箱に入れる奴など居るだろうか?
 居るかも知れないが先ずお目にかかることは無いだろう。
 だが、其れを遊星は平然とやってのけたのだ。

 「………」

 驚く一行を尻目に、遊星は柏手を打った後に手を合わせて祈願。
 当然皆が何を祈願したかは気になるだろう。

 「遊星…一体何を祈ったん?」

 「今年も皆が無事に平和に過ごせるようにだが?」

 「1万円でその願いでえぇんかい!?」

 「これ以上の願いがあるのか?」

 だが、何時でも遊星は遊星であった。
 ある意味で予想通りの答えと言えるだろう。

 「はぁ…ま、遊星らしいわ。」

 「?」

 一同納得であった。








 ――――――








 新年のお参りを済ませた一行は社務所で御神籤を買うことに。
 特に新年のイベントではないが、今年一年の計を占うと言う意味で結構買う人が多い。

 遊星達も夫々に御神籤を引いている。


 因みにこの神社の御神籤は、引いた番号のクジを貰うのではなく、代金払って箱から直接引くタイプのものだ。
 遊星もまた100円払って箱に手を入れてクジを決めている。

 「……此れだ、ドロー!」

 「そらちゃうやろ…」

 はやての突っ込みはある意味当然だが、遊星的に引く=ドローなのだろう。デュエリスト魂おそるべし。

 ともあれ此れで全員が御神籤を引いたわけだ。
 結果は様々。

 「やった、大吉♪」
 「なのはちゃんも?私も大吉や!」

 「吉…フェイトは?」
 「私は末吉だって。」

 「…超吉?」
 「何だ其れは…」

 遊星の御神籤は微妙に意味が分らなかった。

 「私は中吉か〜…恭ちゃんは?」

 自身の結果を見ながら美由希は恭也にたずねるが返事が無い。
 よく見れば小刻みに震えているようだ。

 「恭也、どうしたんだ?」

 遊星もただ事ではないと思ったのか声を掛けるが…

 「だ、大凶だと…!」

 どうにも最悪なクジ結果に打ちひしがれていたらしい。

 「なくし物出ないでしょう、大願成就しないでしょう、健康金運全て悪いでしょう!俺が何をしたぁぁ!
  更に『水難の相』ありだとぉぉ!?難なんだこの結果はぁぁぁ!!」

 吠えた。
 此処まで悪いとある意味納得だ。
 しかし、この真冬に水難の相とはどういうことであろうか?

 「あ、お兄ちゃん危ないの!」

 「え?」

 答えはすぐに出た。
 絶叫した恭也のすぐ後ろから人の波が押し寄せてきたのだ。

 「な!?」

 虚を突かれて避ける事もできず恭也は人ごみに『吸い込まれて』行った。

 「若しかして水の水難よのうて吸引の『吸い難』やったの?」

 「そうかもしれないな…」

 恭也が落とした御神籤を見て納得。
 『すいなんの相あり』と書かれていた。
 何処にも『水難』とは記されていなかった。

 「こんな事もあるんだな。」
 「面白いわね♪」

 で、不動親子は親も子も似たもの同士らしかった。








 ――――――








 初詣を終え、八神家一行は帰宅。
 いよいよはやての御節の時間だ。

 ヴィータは待ちきれないのか目をキラキラと輝かせている。


 「ほな、お披露目や♪」

 そんな中でふたを取られて並べられた五段重。
 小鯛の笹漬けやかまぼこなどは流石に既製品だが、煮物やナマス、錦卵なんかははやての手作り。

 重箱に詰めるのは遊星が担当したらしく、これまた見た目のバランスが素晴らしい。
 見ているだけで食欲がそそられる。

 「「「「「おぉ〜〜〜……」」」」」

 騎士達も感心だ。
 初めて見るものだが、それでも『良い物』だと言う事は分ったらしい。


 「ほな、改めまして。皆、今年もよろしくな。乾杯!」

 準備が整ったところで家主のはやてが音頭を取り、

 「「「「「「乾杯!」」」」」」

 皆で乾杯。
 此処から新年会開始だ。



 「うめぇ!!流石、はやての料理はギガウマだ!!」

 「良い味だ。料理だけははやてに勝てる気がしないな。」

 はやて特製の御節は大好況。

 「そうか?そう言ってもらえると作った甲斐があったなぁ♪」

 はやても実に嬉しそうだ。

 「お雑煮の汁も出来とるから、お餅は各自で焼いてな?」

 「そうさせて頂きます、我が主。」

 新年会は楽しく。
 新たな年は非常に楽しい形での幕開けと相成った様だ。








 ――――――








 ――時間軸も何もかもが違う何処かの世界


 「待ちなさいキリエ!そんな事はしちゃダメです!」

 「ん〜…悪いけど止まらないのよね〜。」

 赤毛の少女と桃色の髪の少女が対峙し何か言い争っている。
 尤も赤毛の少女がヒートアップ気味と言えなくは無いのだが…

 「アミタ、貴女が如何考えようと勝手だけど、私には私の目的があるの。」

 「だからってこんな…!」

 「一度決めたら諦めずにやり通す!…博士にも、お姉ちゃん…アミタ貴女にも私はそう教わった!」

 「ですが!!」

 「兎に角邪魔をしないで!」

 「あ、待ちなさい!キリエ!!」

 桃色の髪の少女の姿が掻き消え、次いで赤毛の少女の姿も消える。

 遊星達のあずかり知らないところで新たな事件の火種が静かに燃え始めていた…















   To Be Continued… 





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