小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 闇の欠片を次々撃破していた遊星もまた、はやてから『管理局からの嘱託依頼応諾』の連絡は受けていた。
 恐らくは騎士達にも伝わっている事だろう。

 「行け、シューティング・スター・ドラゴン!『スターダスト・ミラージュ』(5回攻撃)!」

 「ウオワァァァ!」
 闇の欠片ゴースト:LP4000→0


 今もまた闇の欠片を1体撃破。
 全く相手にならないが、前回と比べると矢張りバリエーションが凄まじく多い。

 「闇の欠片事件の時には出てこなかった奴も居るな…今回の方が闇の力が強いという事か。…ん?」

 そのまま走行を続ける遊星の視線の先、上空に何かが…

 「アレは…?」

 すぐさま飛行機能を使って発見したモノに近づく。

 「彼女がはやてが言っていた…」

 其れは赤い髪に青い服の少女――アミタだ。
 キリエとマテリアル達を追っていたが、どうやら見失ってしまったらしい。

 「キリエ…もう、一体何処に行ったんですか…!」

 で、そのアミタは遊星には気付いていなかった。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス45
 『深まり行く事件の謎』











 「…偶然とは言え見つけた以上は無視できないか。おーい!」

 「はい!あの、私ですか!?」

 遊星が呼びかけたことで漸く気付いたようだ。
 一つの事に夢中になると周りが見えなくなるのだろう。

 「俺は時空管理局の嘱託魔導師、不動遊星だが…アンタは次元渡航者の人だな?」


 ――『カンリキョク』?名前から察するに此方の司法組織でしょうか?
 「不動遊星さん…ですか。」

 普段の言葉遣いのせいかどうにも遊星は簡潔に物事を話す癖がある。
 それがクールな性格と合わさり、一見『冷たい人』に思われることも少なくない。

 尤も、アミタは遊星の性格云々よりも『管理局』と言う単語の方に反応していた。
 どうやら管理局の存在は知らないらしく、そうなると当然『嘱託魔導師』と言われても頭の中に『?』が飛び交うだけだろう。

 「あぁ、此処は…たしか、そう『管理外世界』だからな。渡航には許可書がいるらしいんだが…持っているか?
  いや、其れよりも先にアンタの名前を聞いておいたほうが良いか…」

 「あ、失礼しました!アミティエ・フローリアンと言います!家族や友人は『アミタ』と呼びますが。」

 「アミティエ…フランス語で『友情』の意味だったかな?良い名前だな。」

 「本当ですか!?ありがとうございます!!」

 どうにもアミティエ――アミタは感覚で生きている人物のようだ。
 まぁ、自分の名前を褒められれば嬉しいのは分るのだが…


 「其れでアミタ、渡航許可書は…」

 「はっ!!」

 で、現実に戻る。

 「も、申し訳ありません!郷に入っては郷に従えは理解してますが、緊急事態につき離脱いたします!!」


 ――バシュン!


 弾かれたように飛び出したアミタは既に豆粒、物凄い速さだ。
 だが、速さならば遊星とて引けを取らない。

 「おい!…ステラ。」
 「了解ですマスター。スピード設定『デルタアクセル』、リミットオフ――アクセラレーション。」



 ――ドシュゥゥゥン!



 即時ステラに命じて急加速。
 其れは正に『光速』と称すべきものだ。


 「待て、別にお前を如何にかしようと言うんじゃない。」

 「はい!?追って来た!?凄まじいスピードです!!」

 はっきり言ってどちらのスピードも凄い。
 遊星が『デルタアクセル』状態と言う事はつまり最低でも『亜光速』であるのは間違いない。

 「俺の道は限界の先にこそ続いているからな。」

 「く、クールですね…ですが、申し訳ありません!不肖の妹を止める為に、今は力づくでも通らせていただきます!」

 「……何故、そう言う思考になるんだ?」
 「出会い頭のデュエル申し込みみたいなものでしょう。」

 遊星の疑問に答えるステラだが、其れは些か悪手である。
 何故ならば、不動遊星という男は生粋にして『真』のデュエリストであるからだ。

 「…デュエル?」
 「デュエル。」


 「…ステラ!」
 「了解。デュエルモード・オン、ライディングモード。リミッター解放レベル6、スピードカウンター初期値を5に設定します。」


 故に即時デュエルモードに。
 デュエリストである以上『デュエル』と聞いては黙っていられない、例え普段がどれだけクールであってもだ。

 「な!これは…結界ですか!?」

 デュエル用のソリッドヴィジョンフィールドに驚くのは無理ないだろう。
 突然周囲が虹色のフィールドに変わったのだから。

 「お前が此処を押し通るというならば、俺も全力で止めてみせる!行くぞアミタ、デュエルだ!」

 「デュエル…決闘ですね。分りました、細かい事よりもそちらの方が分り易いと言うものです!」

 遊星もデュエルでは熱くなる。
 そしてアミタは元々が熱血系。

 つまりこの2人が戦うということは…

 「デュエル!!」
 遊星:LP8000   SC5


 「アミティエ…行きます!!」

 物凄い事になるのだろう!

 「あのスピードは侮れません!申し訳ありませんが少々本気で行かせて頂きます…バルカンレイド、ファイアー!!」

 先手必勝とばかりに、アミタは手にした銃型の武器で無数の魔力弾を発してくる。
 誘導性は無いようだが、速射性ならばなのはやフェイトの誘導魔力弾を上回る勢いだ。

 「凄い高速連射だが…『速攻のかかし』の効果発動!ダイレクトアタックを受けるとき、手札のこのカードを捨てる事でバトルを終了する!」

 それでも遊星は慌てず対処。
 粋なかかしが現れ、アミタの魔力弾を完全シャットアウトだ。

 「完全防御!?な、何ですか其れは!?」

 「いい攻撃だが、それでは俺には届かないぞ!俺のターン!」


 遊星:SC5→6


 「手札のソニック・ウォリアーを捨て、チューナーモンスター『クイック・シンクロン』を特殊召喚。」
 クイック・シンクロン:DEF1400


 「カードからモンスター!?いえ、召喚獣でしょうか?」

 初めて見るであろう、遊星の戦い方にアミタは驚く。
 だが、驚くのはまだ早いだろう。
 遊星の真骨頂は此処からだ。

 「チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚、そしてその効果で『ソニック・ウォリアー』を守備表示で特殊召喚!
  更に墓地からモンスターを特殊召喚したことで、手札の『ドッペル・ウォリアー』を特殊召喚する!」
 ジャンク・シンクロン:ATK1300
 ソニック・ウォリアー:DEF0
 ドッペル・ウォリアー:DEF800


 「一気に増えた!?」

 「マダマダ此処からだ。レベル2のドッペル・ウォリアーに、レベル5のクイック・シンクロンをチューニング!
  集いし思いが此処に新たな力となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、燃え上がれ『ニトロ・ウォリアー』!」
 「フゥゥゥゥゥン!」
 ニトロ・ウォリアー:ATK2800


 「が、合体して進化したんですか!?」

 更にシンクロを目の当たりにしてアミタの目は皿の様になっている。
 まぁ、無理も無いだろう。

 「ドッペル・ウォリアーがシンクロ素材になった事で、俺のフィールドのフィールドにレベル1、攻守400のドッペルトークンを攻撃表示で2体特殊召喚。」
 ドッペルトークン:ATK400(×2)


 低レベルのトークンを並べ、尚遊星は止まらない。

 「続いて、レベル2のソニック・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
  集いし星が、新たな力を呼び起こす。光射す道となれ!シンクロ召喚、出でよ『ジャンク・ウォリアー』!」
 「フゥゥゥゥ…ハア!!」
 ジャンク・ウォリアー:ATK2300


 「また合体しました!凄い…!」

 戦闘中だが、凄い光景にアミタは釘付けになっている。

 「ソニック・ウォリアーが墓地に送られた時、俺の場のレベル2以下のモンスターの攻撃力を500ポイントアップする。
  此れでレベル1のドッペル・トークン2体の攻撃力は500ポイントアップする。」
 ドッペル・トークン:ATK400(×2)→900(×2)


 「更に、ジャンク・ウォリアーの効果発動!
  ジャンク・ウォリアーはシンクロ召喚に成功した時、俺の場のレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計値分攻撃力がアップする!
  ドッペル・トークン2体の攻撃力の合計は1800!よって攻撃力は1800ポイントアップ!『パワー・オブ・フェローズ』!」
 「ウオォォォォォォ!」
 ジャンク・ウォリアー:ATK2300→4100


 「パワーアップ!こ、こんなの見たことありません!!」

 降臨した2体のシンクロ戦士。
 どちらも物凄い力だ。

 だが、其れが逆にアミタに火をつける。
 呆けていた状態から気を入れなおし、再度攻撃を仕掛ける。

 「ですが負けません!行きますよ遊星さん!ファイネストカノン!」

 「望むところだ!頼むぞニトロ・ウォリアー!行け、『ダイナマイト・ナックル』!」

 アミタが放った砲撃に呼応するが如くニトロ・ウォリアーでの攻撃。
 炎を纏った拳と、痛烈な砲撃が克ち合い爆発!

 だが、ニトロ・ウォリアーの方が僅かに勝ったのだろう。
 攻撃こそアミタに届かなかったがニトロ・ウォリアーは健在だ。

 「今のを素手の一撃で砕いた…!」

 「略互角か。だが、ジャンク・ウォリアーの攻撃が残っている!叩き込め『スクラップ・フィスト』!」
 「トゥアァァァ!!」


 続けざまの一撃。

 「しまった!!」

 攻撃後の隙もあるが、大砲撃を行ったが故にアミタは力を大きく使ったのだろう。
 なのでジャンク・ウォリアーの攻撃に対しては何も出来ず、障壁張るのが精一杯だ。

 「くぅぅぅ…!」

 だが、その障壁も4100もの攻撃力を備えたジャンク・ウォリアーの一撃を受けられるものではないようだ。
 少しずつ皹が入ってくる。


 ――バリィィィン!!


 そして、遂に障壁は砕け、アミタに最強クラスの一撃が炸裂!

 「きゃぁぁ!!」

 障壁のおかげで幾らか威力は減衰しただろうが、それでもアミタを吹き飛ばすには充分だった様だ。
 もっとも、数メートル弾き飛ばされただけでアミタは体勢を立て直したが。


 「はぁ、はぁ…す、凄い力ですね…。」

 「お前もな。ニトロ・ウォリアーの攻撃を防ぎ、ジャンク・ウォリアーの一撃を少しとは言え防いだのには驚いた。」

 互いに賞賛する。
 僅かな攻防だが、遊星もアミタも夫々の実力が分っただろう。

 「出来れば大人しくして欲しいんだが…余分な争いはしないに越した事は無いんじゃないか?」

 「た、確かにその通りですが、時間は掛けられませんから…!
  貴方のその戦闘能力に敬意を表し…ですが一身上の都合により逃走させていただきます!…バルカン!」

 だが、あくまでアミタは止まらないようだ。
 又しても魔力弾の高速連射だ。

 「ジャンク・ウォリアー!ニトロ・ウォリアー!」

 「ドゥア!」
 「ムゥン!」

 其れを速攻で対処するが…

 「アクセラレイター!とぉ〜〜〜〜〜!!!」

 その隙を突いて一瞬で離脱。
 そのスピードは凄まじく、もう姿は見えなくなってしまった。


 「今の攻撃は囮!…逃げられたか…。」

 もう目視できる位置にはいない。
 今から追跡するのは難しいだろう。


 ――凄いスピードだな。其れに使うのもはやてやシグナムのベルカ式やなのは達のミッド式とも違う魔導…
    だがそれ以上に、彼女の体から僅かに聞こえた『機械音』…彼女は一体何者なんだ?


 逃げられたものの遊星はアミタに疑問を抱いていた。
 魔導の全てを知っている訳ではないが、少なくとも自分が知っているものではない。
 さらにアミタの身体から聞こえた僅かな機械音。

 それらが遊星に疑問を抱かせていた。


 ――彼女が異世界人だとしても、俺自身がそうだから別分驚きはしないが…まさか彼女はアポリアの様な身体なのか?


 己の経験と知識から仮説を立てるも、明確な答えは出そうに無い。
 だが、漠然とだがその考えは大きく間違っていないとも思っていた。

 「…考えても答えは出そうに無いな。ステラ、彼女は追跡できるか?」
 「申し訳ありませんマスター、ロストしました。」

 アミタの追跡を試みるが、完全に虚を衝かれた為にステラも対応できなかったらしい。
 追跡は完全に不可能だ。

 「そうか…仕方ないな。闇の欠片は?」
 「新たに3体が海鳴中心街の上空に。」

 追跡が出来ないならば、他に出来る事をするのみ。
 新たな闇の欠片が発生したらしいのでそちらに対処する事にシフトする。

 「海鳴中心街…先ずはそちらを片付けるぞステラ!」
 「了解。デュエルモード続行。ジャンク・ウォリアーとニトロ・ウォリアーを維持します。」

 再度エンジンを噴かせ闇の欠片に向かい全力飛翔。


 ――何が起きているかは分らないが、闇の欠片事件の時よりも嫌な感じがする…だが、この世界を闇で染めさせはしない!


 誓いを胸に、遊星は空を翔けて行った。














 因みにその頃…


 「ディバイン…バスター!」
 「Divine Buster.」



 ――ドッゴォォォォォン!!



 「うわぁぁ!」
 「きゃぁ!!」


 「い、行き成り2人がかりで来るなんて酷いです…!」

 「其れを撃退しちゃうお前のほうがもっと酷いわ!」
 「この子の空戦技術、偽者にしては出来過ぎてる…!」

 闇の欠片と勘違いしてなのはに襲い掛かったリーゼ姉妹が返り討ちにされていた。
 尤も、その後のなのはの説明で誤解は解けたのだが…



 しかしながら闇の欠片とはかくも迷惑な存在であるようだ。
 だが、事件はマダマダ謎の部分が多い。


 一刻も早く謎の渡航者とマテリアルを確保する事は必須であった…















   To Be Continued… 




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