小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 アミタの行方を追うなのは。
 道中リーゼ姉妹に勘違い襲撃を受けたりしたが、それ以外は特に問題も無い。

 無いが、予想外の事態は起きる。


 「あ、久しぶり!」

 「ご無沙汰しています。」

 海鳴の上空で、遭遇したのは自身の写し身のマテリアル――シュテル。
 以前の『闇の欠片事件』では全力全壊の戦いを繰り広げた相手だ。


 「元気だった?…って言うのはちょっとオカシイかな?」

 「おかげさまで。この通り完全復活を遂げさせていただきました。」

 だが、その会話はいたって穏やか。
 まるで旧知の友と再会したかのようだ。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス46
 『再会〜不屈と星光〜』











 「砕け得ぬ闇…やっぱりまだ探してるの?」

 「はい。アレは私達の存在意義そのものですから。」

 だが、のんびりお話と言う訳にもいかない。
 穏やかだが会話内容は重要なものだ。

 「この世界や他の人達に迷惑がかからないなら手伝ってあげたいんだけど…」

 「恐縮です。この世界の方々には可能な限り迷惑をかけないようには私からディアーチェに進言しておきましょう。」

 『迷惑がかからないなら』と言うのがなんともなのはらしい。
 基本他人を放っておけない彼女的には、シュテルの目的も危険が無ければ手伝いたいのだろう。

 尤も『砕け得ぬ闇』と言う名称からは危険しか感じないのだが…

 「あ、そう言えば皆名前あるんだよね?」

 そんなことはそっちのけで、今度は名前の話になってしまった。
 本当に以前死闘を演じたのかと疑いたくなるような光景だ。

 「はい。私がシュテル、水色がレヴィ、Dホイールがゲイル。そして我等の王がディアーチェです。」

 「あは、皆格好良いね♪」

 「光栄です。」

 「私の名前は――覚えてる?」

 「はい、覚えていますよタカマチ・ナノハ。」

 まるで敵対する気は見られない会話である。
 敵同士よりも『好敵手』の方が合っているのかもしれない。

 「実のところ、貴女との再戦を心待ちにしていました。」

 「本当に?それは…ちょと嬉しいかも♪」

 だが、この少女達以外とバトルマニアなのか?
 一気に話の内容は戦闘にぶっ飛んだ。
 まぁ、全開の全力バトルは互いにボロボロになったが決して不快ではなかったのだろう。

 「以前の戦いも心滾る良き戦いでしたが、貴女には後一歩及びませんでした。
  ですが此度の復活で貴女の能力のコピーを超え、私は王の為に殲滅者――デストラクターとしての能力を得ました。
  焼滅の力……受け止めていただけますか?」

 中々に物騒な事を言っている気がしなくも無いがシュテルは真剣そのものだ。
 なのはとしても激戦を演じた自分と瓜二つの相手が再戦を望んでいたのは嬉しくもあるようだ。

 「良いよ。全力で……あ…」

 だが、答える前に気がついた。
 そう、『全力』でやったらどうなるかを。

 「どうかしましたか?」

 「う〜ん…全力でやるのは良いんだけど、本当に全力全開だと…」

 「あ、そう言う事ですか。」

 流石に『理のマテリアル』と言うべきか、聡いシュテルは気付いたようだ。
 前回の全力バトル、負けたシュテルが消滅したのは当然として勝ったなのはも戦闘不能に陥った。

 今この場で互いにそうなる可能性があるバトルは避けるべきなのだ。
 だが、互いにぶつかってみたいのも事実。

 「でしたら、今回は互いにフルドライブと集束砲は使用禁止ということで如何でしょう?」

 「あ…うん!それなら確かに大丈夫かも。」

 なのでシュテルが提案したのは所謂『スポーツ』としてのぶつかり合い。
 驚異的な能力倍化と、常識外の集束砲を『禁じ手』とすれば、少なくとも前回のバトルのようにはならないだろう。


 「では、制限のこそありますが…競いましょう、どちらが強いのか!」

 「うん…行くよ、レイジングハート!」
 『All right.』


 始まりのゴングなどいらない。
 ある意味最強の魔法少女ともいえるなのはとシュテルには戦いの始め方などとっくに承知。

 「ディバイン…バスター!」
 『Divine Buster.』


 「ブラスト…ファイアー!!」


 挨拶代わりの直射砲。
 互いに最も得意とする主力攻撃での一撃。

 「…!魔力光の色も違うんだ。うん、真紅で格好良いね♪」

 「お褒めいただきありがとうございます。此度の復活で己の本来の魔力光も取り戻せたようです。」

 放たれた魔砲は互角だが、シュテルの魔力光は以前とは違い真紅。
 更に砲撃に炎が混じっているようだ。

 「凄いね…此れは油断できないかも。…アクセルシューター!」

 「貴女もこの間よりも力を増しましたね?…パイロシューター!」

 続いては誘導弾の打ち合い。
 これまたシュテルの性能が前とは違う。

 弾数はなのはの方がずっと上だが、シュテルの方が操作性に優れ魔力弾の軌道を巧く使って互角に渡り合う。

 「ACS…ドライブ!」

 「ヒート…ブレイク!」

 示し合わせたかの様に高速突撃攻撃。
 レイジングハートとルシフェリオンの先端が交錯し火花が散る。

 ルールを授けたとは言え激しい戦いだ。
 管理局の一般魔導師が見たらそれだけで自身を喪失しかねないほどのハイレベルバトル。

 だが、それほどのバトルを行いながらも戦う2人の顔には(シュテルは分かり辛いが)笑みが浮かんでいる。


 楽しいのだ。
 互いにルールーの中でとは言え全力を出せるのが楽しくて嬉しい。

 いや、ルールの中であるからこそ出せる全力もある。
 きっとなのはとシュテルはお互いに相手を『倒すべき敵』とは見ていないだろう。
 全力の出せる相手…『好敵手』なのだ。


 「殲滅…ディザスターヒート!」

 「!!3連続の直射砲…!く…バスター!!」

 その中で見せたシュテルの新たな魔導をバスターで捌く。
 互角…完全に互角だ。

 「凄いね、直射砲の連発なんて。」

 「此れくらい出来なくては貴女を超えることは不可能ですから…」

 「凄い高評価…やっぱり嬉しいかな♪」

 「貴女は私のオリジナル…ですが其れを抜きにして敬意を払うに値する相手です。」


 戦いは激しさを増す。


 飛び交う魔力弾。
 炸裂する極大直射砲。
 瞬間加速を使っての背後の取り合いに高速突撃攻撃を使っての近距離戦。


 これで『禁じ手』が設定されている戦いとは誰も信じないだろう。


 「フィニ〜ッシュ!!」

 「粉砕…!」

 素手に魔力を纏わせた魔力付加打撃も略互角。


 「矢張り貴女との戦いは心が躍りますねナノハ。」

 「其れは私もかな?…でもそろそろ…!」

 「はい、余り長い時間は…此れで決めるとしましょう!」


 互いに戦いに長い時間が翔らない現実。
 シュテルの言葉を合図に、弾かれたように距離が開く。

 ナノハとシュテル…この2人の戦いの〆は矢張り『砲撃魔砲』だ。
 いや、寧ろその撃ち合い以外での決着などはありえない。


 「行くよシュテル!」

 「参りますよナノハ!」


 魔力集中完了。
 集束砲でもないのに凄まじいものだ。

 「全力全壊!ディバイィィィィィン…バスタァァァァァァァァー!!」
 『Divine Buster Extension.』


 詰め込めるだけの魔力をつぎ込んだなのはの直射砲。


 「全力全壊…ディザスターブレイズ!!」


 同様のシュテルの直射砲。


 ぶつかり合い炸裂する桜色と真紅の魔力砲。
 これで『ルール内』だと言うのだから呆れるしかないだろう。


 「「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」



 ――ゴゴゴゴゴゴ…バチッバチッ…!



 「行っけぇぇぇぇーーーーー!!」

 「負けま…せん!!」

 どちらも退かない。
 ぶつかる魔力は既に限界を超えているだろう。

 そして、



 ――ドガァァァン!!



 爆発。
 互いに吹き飛ぶ。
 砲撃は互角だが…


 ――チャキ…


 「一本…かな?」

 「お見事…私の負けのようですね。」

 吹き飛んだ直後に体勢を立て直したなのはがシュテルにレイジングハートの先端を突きつけゲームセット。
 実力は略互角だがなのはの執念勝ちと言うところだ。


 「凄いね…。前よりも全然強いよ♪一歩間違えば負けてたかも。」

 「お褒めに預かり光栄です。…ですが後一歩貴女には届きませんでしたか。」

 肩を落とすシュテルだが、其処に落胆は見えない。
 負けはしたが戦いそのものには満足したのだろう。


 「そう言えば…如何してまた現れたの?」

 戦いが終われば再度情報が欲しい。
 なのはは事が起こったときからの疑問をぶつけてみた。

 「如何して…と言われると答えに窮します。私達は自分の意思で復活した訳ではないんです。」

 「え?そうなの?」

 「はい。誰かに呼ばれた気がしたんです…まるで無理やりに。言うなれば時を動かされたような感じでしょうか?」

 予想外だが貴重な情報だ。
 シュテル達マテリアルが己の意思で復活したのでないとすれば、その原因は間違いなく素姓不明の渡航者2名だ。


 あの渡航者――アミタとキリエが関係しているのは疑いようが無い。


 「砕け得ぬ闇…やっぱり…」

 「はい、それだけは…貴女方には迷惑をかけないよう最大限善処はします。
  少なくとも全く関係の無い一般人に危害を加え無い事は、今この場で天地神明に誓って確約しましょう。」

 「人の迷惑に成らないんなら良いんだけど…でも、あの渡航者のお姉さんは…」

 「さぁ?ディアーチェは彼女が砕け得ぬ闇を手にする為の切り札と考えているようですが…」

 「そうなんだ…」

 貴重な情報を得られはしたが、それでも謎の部分のほうがまだ多い。

 「何れにしても私が言えるのは此処までです…また会いましょうタカマチ・ナノハ…」

 「あ、待ってシュテル!!」

 戦いに満足し、話しても問題ない事のみを伝えたのかシュテルは瞬間離脱。
 完全な不意打ちになのはは追撃が出来なかった。


 「なのはさん、無事ですか?」

 「リニスさん。はい、大丈夫です。大丈夫ですけど…逃げられちゃいました、シュテルに。」

 「シュテル…なのはさんを模したマテリアルでしたか…」

 リニスが駆けつけるが、既にシュテルの姿は無い。
 尤もリニスはリニスで、アミタを探しつつ闇の欠片を鎮圧して居た故に此処に来るのが遅れたのだが。


 「一体今回の事件は…」

 「分りません。けど…前の闇の欠片事件よりもとんでもない事が起きる気がしてならないんです…」

 「警戒を解く事は…出来ませんね…」


 情報を得た事で深まった謎。
 ある意味での悪循環だが、新たな情報が得られた事は貴重だ。

 なのは達のみならずはやてとフェイト、遊星も夫々尽力しているだろう。

 それでも確信に至れるかどうかは全くの分らずじまいだった…













 そして同じ頃…


 「久しぶりと言うのが矢張り正しいのか?」

 「かもしれないな。だが、それ以上にお前にまた会えたことが嬉しいぜ。」

 遊星も自身の写し身のマテリアル――『疾風の血闘者』と対峙していた…















   To Be Continued… 





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