小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「元気そうだな…と言うのもおかしいかも知れないが、またお前と会うとはな…」

 「あぁ、俺としても此れは予想外だったぜ。」

 対峙する遊星と疾風。
 だが、この2人も先のなのはとシュテル同様に敵対心と言うものは感じられない。

 前回の事件で本気のデュエルをした事が関係しているのは間違い無いだろう。

 尤も、だからと言って遊星が疾風を見逃す事ができるかと言うと其れは否。
 現状、闇の欠片が活動しているのは事実であるし、正体不明の渡航者の事も有る。

 出来れば情報が欲しいところだ。

 「前の時に『砕け得ぬ闇には興味が無い』と言っていたが…何故今回は他のマテリアル達と…?」

 なので、遊星は先ずは情報収集から始めることにしたようだ。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス47
 『再会〜決闘と血闘〜』











 「砕け得ぬ闇…か。いや、正直に言うと今も俺は直接的に興味があるわけじゃない。」

 その答え。
 矢張り疾風自身は『砕け得ぬ闇』に其処までの執着を持っているわけではないようだ。

 だが其れならば何故に他のマテリアルと協力しているのだろう?

 「ただ、『砕け得ぬ闇』が俺達の存在を固定するものだと言う事だけは分る。」

 「如何いう事だ?」

 「俺達は王を含め、本来固定外見を持っては居ない。
  だから闇の書の闇を砕いたお前達の姿を借りたんだが…其れでも俺達の存在は酷く不安定だ。
  その不安定さをなくし、確固たる存在としてこの世界に留まる為に砕け得ぬ闇は必要らしいぜ?」

 簡潔ではあるが要点を抑えた見事な説明だ。
 遊星も納得顔。

 「それじゃあお前も…」

 「あぁ、俺の存在を固定するためにな。…だがそれ以上にあいつ等は仲間だ。
  仲間のなそうとしている事を達成させてやるのも信頼と友情だとは思わないか?」

 「確かにそうだな。」

 有る意味での正論だ。

 だが、矢張り『砕け得ぬ闇』の復活は看過できる事ではない。
 如何に疾風達の存在を固定するためとは言え、正体不明の力は危ない事この上ない。

 「危険性は無いのか?」

 「如何だろうな?俺も砕け得ぬ闇のエネルギーがどれ位かは想像がつかないぜ。
  加えて…何と言うか俺達にとって『砕け得ぬ闇』は必要なものだという事は分っても、其れの本質は…正直覚えていない。」

 「記憶障害か?」

 「闇の書のバグのせいだと思うがな。」

 マテリアルですらもその全容が掴みきれていない『砕け得ぬ闇』。
 嫌な予感は拭えない。


 「…………」
 「…………」

 無言。
 互いに『安全かつ平和に事態を終息する方法』を考えているのだろう。
 だが、如何に遊星とそのコピー体である疾風であっても早々簡単に答えは出るものではない。

 「…考えて答えが出るものでもないか…」

 「そうだな。…まぁ、砕け得ぬ闇の事は追々考えるとして、其れとは別に疾走決闘だ遊星。」

 「ライディングデュエル?」

 で、突然のデュエルの申し込み。
 寧ろ疾風的には此方がメインで遊星の前に現れたのだろう。

 「前回負けて消滅してから、闇の中で俺はずっとお前ともう一度デュエルしてみたいと思っていた。
  前のお前のコピーデッキとは違う……俺は俺のデッキを手に入れた。…受けてくれるだろ?」

 「あぁ…勿論だ!」

 遊星もまたデュエルを申し込まれたら断るなどありえない。
 デュエリストにとって挑まれたデュエルは受けるが礼儀。

 仮に他になすべき事があろうとも、此れだけは譲れない。


 「お前ならそう言ってくれると思ったぜ遊星。」

 「デュエリストとしてお前の本当のデッキにも興味があるからな。…そう言えば名前が有るんだったな?
  デュエルの前に改めて教えてくれないか、お前の名を。」

 「良いぜ。俺は『ゲイル』、理屈っぽいのが『シュテル』、底抜けに明るいのが『レヴィ』、王が『ディアーチェ』だ。」

 改めての名乗り。
 以前よりも響くのは、闇の欠片事件の時よりも存在が確立されているからだろう。

 「良い名前だな。…だが…王か…」

 「どうかしたか?」

 「いや、お前達の王に『ミラーフォースには気をつけろ』とだけ伝えておいてくれないか?」

 「???…良く分らないが確かにミラーフォースは厄介なカードだから伝えておくぜ。」

 如何にも遊星の中では『キングはミラーフォースを喰らう者』で有るらしい。
 有る意味仕方ないかもしれないが…



 其れとは別に、デュエルをするとなれば其れはもう手加減なしが当然。
 遊星もゲイルも勿論手加減等微塵も考えては居ないだろう。

 「其れは兎も角として、行くぞゲイル!」

 「相変わらずいい決闘者魂だな遊星…燃えてきたぜ!」


 「「フィールド魔法『スピードワールド2』セットオン!!」」


 迷わずに互いにDホイールのエンジンを吹かしデュエル準備万端。
 スピードワールド2が展開され、独特のフィールドが出来上がり其れがそのまま封鎖結界としての役割も果たす。

 前回同様レーン申請は不可。
 フリーライディングでのライディングデュエルとなる。


 「「ライディングデュエル…アクセラレーション!!」」

 言葉は不要とばかりに、出来上がったフィールドを疾走。
 緩いカーブが続くが、ファーストコーナー争いになるほどのものではない。

 互いに一歩も引かないデッドヒート。
 ファーストコーナーは海に面した道路の直角カーブ!


 遊星もゲイルもトップスピードで突っ込むが………僅かにゲイルが勝った。
 まったくの偶然ではあるがコーナーのイン側を走っていたのが有利に働いたのだ。


 「Dホイールの性能も、前よりも高くなっているみたいだな。」

 「此れ位じゃないとお前には勝てないからな……行くぞ遊星!」

 「あぁ…本当の決着をつけよう!」


 「「デュエル!!」」


 遊星:LP4000   SC0
 ゲイル:LP4000   SC0


 「俺のターン!『ジャンク・ブレーダー』を召喚!」
 ジャンク・ブレーダー:ATK1800


 先ずはゲイルのターン。
 レベル4で攻撃力1800のモンスターだが、このカードは遊星のデッキには無い。
 違うデッキと言うのは嘘ではないようだ。

 「カードを1枚伏せてターンエンド。」

 「俺のターン!」


 遊星:SC0→1
 ゲイル:SC0→1


 「俺は『マックス・ウォリアー』を召喚!」
 マックス・ウォリアー:ATK1800


 遊星も略同ステータスのモンスターを召喚。
 先ずは互いに低レベルアタッカーで小手調べと言ったところだろう。

 「バトル!マックス・ウォリアーで、ジャンク・ブレーダーを攻撃!そしてこの瞬間にマックス・ウォリアーの効果発動!
  マックス・ウォリアーは相手モンスターを攻撃するとき攻撃力が400ポイントアップする!」
 マックス・ウォリアー:ATK1800→2200


 攻撃力は同じでも、此処はモンスター効果で勝る。
 勿論其れを踏まえての召喚であったのだが、これで先手を取れる。

 「貫け『スイフト・ラッシュ』!!」


 超高速の連続突きがジャンク・ブレーダを貫きゲイルのライフを削る。


 ゲイル:LP4000→3600
 「く…中々強烈なフィールだぜ…!トラップ発動『戦士の誇り』!戦闘で破壊された戦士族モンスターを墓地から特殊召喚する!
  そしてこの効果で蘇ったモンスターはこのターン戦闘では破壊されない!舞い戻れ『ジャンク・ブレーダー』!」
 ジャンク・ブレーダー:ATK1800(戦闘耐性)


 ゲイルも罠を使って戦線維持。
 マックス・ウォリアーの効果を考えれば非常に良い一手だ。

 「マックス・ウォリアーは戦闘で相手モンスターを破壊した時ステータスが半分になる…カードを1枚伏せてターンエンドだ。」
 マックス・ウォリアー:ATK2200→1800→900


 デメリットも有るマックス・ウォリアーなのだ。
 尤も防御くらいは講じているだろうが…

 「俺のターン!」


 遊星:SC1→2
 ゲイル:SC1→2


 「チューナーモンスター『ライティ・ドライバー』を召喚!」
 ライティ・ドライバー:DEF300


 「チューナー…来るか…!」

 「行くぞ!レベル4のジャンク・ブレーダーに、レベル1のライティ・ドライバーをチューニング!
  大地の痛みを知る傷だらけの戦士よ、その身の健在を示せ!シンクロ召喚『スカー・ウォリアー』!」
 『ウオォォォォォォ…!』
 スカー・ウォリアー:ATK2100


 シンクロによって呼び出されたのは全身傷だらけの歴戦の戦士。
 幾多の戦場を掛けたであろうその姿は迫力が有る。

 「スカー・ウォリアー…此れがお前のシンクロモンスターか…!」

 「その先駆けだがな。バトル!スカー・ウォリアーでマックス・ウォリアーを攻撃!『ブレイブダガー』!」

 先程のお返しとばかりに、今度はスカー・ウォリアーの一撃がマックス・ウォリアーを切り裂き遊星のライフを大きく削る。


 遊星:LP4000→2800
 「うわぁぁぁ…!!く…だがトラップ発動『奇跡の残照』!このターン破壊されたモンスターを蘇らせる!来い『マックス・ウォリアー』!」
 マックス・ウォリアー:ATK1800


 遊星もまたトラップで対抗しフィールドを空にはしない。
 ライフこそゲイルが有利だが、此処までの戦術には大きな差は無い。


 「流石だぜ遊星。カードを2枚伏せてターンエンドだ。」

 「効いたぞお前の一撃は…!俺のターン!」


 遊星:SC2→3
 ゲイル:SC2→3


 「俺はチューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚!」
 ジャンク・シンクロン:ATK1300


 遊星も負けじとチューナーを。
 シンクロされたならシンクロで返すのだろう。

 「レベル4のマックス・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
  集いし怒りが、忘我の戦士に鬼神を宿す。光射す道となれ!シンクロ召喚、吠えろ『ジャンク・バーサーカー』!」
 『ガァァァアァ!!』
 ジャンク・バーサーカー:ATK2700


 召喚されたのは真紅の狂戦士。
 巨大なアックスソードが凄みを与える存在だ。

 「バトル!ジャンク・バーサーカーでスカー・ウォリアーに攻撃!『バーサーカー・クラッシュ』!」

 振り下ろされたアックスソードは傷だらけの戦士を撃ち、又もゲイルのライフを削る。
 だが、スカー・ウォリアーは健在のままだ。

 「良い攻撃だぜ…だが、スカー・ウォリアーは1度だけ戦闘では破壊されない!」
 ゲイル:LP3600→3000


 「限定的な戦闘耐性か…カードを1枚伏せてターンエンド。」

 「俺のターン!!」


 遊星:SC3→4
 ゲイル:SC3→4


 「スピードスペル『Sp−エンジェルバトン』を発動!デッキからカードを2枚ドローしその後手札を1枚捨てる。
  …俺は『ジャンク・ドラゴンセント』を墓地に。そしてチューナーモンスター『ネジマキの見習い戦士』召喚!」
 ネジマキの見習い戦士:DEF800


 大凡止まりそうにない。
 このデュエルは間違いなくシンクロ合戦だ。

 「今度はレベル7のシンクロか…何を見せてくれる?」

 「ふっ、コイツには出し惜しみは無しだ!レベル5のスカー・ウォリアーにレベル2のネジマキの見習い戦士をチューニング!
  黒き空を切り裂く雷光の戦士よ、猛る力を解放せよ!シンクロ召喚『ライトニング・ウォリアー』!!」
 『オォォォォォ…!』
 ライトニング・ウォリアー:ATK2400


 今度現れたのは雷光を纏った白き戦士。
 先程のスカー・ウォリアー同様、このモンスターもまた遊星のデッキには存在していない。

 「ライトニング・ウォリアー…だが、攻撃力はジャンク・バーサーカーの方が上だぞ?」

 「確かにな…だが、墓地のジャンク・ドラゴンセントの効果発動!
  墓地のこのカードを除外し、エンドフェイズまで俺のモンスター1体の攻撃力を800ポイントアップさせる!」
 『ウオォォォォォォォ…!』
 ライトニング・ウォリアー:ATK2400→3200


 これまた見事な戦術でパワーアップ。
 此れを見越して『ジャンク・ドラゴンセント』を墓地に送ったのだろう。

 「行くぜ!ライトニング・ウォリアーでジャンク・バーサーカーを攻撃!喰らえ『ライトニング・パニッシャー』!」


 雷光の一撃が狂戦士を粉砕!

 「く…」
 遊星:LP2800→2300


 「ライトニング・ウォリアーの効果!戦闘で相手モンスターを破壊したとき、相手の手札枚数×300ポイントのダメージを与える!
  お前の手札は3枚!よって900ポイントのダメージだ!『ライトニング・レイ』!!」

 更なる追撃でライフを削り取る。
 この戦い方は前の時とはまるで別人だろう。

 「うおわぁぁ…!!」
 遊星:LP2300→1400


 マシンコントロールこそ失わないが、それでも相当なダメージ。
 が、遊星の顔には笑みが。

 矢張り楽しいのだろう…全力のデュエルは。

 「前にも増して激しいな、お前の『フィール』とやらは…正直可也効いた…!」

 「マダマダこんなもんじゃないぜ!ターンエンド。」
 ライトニング・ウォリアー:ATK3200→2400


 同様にゲイルの顔にも笑みが。
 魂の全力デュエリスト同士のデュエルは心に響くのだ。

 「俺のターン!」


 遊星:SC4→5
 ゲイル:SC4→5


 「スピードスペル『Sp−エンジェルバトン』!カードを2枚ドローし、その後手札を1枚捨てる!
  俺は『ターボ・シンクロン』を墓地に。そして相手フィールドにのみシンクロモンスターが存在する時、
  墓地からレベル1のモンスターを特殊召喚することで手札の『スニーク・ジャイアント』をリリース無しで召喚出来る!
  墓地のターボ・シンクロンを特殊召喚し、現れろ『スニーク・ジャイアント』!」
 スニーク・ジャイアント:ATK0
 ターボ・シンクロン:ATK100


 再び遊星の速攻!
 あっという間にレベル6のシンクロの準備が…恐ろしい展開力だ。

 「レベル5のスニーク・ジャイアントに、レベル1のターボ・シンクロンをチューニング!
  集いし絆が、新たな力を紡ぎ出す。光射す道となれ!シンクロ召喚、轟け『ターボ・ウォリアー』!」
 『ファァーーー!!』
 ターボ・ウォリアー:ATK2500


 現れたのはライトニング・ウォリアーに対抗するかのような真っ赤な戦士。
 この局面では強力な1体だ。

 「ターボ・ウォリアー…そう来たか…!」

 「ターボ・ウォリアーの効果は知ってるだろう?
  レベル6以上のシンクロモンスターを攻撃するとき、そのモンスターの攻撃力を半分にする!『ハイレート・パワー』!」
 『トゥアァァ!』


 ライトニング・ウォリアー:ATK2400→1200


 高レベルのシンクロを相手にする時には頼りになるこの効果。
 攻撃力半分では太刀打ちできない。

 「行け、ターボ・ウォリアー!ライトニング・ウォリアーを攻撃!!『アクセル・スラッシュ』!!」
 『ハァァ!!』


 鋭い貫手が突き刺さり、ライトニング・ウォリアー粉砕!
 ゲイルのライフも大きく削られた。


 ゲイル:LP3000→1700
 「ぐ…だが、トラップカード『奇跡の残照』!此れでライトニング・ウォリアーを復活させる!」
 ライトニング・ウォリアー:ATK2400


 だが、此処でもモンスターは途切れない。
 甲乙付け難いとはこのことだろう。

 「お前もそのカードを…俺は此れでターンエンド。」

 「俺のターン!」


 遊星:SC5→6
 ゲイル:SC5→6


 「永続トラップ『エンジェルリフト』!この効果で墓地のレベル2以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する!
  俺が墓地から特殊召喚するのは、チューナーモンスター『ライティ・ドライバー』!」
 ライティ・ドライバー:ATK100


 又してもシンクロの布陣。
 恐らくはネオ・ドミノシティにおいてもこれ程のハイレベルデュエルは早々お目にかかれないだろう。

 「レベル8…そうか、来るんだな?」

 だが、其れとは別に遊星が気付いたのはチューナーと非チューナーのレベル合計。
 此れまでの攻防で、ゲイルがチューナー指定無しのシンクロを使う事は分った。
 そうなると、チューナー指定ではないレベル8となれば、遊星には『あのモンスター』しか浮かばない。

 「あぁ。だがコイツもお前の持つ『ソレ』とは違う存在だぜ?」

 「なに?」

 しかしゲイルは遊星の予想を否定。
 つまりは遊星のエースモンスターとは異なるモンスターを従えているのだ。

 「見せてやる!レベル7のライトニング・ウォリアーに、レベル1のライティ・ドライバーをチューニング!
  星海を切り裂く一筋の閃光よ、魂を震わし世界に轟け!シンクロ召喚!!」


 ――バサァ…


 風が舞い、光が弾ける。

 「な!?…此れは…!!!」

 その光の中から現れた白銀の龍。


 「空を翔けろ『閃光竜 スターダスト』!!」
 『グオォォォォォ…!』
 閃光竜 スターダスト:ATK2500



 疑いようも無い。
 その龍の姿……細部にこそ微妙な差は有るが、ソレは紛れも無く遊星のエースモンスター『スターダスト・ドラゴン』だった…















   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 戦士の誇り
 通常罠
 自分フィールド上に存在する戦士族モンスターが戦闘によって破壊された時に発動する事ができる。
 そのモンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。
 この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時まで戦闘では破壊されない。


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