小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 戦闘と捜索は続く。
 勿論フェイトとアルフもご他聞に漏れずだ。

 「なんて優しいワンちゃん!まさかウィルス駆除のワクチンでも頂けるんですか!?」

 「そうは言ってない!大体アタシは狼だ!」

 「申し訳ありません、初対面なのに優しくしていただいて!」

 「でぇぇい、人の話を聞け!アンタの頭の中身はお花畑か!?」

 「はい!心の中は常に綺麗な花で一杯にしておこうと心がけています!」

 「駄目だコイツ…根本的に話が通じないや…」

 そのアルフは、捜索途中でアミタに遭遇。
 取り合えずの同行を言った途端にこれだ。

 アルフでなくとも頭痛がしてくると言うものだ。

 「どっちにしても埒が明かないか…しゃーない、力ずくで大人しくさせるとするかね?」

 尤も、選択した行動は実にアルフらしいと言えばらしいのだが…












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス49
 『渡航者の目的は?』











 「え?ちょっと、何でイキナリ攻撃してくるんですか!?」

 「アンタが人の話し聞かないからだろうが!!」

 突然戦闘になった事に驚くアミタ。
 驚くのは至極当然だが、此れはある意味自分で蒔いた種とも言える。

 と言うか、遭遇したのがアルフだったのが又悪かった。
 此れがシャマルやリニスだったら戦闘回避は出来たかもしれない。

 だが、アルフは狼が素体のせいか気が長くない上に好戦的な面がある。
 あんなに素っ頓狂な答えばかりされたら極めて短い堪忍袋の尾が切れるのは当然の事だ。

 「悪いようにはしないから、大人しく同行してくれないかねぇ?」

 「で、でしたらその攻撃を止めていただきたいのですが…!」

 「ぶっちゃけアンタが先にその銃みたいなのを向けてきたんだろう!!」

 如何やら、先に武器向けたのはアミタのほうだったらしい。
 つまり、さっきの会話らしきものの最中、アミタは手にした『ヴァリアント・ザッパー』をずっとアルフに向けていたのだ。

 これもアルフが『プチッ』と行った原因の一つと言えるだろう。


 「はっ!す、スイマセンつい癖で!」

 「んな迷惑な癖は捨てちまえぇ!!ブレイク!!」

 「あ、アクセラレイター!」

 突進拳打を光速移動で避ける。
 戦闘に入っても会話が続いている辺り、意外と余裕はあるらしい。

 「オイコラ、避けるな!」

 「嫌です!当たったら痛そうですから!」

 「だったら大人しくついて来いっての!」

 「ご厚意感謝しますが、一身上の都合により逃走させていただきます!!」

 「あ、待てこら!!」

 逃げるアミタ、追うアルフ。
 暫くこの追いかけっこは続きそうだ。








 ――――――








 同じ頃、フェイトはフェイトでキリエと遭遇していた。

 「ん〜〜、デートのお誘いは嬉しいんだけど今ちょっと忙しいの。ごめんね、また今度〜♪」

 「ま、待って下さい。一緒に来ていただけないと困るんです。」

 「強引なお誘いも嫌いじゃないけど、今はダ〜メ♪」

 「あの…そうではなくてですね…」

 流石は姉妹と言うべきか、キリエもまた話が通じていない様子。
 根が真面目なフェイトにとっては何とも頭の痛い相手だろう。


 「まぁ、早い話『怪しいお姉さんを強制的に連行したい』って事なんでしょ?」

 と思いきや、どうやら分ってやっていたらしい。
 寧ろこっちの方が性質が悪い。

 「そう言う事ならお断り。切って払って先に進ませてもらいま〜す♪」

 言うが早いか、ザッパーを大剣に変形させて切り掛ってくる。
 キリエからしたら、目の前のフェイトは年端も行かぬ子供。
 戦う力を持っていようとも自分の方が上と言う思いがあるのだろう。

 だからこそからかった様な態度をとっていたわけだが。
 だが、其れはフェイトを甘く見すぎとしか言い様がない。

 例え子供でも、フェイトは管理局の魔導師をも上回る力を持った優秀な魔導師なのだ。

 「そうはさせません!」

 キリエの一撃をバルディッシュで受け止め、捌き、


 ――シュンッ


 「へ?」

 その姿が消えた。
 それにはキリエも目が点になる。
 目の前の人間がイキナリ消えたともなれば当然だ。

 「覇ぁぁぁ!!」

 その消えたフェイトは略真上からキリエを強襲。
 捌いた瞬間に『ブレイズフォーム』に換装し、攻勢に出たのだ。

 「うそ!?速すぎ…!く…ラピッドファイア!」

 その攻撃を避けるのは無理と判断し、高速の魔力弾で迎撃を試みるが又してもフェイトが消える。
 瞬間加速に特化したこのフェイトの動きを見切ることなど不可能だろう。

 「プラズマスマッシャー!」
 『Plasma Smasher.』


 「やぁん!」

 今度は背後から。
 略ゼロ距離での直射砲など防ぐことは不可能。

 その強烈な一撃をまともに喰らったキリエは当然吹き飛ばされる。
 勿論其れを見逃すフェイトではない。

 「行くよ、バルディッシュ。」
 『Yes sir.』

 「疾風迅雷!」
 『Sprite Zamber.』


 必殺の一撃を振り下ろす。
 当たれば『非殺傷』とは言え撃墜必須。

 「ちょ…うそぉぉん!?あ、アクセラレイター!」

 流石にキリエも焦り、間一髪で其れを避ける。
 が、其れもフェイトの作戦通りの事だ。

 「其れは読んでいました。バルディッシュ!」
 『Lightning Bind.』


 「へ?いやぁぁぁん!」

 移動した先の拘束魔法。
 スプライトザンバーはバインドで拘束するための布石、『見せ技』だった訳だ。

 「手荒な真似をしてスイマセン。お願いですから同行してください。」

 「だから無理なの。私は私でやることがあるの!」

 「ですから其れすら分らないんじゃ、協力も何も出来ないじゃないですか!」

 「……故郷とお父さんを助けたいのよ…」

 暫く沈黙の後、ポツリと言う。
 其処には先程までのような『軽い』感じはまるで無い。

 「お父さんを?」

 「その為には王様の持つ魔導書に眠る『砕け得ぬ闇』の力がどうしても必要なの!
  だからお願い、見逃して…。助けたいのよ、お父さんを!!」

 嘘ではないだろう。
 必死な事が伝わってくる。

 「…『砕け得ぬ闇』に危険は無いんですか?」

 「ゼロとは言えないけれど、制御の仕方は分ってる。大丈夫、きっと巧く行くから!」

 しばしフェイトは考える。
 嘘を言っている感じではない、だが危険性もゼロではない。

 「分りました…」

 考えた後に、キリエをバインドから解放した。

 「お父さんを助けたいんですよね?家族を助けたいと言う思いは私にも分ります。
  だから今回だけは見逃します。私はこの場で誰も見ていないし、誰とも戦っていない…そう言う事にします。」

 「良いの?」

 「…今回だけです。次はありません。
  『砕け得ぬ闇』が暴走でも起こした場合は、その時は貴女方の都合に関係なく強硬措置をとりますから。」

 「…分ったわ。大丈夫よ、そうはならないから♪」

 目的を達成できると踏んだからか、キリエも何時もの調子に戻る。

 「子供だと思ったけど、よくよく見れば良い子ね。10年もすれば良い女性になるわよ貴女♪」

 ザッパーをしまい、離脱せんとする。
 軽口は忘れないようだが。

 「…見逃してくれてありがとね。」

 すれ違う瞬間、それだけ言って一気に加速し居なくなってしまった。


 『Sir?』

 「今回だけだよバルディッシュ。……!!この魔力反応は!!」

 その直後、フェイトは大きな魔力反応を感知した。
 其れはとても良く知ったったものであった様だ…








 ――――――








 「や、矢張りウィルスの影響でしょうか…も、もうそろそろ限界です…」

 「やっと、止まったか…」

 一方で、アルフとアミタの追いかけっこも一段落。
 射撃魔法撃ったり、殴ったり防いだりと極めてバトル全開の『追いかけっこ』だったが、アミタの方が先に限界が来たらしい。

 「やれやれ…ま、その変な武器も使えないみたいだし、今度こそ大人しくしてくれるかい?」

 漸くと言った感じのアルフだが、此れにアミタが反応した。

 「変な武器なんかじゃありません!私の父が作ってくれた大切な武器なんです!!」

 どうやら自分のザッパーを『変な武器』と言われたのが看過できなかったらしい。
 それほど此れは大切なものなのだろう。

 「あ〜〜〜ゴメン、其れを馬鹿にしたわけじゃないんだ。
  『普段の言葉使いが乱暴だと、知らずに人を傷つけることがある』ってご主人様や家庭教師にも言われてんだけどね…
  気に障ったみたいなら謝るよ…ゴメン。」

 「あ、いえ、私も家族の事となるとつい熱くなってしまいまして…」

 やや勢いがそがれる。
 が、それでもアルフにはやる事があるわけで…

 「それで…その手に持った、眩い光沢を放つ手錠は一体なんでしょうか?」

 「ん?いや〜、無神経なこと言って悪かったってのと、怪しい奴を拘束しとこうってのは又別問題だからねぇ?」

 つまりはそういう事。
 アミタの確保を諦めた訳ではなかったのだ。

 「何て聡明なワンちゃん…いえ、狼さんでしょう!!まさか其処まで考えていたなんて…!」

 「驚くのは勝手だけどね?はい、確保っと。」

 難なく近づき、手錠をかけ…


 ――シュン!


 ようとして、アミタが一瞬で距離を開け拘束失敗。

 「あれ?」

 「も、申し訳ありませんが捕まるわけには行かないので…!離脱させていただきます、アクセラレイター!とりゃ〜〜〜!」


 ――バシュン!!


 一瞬で居なくなってしまった。

 「一瞬で消えちゃった…なんだ、アイツ手品師かぁ?」

 その方法に疑問が浮かんでこんな答えに。
 矢張り見知った魔導技術でないのは明らかだった。


 『アルフ。』

 「あぁ、フェイト♪」

 で、フェイトからの通信。
 現状確認と言うところだろう。

 「ゴメンよフェイト、渡航者の奴に逃げられちゃったよ…」

 『気にしないで。でも其れよりも…』

 「あぁ、分ってる。魔力反応だろう?」

 『うん…この感じ…』

 「マテリアルで間違いないだろうね。闇の欠片にしては強すぎだよ。」

 アルフもフェイト同様に魔力反応を感じ取っていた。
 魔力反応の正体はマテリアルであったらしい。

 『私はそっちに向かってるから。』

 「了解。アタシもそっちに行くから…フェイト、無理だけはしないでおくれよ?」

 『うん、分ってる。』

 「んじゃ、後で!」

 其処で通信を切り、アルフも魔力反応の源へ。

 「この魔力の感じは『偽フェイト』か?マッタク厄介事が起きるもんだよ…!」

 アルフの呟き…其れはきっと現在この件に当たっている人物の創意であろう。
 前回の『闇の欠片事件』以上に、事態は厄介事が盛りだくさんであるようだ…
















   To Be Continued… 




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