小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「あれ?此処何処?」

 「何処だろう?知らない場所…」

 事件の真っ只中の海鳴に又も火種としか思えない事態が勃発したようだ。
 ヴィヴィオとアインハルトの2人が現れたときと全く同じ魔力反応が起き、其処から1組の男女が現れたのだ。

 茶髪の少年と、白髪の少女の2人組だ。

 「なんなんだよ一体…お前の仕業か銀十字?」

 少年の方は傍らに浮かぶ魔導書と思われる本に語りかける。

 「違うって。銀十字は此処は違う世界だって言ってる。」

 「はぁ?異世界って意味わかんないから!」

 矢張りこの2人にとっても意味不明な事態であるようだ。


 「!!っと、魔力反応!」

 「おっきい!こっちに向かってくる!!」

 その2人に向かう大きな魔力反応。
 その魔力の持ち主の姿は見えないが、このままでは鉢合わせは間違いないだろう。

 「何が起きてるか分らないけど…リリィ!」

 「うん、トーマ!」

 少年――トーマは、少女――リリィに呼びかけ、何か起きたときのための対処に移る。

 『リアクトエンゲージ。』

 「モード黒騎士!」

 『ディバイダー、セット!』

 瞬間、トーマとリリィが融合し、トーマの姿が変わる。
 茶髪は銀色に、目も深い緑色に変化し、何よりも服装が黒を基調とした棘棘しいものになり、身体と顔に赤い紋様が浮かぶ。
 見た目は殆ど悪役だ。

 「さ〜ってと、この魔力反応は…?」

 そして、その魔力の持ち主が目の前に現れた…












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス51
 『未来からの渡航者?』











 「って、えぇぇ!?」

 『この人…不動博士?』

 2人の前に現れたのは遊星だった。
 ステラが魔力反応を感知し、この場に向かってきていたのだ。

 「…見ない顔だな。次元渡航者か?…此方は管理局の嘱託なんだが…渡航書か身分証は持っているか?」

 どうやらトーマとリリィの2人は遊星の事を知っている様子。
 だが、遊星は2人の事は知らないらしい。

 其れを踏まえると、この2人も先のヴィヴィオとアインハルトと同様に『未来』から来たのだろう。

 「身分証…拙い、アイシスに預けたままだ。」

 『私も…。でも其れよりも不動博士、私達の事『知らない人を見るような目』で見てる…』

 「確かに…。あの、スイマセンが不動遊星博士ですよね?」

 しかしながらトーマ達とて何がなんだかサッパリなのだ。
 なので遊星に聞いてみたのだが…

 「あぁ、俺は確かに不動遊星だが…博士とは如何言う事だ?」

 遊星だって聞かれてもどうしようもない。
 名前は合っていようとも『博士』等は今の遊星には皆目意味不明なのだ。

 『ねぇ、トーマ。今思ったんだけど、博士少し若いよね?』

 「言われてみれば…」

 良く見てみると、トーマ達は、目の前の遊星が自分達が知っている遊星よりも幾らか若い感じを受ける。

 「な、なんだか良く分らないけどスイマセン!ちょっと状況整理したいんで離脱します!!」

 で、どうにも状況が訳分らなくなったのか整理の為に一時離脱を選択。
 身分証や渡航証を持っていないというのも理由としてあるだろうが。


 「…人の話を禄に聞かずに、突然逃走するのが流行っているのか?」

 だが、其処は遊星。
 前のアミタ同様に、突然離脱を決行したトーマに突っ込みを入れつつも冷静に追跡開始だ。

 「って滅茶苦茶クールに追って来た!?」

 『博士…速い!』

 「別にお前達を不当に拘束するわけじゃない。逃げなくても良いだろう?」

 「いや、言ってる事は正にその通りなんですけど、俺達にも事情が有りますし!」

 「…そう言えば誰かもう1人いるのか?お前もはやての様にユニゾンできるのか?」

 『あ、私の場合は『リアクト』って言うんです。』

 「リリィも凄く普通に反応してる!?」

 姿は2人で、会話は3人分…奇妙な話だ。
 とは言えこのような話をしていても埒が明かないのも事実だ。


 「スイマセン、博士!此処は逃げさせてもらいます…クリムゾン!!」

 如何にも埒が明かないので、取り合えず離脱の為の威嚇の一発。
 勿論当てる事が目的ではなく、一瞬でも遊星の動きが止まってくれれば良いのだ。

 「手札から『速攻のかかし』の効果発動。ダイレクトアタックを受けるとき、このカードを手札から捨てバトルを終了する!」

 が、其処は流石の遊星。
 一切スピードを落す事無くトーマの攻撃を遮断。

 追い掛けながらの問答の最中にも、何が起きても良い様に『デュエルモード』を発動していたらしい。

 「矢張り、どんな時でも準備をしておくにこしたことは無いな。」

 「博士クールすぎだから!つーか全然スピード落ちてない!?」

 『不動博士、凄い…』

 奇襲といって言い攻撃に完全対処した遊星には驚くしかないだろう。


 とは言え、矢張りトーマはこの場を離脱したい。
 身の証を立てるものが無ければ、下手すると管理局に拘束されてそのまま…なんて事も無いとは言いきれないのだ。

 「だったら…リリィ!」

 『うん!銀十字!』

 今度はリアクト中のリリィが銀十字と呼ばれた魔導書に命じて、そのページを弾丸の様に飛ばす。

 「トラップ発動『ガード・ブロック』!戦闘ダメージを0にしてデッキからカードを1枚ドローする。」

 其れもまた何時の間にか伏せられていた『ガード・ブロック』で防御。

 「マジで!?こうなったら…!シルバー…」

 「『ハンマー!!』」!!

 その攻撃が通らないと見るや否や、今度は手にした銃剣型の武器からの強力な砲撃。

 「リバースカード、オープン。トラップカード『くず鉄のかかし』!相手の攻撃を無効にする。
  そして発動後、墓地には送られずに再びフィールドにセットされる。」

 がしかし、その砲撃も遊星の十八番とも言うべきトラップで完全シャットアウト!
 相変わらずの凄まじいディフェンドタクティクスだ。

 「嘘だろ…攻撃が通らねぇ!?」

 『凄い…八神指令やクロウ教官が『遊星に攻撃を通すのは簡単じゃない』って言ってたの本当だったんだ…。』

 正に圧倒的。
 確かに遊星に攻撃を通すのは極めて難しい。
 寧ろ今発動した『くず鉄のかかし』を攻略しない限り攻撃は通らないと見たほうが良いだろう。

 「良い攻撃だが…まだ力が使いこなせていないのか?何処と無く不安定だな…」

 で、遊星は遊星で目の前のトーマ(とリリィ)の力量を冷静に分析していた。
 更に…


 「お〜〜い、遊星〜〜。」

 「無事か遊星?」

 はやてとリインの『夜天コンビ』が到着。
 トーマとリリィが転送された際の魔力反応を追ってきたのだろう。

 「はやてにリンフォース。あぁ、俺は大丈夫だ。」

 遊星も2人には普通に返す。


 だが、はやてとリインの登場に驚いたのは他でもないトーマとリリィだ。

 「はやてって…まさか八神司令!?それにあの人はリイン師匠のお姉さん!?」

 『師匠のお姉さんは兎も角、司令ちっちゃい…!』

 如何にもこの2人の記憶にある『八神はやて』と比べると目の前のはやては相等に幼いらしい。

 「あの…八神はやて司令ですよね?此処は何処です?俺達気が付いたらこんなところに居て…もう何がなんだか…」

 「はい?確かに私は八神はやてですけど司令とかそういうんは…」

 聞いてみてもサッパリかみ合わない。
 トーマ的には嫌な予感バリバリ、脳内警鐘が鳴りまくりだ。


 「…つかぬ事を聞きますが、今は新暦何年です?」

 「新暦?え〜〜と…何年やったリイン?」

 「66年です。」

 「新暦66年!?」

 『16年も前!…若しかして私達時を越えちゃった?』

 「いやいやいや有り得ないからそんなの!!」

 口ではそう言いながらも、トーマ自身それ以外には可能性は無いと分かっている。
 何よりも明らかに子供であるはやてが『過去の世界』である事を物語っているのだ。

 『トーマ、やっぱり逃げた方が良いかも。過去の世界に干渉するのは良くないって博士が言ってた。』

 「確かに…変に歪みが生じてエクリプス感染者が増えるような事にでもなったら大事だ。
  え〜っと…スイマセン司令、師匠のお姉さん、不動博士!世界の安定の為にやっぱ離脱させてもらいます!銀十字!!」

 『ハイパードライブ承認。』

 過去への干渉は良くない…なので矢張り取るべき手段は離脱のみ!
 先程とは比べ物にならない量の魔導書のページが吐き出され遊星達の視界を完全に塞ぐ。

 「な!?なんやこれ!?」

 「逃走用の煙幕代わりか…!」

 「魔導書のページをこんな風に使うとは…此処はお任せを。響け…ナイトメアハウル!」

 取り巻く魔導書のページもリインが一瞬で吹き飛ばす。


 が、既にトーマの姿は無い。
 巧く逃げられてしまったようだ。


 「は〜〜〜素早いなぁ。それに今の子…」

 「はい。恐らくは私と主のような『融合』タイプの者かと…」

 「矢張りそうだったか。だが、俺の事を博士と呼んだり、はやてを指令と呼んだり…一体どういうことだ?」

 事件解決には程遠い状況で、又しても謎が増えてしまった。

 「まぁ、分からない事考えても仕方ないやろ?やっぱし先ずは王様達の確保やな。」

 「確かに其れが良いのかもしれないな…ん?」



 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴ…



 「「「!!!」」」

 トーマ達の離脱直後、今度は又別の魔力反応が!
 しかも此れははやてとリインには覚えがある魔力――マテリアルの王『闇総べる王』の物だ。

 「王様…どんだけやねん…!」

 「距離は…可也近い様です。」

 「場所の特定は出来るかステラ?」

 『海鳴の海上…此処から約3000メートルの上空です。』

 其れを聞いたら無視はできない。
 マテリアルの王が何かしようとしている。

 となれば、今回の事件の事を考えると『砕け得ぬ闇』に関する事は間違いない。
 この反応が砕け得ぬ闇復活の『何か』ならば状況は切迫している。

 「詳細は分らないが無視は出来ないな…行くぞ、はやて、リインフォース!」

 「当然や!!」

 「あぁ、最悪が起こる前に止めなくては…!」

 渡航者は取り合えず置いておいて、止めるべきは砕け得ぬ闇の復活。
 遊星、はやて、リインフォース…赤き竜の使者と夜天の融合騎、そして夜天と赤き竜の力を宿した少女…

 目下『最強』の3人はその魔力反応の元へと急ぐのだった。








 ――――――








 その頃、ステラが示した場所には闇総べる王の姿があった。
 1人ではなくキリエも一緒だ。

 「おいピンク、何故こんな海の上で行わなくてはならないのだ?市街地の上でも充分だろうに…」

 「う〜〜ん…それは私の個人的理由かしら〜?嘘つきの約束破りにはなりたくないしね〜。」

 この場を選んだのは如何やらキリエらしい。
 フェイトに見逃してもらった礼と言うか、『被害を出さない』為にこの場を選んだのだろう。

 確かに街から離れた海上ならば、仮に問題が起こっても即座に街に被害が及ぶ事はない。

 「ふん…まぁ良い。くくく…遂に砕け得ぬ闇の復活だ!その力我が身に取り込んでくれようぞ!
  そして、その力を我が物としたときこそ、真の闇を総べる王に我はなる!!」

 既に海上には魔力が満ちている。
 まだ完全ではないが、術式完成も時間の問題だろう。


 高まる闇の気配に呼応するかのように、空には暗雲が立ち込め、海は波が荒くなっている。


 「さぁ、蘇れ砕け得ぬ闇よ!言い伝えの通りの強大な力を我に献上せい!!
  今こそ『真なる闇』の復活の時ぞ!くくく…あ〜〜〜はっはっはっは!!!」















   To Be Continued… 



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