小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 海鳴の海上に陣取った闇王とキリエ。
 中空での作業に魔力が高まり、海が荒れ風が逆巻く。

 状況だけ見れば『大いなる闇の力』が覚醒する場としてうってつけだろう。


 「あそこや!やっと見つけた〜!!」

 「…此れは…なんという闇の気配…!」

 「あぁ、地縛神以上かもしれないな。」


 だが、そう簡単にはいかない。
 目下海鳴最強の3人がこの場に到着したのだ。

 「も〜…王様、あんまり面倒かけたらアカンよ?」

 そして、挨拶とばかりに飛び出したのははやての苦言であった。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス52
 『Un Breakble Dark』











 「フン…小鴉、其れに融合騎と蟹頭か。何の用だ?」

 が、其れを受けても闇王は平然。
 不遜かつ傍若無人な態度は小揺るぎもせず崩れない。


 「…蟹?」

 「気にするな。」

 闇王の発言に何か気になった遊星だが、其処はリインフォースがスルーを推奨し抑える。
 無論はやても、闇王の発言内容には敢えて突っ込まずに話を続ける。


 「何の用も何も、人様の迷惑になる事したらアカンて言うたやろ?」

 「知らんな。大体にして王たる我が、何故下賎な塵芥共に合わせてやらねばならぬのだ?」

 「あんなぁ…王を名乗るんやったら自分以外の人の事も考えんとアカンと思うで?」

 「ほざけ小鴉。王とは唯一絶対の支配者!王たる存在こそが全てを支配する権利がある。
  我と、我の手足たる臣下以外は駒にもならぬ烏合の衆、まるで取るに足らぬわ!」

 「…其処まで行くと闇王よのうて『傲慢王』やな。何時か足元すくわれんで?」

 「やってみるが良い…。ふん、下らん話は此処までだな。
  我はディアーチェ、ピーチク煩い夜天の小鴉は、此処でひねり潰して我は我の道を行く!」

 話は無理、無駄、意味無し。
 闇王の傲慢、不遜ぶりは前回よりも更に増しているようだ。


 「…まるで偽ジャックみたいな傲慢さだな。」

 「誰なんだ其れは…」

 余りの態度に思わず遊星も突っ込んでしまう。
 …遊星に脊髄反射突っ込みをさせるとは、王の傲慢恐るべし…

 「む…遊星に高速突っ込みさせるとはやるな王様!せやけど砕け得ぬ闇は復活させへん!」

 …何故緊張感『だけ』で終わらないのだろうか?
 酷く切迫した状況のはずなのに、とっつも無くアホな場面にも見えてしまう…

 「ほざくか小鴉。この間はシュテル達が復活の為に周囲の魔力ソースを喰らったが故にパワー切れを起こしたが、今回はそうは行かぬ!」

 「ほざくんはどっちや!よく見てみ?戦力的には絶対的に私等の方が有利なんやで!?」

 確かに。
 キリエが砕けぬ闇復活に従事している以上、戦えるのはディアーチェのみ。

 それに対し、はやての方には遊星とリインフォースが居る。
 如何見ても有利なのははやてだ。

 が、戦闘になりそうな雰囲気を止めたのは以外にもキリエだった。


 「は〜い、其処まで。今戦ったりしたら、その余波で砕け得ぬ闇に影響が出て暴走しちゃうかもしれないわよ〜♪」

 非常に軽く、しかしなんとも恐ろしい事を言ってくれた。
 だが、言われてみれば確かにだ。

 砕け得ぬ闇復活の為の力が溜まっているこの場所で戦闘など行ったら何が起こるか分らない。
 オマケにはやてもリインフォースもディアーチェも魔力は滅茶苦茶高い。

 遊星もシンクロを使うときは魔力が跳ね上がる。


 その魔力が目覚めようとしている砕け得ぬ闇にどんな影響を及ぼすかなどまるで不明だ。

 無論其れがキリエの『ハッタリ』の可能性も充分にある。
 が、詳細不明である以上は下手に動かないが上策だ。


 「ふ、良くぞやった桃色!此れで砕け得ぬ闇の復活は確実よ!!」

 「…やってくれるで。まぁ良ぇわ、目覚めたところで倒せば良いだけやし…。
  其れよりも王様、目覚めるまでに時間が有るようやから教えてくれへんか?…砕け得ぬ闇て一体何?」

 下手に攻撃が出来ないのならば、少しでも情報が欲しいところだ。
 勿論簡単に聞き出せるとは思わないが、それでも聞いてみるだけなら無料だ。

 「ゲイルは自分達の存在の固定に必要なものだといっていたが…」

 「ゲイルが?…余計な事を。まぁ良い、そうだアレは我等の存在を確固たる者にする為に必要不可欠なものぞ。
  だが、其れは我等の存在固定のためだけではない…この世の全てを闇に染めるほどの力があるものよ!
  言い伝えによればその名は『漆黒の魄翼』…名前から察するに戦船か或いは体外強化装備か…!」

 「ん〜〜?こ〜〜んなとこかしら?」


 期待に胸を膨らませるディアーチェに、キリエは端末を操作しイメージを簡単な3Dモデルとして出す。

 「おぉ!なかなか格好いいではないか!!」

 そのイメージはレトロなロボットアニメに出てきそうなロボットに、はやての甲冑の羽をつけたようなもの。
 ハッキリ言ってセンスが無い。

 「…これ、格好えぇかなぁ?」

 「小さな子供は喜ぶかもしれないが…」

 「私にはよく……ですが容姿的なことを言うなら『ジャンク・ウォリアー』の方がずっと上かと…」

 そのイメージにははやて、遊星、リインフォースも溜息。
 矢張り緊張感に欠けてしまう。


 だが、其れとは裏腹に魔力はドンドン強くなってくる。
 暴走を引き起こさない為にも、遊星達はその姿が明らかになるまで動く事が出来ないが復活が近いのはわかる。

 「くくく…ふはははは!さぁ蘇れ、そして我が手に収まれ!
  忌まわしき無限連環機構、システムU-D――『砕け得ぬ闇』よ!!」

 そしてディアーチェのこの一言を待っていたかの様に魔力が集束し…そして静かにゆっくりと闇が目覚める。

 「ユニット起動…無限連環機構、動作開始。システム『アンブレイカブル・ダーク』正常起動。」

 「「「「「え?」」」」」

 だが、全員が思わず自身の目を疑った。
 闇から現れたのは金髪の少女。
 日本の袴の様な服に身を包んだ小さな少女だったのだ。

 「ひ、人型とな?何故?いやいやいや、其れを言ったら我等も元は人型ではなかったわけで…」

 「ちょ、ちょっと王様?システムU-Dが人型してるなんて聞いてないんですけど!?」

 当然ディアーチェもキリエも慌てる。
 ディアーチェの記憶において砕け得ぬ闇が人型とは記憶していない。
 キリエもキリエで、人型だったとは聞いていないのだ。

 あまりの事に唖然。

 更にタイミングが良いのか悪いのか…


 「あ、目覚めたのですね…」

 「お〜〜!オハヨー砕け得ぬ闇!」

 「…女の子だったのか?予想外だぜ。」

 シュテル、レヴィ、ゲイルの3人が到着。
 奇しくも、此度の事件の中心人物がこの場に揃った事になる。

 「状況不安定…駆体の安全確保のため、周囲の危険分子を……排除します。」

 それでも砕け得ぬ闇――U-Dは起動の言葉を紡ぐ。
 そしてあふれ出す濃密な闇の魔力!

 起動直後ながら凄まじい力だ。

 「起動不安定…白兵戦モード、出力6%……!」

 同時に一気に力がはじけ、その力がはやて、遊星、リインフォースに襲い掛かる。


 「…!トラップ発動『くず鉄のかかし』!その攻撃を無効にする!!」

 「な!?あぶな〜…なんて魔力や…!まるで桁が違うで…!」

 「まさかナハト以外にこんなものが闇の書の内部に存在していたとは…!」

 その攻撃をかわした3人は、U-Dを見る。
 見た目からは想像もできない凄まじい力だ。

 その力を目にしたキリエも少々焦り気味。

 「あ、あら〜〜…想定外?これはちょっち制御難しいかも〜〜…あははは…」

 どうやら自分が考えていた以上に強い力であったようだ。

 尤もディアーチェをはじめとするマテリアルズの反応は真逆。
 己達が求めていたものが、今目の前に有るとなれば喜ぶのも当然だ。


 「その姿には驚いたが…良くぞ目覚めたU-D!さぁ、我にその力を譲渡せい!」

 相変わらずの態度のディアーチェだが、其れを見たU-Dはやや驚いたようだ。

 「ディアーチェ?ディアーチェですか?」

 どうやらディアーチェの事を覚えているようだ。
 他の3基のマテリアルを見ても驚いたような顔をした事から、シュテル、レヴィ、ゲイルの事も覚えて居るのだろう。


 「…目覚めてしまったんですね私は…」

 「うむ!さぁ、我等と共に来い!お前は我等の物よ!」

 「…出来ません。」

 否定の一言。
 そして…



 ――ドス!!



 「んな!?…き、貴様…!」

 「な、何故…?」

 「砕け得ぬ闇…なんで…如何して…?」

 「く…油断したか…!」

 次の瞬間U-Dの背中の魄翼が刃となり、マテリアルズ4人を貫いた。


 「ぐぬ…不覚だ…!」



 ――シュゥゥゥ…



 釣らぬかれたマテリアルズは、そのまま姿を消す。

 「消えた?…消滅したのか?」

 「いや、駆体維持ができなくなって魔素の状態に戻ったんだ…!」

 「駆体維持困難て…ドンだけの一撃やねん…!」

 チートバグとでも言うほどの一撃。
 更にこの一撃は先程のU-Dのセリフから察するに『6%の出力』であるはずだ。

 其れでいながらマテリアル4基を一撃で下すなと常識外もいいところだ。


 「何故私を目覚めさせたんですか…?私が目覚めたら、あとには破壊の爪痕しか残らないのに…」

 僅かに悲しみが見えるが、殆ど其れが分らないほどの無表情のU-D。
 今の一撃は彼女の意志では無いのだろうか……疑問が残る。


 「う…く…頭が…!ぐ…うあぁぁぁぁぁぁっぁ!!!」

 だが、疑問に答える者は無く、代わりにU-Dが頭を押さえて苦しみ始める。


 尋常ではない苦しみ方。
 相当に酷い頭痛でもするのだろうか?


 「うぅ…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 大地が裂けるほどの大声!
 其れと同時に、U-Dの姿は一切見えなくなった。

 よくよく見ればキリエの姿も無い。
 U-Dを追ったのか、或いは逃げ出したのか其れは分らないが…


 「遊星、リインフォース…」

 「あぁ、途轍もなく厄介な事になったみたいだ。」

 「此れは…一度皆と合流した方がいいかもしれません。」

 確かに状況は混乱の極み。
 一度なのは達と合流した方が良いだろう。


 『あ、はやてちゃん?』

 「なのはちゃん?ドナイした?」

 タイミング良くなのはからの通信。
 此方からかける手間が省けたものだ。

 『うん。今クロノ君から連絡が有って一度アースラに集まって欲しいって。』

 「良いタイミングだな。俺達も一度集まった方が良いんじゃないかと言っていた所だったんだ。」

 『ホントに?うん、それじゃあ直ぐにアースラに来てもらえる?』

 「了解や!ほなアースラで。」

 『うん♪』

 タイムリーな通信を簡潔に終える。
 矢張り状況的に、余りにも不明な部分が多いため一度集まってと言うのは皆が考えて居た様だ。


 「だが、集まるとなると闇の欠片は如何する?そちらも放置は出来ないが…」

 「心配無用だ遊星。」

 集まるのは良いとして、いまだ活動している『闇の欠片』も無視はできない。
 其れをどうするかと言う遊星だが、其れにリインフォースは僅かに笑みを浮かべて答える。

 「居るじゃないか、私達の最高の仲間が…そして主の最強の騎士達が。」

 「……そうだったな。」

 見れば、はやてが指でOKサインを作っている。
 如何やら、闇の欠片も問題無さそうだ。








 ――――――








 遊星達がアースラに向かった数分後、海鳴の上空に4つの影があった。

 「闇の欠片が、まだ活動を続けているらしいな。」

 桜色の髪の女性が言う。

 「今は活動を停止したらしいけど、マテリアルの子達も現れたって。」

 金髪の女性が其れに答える。

 「何れにせよ、無視はできまい…」

 褐色肌の屈強な男性も無視できないと言う。

 「なんだって良いじゃねーか。厄介事起こす連中はアタシ等でぶっ潰すだけだ。」

 赤毛の気の強そうな少女が自信たっぷりに言い放つ。


 現れたのは『最後の夜天の主』に使える群雲の騎士『ヴォルケンリッター』。
 はやての命を受け、闇の欠片殲滅の為に出動してきたのだ。

 「我等が主と遊星達は、事態打開の為にアースラで作戦会議だ。闇の欠片は我等で叩く!」

 「行きましょう。夜天の守護騎士の名にかけて!」

 シグナムとシャマルの号令を合図に、4人は夫々分散して闇の欠片制圧に乗り出していった…!















   To Be Continued… 






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