小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「…此処は…?私は助かったんでしょうか?」

 「えぇ、貴女は無事よ。此処はアースラの医務室…気分は如何?」

 アミタが目を覚ましたのはアースラの医務室。
 U-Dに貫かれ、機能停止した彼女は此処に運び込まれ、遊星の手で『治療』が施されたのだ。

 「はい…大丈夫です。申し訳ありません、治していただいて。」

 「貴女を治したのは遊星君よ。皮膚の部分とかは私も手伝ったけれどね。」

 機械部分は遊星が治し、表面の皮膚の部分はシャマルが魔法で治した。
 治った直後では直ぐには動けないだろうがそれでも少し休めば動けるだろう。

 「遊星さん…あのバイクの方ですね――私を治すなんて驚きです。」

 「うふふ…遊星君の技術力は世界最強よ?初めて見る物だって完璧に直してしまうんだから♪
  しかも、タダ直すだけじゃなくて元よりも数段性能アップのおまけつき。」

 「そうなんですか!?それは…凄い方なんですね…」

 不動遊星…矢張りこの男の技術力は半端ではないだろう。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス55
 『真相と闇への対抗策』











 「目が覚めたのかアミティエ?…如何だ気分は。」

 で、実にタイミングよく遊星登場。
 アミタの治療が終わり、これから今度はアミタの武器――ヴァリアントザッパーの修理に取り掛かろうかと其れを取りに来たのだ。

 「はい、極めて良好です!」

 「なら良かった。破損部分はフレームごと強化したし、エネルギーもモーメントを使って満タンにしておいた。
  行動の妨げになっていたウィルスもワクチンプログラムで除去したから動くには問題ないはずだ。」

 「其処まで…何から何までお世話になります…」

 ベッドで上体を起こしたままだが頭を下げ礼を述べる。
 基本的にアミタは礼儀正しい熱血少女なのだ。

 「構わないさ。それにあんな状態のお前を見捨てる事も出来ないからな。」

 言いながら、遊星はシャマルの隣に腰を下ろす。

 「だが、今度は聞かせてもらえないか?お前達の事を…」

 その目的は言うなれば『事情聴取』。
 前に会った時は話がマトモに出来なかったが故にアミタとキリエが何者で何処から来て、何が目的なのかサッパリ不明。
 だが、今ならば或いは話を聞く事も出来るだろう。

 アミタも今の状態で此処を飛び出してキリエを止めようとは思っていない。
 寧ろ、此処までの迷惑をかけたのだから話すのが当然だと考えていた。


 「分りました。全てお話します――私とキリエの事…そして私達の事を。」


 そうして始まったアミタの話は驚くには充分すぎる内容だった。


 アミタとキリエの2人の故郷は、地球とはマッタク異なる次元に存在する世界『エルトリア』。
 其れこそ管理局でも観測不能かつ到達できない『超管理外次元世界』とでも言うべき場所らしいのだ。

 しかも、それだけ異なる次元であるだけではなく2人は今よりもずっと未来の時間軸から来たという。
 遊星も未来の別次元の地球からこの地球に来たわけだが、其れはあくまで『赤き竜』の力によるもの。

 だが、エルトリアには既に時間次元跳躍を可能にする技術が不完全な状態とは言え存在しているという。
 尤も其れは不完全だけあって、とても実用化に耐えうるレベルではないとのコト。

 にも拘らず、キリエが其れを使ってこの世界に来たのは全て故郷のエルトリアと自分達の父のため。
 エルトリアは100年以上前から静かに、しかし確実に星が死に始めている。
 2人の父親は其れを食い止めるための手立てを研究しているが有効な一手が無く、自らも病に犯されている。
 だからキリエは父が生きているうちに、ホンの少しでも復興が進み星の死を食い止める事が出来た成果を見せたいと考えたのだ。

 そして、方法を模索する中で見つけたのが『過去の地球』に存在していた『エクザミア』だった。
 『無限連環機構』とまで言われる其れには凄まじい力が宿っている。
 そのエネルギーを制御して使用すればエルトリアを滅びの運命から救う事が出来る……キリエはそう考えたのだ。

 が、其れは別名『砕け得ぬ闇』とも呼ばれる代物。
 一歩間違えば、世界を破壊し尽くすほどの力を持った危険物だ。
 如何にキリエが制御方法を確立したとは言え、其れはあくまで机上計算に過ぎない。

 事実、制御は出来ずに今の状態に至っているのだから。


 それでも一縷の望みを賭けてキリエはこの世界に。
 アミタは妹の愚行を止めるためにこの世界に――と言うことのようだ。



 「本当なら時間次元跳躍を行うこと事態が、目的地である場所に影響を与えるんです。
  私とてこの世界の人に迷惑はかけられません…けど、キリエを放っておいたら取り返しの着かない事になるんです!」

 「成程、それで妹を追いかけていたのか。」

 「はい。…結局事態は最悪の方に向かってしまいましたが…」

 アミタの表情は暗い。
 自分が妹の愚行を止める事ができず、最悪の事態を招いてしまった事が心底悔しいのだろう。

 「最悪というにはまだ早いな。まだ都市一つ破壊されていないんだ。対抗策が分れば何とかなるかもしれない。
  それで――お前達は一体なんなんだ?」

 更なる疑問をぶつける。
 当然だろう。

 完全な『機械の身体』を持つ者に疑問を持たない方がおかしい。

 「私とキリエは、エルトリアの復興の為に生み出された機械なんです。
  けど、博士――私達の父は凝り性というか、変に気合と力が入る所があって、私達の心をハッキリ作りすぎてしまったです。
  私とキリエ以降に生み出された妹達はそんな事は無いんですが…」

 「そうだったのか…お前の父親は凄い人だったんだな。」

 疑問の答えを得て、更には彼女達の父親についても知ることが出来た。


 「何れにせよクロノが戻ってきてからだな…アイツなら大概大丈夫だと思うが…」

 「きっと大丈夫よ♪」

 フローリアン姉妹の事と、此度の事件の真相は分った。
 外回りに出ているクロノが戻ってきたら一気に事態が動くことだろう。








 ――――――








 そのクロノは海鳴の上空で、いち早く復活したレヴィと対峙していた。
 まぁ、クロノが出動した理由は『マテリアルの反応を感知』したからなのだが。


 「…どうしても駄目か?」

 「当たり前じゃん。僕達と君達とは敵同士だ。話すことなんて何もない!」

 あくまで目的は『話し合い』なのだが無理なようだ。
 まぁ、闇を砕く側のクロノと、闇を求める側のレヴィでは話は交わらない。
 平行線を辿るのみだ。



 が、クロノには秘策がある。
 フェイトから教えてもらった究極の秘策が。


 「そうか…君のオリジナルから此れを預かってきたんだが…」

 胸元から取り出したのは4色の棒つきキャンディー。
 其れを見たレヴィの目の色が変わった。

 「其れは…!」

 「イチゴ飴、ブドウ飴、メロン飴とソーダ飴。君に会うなら渡して欲しいと頼まれたんだ。」

 そしてこのチョイス。
 レヴィにはどういう意味かが早速分った。


 「此れは…!赤、紫、緑に水色…やっと取り戻す事ができた僕達の魔力光…」

 そして効果は覿面。
 レヴィから一瞬で闘気や魔力が無くなった。

 子供っぽい性格ゆえにこの作戦は上手くは待ったようだ。

 更に、


 ――聞こえますか、レヴィ?


 「シュテルん!?どこ、何処にいるの!?」

 修復中のステラからの通信。
 此れは嬉しい限り。


 ――彼等に協力してください。私と王、そしてゲイルが修復するにはもう少し時間が掛かります。
    最早、砕け得ぬ闇は私達だけでは手に負えない存在ですから、彼等の力も借りた方がよいでしょう。


 いまだ修復中だが念話通信は可能。
 其れで言うにはクロノ達に協力せよという。

 確かに、圧倒的な力を持ったU-Dを相手にするならば互いに協力した方が良いだろう。


 ――私とゲイルで対策は考えています。其れを確実なものにするためにも…任せましたよ?

 「うん…が、頑張る!」

 背後でディアーチェがなにやら騒いでいる声が聞こえたが、今は其れは無視。
 何より仲間の事が大好きなレヴィにとって、此れは無視できない。

 「分った…協力するぞくろの。」

 「其れは助かるな。」

 正直言ってレヴィは交渉事の様な頭を使うことは大の苦手だ。
 でも苦手でも、大好きな仲間のためなら頑張れるし、必要ならば敵対関係にある相手とも協力する。
 良くも悪くも純粋なのだレヴィは。


 ――彼等に此れの事を伝えてください。倒せないまでも有効な一手にはなりますので。

 「シュテルん…分った!」

 更にシュテルから何かを聞き、レヴィはそのままクロノとアースラに転送されていった。








 ――――――








 アースラのブリーフィングルームには遊星と八神家、なのはとフェイトとアルフが勢揃いしていた。
 戻ってきたクロノと、協力関係を結んだレヴィと共に作戦会議だ。


 「先ず砕け得ぬ闇……認識名U-Dだが、今のところ白と赤の2パターンが確認されている。
  色彩が変わるのか、それとも2体いるのかは今のところ不明だがいずれにしても力は強い。」

 光学モニターを使い、会議は進む。

 「更に、その身に宿したエクザミアの影響で外部からの攻撃は先ず通らないと見ていい。
  此れに攻撃を通すには……すまないがレヴィ、説明を頼めるか?」

 「えぇ!?僕が!?…えっと、シュテルんが言うにはU-Dにダメージを与えるには特別な『攻撃プログラム』が必要なんだって。
  其れを使わないと、傷一つつけることが出来ないって。
  あ、あとゲイルんやゆーせーの使うシンクロモンスターなら、ある程度のダメージは期待できるかもって。」

 今度はどうやってダメージを与えるかと来た。
 どうにも遊星ならば有る程度は戦えるようだが、そうでなければ特殊なプログラムが必要らしい。


 「攻撃プログラムか……カートリッジにするのが一番手早いだろうか?」

 「うん。其れが一番だと思う。
  其れを踏まえると、U-Dとの戦闘でアタッカーを務めて貰うのはカートリッジ搭載デバイスをもつなのは、フェイト、シグナム、ヴィータなんだが…」

 「何か問題が有るんかクロノ君?」

 シグナムの問いに答えるクロノだが僅かに言いよどむ。
 何か問題が有るのは確実だろう。

 「シュテルから通信を受けたレヴィによると、U-Dが再び現れるまでの時間は余り無いらしい。
  詳細は不明だが、限られた時間の中で全員分のカートリッジを用意するのは…「可能だぞクロノ。」…え?」

 言いよどんだ理由は『時間』。
 其れのせいで全員分が用意でき無いと言うが、遊星はそれをばっさりだ。

 「俺とマリーだけなら幾分きついかもしれないが、母さんとプレシアにも手伝ってもらえれば出来るはずだ。」

 「その手があったか!」

 遊星の意見にはクロノも賛同。


 最強技術者の遊星と、管理局の優秀な若き技術者マリー。
 更に其処に一流の科学者である沙羅と、大魔導師であるプレシアが加われば4人分のカートリッジを作るなど造作も無い。

 造作も無いどころか、間違いなく最高性能のプログラムカートリッジが出来上がるだろう、




 アミタからの情報と、レヴィの協力…此れが一気に事態を動かした。


 場合によっては今度は此方から『攻め』の一手を打つ事が出来る。




 謎だらけだった事件が急激に動き出して行く――















   To Be Continued… 






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