小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 作戦会議を終えてブリーフィングルームを出た遊星は早速沙羅に連絡を取っていた。

 「あぁ、あぁ…プレシアも一緒に。あぁ……其れは行けるかもしれない…流石は母さんだな。
  マリーと先に作業は進めておく……あぁ……分った。それじゃ待ってる。」

 言うまでも無く沙羅とプレシアの協力は取り付けた。
 まぁ、当然だろう。

 「4人分の特殊攻撃プログラムカートリッジ…出来るだけ早く作らないとな。」

 次にU-Dが動き出すまでの時間は多くない。
 出来るだけ早く作りたいのは当然だ。
 沙羅とプレシアも合流すれば楽勝だろうが…


 「「遊星!」」


 そんな遊星に声をかけるのははやてとクロノ。
 2人とも遊星に頼みたいことがあるようだ。

 「如何したんだ2人とも?」

 「あんな…その…」

 「僕とはやてにも攻撃用プログラムを作ってくれないか?」

 その頼みは結構意外なことだった。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス56
 『切り札完成!更に…?』











 「攻撃用プログラムを?」

 「無理を言ってる事は承知してる。だが、有効策は多い方が良い。」

 「駄目やろか…?」

 頼まれた事は出来なくは無い。
 沙羅とプレシアも合流するので時間的にも何とかなる。
 クロノの言う事も尤もなのだが…


 「駄目じゃないが、はやてとクロノのデバイスにはカートリッジシステムは搭載されていないんじゃないか?」

 遊星が思ったのは此れ。
 攻撃用プログラムはあくまで『カートリッジ運用』を前提としている。
 だからこそ、なのは、フェイト、シグナム、ヴィータの4人をメインアタッカーとしたのだ。

 「其れは分ってる。せやけど私とクロノ君は複数のプログラムを扱うことには馴れてるで?」

 「僕はS2Uとデュランダル。はやては剣十字と夜天の書…もう1つくらい増えても大丈夫だ。」

 だからと言って2人も諦めない。
 確かにはやてとクロノは2つのデバイスを同時制御、或いは切り替えながら使う。
 その能力を持ってすれば別途プログラムがあっても使いこなせるだろう。

 「せやから…お願いできへんかなぁ?」

 「……分った。」

 したから上目遣いで頼まれては、如何に遊星とて断れない。
 本より、2人の真剣さから断る気など無かったが。

 「母さんとプレシアも来てくれるから作る事は可能だ。
  ただ、2人のは『プログラムカートリッジ』じゃなくて『インストールプログラム』になるが…構わないな?」

 「あぁ、問題ない。」

 「全然平気や!其れに遊星が作るんやから間違いは無い!」

 形態こそ異なるが製作は可能。
 はやては遊星の技術力を心底信頼しているようだ。(勿論クロノもだが。)


 「其処まで期待されたら失敗は出来ないな。…クロノ、U-Dの予想最短活動再開時間はどれくらいだ?」

 「…2時間だ。」

 「2時間か…其れだけあれば充分だ。全員分のプログラムを組む事が出来る。」

 もう驚かない。
 2時間で6人分作り上げると言い切ったが、クロノも『遊星ならば』と思っていた。

 「2時間で充分とは流石やな遊星♪ほなお願いな?」

 「あぁ、任せておいてくれ。」








 ――――――








 程なく沙羅とプレシアが合流し、デバイスルームはさながら戦場の如し。

 「フェイトは速度重視でシグナムは近接戦重視だな。」

 「なのはちゃんはマガジンタイプ、フェイトはスピードローダーね?」

 「シグナムさんは手込め式で、ヴィータさんはセミオートっと!」

 「クロノ君はデュランダルメインで組んだ方が良いかしら?はやてちゃんは夜天の書をメインにしたほうが良いわね。」

 意見を出し合いながら、手と頭をフル回転させて着々と攻撃プログラムを組上げて行く。
 不動親子とプレシアは言うに及ばずだが、マリーも負けじと大奮闘。

 「U-Dの強固さを考えると、なのはさんのプログラムは砲撃時限定で此れ位あれば大丈夫ですか師匠!」

 「あぁ。だが近接戦の出力は少し抑えてくれ。下手に近接戦の出力を上げるとレイジングハートが壊れかねない。」

 「了解です!」

 何時の間にか遊星がマリーの師匠になっていた。(例によって遊星は全く気にしていないが。)

 「プログラムの実戦起動のこともある、1時間以内に完成させるぞ皆!」

 「「「了解!」」」

 此れだけの作業を1時間以内でやろうとするとは恐るべし。
 しかもこのメンバーだと其れが不可能に思えないから余計に怖い。



 「た、楽しそうだね遊星…」

 「まぁ、機械弄りは遊星の趣味みたいなモンやからなぁ…。家の家電品はドレも6世代先行ってるわ。」

 「流石は遊星さんなの。」

 魔法少女3人娘の言う事も納得である。

 「レティが『技術部に欲しい』って言うのも納得ね…」

 リンディも驚くばかりであった。










 ――で、55分後



 「対U-D用攻撃プログラムカートリッジ4つと、インストールプログラム2つ完成だ。」

 本当に1時間以内で完成させてしまった。

 「「「「「「「「「………」」」」」」」」」

 此れには全員開いた口が塞がらない。
 如何に遊星と沙羅、プレシアとマリーが全力でかかったとは言え本当に1時間以内で完成させるとは…

 「?…どうした?」

 「いや、改めて遊星の凄さを認識してただけや…」

 「そうなのか?俺は大した事はしてないんだが…」

 「いや、充分に凄い。本気で管理局の技術部に来て欲しいくらいだ…」

 「?」

 自分がドレほど凄い事をしたのかの認識は矢張り無かった。

 「まぁ、良いか。それじゃあ簡単に説明するぞ?」

 攻撃プログラムの説明に入り、全員気持ちを切り替える。
 この攻撃プログラムは『対U-D』の切り札と言っても過言ではないのだ。

 「カートリッジはなのは、フェイト、シグナム、ヴィータ用のだ。
  砲撃特化の『ネーベルベルファー』がなのは、速度重視『ホルニッセ』はフェイト。
  近接重視の『ヴィルベルヴィント』はシグナム、バランス型の『ブルムベア』がヴィータのだ。
  インストールは広域特化の『ヴァッフェントレーガー』がはやて、バランス方の『オストヴィント』がクロノのになる。
  夫々使用者の個性に合わせて調整してあるからそれほど使い辛さは無いと思うんだが…一応テストをしておいた方が良いと思う。」

 「「「「「「テスト?」」」」」」

 メインアタッカーとなる6人はテストと聞いて一瞬驚くが、直ぐに納得顔。

 「試運転て事やな?」

 「あぁ、簡単な模擬戦で性能テストをな。」

 つまりはそう言う事だ。
 ぶっつけ本番よりもテストをしておいた方が良いのは道理。

 攻撃プログラム作成中に訓練室の使用申請をリンディにしていたのは流石だろう。

 「けど遊星さん、模擬戦て誰が相手なんですか?攻撃プログラム持ってる人同士でですか?」

 「いや、相手は別に用意してある。」

 なのはの疑問にも笑って答え、

 「頼むぞ『ジャンク・ウォリアー』『ドリル・ウォリアー』『ターボ・ウォリアー』『ニトロ・ウォリアー』『ロード・ウォリアー』!」
 『『『『『ムオォォォォォ!』』』』』
 ジャンク・ウォリアー:ATK2300
 ドリル・ウォリアー:ATK2400
 ターボ・ウォリアー:ATK2500
 ニトロ・ウォリアー:ATK2800
 ロード・ウォリアー:ATK3000



 デッキのシンクロウォリアーズを呼び出す。
 だが、此れでも1人分が足りないので…

 「ザフィーラ、頼めるか?」

 「あぁ、良いだろう。」

 ザフィーラに最後の1人を頼み…

 「ザフィーラに、アビス・シンクロンをチューニング!
  集いし守護の誇りが、鋼の心を呼び起こす。光射す道となれ!シンクロ召喚、護りぬけ『鎧の守護獣・ザフィーラ』!」

 「うむ…矢張り良き力だ。」
 鎧の守護獣・ザフィーラ:ATK2000/DEF3100


 シンクロ化して強化。
 此れならば万が一にも大怪我する事はないだろう。
 本より、プログラムの性能検査なので危険は無い…

 「遊星さんのシンクロモンスターが相手…油断できないの!」

 「そうだね。遊星のシンクロモンスターは強いから…」

 「ふ、腕が鳴るな。」


 と、思いたい……多分。

 「なぁ、遊星?私思うんやけど…」

 「あぁ、シャマルをシンクロ化して訓練室の結界を強化してもらった方が良いかもしれないな…」

 全力全壊、疾風迅雷、戦闘狂に火がついたらしく、とりあえず結界を強化することにしたのだった…








 ――――――








 アースラで模擬戦が始まろうとしてた頃、海鳴上空ではリーゼ姉妹がキリエを補足し行く手を阻んでいた。

 「いい加減に大人しくしな、貴女ももうボロボロでしょ?」

 「ほっといてよ!私には何が何でもやらなきゃならない事があるの!
  エクザミアは必ず持って帰る――此処で捕まるわけにはいかないのよ!」

 投降するように言うアリアの言葉にも、キリエは耳を貸さない。


 意固地になっているのだ。
 自分の計画が事実上失敗し、当てにしていたマテリアルズも消え、挙句の果てには大切な姉に致命傷まで負わせてしまった。
 それでも退く事は出来ない。
 それらがキリエの中で渦巻き、葛藤を生み、どうしようもなくなっているのだ。

 「邪魔するなら、誰であろうと切り捨てるわよ!?」

 「はぁ…仕方ないね…ロッテ。」

 「おうよ、アリア。」

 完全にいきり立っているキリエにロッテが一瞬で近づき、


 ――パァン!


 思い切りその頬を張った。

 「!?」

 「いい加減にしろこの馬鹿。」

 「ホントだね…全く。」


 ――ガキィィン!


 更にはアリアがバインドで拘束。
 クロノにバインドを仕込んだのはアリアだ、そのアリアのバインドは簡単にはずせるものではない。

 「少し落ち着きなさい?…結局貴女も、お父さんの事が大好きなお転婆娘なんでしょ?」

 「だったら放っておく事なんてできるはず無いだろ?アタシ等だってそうだからさ…分るんだよ。
  けど、無茶してお前に何か有ったらお前のお父さん…悲しむんじゃないのか?」

 「!!」

 急激にキリエの心が落ち着きを取り戻して行く。
 それだけの効果があったのだ。

 「貴女のお姉さんは無事だよ。傷も治ってる。」

 「アミタが…無事?」

 「こっちには天下無敵の技術者がいるのさ。ま、運が良かったと言えるけどね。」

 姉の無事を知り、更に力が抜ける。
 もう、抵抗の意志は無いようだ。

 「だからさ、アンタもこっちに来いよ。悪いようにはしない…それだけは約束すっからさ。」

 「…分ったわよ。」

 遂にキリエは折れた。
 確かにキリエ自身、ザッパーのエネルギーも少なく体力的にも限界が近い。
 このまま無理しても事態を悪くするだけだろう。

 其れに既にU-Dは自分1人で如何にかできる相手ではなくなっている。
 ならば、管理局と一緒の方が都合が良いというのもあるだろう。


 「ほんじゃ、アースラに戻るか。」

 「遊星には連絡入れておいたから、貴女も診てもらいなさい。」

 「………」

 キリエは何も答えない。

 だが、此れで一応事件の重要参考人の確保は完了。
 事態は更に進む事だろう。








 ――――――








 アースラでの模擬戦も終わり、リーゼ姉妹がキリエを確保して少し時間が経ったころ…



 ――ヴィン…


 海鳴の海上に一体の『闇の欠片』が姿を現した。


 全身を白に包み、額と異様に広い肩に機械的な部分が見える2mを超える大男。


 魔導師ではない。
 恐らくは遊星の記憶から再生された人物。

 其れを示すように左腕にはデュエルディスクが装着されている。


 「此処は一体…?私はゾーンに挑んで負け、消滅したはず…」


 その人物は遊星と、ジャックと死闘を演じた元『絶望の番人』。
 死闘の果てに希望を見出し、その希望を遊星達に繋いだ未来からの使者。



 イリアステル三皇帝の真の姿――









 ――アポリアであった…















   To Be Continued… 



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