小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 突如海鳴の上空に現れたアポリア。
 彼もまた、遊星の記憶から再生されている『闇の欠片』であることは間違いない。

 「此処は一体…私は…そうだ、チーム5D'sは、不動遊星はどうなったのだ?ゾーンを倒し未来を護る事はできたのか?」

 だが、ただの闇の欠片とは違い記憶が可也ハッキリしている。
 どちらかと言うと闇の欠片事件の時に現れた『闇の欠片・遊戯』に近い感じだ。

 「いや、それ以前に空を飛んでいるとは…?何が起きている…一体何が…」

 アポリア自身は何が起きているか分らない。
 分らないが…


 ――ドゴォォォン!!


 突然響いてきた爆裂音に驚き振り返る。

 「アレは…」

 目に入ってきたのは遠方で上がる煙。
 中空で上がって居る以上火事では無い。

 「…行ってみるか。何か判るかも知れん。」

 詳細は分らないが、其処に行けば何かしら分ることがあるかもしれない。
 アポリアはそう考え、煙が立ち昇る場所へと移動していった。

 因みに、空を飛んで移動している事にはそれほど抵抗は無いようだ。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス56
 『絶望を超えた番人』











 アポリアが向かった煙の発生源に居たのはなのはだ。
 攻撃プログラムのテスト運用が終わり、一休みした後に再度闇の欠片の殲滅戦に参加していたのだ。

 今戦っているのは遊星の記憶から再生されたデュエルモンスターズのモンスター達。
 デュエリストが居ない状態でモンスターだけで襲い掛かられてもなのはの敵ではない。

 大抵は誘導弾と砲撃で完・全・粉・滅!!である。
 だが、数が多い。

 最終決戦に向けて力は温存して置きたいなのはにとって此れは困る。

 「幾らなんでも数多すぎなの!」
 『I think so.』

 幾ら負けることが無い相手とは言え、あまりの数の多さにレイジングハート共々辟易してしてしまう。
 また、襲ってくるモンスターが燃え盛る骸骨――『バーニング・スカルヘッド』なのも関係しているだろう。
 9歳の少女には余りありがたくない見た目であるのだから。

 「燃え盛る骸骨なんて気味悪いの!!レイジングハート!」
 『All right.Divine Buster.』

 さらに襲い来るバーニング骸骨集団を必殺砲撃で一・掃!
 一部で『白い魔王』と囁かれている一撃は実に見事である。


 が…

 『ゴォォォォォン…』
 ダーク・ダイブ・ボンバー:ATK2600


 今度は凶悪禁止カード登場!
 ボマーのエースだったモンスターだが、余りの凶悪さゆえにWRGP開催前に禁止設定されたシンクロモンスターだ。
 その凶悪モンスターが現れ、なのはに攻撃!!

 「!!シールド!」
 『Protection.』

 撃ち出されたミサイルを魔力障壁で防ぐが、レベル7のシンクロモンスターともなるとその力は桁違いに強い。
 直撃はしなかったものの、圧力に負け吹き飛ばされてしまう。

 更に追撃のミサイルが…!

 「!!」

 再度シールドを張ろうとするが間に合わない。
 このままでは直撃して大ダメージは免れない状態だ。

 「カウンタートラップ『攻撃の無力化』。モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルを終了させる。」

 だが、その攻撃がなのはに直撃することは無かった。
 空間に現れた渦がミサイルを飲み込み、なのはを護ったのだ。

 「大丈夫か少女よ?」

 其れを行ったのはアポリア。
 この場所に向かっていた彼は、なのはが攻撃されるのを見てとっさに防御を講じたのだ。

 「は、はい大丈夫です!」

 「そうか…其れは良かった。」

 突然の闖入者に驚きながら、しかしなのはは不思議とアポリアを怖いとは思わなかった。
 2mを超える巨躯に、逆立った髪は恐ろしげな印象を与えるがなのはが無事だと分った時のアポリアの顔は優しげだったからだ。

 なのはは(はやてとフェイトもだが)歳の割に、人の本質を見抜く目を持っている。
 少なくともなのはは、自分を助けてくれたアポリアを悪い人とは思えなかった、敵とは思えなかった。
 自分に害をなす存在でないのなら、この巨体は逆に安心感を与えてくれると言うものだ。


 なのはがそんな事を思っているとは露知らず、アポリアはダーク・ダイブ・ボンバーを睨みつけていた。

 「未来を担う子供を襲うとは…誰の手引きかは知らんが覚悟してもらおう!出でよ『グランド・コア』!」
 グランド・コア:ATK0


 アーククレイドルでの一戦の後、アポリアは『子供こそが未来を紡ぐ希望』と考えていた。
 その未来を担う存在が何者かの襲撃を受けている…アポリアがなのはを助ける理由は充分すぎた。

 眼前の敵を見据え、『地の機皇帝』を呼び出すためのキーパーツを召喚。
 そしてなのはに語りかける。

 「少女よ、私が召喚したモンスターを破壊することは出来るか?」

 「へ?で、出来ますけど如何して…?」

 言われたなのはは当然慌てる。
 左腕のデュエルディスクから、遊星と同じ様な人だとは分った。

 だが、自分のモンスターを破壊できるかというのには少々疑問が残る。

 「この世界に於けるデュエルのルールは理解している。
  グランド・コアの攻守は0…破壊されたとて私に問題は無い。
  そして、グランド・コアは破壊された時に、その真髄を発揮するモンスターだ。」

 「破壊されて?……………分りました!」

 だが、その答えを聞いてなのはも納得。
 遊星からデュエルの事を聞いていたから、時には更なる戦術の為に自分のモンスターを犠牲にする事も有ると言うのを覚えていたのだ。

 「行くよ、レジングハート!」
 『All right.Divine Buster Extension.』

 放たれた一撃は、いとも簡単にアポリアが召喚したモンスターを飲み込み消滅させる。
 そしてこれこそがアポリアが狙っていたものだ。

 「見事だ少女よ。グランド・コアの効果発動!
  このカードが破壊されたとき、私のフィールド上のモンスターを全て破壊し、デッキ又は手札から『機皇帝グランエル∞』」
 機皇帝グランエル∞:ATK?


 「『グランエルA』」
 グランエルA:ATK1300


 「『グランエルG』」
 グランエルG:DEF1000


 「『グランエルT』」
 グランエルT:ATK500


 「『グランエルC』を特殊召喚する!」
 グランエルC:DEF700


 一気に5体ものモンスターを展開。
 其れを見たなのはも驚き顔だが、此れだけではない。

 「少女よ、驚くのはまだ早い。」

 「ほえ?」

 「合体せよ、『機皇帝グランエル』!」

 アポリアの掛け声と共に5体のモンスターが合体し、1体のモンスターへと成り代わる。



 機皇帝グランエル:ATK?



 「ろ、ロボットぉ!?」

 まるでアニメに出てきそうな巨大なロボットに、なのはの目が点になる。
 見た目は勿論、その大きさにも驚いているだろう。

 「機皇帝グランエルの攻撃力と守備力は私のライフポイントと同じになる。
  私のライフは8000、よってグランエルの攻撃力と守備力は8000ポイントとなる。」
 機皇帝グランエル:ATK?→8000


 初期値のライフが8000であるこの世界の変則ルールを応用した見事な戦術。
 8000もの攻撃力の前では、如何に禁止カードと言えど太刀打ちは出来ない。

 「消え去れ!機皇帝グランエルで、ダーク・ダイブ・ボンバーに攻撃!『グランドラスター・カノン』!」

 右腕のカノン砲から発射されたエネルギー波がダーク・ダイブ・ボンバーを飲み込み霧散。
 更に…

 「グランエルAの効果発動。『∞』と名の付くモンスターが戦闘破壊したシンクロモンスターを『∞』と名の付くモンスターに装備する。
  そして機皇帝グランエルは自身が装備しているシンクロモンスターの攻撃力分だけ攻撃力がアップする!」
 機皇帝グランエル:ATK8000→10600


 禁止カードを吸収して攻撃力アップ!
 だが、新たなモンスターが現れる気配は無い。
 今のダーク・ダイブ・ボンバーでこの場に現れた闇の欠片は全部だったのだろう。

 尤もアポリアは警戒を解かずにグランエルは出したままだが。


 「あ、あの助けてくれてありがとうございます…え〜っと…」

 「そう言えば名乗っていなかったな。我が名はアポリア『希望を託す者』なり。」

 「アポリアさん?私は時空管理局の嘱託魔導師、高町なのはです。皆はなのはって呼んでくれます。」

 「なのは…良い名だな。」

 「本当ですか?ありがとうございます♪」

 礼を言うなのはに名乗り、さらになのはも自らの名を告げ互いの名を交換する。
 特に名前を褒められたなのはは嬉しそうだ。

 「時になのは、此処は何処なのだ?恐らく私は思念体の様なモノなのだろうが…この景色には見覚えが無い。」

 「此処は海鳴です。アポリアさんは…その『闇の欠片』って言う存在なんです。多分遊星さんの記憶から再生された…」

 アポリアの問いに答えるなのはだが、アポリアは此処が何処かと言う事よりも別のことに驚いてた。
 其れはなのはが遊星を知っていると言う事。

 なのはの言う海鳴と言う都市には聞き覚えが無い。
 自分の知っている絶望の未来においてもそんな場所は存在していなかったはずだ。

 その知らない場所に遊星が居る。
 此れには驚くなと言うのが無理だろう。

 「君は不動遊星を知っているのか!?彼も此処にいるというのか!?」

 「はい。私は遊星さんのお友達です。
  私だけじゃなく、はやてちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、シグナムさん、リインフォースさん、シャマルさん、ヴィータちゃんにザフィーラさん。
  皆、遊星さんの仲間です。」

 「何と……此処は私が知っている世界ではないと推測するが、遊星は異世界においても絆を紡いでいたか…」

 少ない情報からも、此処が自分が居た世界とは異なる世界だと言う事を理解する。
 遊星が此処にいるのは『赤き竜』に導かれたのだろうとも見当がついていた。

 「信じてくれますか?」

 「勿論だ。お前の目は嘘を付いて居る者の目ではない。そうか…彼は……ん?」

 全てを言い終わる前に、アポリアの身体が透ける。

 「アポリアさん!?」

 其れになのはは慌てるが、当のアポリア本人はまるで気にしていない。
 気にしていないどころか何が起きているかを悟っていた。

 「大丈夫だなのはよ。私は何処かに転送されるようだ。」

 「転送…」

 「もう少し、お前の話を聞きたかったが仕方ない。何れ又会おう…小さき勇者よ。」


 ――ヴィン


 次の瞬間、アポリアの姿は消え海上上空にはなのはが1人でいるだけ。
 そんな中で通信が…相手はシグナムだ。

 『なのは、今お前の居る場所で魔力反応を感知したんだが…』

 「シグナムさん…はい、今まで遊星さんの記憶から再生された欠片の人が居たんです。
  けど、その人は何処かに転送されちゃいました…」

 『転送?……!!』

 通信の最中で、突然シグナムの顔が険しくなる。
 自分の周囲で魔力反応を感知したのだ。

 『スマンなのは、新たな闇の欠片かもしれん。通信を終えて対処に当たる。』

 「はい、お願いします!私も他に欠片が無いか見回りますね。」

 『あぁ、くれぐれも無理はするな。』

 「はい!シグナムさんも気をつけて。」

 碌に話すことも出来ないまま通信終了。
 だが、なのはの顔に焦りは無い。

 シグナムの実力を知っているから無用な心配はしないのだろう。








 ――――――








 「転送されて、まさか此処に来るとはな。」

 シグナムは転送されてきた人物に対してそう告げる。

 「此処は……む、君もまた不動遊星の仲間か?」

 転送されてきたのはアポリア。
 奇しくもなのはの仲間の居る場所に転送されたようだ。

 「如何にも。ヴォルケンリッターが将、シグナムだ。」

 「希望を託す者、アポリアだ。成程、不動遊星は実に見事な絆を紡いでいるようだ。」

 アポリアの登場にもシグナムは驚かない。
 アポリアもアポリアで、行き成りの転送を喰らっても冷静さは欠いていない。


 特殊な『闇の欠片』として再生されたアポリア。
 果たして、何の為に現れたのか?


 其れは今は分らない事であった。














   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 グランド・コア
 レベル1    地属性
 機械族・効果
 このカードは1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない。
 このカードがカードの効果によって破壊された時、 自分フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。
 その後、自分のデッキ・手札・墓地から「機皇帝グランエル∞」「グランエルT」 「グランエルA」「グランエルG」
 「グランエルC」をそれぞれ1体特殊召喚する。
 ATK0    DEF0



 機皇帝グランエル∞
 レベル1    地属性
 機械族・効果
 このカード以外の自分フィールド上に存在するモンスターは攻撃する事ができない。
 このカードの元々の攻撃力は、自分のライフポイントと同じになる。
 1ターンに1度、相手フィールド上に存在するシンクロモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
 この効果で相手モンスターを装備している場合、このカードの攻撃力は装備したシンクロモンスターの元々の攻撃力分アップする。
 ATK?    DEF?



 グランエルA
 レベル1    地属性
 機械族・効果
 「∞」と名のついたモンスターが自分フィールド上に存在しない場合、このカードを破壊する。
 戦闘によって破壊した相手のシンクロモンスター1体を装備カード扱いとして、
 自分フィールド上に存在する「∞」と名のついたモンスターに装備する事ができる。
 この効果で装備カード扱いとしたモンスターは、1ターンに1度、相手モンスターを攻撃する事ができる。
 またこの時、守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を装備モンスターの攻撃力が超えていれば、
 その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
 ATK1300    DEF0



 グランエルG
 レベル1    地属性
 機械族・効果
 「∞」と名のついたモンスターが自分フィールド上に存在しない場合、このカードを破壊する。
 相手モンスターの攻撃宣言時、その攻撃対象を自分フィールド上に存在する「機皇帝」と名のついた
 モンスターが装備しているシンクロモンスター1体に変更する事ができる。
 この時、装備カード扱いのシンクロモンスターはモンスターカードとしても扱う。
 ATK500    DEF1000



 グランエルT
 レベル1    地属性
 機械族・効果
 「∞」と名のついたモンスターが自分フィールド上に存在しない場合、このカードを破壊する。
 自分フィールド上に存在する「∞」と名のついたモンスターが攻撃する時、相手フィールド上に存在するシンクロモンスターの効果は無効化される。
 ATK500    DEF0



 グランエルC
 レベル1    地属性
 機械族・効果
 フィールド上に「∞」と名のついたモンスターが表側表示で存在しない場合、このカードを破壊する。
 1ターンに1度だけ、自分フィールド上に存在するモンスターは戦闘では破壊されない。
 ATK700    DEF700


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