小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「「パラドックス…」」

 「不動遊星のみならずアポリアもか…」

 海鳴郊外の一画で対峙する3人のデュエリスト。
 片や遊星とアポリア、片やパラドックス。

 アポリアもパラドックスもかつては遊星と死闘を演じた強敵だ。
 だが今の立ち位置はまるで異なる。

 絶望の果ての希望を見出したアポリアは遊星側に、反対にパラドックスは前と変わらず遊星と敵対姿勢だ。

 「アポリア、何故お前がそちら側にいる?我等の目的を忘れたか?」

 「そうではない…パラドックスよ、私は絶望の果ての希望を見出したのだ…もう立ち止まらぬ。」

 問いかけるパラドックスにアポリアは静かに返す。
 此れが2人の差だ。

 希望を見出したアポリアと、其れが出来なかったパラドックス。
 未来を望める者と、諦めた者の違いだ。

 「下らぬ情に絆されたか?憐れな…」

 「違う!アポリアはジャックと龍亞、龍可とのデュエルで未来を信じることを思い出したんだ!」

 「ほざくな不動遊星。貴様の存在は世界を救えないことはゾーンが証明している。
  破滅の未来を食い止めるには、貴様と貴様等歴戦のデュリストを一掃し、デュエルモンスターズをこの世から抹殺する以外に手は無い!」

 話は通じない。
 本気でのぶつかり合いは避けられそうに無い。












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス59
 『時を超えた友情と絆』











 「パラドックスよ、私の言う事は聞き入れてもらえないのか?
  ゾーンですら既に遊星によって倒された……お前のしている事に意味などは無い…」

 「ゾーンが負けた?…馬鹿を言うな、私達に敗北は許されない…この世界の為に!!」

 パラドックスの決意は固い。
 独立した明確な意思があるせいで、生前の記憶は只の闇の欠片とは一線を画す。

 其れが故に面倒なことこの上ない。

 説得は不能で、しかも自分がまだ何かできると思っている。
 幻影である欠片とは違い、目的はハッキリしているのだ。

 「この世界には時間移動の技術を持ったものが居るな?…案内してもらおうか?」

 「断る!」

 パラドックスの言う事を跳ね除け、遊星は臨戦態勢を取る。

 「なに?」

 「お前と彼女達を会わせるわけには行かない!お前は俺が倒す!」

 「パラドックスよ、芽生えた希望の芽を摘むというなら私も容赦はできない…」

 遊星とアポリア共にデュエルディスクを展開し、臨戦態勢。
 其れを見たパラドックスは面白く無さそうな表情を浮かべる。

 「ふん、最後はデュエルで決着か?」

 「我等デュエリストにとってそれ以上の決着方など存在しない。」

 この応酬が最後だった。
 アポリアと遊星はタッグを組み、反対にパラドックスは1人。
 2vs1と言う状況は、一見すれば遊星達の方が有利に見えるが、そうはいかないのがデュエルだ。


 「良いのかアポリア?仲間だったんだろう?」

 「構わん。と言うよりも何故私がお前の記憶から鮮明に再生されたのか漸く納得が行った。
  私同様に鮮明に再生された闇の欠片がこの世界にとって危険なものであったとき、其れを止める為に再生されたのだ。
  ならば私は、私の使命を果たす――今度は敵同士ではない、共に戦おう不動遊星。」

 志を違えたとは言え、仲間だった相手とのデュエルを心配する遊星だが、アポリアに迷いは無い。
 奇しくもパラドックスの出現が、アポリアに自身の再生理由を理解させていた。

 だから戦う。

 「あぁ、行くぞアポリア。この世界をあいつの好きにはさせない!」

 遊星も共に戦おうと言ってくれたアポリアに応える。
 希望を繋いだ者と希望を託された者の最強タッグの誕生だ。


 「フン…目的の為には同胞だった者を蹴散らす事も必要か…良いだろう、不動遊星共々葬ってやる!」

 「我等は負けぬ!勝ってこの世界を護り、お前も絶望から救う。」

 「行くぞパラドックス!!」


 「「「デュエル!!」」」


 遊星&アポリア:LP4000
 パラドックス:LP4000


 「先攻は貰う。私のターン!…手札からフィールド魔法『Sin Truth World』を発動。
  このカードが存在する限り私のターンのドローフェイズにカードをドローする代わりにデッキから『Sin』と名の付くモンスターを手札に加える事ができる。
  更にこのカードが存在する限り『Sin』モンスターのトリプルデメリットは無効となり、『Sin』モンスターが存在する限りこのカードは破壊されない。」

 先攻はパラドックス。
 行き成り『Sin』専用の強力フィールド魔法を展開し自分の土俵を作り上げる。
 デメリットが重い『Sin』だが、そのデメリットがなくなれば超高速展開の出来る強力モンスターに早変わりだ。

 「準備は整った。私はデッキから『ダーク・ホルス・ドラゴン』と『創世神』を墓地に送り、『Sin ホルス・ドラゴン』と『Sin クリエイター』を特殊召喚!」
 『コォォォォォォ!!』
 Sin ホルス・ドラゴン:ATK3000


 『ウォォォォ…!』
 Sin クリエイター:ATK2300


 早速その高速性を生かして2体の大型モンスターを展開。
 『Sin』の特徴である白と黒の仮面と鎧を纏った、鷹のような竜と巨人だ。

 「行き成り2体の『Sin』モンスター…」

 「私は此れでターンエンド。」

 先攻ターンは攻撃できないので此れで終了。
 行き成りの強力モンスター2体だが、其れを前にして遊星もアポリアも一切怯まない。
 怯む理由が無い。

 「俺から行かせて貰うぞアポリア?」

 「分った、先ずはお前に任せよう。」

 「あぁ、俺のターン!」

 此方の先発は遊星。
 態々打って出たと言う事は、この布陣を突破する手立てがあるのだろう。

 「手札の『ADチェンジャー』を墓地に送り、チューナーモンスター『クイック・シンクロン』を特殊召喚する!」
 クイック・シンクロン:DEF1400


 「更に『チューニング・サポーター』を召喚!」
 チューニング・サポーターDEF300


 パラドックスの速攻に負けずに、遊星も速攻でシンクロの素材を揃える。
 この布陣だとレベル6か7のシンクロが可能だ。

 「チューニング・サポーターはシンクロ素材となる時レベルを2に出来る!
  この効果でレベル2になったチューニング・サポータに、レベル5のクイック・シンクロンをチューニング!
  集いし思いが、此処に新たな力となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、燃え上がれ『ニトロ・ウォリアー』!」
 『ムゥゥゥン!!』
 ニトロ・ウォリアー:ATK2800


 呼び出されたのはレベル7のニトロ・ウォリアー。
 遊星のデッキのウォリアーズでも屈指のパワーファイターだ。

 「チューニング・サポーターの効果で1枚ドロー!更に墓地の『ADチェンジャー』の効果発動!
  墓地のこのカードを除外し、フィールド上のモンスター1体の表示形式を変更する。
  俺はこの効果で、『Sin クリエイター』を守備表示に変更!」

 「貴様…何をたくらんでいる?」
 Sin クリエイター:ATK2300→DEF3000


 モンスターの表示形式変更。
 其れも守備力が高いSin クリエイターの方を変更とは…?

 「手札からマジックカード『調和の宝札』を発動。
  手札の『デブリ・ドラゴン』を捨てて2枚ドロー。
  そして俺が魔法カードを発動したことで、ニトロ・ウォリアーはこのターンダメージ計算中に攻撃力が1度だけ1000ポイントアップする!
  バトルだ!ニトロ・ウォリアーで、Sin ホルス・ドラゴンに攻撃!『ダイナマイト・ナックル』!!」
 ニトロ・ウォリアー:ATK2800→3800


 効果で攻撃力を増し、Sin ホルス・ドラゴンを上回る。
 遊星が狙っていたのは正に此れだ。


 ――ドゴォォォ!!


 「ぐぅぅ…!」
 パラドックス:LP4000→3200


 見事に先制だが此れで終わりではない。
 Sin クリエイターを守備表示にした意味があるのはここからだ。

 「ニトロ・ウォリアーの効果発動!
  相手モンスターを戦闘で破壊したとき、相手の守備表示モンスター1体を攻撃表示にして、もう1度バトル出来る!『ダイナマイト・インパクト』!」

 「なんだと!?」
 Sin クリエイター:DEF3000→2300


 此れがこのコンボの意味。
 遊星は2体のSinモンスターを一撃で倒すコンボを考えていたのだ。

 「この瞬間にニトロ・ウォリアーの攻撃力は元に戻るが、そいつを倒すには充分だ。
  行け、ニトロ・ウォリアー!『ダイナマイト・ナックル』!!」
 ニトロ・ウォリアー:ATK3800→2800


 ――ドガァァン!!


 「うぉぉぉ…!」
 パラドックス:LP3200→2700


 見事なコンボで一気にライフを削り取る。
 相手が誰だろうとも決して引かないのが遊星だ。

 「カードを2枚伏せてターンエンド。」

 確りと伏せカードも出し万全の体制で臨む。

 「私のターン!『Sin Truth World』の効果でデッキから『Sin レインボー・ドラゴン』を手札に加える!
  そして、デッキから『究極宝玉神 レインボー・ドラゴン』、エクストラデッキから『サイバー・エンド・ドラゴン』を墓地に送り、
  『Sin レインボー・ドラゴン』と『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』を特殊召喚する!」
 『ゴォォォォォォン!』
 Sin レインボー・ドラゴン:ATK4000


 『ギョァァァン!』
 Sin サイバー・エンド・ドラゴン:ATK4000


 対してパラドックスは又も大型モンスター。
 しかも今度は先程よりも更に強い2体のモンスターだ。

 「此れで終わりにしてやるぞ!Sin サイバー・エンド・ドラゴンで、ニトロ・ウォリアーに攻撃!『エターナル・エボリューション・バースト』!」


 ――ドォォォォン!!


 「く…ニトロ・ウォリアー!」
 遊星&アポリア:LP4000→2800


 重い一撃が炸裂し、ライフポイントが並ぶ。
 たった1ターンでこれとは、矢張り『Sin』の速攻性は恐ろしいものがある。
 しかも、攻撃できるモンスターが残っているのだ。

 「消えろ不動遊星、アポリア!Sin レインボー・ドラゴンでダイレクトアタック!『オーバー・ザ・レインボー』!!」

 今度は虹色のブレス攻撃が迫る。
 決まれば終わりだが、そうはいかないのが遊星だ。

 「そうはさせない!トラップ発動『ガード・ブロック』!戦闘ダメージを0にし、カードを1枚ドローする!」

 「ふむ…流石だな。」

 此処はトラップで対処。
 一撃死は免れた。

 「く…そのカードか。カードを1枚伏せてターンエンド。」

 決着には至らなかったが、フィールドは再びパラドックスが有利に。
 攻撃力4000のモンスターが2体も居るというのは面倒な事極まりない。
 アポリアが此れをどうひっくり返すかがポイントになりそうだ。

 「流石の強さだパラドックスよ。だが私も負けぬ、私のターン!『グランド・コア』を召喚。」
 グランド・コア:DEF0


 遊星の速攻シンクロと同様に、アポリアも機皇帝を展開するためのコアモンスターを召喚。
 既に準備が出来ているのだろう。

 「更に魔法カード『スクラップ・マネー』を発動。
  私の場の機械族モンスター1体を破壊して、デッキからカードを2枚ドローする。
  この効果でグランド・コアを破壊して2枚ドロー!そしてこの瞬間に『グランド・コア』の効果発動。
  グランド・コアがカード効果で破壊されたとき、自分フィールド上のモンスターをすべて破壊し、デッキ又は手札から『機皇帝グランエル∞』」
 機皇帝グランエル∞:ATK?


 「『グランエルA』」
 グランエルA:ATK1300


 「『グランエルG』」
 グランエルG:DEF1000


 「『グランエルT』」
 グランエルT:ATK500


 「『グランエルC』を特殊召喚する!」
 グランエルC:DEF700


 一気に機皇帝を揃える。
 そして機皇帝は此処からが真骨頂だ。

 「今此処に機皇帝とパーツが揃った、合体せよ、『機皇帝グランエル』!!」

 機皇帝を中心に4つのパーツが合体し、1体の巨大なロボットへと姿を変える。
 アポリアの持つ機皇帝の中でも最大級のパワーを持つグランエルの登場だ。


 機皇帝グランエル:ATK?


 「グランエルの攻撃力は私達のライフと同じ数値となる。」
 機皇帝グランエル:ATK?→2800


 「機皇帝グランエル……だがそれでは私の2体のモンスターには遠く及ばない。
  更に私のフィールドにはシンクロモンスターは居ない…機皇帝もその力は発揮できまい。」

 だが、召喚したは良いが攻撃力では敵わない上に吸収できるシンクロモンスターもいない。
 此れでは太刀打ちできないが…

 「其れはどうかな?」

 「なに?」

 「トラップ発動『ギブ&テイク』!俺の墓地のモンスターを相手フィールドに守備表示で特殊召喚する!
  此れで俺の墓地のニトロ・ウォリアーを、お前のフィールドに特殊召喚する!」

 「なんだと!?」
 ニトロ・ウォリアー:DEF1800


 此処で光る遊星の機転。
 自分のモンスターを相手フィールドに特殊召喚し、機皇帝の効果を使えるようにする。
 機皇帝を知るシンクロ使いの遊星だからこその戦術だ。

 「アポリア!」

 「あぁ、その力存分に使わせてもらう!機皇帝グランエルの効果発動!
  相手フィールド上のシンクロモンスターを自身に装備する!私はニトロ・ウォリアーを装備!」

 「ニトロ・ウォリアーよ、機皇帝にその力を貸してくれ!」

 機皇帝の胴体部分が開き、其処から光りの道がニトロ・ウォリアーに伸び、ニトロ・ウォリアーが其れを駆け上がる。
 以前は光の縄で捕らえ、いかにも無理やり吸収しているようだったが、これも仲間として戦うゆえの違いだろう。
 ニトロ・ウォリアーがすっぽり納まると胴体部分は閉じ、頭部の赤いカメラアイがフラッシュする。
 パワーアップ完了の合図だ。

 「機皇帝グランエルの攻撃力は装備したシンクロモンスターの攻撃力分アップする!」
 機皇帝グランエル:ATK2800→5600


 「ば、馬鹿な!」

 「行くぞ!機皇帝グランエルで、Sin サイバー・エンド・ドラゴンに攻撃!『グランドラスター・カノン』!」


 グランエルの砲撃が機械竜を貫き、爆散させる。
 そしてパラドックスのライフを大きく削り取る。

 「ぐぬ…アポリア、貴様…!」
 パラドックス:LP2700→1100


 「言った筈だパラドックス、『容赦はしない』と!カードを2枚伏せてターンエンド。」

 まるで隙がない。
 2vs1の状況だといっても、パラドックスを圧倒しているこの状況。

 遊星とアポリア、この2人のタッグは若しかしたら、それこそ『最強』なのかもしれない…














   To Be Continued… 






 *登場カード補足



 Sin ホルス・ドラゴン
 レベル8    闇属性
 ドラゴン族・効果
 このカードは通常召喚出来ない。自分のデッキから「ホルスの黒炎竜LV8」又は「ダーク・ホルス・ドラゴン」1体を墓地に送った場合に特殊召喚出来る。
 「Sin」と名の付くモンスターはフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
 このカードが表側表示で存在する限り、自分の他のモンスターは攻撃できない。
 フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合、このカードを破壊する。
 1ターンに1度、自分が魔法カードを発動した場合デッキからカードを1枚ドローできる。
 ATK3000    DEF1800



 Sin クリエイター
 レベル8    闇属性
 雷族・効果
 このカードは通常召喚出来ない。自分のデッキから「創世神」又は「ダーク・クリエイター」1体を墓地に送った場合にのみ特殊召喚出来る。
 「Sin」と名の付くモンスターはフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
 このカードが表側表示で存在する限り、自分の他のモンスターは攻撃できない。
 フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合、このカードを破壊する。
 1ターンに1度、自分の墓地から「Sin」と名の付くモンスターを効果を無効にして特殊召喚出来る。
 ATK2300    DEF3000



 スクラップ・マネー
 通常魔法
 自分フィールド上の機械族モンスター1体を破壊する。
 デッキからカードを2枚ドローする。



 Sin Truth World
 フィールド魔法
 このカードが表側表示で存在する限り「Sin」と名の付くモンスターの「「Sin」と名の付くモンスターは
 フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。」効果、「このカードが表側表示で存在する限り、
 自分の他のモンスターは攻撃できない。」効果、フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合、
 このカードを破壊する。」効果は無効になる。
 自分のターンのドローフェイズに通常のドローを行う代わりにデッキから「Sin」と名の付くモンスター1体を手札に加える事が出来る。
 自分フィールド上に「Sin」と名の付くモンスターが表側表示で存在する限りこのカードは破壊されない。



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