小説『東方羅刹記』
作者:unworld()

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いやいや、俺はチートじゃない…はず…』

世界は俺を否定した。
だから俺は世界を否定しかえしてやる。

聖さんの寝顔に癒されながら、俺は何をしているかというと…

「よしっ!これで行ける。」

少し矛の練習をしていた。
まぁ、なんということはない。俺もずっとこういう武器をふるってきた。

経験というものだ。

くっ、このまま聖さんの寝顔を見ていたいんだが…そろそろ間に合わなくなる。

俺は聖さんをゆすり起こす。

「聖さ〜んおきてください」
「ふぅぅん…月夜…さ〜…ん」

なぜに呼ばれたし…
まぁ、そんなことはおいておこう。
とりあえず起きてもらわないと…

「聖さ〜ん、起きないと怒りますよ。」

ぷにぷに

ぷにぷに

聖さんのほっぺた超やわらけぇ…

いやされるわ〜

「んん…あれ?月夜さん…おはようございます?…」
「あ、起きましたか…すいません。まだ朝じゃないんですが…起きてください。ここを抜けます。」
「えっ…いや、だって無理ですよ…
この鉄格子はかなり高位の魔法で出来てます。
私でも無理なのに、どうやって…」
「任せてください…
『地を創生せし、神の矛よ。我は別天津神の名を借りて、その姿を表さん。
さぁ、答え顕現せよ。『天沼矛』!」
「きゃっ!?」

俺の手に光の粒子が集まりそれを形作る。
その形は、矛。
玉に飾られし神の矛だ。
天沼矛は天地開闢の際に出現し、
伊邪那岐、伊邪那美が別天津神たちに命じられ別天津神が持っていた天沼矛を使い、漂っていた大地をかき混ぜた。というものだ。

だったら伊邪那岐、伊邪那美が持ってるんじゃね?とか思ったが…
爺さん曰く、「もともとの保有者は儂だからの」らしい。
それでいいのかよ…
そして、俺の手には矛が握られる。

少し古い感じの矛なんだが…
さすが神具だな…

「あの…月夜さん?
その矛から…神力漏れ出てますけど…」
「知ってるよ?まぁ…見てろって
『昇華『天魔反伐(あまのまがえしのほこ)』」

俺は地面に矛を突きたてそう言う。
すると、矛は三ツ又に別れ、形をなす。

「集え、魔を斬り裂き退かせる矛よ。
そして、我に味方せよ。」

光が集い矛の周りを回る。そして、それは綺麗な四つの球体となり矛の関(まち)の部分に集まる。
この矛が魔を退かせる矛、『天魔反伐(あまのまがえしのほこ)』だ。

この神具。若干、神槍に近いが…
ちなみに槍と矛とは明確な区別はないらしいぞ?だが、矛は槍の原型ともされていて矛の刺突を重視し作り変えたものが槍らしいが…くわしいことはよく知らん。

俺はそれを振るい枷を切り落とし鉄格子をバラバラにする。

「えっ…あんなに高位の魔法が多重に含まれていたのに…」
「かんけーないない。
そんじゃ、行くよ。」
「でも…」
「あぁもう!
不安なら、俺が手を握ってやる!
くじけそうなら、手をとってやる!
泣きそうなら、慰めてやる!
悔しいなら、手伝ってやる!
だから、行こうぜ?助けるんだろ?」
「……ふふっ…そんなことを言われるとは…すいません!行きましょうか!」
「おう!!!まかせろい!」

…数分後…

「どけぇぇぇぇ!!!!!!」

俺たちは自分の檻を出て、聖さんのお仲間を救うために探し回っているのだが…即みつかりただいま敵をなぎ倒しつつ聖さんの仲間のもとに向かっている。

「まだ見当たらないの!?」
「すいません!やっぱり時間が…」
「誰を探してるんだったっけ?」
「えっと…まずは星を…」
「星…ってあの?寅丸星だったりしないよね?」
「ええ…そうですけど…知り合いですか?」
「うん…まぁね…ははっ…」

そうなのだ。
俺がまぁ、この絶界に入れられた時に少ししてあったのが…毘沙門天だった。
毘沙門天は結構なにかと忙しいらしく…仕事に追われていながらも俺と面会してくれた。
あってみると、うん。
超ナイスガイだった。
あれはぁ…やばっかたぜ…

毘沙門天は…まぁ、羅刹天を封印してある、いわば分体なような俺を心底可愛がってくれた。
カクは毘沙門天を師匠とよんでいたから俺も師匠と呼んでいた。

その時、出会ったのが星だった…
なんか赤ん坊みたいで可愛かったのは記憶に新しい。
毘沙門天の弟子と言うことで、実際には羅刹天である俺の方が兄弟子、星の方が妹弟子に当たる。
だから、星は俺のことを「兄様」と呼んでいた。
ん〜一応、俺の現世に妹いるんだけどなぁ…とか思って変えてくれと打診したら、やだと言われたので諦めた。
そんなわけで、俺と星は星が小さいころからの仲である。
もともと虎の妖怪であったと聞いたが…

まぁ、この二人ともいろいろあって生き別れてしまった。
いろいろというのは、まぁ…ね?
俺だから…ちょいと弓でぐさっとね?

で、死んじゃってね〜

人生リスタートしたわけだよ。

んで、問題はそこではなく〜

毘沙門天の弟子である星がなぜここに封印されてるかってのが…問題なわけだよ?まぁ、答えによっちゃぁ?

「…ぶっ殺してやる…」
「…ひっ…な、なななんですか?」
「ああ、いや、なんでもねぇんだ。
すまないな。
でも逆にラッキーだぜ…
星なら俺でも探せる。」
「そうなんですか?」
「あぁ見てろ?探せ『神眼』」

俺の視界が生き物のように動き回り、星を探す。

どこだ?どこにいる!!

見つけた!!

疲労困憊という表情をしているな…
しかも、収容人数が三人ということは聖さんの仲間かも知れないな…

とりあえず俺の妹分を封印したんだ…

それ相応の被害は覚悟してはもらうか…

「月夜さん!みつかりましたか?」
「あぁ…敵か…」
「結構多いですね…」
「ここは俺に任せろ。今から俺が見たものを伝えるからじっとしてろ…」
「えっええっ!」

俺が聖さんの前髪をかきあげると、聖さんは、顔を真っ赤にして暴れ始める。
じっとして欲しいな。

「ちょっと落ち着いてくれ。」
「だだだって!」
「はぁ…もう…」

俺は聖さんの腰を抱きしめ、こちらに寄せる。
そして、額と額を軽くぶつけ俺の意識を聖さんに贈る。
その距離は、お互いの吐息かかかるほどに近く、聖さんは耳まで真っ赤にしているが、先ほどのようには暴れない。
しばらくそのままでいると、意識の明け渡しが終わったので、離れる。
聖さんから「あっ…」と少し残念そうな声が聞こえた気がしたが…幻聴だと思っておこう。
それがいい。

この手のスキンシップというか女性のあしらいかたは覚えたつもりだ。
まぁ、女性サキュバスかインプしかいない島に男一人でさまよったらどうなるかは、想像はたやすいだろう?

生憎、卒業もしてないしファーストキスだって失ってない。
ある意味、奇跡だ。

まぁ、どーでもいいわな。

「聖さーん。ウェイクアップ!」
「なな、なんですか?」
「ほら、星のところに行ってらっしゃい!道は知ってるでしょ?
ほら、矛も貸してあげるから!
使えなかったら星に渡して!」
「で、でも!それでは月夜さんが!」
「俺を誰だとおもってるんですか?
俺は、『無角月夜』。
人間ですよ。ここでは人間は殺せない。
そういう場所ですから死ぬことはありません。
ほら、行ってください。」
「っ…わかりました、
そうだ。月夜さん。私がこの仕事ちゃんと出来たら私のことを白蓮と呼んでくれませんか?」
「いいですけど…なぜです?」
「ふふっ…秘密です。
では、ご武運を」

聖さんはそういうと星がいる方に飛んでいく。
それを敵の部隊が追おうとするが…

「おらおら、今から聖さんとお仲間のご対面だ。
じゃましちゃあ無粋だろう?
代わりといっちゃあなんだが…
俺の拳をくらってくれや。」
「ぐっ…そのものを捕らえよ!」

部隊長みたいなやつが命令し、俺に敵が殺到する。
だが…

「『毘沙門天流 超大喝』
ァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

俺の出した声によって大気が震え、大地が抉れ、敵が吹き飛ばされる。
時が止まり、何体かの敵は心臓が止まったのか、地面に落ちる。
まぁ、俺の場合、止まらないわけで、

「吹っ飛びやがれ!!」

俺は目の前にいた一体の顔面を思いきり殴りつける。

すると、そいつは大きく飛ばされ一つの檻の中へぶち込まれる。
その表紙に鉄格子が壊れ、一人の美少女が出てくるってぇ!

「ぬえじゃねぇかぁぁぁ!!???」
「あっ!月夜ぉ〜!おひさー」
「おひさー。って!お前、どっか行って…」
「ふふん!そこはほら、私だから!」
「そ、そうか…」

出てきた少女はぬえだった。俺がある森の中で知り合った鵺のぬえだ。
右と左で全然違う翼を生やしているぬえだが…
こいつぁ…俺がちょっと出かけた時に、置き手紙だけのこしてどっか行っちまいやがったからなぁ…

「全く…心配させんなよぉ…」
「あの時は、私やんちゃだったから!」
「そーいう問題じゃあないんだよ。
時に、ぬえよ。なぜここにいる?」
「じゃあなんで月夜はここにいるの?」
「封印された。ってことは…お前もか」
「そーだよ。私もちょっとヘマして捕まっちゃってさぁ〜。」
「そうかそうか、時にぬえよ。
俺の企みに協力してはくれんかね。」
「ん、なになに?」

青年説明中…

俺が話終えると、ぬえは親指をぐっとたてる。
まぁ、グッジョブサインだな。
こんなこと教えたのは誰だよ…

…俺じゃねぇか。

「よしっ!分かったよ!
私も手伝う!」
「じゃあ、ぬえ、援護な。
俺は正面突破するぜ。」
「じゃあ、始めようか!」

俺が敵を殴って倒し、その援護でぬえが弾幕を当てていく。

その息は俺もびっくりするものだ。

「さすが相棒!」
「まぁね!衰えてはいないさ!ほら、次、来るよ!」
「けっ!俺に働かせといて厳しいこと言うねぇ!
それでこそ、相棒だ!」

今の俺たちには敵はいないと思う。
そんな時、

「月夜さん!」
「兄様!!」

聖さんが星や、お仲間を連れて出てきた。
矢張り、矛は星が扱ったようで、星が持っていた。

「おおっ!無事だったんだな…
とりあえず、星…大きくなったな。
ただいま…」
「兄様ぁぁぁ!!!!
死んだかと思ってましたぁぁぁ…
うぇぇぇぇ…」
「泣くなよ…
まぁ、死んだんだけどね。奇跡的に生還出来たからさ…
連絡出来なくてごめんな。星…」
「うぇぇぇぇぇ…」

星は俺が生きていたことがそんなに嬉しいのか、俺に飛びついてきて泣いて泣いて泣きまくる。
ほらほら、俺がつられて温かいもの目から出しちゃうからやめなさい。

すると、星が目になみだを溜めて上目遣いで俺に言ってくる。

「兄様ぁぁ…もう離れないでくださいね…」
「…ぐっ…(かわいいな…)…わからんな…俺は気まぐれだからな。
でも、約束するよ。
もし、もし離れても絶対に会いにいくよ。約束だ。」
「あに…さまぁ…」

星は俺の腰に回してある腕をキュッとしめ抱きついてくる。

やべぇ…すげぇかわいい…

もし、今の星に耳と尻尾が生えてたらブンブン尻尾を振ってるんだろうなぁ…

「あの〜月夜さん…こちらの二人を紹介したいんですけど…」
「あぁ…すまんな。
星、とりあえず離れてくれ。」
「嫌です」
「離れてくれ。」
「絶対嫌です」
「…星。いい子だから離れてくれ」
「それでも、嫌です」

俺はしょうがなく、星の頭を撫でつつ聖さんに言う。

「すまない。
このままでいいか?」
「ええ。仕方ないですから…

右にいるのが…雲居一輪
左にいるのがムラサ…村沙水蜜です。」
「尼みたいな格好が雲居でセーラー服の少女がムラサか…

俺は無角月夜。
神と妖怪と人間の力を持ってるが、種属的には人間だ。

よろしくな。」
「よろしく。
私は村沙水蜜ね。
『水難事故を引き起こす程度の能力』を持ってる。」
「私は雲居一輪です。
『入道を使う程度の能力』を持ってます。
姐さんに手を出したら殺します。」
「やめてくれ。
あーそうだ。俺の能力を説明してなかったな。
『あらゆる障害を乗り越える程度の能力』
『人間であり続ける能力』
『あらゆる存在の後ろにいる程度の能力』を持ってる。」
「えっ?兄様。能力三つも持ってるんですか!?」
「ですよ。
で、星の能力って…
『財宝が集まる程度の能力』だっけ?」
「はい。でも、兄様の能力って正直、一つ目のしか強くなくないですか?」
「…しょう?」
「いえ、なんでもありません。兄様。」

ふむ、言わないでくれていい。
星は察しがいいからな。これ以上察しられても困る。
そして、泣ける。

「私は紹介しないのかよ〜!!
月夜!」
「おおっ…悪りぃ悪りぃ。
みんな紹介するぜ。こいつはぬえ。
鵺のぬえだ。」
「よろしく〜♪」

さてと、敵さんも近くなってきたし…そろそろ。



逃げますか。


「ところでみんな。何なら運転できる?」
「「「「…」」」」
「おいこら、目ぇみろ。」
「なぁ、月夜。私なら船を動かせるが…」
「船か…よし、三十秒で作る。
ちょいと失礼。」
「うわわっ!!」

俺は聖さん…じゃなかった白蓮と同じことをムラサにする。
やっぱり顔を赤くするが…抵抗はしない。

「よし、すまなかったな。
じゃあ、いくか…生み出せ『聖輦船』」
「うぁっ!?」

ふむ、こんなものか…俺が生み出したのはどデカイ木の船。
俺がイメージするノアの方舟とムラサがイメージする船とを掛け合わせた船。

それが

聖輦船だ。

「よし、頼んだぞ。ムラサ」
「任せて。おおっ!これは…」
「飛倉っー不思議な欠片を合わせて作った奴だ。現代版ノアの方舟な。
ちなみに次元を移動出来るぜ!」

そんな時、遠くから声がする。どうやら援軍を連れてきたようだな。
しゃーない。

「おい、星。いい加減離れろ。
そして、矛返せ。」
「ずすっ…すいません。兄様ぁ…
お返しします。」
「おう。サンキュ。
さてと、ほらほら、みんな乗れよ。
白蓮もよ。」
「私もって…び、白蓮?」
「ん?ダメだったか?」
「いえ、むしろ大歓迎です!どんとこいです!うわぁ…ほんとすごいですね!」

そうか…そうか…喜んでくれて何よりだ。
さてと…そろそろ時間かな。
俺が聖輦船をしたから見上げるとそれは大きくすごかった。
甲板のほうではみんなはしゃいでる。

その時、一瞬星と目があった気がした。
星は俺に笑顔で手を振ってくる。

あぁ…この笑顔とも今日で見納めか…

俺はふっと笑って返す。

だが…その表情に何かを悟ったのか…星の身体がビクンと震え、慌て出す。

「あ、兄様ぁ…
何をする…つもりなのですか?早くこちらへ…来てくださいよ。」
「星。


こいつらのことよろしくな。」

そう、俺はこいつらと一緒には行けない。
ぬえは多分、この船に正体不明の力をかけるだろう。
だが、それに俺がいては不都合だ。
俺の能力は、人間ということがわかっているのだ。
正体不明の力を打ち消してしまう。
そんなことをしたらよくないからな…

それに敵さんがもう来てる。


「な、何を言ってるんですか?
兄様も一緒に来るんですよね?」
「いいや。俺はここに残る。
そのくらいはお前も頭は回るだろう?」
「い…嫌…です…
嫌です!!!

兄様ぁぁ!!
私も私も残らせてください!!」

星の大声を聞きつけて、白蓮達がやって来る。

「どうしたんですかって…きゃあっ!」
「えっ?何勝手に動いてる?」

俺は聖輦船を自動操縦に切り替え、次元へと送らせる。

「えっ?月夜さん!!
どういうことですか!???
まさかっ!!!」
「そのまさかだよ。俺はここに残る。」
「嫌です!そんなの認めません!!!
意地でもつれて帰ります!!
結界!!??」

聖輦船から俺に砲撃をしかけるが内部で壁にあたり消える。

「兄様ぁぁ!!!

約束破る気ですか!!!

嫌です!

私は!私はぁ!!!

兄様ぁ!!

戻ってきてください!!お願いします!兄様ぁ!!」

星は結界を壊そうと叩くが全く傷つかない。
そりゃあそうだ。
神様お手製だ。

「兄様ぁぁ!!!
くっそっ!!!

壊れてよ!!!
こんな結界!壊れてよぉ!!!

兄様が…兄様がぁぁぁ!!!」

星はすでに泣いていた。
必死に結界を壊そうと弾幕を撃ったり素手で殴ったりしている。
だが、壊れない。

さてと…

俺は聖輦船の下腹部へ入り底に手をつける。
そして、

「うらぁぁぁぁ!!!」

空へとぶん投げた。

船は一瞬で空間を抜け、何処かへ行く。
これで…

あぁ、また居なくなっちゃったよ。
また、俺も泣いちまうじゃあねぇか。

「まだ、敵は遠くへは行って居ない!追えぇぇ!!」
「させるかよ…白蓮の元へは行かせねぇぞ!!
俺は無角月夜。人間だ!!!

ここの結界壊したきゃ、俺を殺してから行きやがれ!

死にてぇやつからかかって殺してやる!」
「やれるものならやってみろ!」

俺は矛を構え、勝利不可能の戦いに挑んだ。


…………

勝利不可能の戦いに挑み、数ヶ月。
俺はその中で幾度も倒れ立ち上がりの繰り返し、ついに…

「がっ…」
「終わりだ」

俺の腹部を後ろから手が貫く。
あぁ…デジャヴだ…
この死に方何回したっけ…かなぁ…

矛は光へと帰り、霧散する。
俺の口からは血がもれ地面へと垂れる。

「…あいつらはどこにいったのかなぁ…へへっ…元気してるかな、」
「最後に言い残すことはあるか…」
「ねぇよ。あ〜、あったわ。

もしあいつらを封印した理由が私的なものだったなら今から俺はここを壊す」
「そうか…やれるものなら…やってみろ!」
「悪りぃ…無理だ……わ……」

俺の腹部を貫いた手が引き抜かれ血が噴き出す。
俺はそのまま地面へと落ちていく。

あぁ、ごめん。白蓮…
俺にはキツかったよ。
あぁ、ごめん。星…
約束守れないかもしれない…
あぁ、ごめん。メリーさん…
もう貴方のことを救えないかもしれない…

俺の意識は暗闇へと落ちて行く…

…………

目が覚めたら、そこは水の中。
しかも、服を着ているのに不快感はない。
ふわふわ浮いてる感じだ。

嗚呼、ここは…

三途の川だ。

昔、事故で三途の川に落ちたことがある。
その感覚にとても似ているな。
あの時は俺を引き上げてくれるやつがいたからいいが…今はいない。
あれ…声が聞こえる。
なんだっけ…

(月夜…月夜…聞いているのですか?)
ごめんきいてなかったや。
(全く貴方という人は…いいですか?)
あぁ、この声。

ちっこい閻魔様じゃないか…

いっつも説教ばっかだったな。

そういやぁ…
閻魔様言ってたなぁ…俺が向こうで死ぬ時に…なんだっけ…
そうだ。あれだ。

(貴方が…今出来る善行は…)


俺に出来る善行はただ一つ

(生きて帰ってくることです!)

生きて帰ることだ…

忘れてた。

いつのまにか俺は死んでもいいと思うようになっちまってた。

それは違うだろう。

俺は生きなきゃいけないんだ。

不死身の何人かも言ってたな。

(人間の命は有限なのよ?せいぜい楽しみを増やして生きなさい。)

ニートめ。説教しやがって

(私達、蓬莱人は死なないけど、普通の人間は命を大切にしなければいけないんだ。月夜もそれを覚えておくんだぞ?)

うるせぇよ。ニートと喧嘩ばっかしやがって…

(人間は命を求めるわ。でも、逆に命を捨て過ぎるのは最悪よ。
命を捨てるということは、人間であることを放棄しているのと一緒よ?)

さすが、薬剤師…いうことがキツイぜ。

人間であることの放棄ね?


俺は人間だ!!!

そうだ。俺はこんな所で死にたくねぇ!

まだ、謝ってないことや。

お礼を言ってないことがあるじゃあないか。


『生きるために手を伸ばせ』


俺は水面へと手を伸ばす。

届け!届け!

そして、俺は…

水面へと手を出し、三途の川を抜け出した。

…そこに見えたのは…

「えっ?」

青空だ。

なぜか上へと手の伸ばしたのに雲の上にいる。

雲はまだまだ下にあり、天気的には晴天だ。

「なぜに?」

と、思って下を見る。

そこは、東京の街並みが広がっていた。

うぇい。困ったぜ!

「えっ?」

何でだろうね?
おかしいよね?

「いや、あの、それより前に落ちるからぁぁぁ!!!!」

こいつぁ…死ねる。

……

はい、どうもunworldです。
いやね。なんでこうなったんでしょ?
自分もわかりません。
ではでは、原作組の登場したのですが…
再会したい人がいますから、いろいろいますからね。
メリーさんとか蓮子さんとか早苗さ(ry まぁ、そんな感じです。
では、次の話タイトルはもちろん『再会は突然に』でお会いしましょう。

-11-
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