小説『東方羅刹記』
作者:unworld()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第四話 試練の先には

あたり一面漆黒な世界に響くのは、剣と剣がぶつかりあう金属音とブシュッというリアルな音と乱れた息の音だけである。

「はー…はー…はー…」

息を整えようと深呼吸するもそのかいはなく息は乱れたままだ。
カク…羅刹天の修行を始めてもうどのくらい時が経っただろうか…
俺…無角月夜はそんな中、無限に続くこの試練に挑んでいる。
この修行の中、俺は…数えきれないほど死んだ。
そして、その中で妖化をマスターし、『鬼』や『神』へと自分の姿を変えることを学び強くなった。そして、わかったことそれは俺の能力だ。

『あらゆる障害を乗り越える』

それが俺の能力であり、力だ。
だが、まだまだ修行不足ということでこの修行。
切りかかってくる騎士達を20000体倒すこと…
黒い騎士やらなにやらは俺に向かって再度突っ込んでくる。
俺は杖にしていた剣を持ち直し、その騎士に剣戟を浴びせる。
しかし、機械を思わせるその動きには感情が入っておらずまさにゾンビみたいなものだ。それでも怯むと死ぬ。
死なないためには殺さなきゃいけなくなる。俺はその黒い騎士に再度剣撃を浴びせ、その黒い騎士は血を吹き出しながら地面へと帰る。

人を切ったり殺したり、『ソレ』になれてしまうというのはやはり生きた心地がしない。
なんだろう…こう…足がなくふわふわ浮いている感じがするのだ。
特にこの騎士達は機械を思わせる動きなのに人のように血を吹き出しながら帰って行く。
俺はこの修行をしてある程度時が経ったがやはりこれは頭が痛くなる。

俺は戦闘狂とかいう部類ではないので血湧き上がる展開など望んではいない。
返り血がついたからと言って恍惚な表情を浮かべたり相手を圧倒するほどの力も持ってない。(これは月夜の戦闘狂のイメージです。てか、これ前半のってただのドSかヤンデレなだけで…ピチューン)

あ、どこかでバカな作者が死んだ。
うん、まぁいっか。
そんなことより、俺にはまだまだ覚えるものがあった。それは『砕キ』という技だ。
腕を部分的に妖化させ世界を砕く技と言った方がわかりやすいだろう。

その時五体の騎士達が連続攻撃をしかけてくる。
俺は微動の回避で剣をよけ逆に続けざまに相手を切って行く。
俺は返り血を浴びたが、剣の血を払いまたも飛び込んでいく。
次の敵は槍兵。
リーチが長くやりずらいがそんなこと気にする暇はない。
槍を素早くついてくる騎士の攻撃をいなしつつ、隙をうかがう。
そこだ!
騎士が槍を思い切りついた瞬間俺は身をかがめながらその軌道を剣で弾き虚空へとそらす。
騎士は腕をさらす形になり俺はその腕を素早く斬り落とした。

ぐっ…やっぱり罪悪感がっ!!

俺はそれでも脇から左上へと剣を振り抜き殺す。
だが、ここで自分の動きを止めたのがまずかった。
後ろに黒い騎士の大きいバージョンが近づいているのに気付いてなかった。
そいつの武器はハンマーだった。
俺が気づいた時には振られたハンマーは俺の右腕に近くなっており、防御を取る暇も無く俺はゴルフボールよろしく吹き飛ばされた。
肺の空気が押し出され、背中と右腕に鈍痛が響く。

「がっ…くっ!」

俺は追っ手がする前に素早く立ち上がる。
しかし、起き上がった時凄まじい数の矢が俺に迫る。

「くっ!妖化『足疾鬼』!」

足疾鬼というのは羅刹天の異名。
その速度が凄まじいことからつけられたそうな…
足を漆黒にし、羅刹天の限定解放を行う。
まぁ、これの能力としては自分の速度系の飛躍的上昇。
反応速度
足の速さ
頭の回転速度
血の流動速度
自己回復の速度上昇などあげればキリがない。
一番デカイのは足が強靭になること。
その脚力は凄まじい。もしかしたらどっかのサッカーの必殺技が出来るかもしれない。
そんな訳で俺は矢をことごとくうまくよける。
俺は矢をよけきったわけだが…
次は…って弾幕っっ!!!????

「まてまてまてぃぃぃぃ!!!!!」

弾幕は別にいい。
だが、数がハンパなさすぎる。
青、赤、緑、紫etc…
うん、綺麗だ。
俺の眼前にこういう綺麗な弾幕が展開される。
でも…隙間がない!よけられない。

「っ!うぉっ!!あぶっ!!」

赤色の弾幕が凄まじいスピードで地面に着弾する。
速度もヤバイな…うーんこいつぁ

死ねる。

兎に角よけるしかねぇ。

「やってみるか…『足疾鬼』超神速!!」

一瞬…世界が止まった。
視える!数多の弾幕の隙間がこれでよける!
俺は足に力をこめ自分のいた場所からいなくなった。

凄まじいスピードで移動する。多分これをマンガかないかでやったらギュンと効果音が出ているのではないだろうか…
超神速はスピードに超特化した能力。
その反面、これを使ったあとは全体的にスピードが落ちる。
だが、今は!

俺は弾幕を避けて避けて避けまくり、
その間にも五体の騎士達を狩った。
俺が今まで狩った数は19985体。
あと十五体狩れば修行は一応完遂だ。
そんなことを思っていると騎士が武器を持って降ってくる。
これこそ、飛んで火に入る夏の虫!
俺はここぞとばかりに力を使った。

「妖化!『羅刹鬼』!」

羅刹鬼は力系統を飛躍的にあげる妖化能力だ。
これでは手が黒く染まり腕力などの強化に使える。
俺は剣を振るい敵をなぎ払う。
振るわれた剣は風をも巻き込んで敵へと殺到する。

風に引き裂かれ俺に引き裂かれ本当に可哀想な相手だったな。
今の狩った数は19995あと五体…って
いなくなってる。
俺が敵を探そうと上空を見上げた瞬間5mもあろうかという巨大な金棒が振り下ろされた。

「ぬぉっ!?」

俺は回避が間に合わないと思いそれを受け止める。
重っっ!!!

俺は脚を踏み込み耐える。
正直脚が折れそうだ…俺は黒色した腕に限界まで力を込める。
すると、鉄で出来ている筈の金棒に指が食い込みヒビをいれる。

「ぬぅぉぉぉぉぉ!!!!」

黒い腕に血管が浮かびこの金棒をへし折ろうと力を込めた。
そして、ゴキバキと音が聞こえ金棒が音をたてて崩れた。
その金棒を振るったのは10mはあろうかという巨躯の黒い騎士だ。
巨躯の騎士はデカイ拳を俺のこと潰さんとする勢いで振り落としてくる。
俺はそれを片手で受け止めた。
そして、俺はその受け止めた拳を

消した。

黒い騎士は心底驚いたように一歩後ろに下がる。

「ァァァァァ!!!」

俺はそれを見逃さず四鈷剣で神力を込めた一撃を叩き込んだ。

一閃

黒い騎士は風に流されるように霧散し俺を一気に脱力感が襲いその場に倒れこむ。
目の前には修行成功の文字が浮かんでいる。

「はーはーはー」

息も絶え絶え俺はなんとか立ち上がる。
そこらへんに落ちていたコートを拾い上げる。
すると、

『気分はどうじゃ?』
「お、カク。
気分は最高だが、いろいろ最悪だ。
とりあえず挨拶してから別荘行く。」
『お前はよぉ頑張った。
しかし、無理をしすぎるのは良くない。しっかり休めよ。』
「当たり前当たり前。でないと死ねる、というか死ぬ。」

俺はすこし光が指す方へ歩く。
そこは封印蔵の入口。
俺は入口に着くと閉じられていた扉を開けて外に出る。

外はもう夜で月も出ている。
丁度今日は満月か…

空を見上げ

手を伸ばす

「すこしくらいは近くなったかな…」

俺は手を降ろし父さんのところへ向かう。
いつの間にか四鈷剣は消え髪も黒髪に戻り、長さも肩のあたりくらいだった。

「はぁ…」

俺はため息をつき歩き出す。
脚が重い。
腕がいたい。
なんとか耐え切りクリアしたこの修行はもうやりたくはない。


俺はフラフラしながら父のところに向かった…





………
月夜が封印蔵を出て歩いているところを封印蔵の屋根に登って見ているモノがいた。

?『あーあーまた変なのが増えちゃって…』

?『いいんじゃねぇのかよ?別に害を及ぼす神を封印したわけじゃねぇんだし、まぁ、俺たちには関係ねぇな。』

?『そう?私達はここに入ってた神様を利用するつもりだったのに…』

?『けっ!何がだ…本当は相入れねぇ筈の人間と神様がこうやって話してんだぞ?
嘘を言ってんじゃねぇよ。化け物』

?『化け物?それはひどいわね。
可憐な少女と言いなさいな。
嫌われますわよ?厄災神、禍津日神?』

禍津日神『…喰ねぇ女だ…俺の封印を解いてどうするつもりだ?禍角神無(まがつの かんな)?』

神無『私?別になにもしないわ。
ただ、私は無角の四男 無角月夜を殺す。それだけよ』

禍津日神『そーかよ…』

それ以来禍津日神の気配は無くなる。
神無は微笑し月夜を見つめる。
あいにく、月夜はその視線に気づかず歩いている。

「絶対殺すわよ…幻想郷に至るモノは…」

そして、神無の影がすこし揺らめく。

『うしろの正面だ〜れ♪』

「もうすぐもうすぐよ。モイラ様が姿を現すの…ですよね?モイラ様?」

神無は自分の影に語りかける。
神無の影は少し揺らめきやがて

その口元を緩ませた…



どうもunworldです。
ついに、月夜君の修行が終了。
そして新しいキャラ 禍角神無と新しい神、禍津日神とモイラが登場しました。
このキャラと神たちを中心に事件…いえ異変が起こります。

神達の紹介はもうちょっと活躍の場が増えてからします。
さて次のお話
『サンタとメリーと蓮の子と』
では、原作組が登場します。
んーこの名前で察してくれる方がいるかと思います。

ではでは、次のお話
『サンタとメリーと蓮の子と』
でお会いしましょう。




-5-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




東方茨歌仙 ~Wild and Horned Hermit. (IDコミックス) (IDコミックス REXコミックス)
新品 \840
中古 \210
(参考価格:\840)