小説『東方羅刹記』
作者:unworld()

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第五話『サンタとメリーと蓮の子と』

俺が父に挨拶し、自分の別荘って言っても普通の家に帰ってきて、早一週間。
別に修行と仕事(裏稼業の奴らのsp)などをやって過ごしていた。
そんな時だった。
お気楽能天気な兄さんから電話がかかってきたのは…

俺がお風呂上りに電話をとったのは
まだ、肌寒い秋の日。
湯冷めするじゃあないか…と内心思ったものだが別にいいかと諦め電話に出る。

「もしもし、月夜だけど…」
「おおっ!月夜!繋がってよかった!
なぁ、頼む一生のお願いだ!」
「黙れ、兄さん。」
「聞く前に断るんじゃないよ。
月夜頼む!ちょっと合コンに付き合ってくれ!」
「断る」
「なぁ頼むよ?
頭数がどうしても足りないんだ。
俺がすこし恩がある奴がいてよ。
そいつに頼まれてんだ!
頼む!頼む!なっ!」
「…はぁ…あのね、兄さん。
俺は兄さんのいう事を聞くためにいるわけじゃあないんだよ。
それに、俺は暇じゃあない。
悪いけど他を当たってくれ」

何が合コンだ。
俺は内心そう毒づく
前にもそういうイベントに参加した事がある。ロクな事がなかった。
変に絡まれるわ。酒飲まされるわで大変だったし…

兄さんは心底、困ったのかどんな手を使っても承諾してもらおうと懇願する。

「なぁ、おいここは一つ弟として来てくれよ。メリーと蓮子もいるしよ。」
「…メリーさんと蓮子さんもいるんだ…」

メリーさん、蓮子さんというのは兄さんと同じ大学に通っている学生さんでオカルトサークル『秘封倶楽部』に所蔵しているらしい。
どちらも不思議な目を持っているらしい。兄さん曰く。
俺は昔に一度だけあったことがあるのだが、しかし、最近は全くあっておらず二人の印象も変わっているかもしれない。

「(おっ…こいつぁ)メリーと蓮子のこと覚えているだろう?
あいつらも会いたいと言ってるんだ。
それに俺もお前とあってなかっただろう?会って話をしようじゃないか…
なっ?」
「………はぁ……今から行きます。
お店の名前と住所教えてくれれば行きますよ。」

俺は店名と住所をおしえてもらい電話を切る。
はぁ…自分の性格が恨めしい。

こういうふうに懐柔されたらいけないんだろうけどなぁ…

最近はいつもこうだ。
いつから俺も甘くなったのか…
いつからといえば最近だろう。
どうせ、酒を飲まされるのだろう。
まぁ、鬼だから酒にはめっぽう強いのだが…飲まされるの方としては勘弁して欲しい。

俺の服としては青と黒のチェックの服
普通のジーンズというラフな格好だ。
見た目、普通の17歳が合コンに行くなどあり得るのだろうか…
俺はおかしいだろう思うのだが、兄さんのことだ、何かあるのだろう。
というか、まず17歳の未成年に酒を飲ませるのはどうかと思う。
(未成年は酒を飲めません。この作品では酒を飲んでいますが、未成年の方はお酒を飲まないようにお願いします。)

よし作者良く言った。
これを兄さんの前でも言ってみろ。
俺はお前を勇者と呼ぶぞ
とかいう茶番はおいておいていいだろう。

俺は電車に乗り込み兄さん達の待つ場所へ向かう。
やはり俺のような学生の姿は見当たらない。
まぁ、俺も学生ではないんだけど…

俺が駅に着くとそこには光と花が良くマッチしている光景があった。
そこはこの京でも有名な場所で兄さんが指定した場所も意外と良いところだ。

「さてと…」

俺は指定された場所へと歩き出した。


………

月夜が駅へ歩き出す頃、月夜の兄…サンタはメリー達と酒を飲んでいた。
別に珍しいことではない。
サンタも意外と酒に強く、かなりの酒を口にしていた。
だが、蓮子は普通くらいなのだが、メリーはめっぽう弱く、あまり酒を口にはしたがらない。
この合コンに来ているのは11人。
今は男5人女6人と言った感じだ。
メリーと蓮子は基本的にはこういうイベントには積極的に参加しない。

だが、サンタ直々に頼まれたのだ。
二人ともサンタには大きな恩や貸しがある。
二人が属するオカルトサークル『秘封倶楽部』の設立に大きく関わった人物でもある。だからむげに断るわけにも行かなかったのだろう。
実際、二人ともこの合コンを楽しんでいる様子はない。

だが、この合コンに参加している男達たいていは二人が狙いだということをサンタは知らなかった。

「ね、ねぇ宇佐見さん、マエリベリーさん。楽しんでる?」
「ま、まぁね。」

蓮子は作り笑いを浮かべ適当に受け答えをする。
ちなみに、彼女たちの本名は
宇佐見蓮子
マエリベリー・ハーン
といい。マエリベリーというのは言いづらく、メリーというのは蓮子がつけた愛称、俗にいうあだ名というやつである。

そのメリーは不機嫌なのだが…

ところで、なぜ男達はこのメリーと蓮子を狙っているか…というと話は簡単である。

メリーと蓮子が美人だからだ、
メリーと蓮子はかなりの美人で、頭もいいし、思いやりのある人間だ。
この人たちを彼女にして、損はない。
と、考えているからである。

ちなみに、サンタはメリーと蓮子に特別な感情は全く持ってなくお互いに信頼しあっている関係だ。

まぁ、この合コンの場にいるメンツにメリーと蓮子は全く何も感じなかったし、早く帰りたいとさえ思っていた。

しかし、そんな時ふすまが開けられ、

「おじゃまします。」

月夜がやって来た。
………

「おじゃまします。」

俺はふすまを開けあいさつする。
ふう、やっとついた。
俺は兄さんのところに行き、すこし文句を行った。

「兄さん、ひどいな。
普通に始めてるじゃん。
俺がくる必要ありましたか?」
「あったな。
みんなちゅーもく!」

兄さんの言葉に促されてか皆の意識がこちらに向く。
兄さんは気軽な調子でこう言った。

「こいつが俺の弟の月夜だ。
おら、なんかあいさつしろ。」
「どうも、紹介に預かった
無角月夜です。
今日はよろしくお願いします。」

拍手と口笛がなり、また騒がしくなる。
まぁ、当然のことだろう。
しかし…
俺は目の前のグラスに注がれたビールを見てため息をついた。
俺は未成年ですよ〜
まぁいっか…
俺はグラスを持ち口をつけ一気に煽る。
(未成年はお酒を飲んではいけません。真似しないように。)

あぁ、この感じ…
何かがふつふつと湧き上がってくるこの感じ…鬼の血が目覚めそう…
はっ!いかんいかん。久しぶりの飲酒に気持ちが…
俺は頭をふり考えを振り落とす。
そして、見知った人のところへ行った。

…………
月夜が見知った人というのはもちろんメリーと蓮子である。
メリーと蓮子のところへいき月夜はあいさつをした。

「お久しぶりです。マエリベリーさん
宇佐見さん」
「「…えっ?」」
「あれ?覚えていませんか?」
「いや、あの…うん覚えてるよ。
久しぶりだね。えっと…」
「別に月夜でいいですよ。それに宇佐見さんの方が一応先輩ですから」
「そんなに堅苦しくしなくていいよ。私のことは蓮子さんって読んでくれればいいし、ねっ?メリー」
「そうね。別に私はメリーでいいわよ?」
「ありがとうございます。
メリーさん蓮子さん。
改めてお久しぶりです。」
「うん、久しぶりだね?
うん、まぁなんか変わったね…(見た目とか)」
「そうですか?」

そう、メリーと蓮子が会ったのは5年も前の話、そのころは心情的にも余裕が無く髪も伸びきっていたためメリーと蓮子は月夜の顔がわからなかったのだ。

そのころは暗かったし今みたいに明るくなかったから第一印象も変わった月夜を見てわからないのも当然だろう。

顔はサンタには劣るが普通にイケメンにはいる部類ではある。
肩にかかるくらいの黒い髪、体は筋肉質で固そうな筋肉と長い足。
178ほどある身長をもっと高く見せている。


「どうしました?」


身体をジロジロ見られているのに気づいたのか月夜が聞いてくる。


「い、いや別に何でもないの。
ごめんね。気に障ったなら謝るわ。」
「いえ、そういうわけではないですよ。」


そう言って月夜は酒を煽る。
その顔はほのかに赤く染まっている。


「ねぇ?月夜君ってお酒強いの?」
「えっ?まぁ…人並みには。」
「嘘つけー」


そこにサンタが介入してくる。
サンタは少し酔っているのか顔が赤く、月夜の肩に腕をかけのしかかる形で言う。


「俺より全然強いじゃねぇかよ〜。
それに、どこのどいつだよ?
前に居酒屋行った時一升飲みきった未成年はよぉ〜」
「ぐっ…うっさいな。
てか、酒臭い」
「え〜…」


蓮子は若干距離をとった。
未成年で一升を開けるとは凄まじい酒豪である。
だが、月夜はこれをしてピンピンしていた。
酒を飲むことに関しては月夜に勝てるやつはなかなかお目にかかれないだろう。


何たって鬼神を体に宿しているのだ。
古来より、酒を好んだ鬼の神様だ。
そりゃあ人間の何十倍も強いだろう。




別に誇れる特技ではないが…


そんな時、幹事と思われる女性が立ち上がり言った。


「はーい!特技を言ってみよ〜!!」


…別に言わなくてもいいだろ。と思ったのはきっと月夜だけではないはずだ。


………………
特技というものはあまり無い。
それに、これと言って誇れるものが無い。
だが、酒を飲むのには自身がある。
何たって鬼神だからな。
別に、これが誇れるわけではないが
うーんどーしよ。


あーうん、そうだ。目の前にある湯飲みでも綺麗に砂に変えてみよう。
それがいい(こいつバカだろby作者)


「じゃあ次の人!月夜君いってみよー!!」
「えっ?…えっとじゃあこの湯飲みを綺麗に砂に変えてみます。」


俺は湯飲みを片手で握り少しだけ能力を発動し、湯飲みをサラサラの砂にするように破壊した。


「うわっ!すごっ!」


何がすごいのかわからないが…
とりあえず砂どうしよ。
俺は灰皿をとり砂を回収。


ううっ…今になってなぜこんなことをしたのかという疑問が…


あー案外ばれたかも…


メリーさんと蓮子さんが俺のことをすげー睨んでる…
兄さんは面白がって笑ってるし…


神様…ヘルプミー…
『ここにおるけどな。』


俺が席に戻るとメリーさんに質問された。


「さっきのあれは何したの?」
「えっ…いやですね…その…」
「私も気になるなぁ?何したの?」


しどろもどろだ。
俺は無残にも俺に不思議な力があることが普通にばれた。
兄さんは「こいつバカだろ」とか笑ってるし…


「えっとですね。僕の力?じゃダメですか?」
「まぁ、いいわ…」
「でも、今度詳しく聞かせてね!」
「…いいですよ。」


少しだけ嘘をついた。
あれは、俺の力じゃないんだ。
俺、個人が持つ力。それは
『あらゆる障害を乗り越える力』だ。
痛みという障害を乗り越え
無理という障害を乗り越え
あまつさえ死さえも乗り越える。


現に『羅刹天を封印する』という障害を『乗り越えた』
『異常』その言葉に尽きる。
だが、この能力の最大の弱点。
それは、この能力の本質の『乗り越える』事だ。


障害を破壊するというところまできたらもうどうしようもない。
だが、この力は乗り越える力だ。
その先に何があるのかは選べない。


簡単に言えば『死合い』の場合。
勝つか負けるかはこの能力に左右されないという事だ。


死合いという障害を破壊するなら勝つだろう。
だが、俺の場合それは『乗り越える』であって勝つか負けるかはこの能力は関係なく負ける場合も多々あるのだ。


あと、もう一つ『限界』という障害がきた時この能力は弱すぎる。
限界を乗り越えるのと限界を破壊するのでは強さのワケが違う。


それに、この能力の『障害』というのはよくわからない。
無条件に『死』という場合もあるし
なぜか、くだらない事が障害認定されることもある。


そして、この能力の特殊条件…


『1日に2.3回しか使えない』


という事だ。
まぁ、強くなれば無条件に使えるようなるのだが…いかんせん、俺が弱い。
まぁ…しょうがないんだけど…


はぁ…とため息をつき酒を煽る。
こういう時にしか酒を飲まないので意外と久しぶりである。


「まぁまぁ、お酒でも飲めば?強いんでしょ?」
「まぁ…人並みには…」


俺は蓮子さんに酒をつがれる形で飲んでいった。






一時間後…
みなさんかなり酔ってるな。
俺は頬をポリポリかいてうーんと唸る。
俺もかなりの酒を飲んだ。
すでにメリーさんと蓮子さんは寝てしまったし、てか、みんな寝ている。
兄さん以外。


「兄さん。大丈夫?」
「ん?ああ、別に問題ねぇよ」
「そうか…さてと、ここらでお開きにしよう。」
「なぁ、月夜。少しだけ妖化してくれないか?」
「それはまたなんで?」
「なんとなく…いや、そうじゃねぇ。
俺も確認しておきたい。自分の弟の姿を。」
「わかったよ…『妖化』」


俺の髪紅く変色し急に伸び腰の辺りにまでなる。額には黒く大きなな角。
俺は手を少しだけ黒くし、兄さんに話しかける


「どう?これが俺の姿だけど?」
「ふっ…似合わねぇな」
「ほっとけ」
「……それが羅刹天なのか?」
「ああ、これが羅刹天。俺だ」


沈黙が流れる。
何とも言えない空気。
別に苦しいわけじゃない、だが、嬉しいわけでもないのだが…


少し経ち兄さんが口を開く。


「正直、お前がそこまで力を求める理由がわからない…
悪い、気を悪くしたなら謝る。だけど、俺にはそんな化け物になったまでそこまで力を求める理由がわからないんだ…」
「まぁ、そうだろうな。
正直、俺もわからない。目の前さえ見えてなかった。ただ暗く黒い世界をがむしゃらに走っていただけかもしれない。
なんで、ここまで力が欲しいと思うのか…そんなのわかったものじゃない。


だけどさ、
とりあえず努力したいんだよ。
俺が、それをやめちまったらそこで何が終わる気がする。
悲しいから止まるんじゃない。
止まるから悲しいんだよ。多分。
俺は化け物だ。こんなに力を求めて何になる?
それはわからない。
だけど、もう止まれない。止まれる領域はとうの昔に捨ててきた。
だから、俺はこのままでいいんだ。」
「それがお前の答えか…」
「あぁ、そうだ。
それに…この前父さんに言われたことをやろうと思う。
もしかしたら死ぬかもしれない。
ここにいられなくなるかもしれない。
それでも、やらなきゃいけないんだ。
兄さん…許してくれ」
「おいおい…まさか…あいつを封印するってのかよ!
そりゃあ無理だ。
人間には到底無理だ。
それはお前もわかってんだろ月夜!」
「ああ、わかってる。
でも、俺は化け物だ。
化け物が化物に挑んで何がダメなんだ?
今回のターゲットは


『別天津神』だ。」
「…」


悪いな兄さん…それでも俺はやらなきゃいけない。
『別天津神の封印』という障害を乗り越えなくちゃいけないんだ。
…………………






?『おっ?ワシ達が呼ばれた気がするのぉ』


?『まぁ、ワシら天と宇宙の神に挑もうというのが間違いな気がするがの。』


?『ワシ達が隠居を始めてから長く日が経つ。そろそろ陽の光を浴びたいの…』


?『陽の神が何を言ってるんですか』


?『しかし、面白い少年じゃな。
こやつになら封印されても構わないと思えてくるわい!』


天と宇宙の神は月夜へと視線を送る。


『天と宇宙はこの手にあり。』








どうもunworldです。
今回はメリーさんと蓮子さんの登場。
口調に違和感ないだろうか…と考えてます。
で、今回の神。
『別天津神』(ことあまつかみ)について説明したいと思います。
別天津神は5柱の神で、
それぞれ名前がついています。
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
神産巣日神(かみむすひのかみ)
宇摩忘阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
天之常立神(あめのとこたちのかみ)の五柱からなり、総合的にみれば
天と宇宙、生命力や活力なども司っています。
天地開闢の時に出てきたこの別天津神は五柱全て隠居をかまします。
そして、天を天照大神に渡し天照大神が主神となるのです。
詳しいことを言えば
天之御中主神は宇宙の根源神。まぁ、宇宙そのものを司り
高御産巣日神は祭事や、政治、などあと征服する力も司っているそうです。
神産巣日神は生産の神様
もちろん生産を司ります。
宇摩忘阿斯訶備比古遅神は万物の生命力を司り
天之常立神は…いろいろあってわかりずらかったのですが、一応こうしておきます。
天そのものを司るとしておきます。


そんな訳でまだまだ、メリーさん蓮子さんパートは続きますが途中バトルします。
ではそんな感じで次のお話。
『酒は飲んでも飲まれたらまずい』
でお会いしましょう。
ではでは〜

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