小説『東方羅刹記』
作者:unworld()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第八話『絶界の黒鬼』

嗚呼、嗚呼、ここはどこだろう、





暗闇の中俺は考える。




この暗闇に堕ちてどのくらいの時が経過しただろうか…




この絶界を放浪し、何人の仲間を見送っただろうか…



過去に未来を行き来して仲間に出会い、そして…全員が俺の目の前で逝った。



すでにもう、涙は流れなかった。



ストレスによって俺の髪は黒から白へと代わり、だが、見た目の顔や背丈は変わらなかった。



妖怪に…鬼に…神様に…様々な奴が俺をおいていってしまった。
有限とはいえ、寿命は長い。
しかし、それでも…俺の前からは誰かがいなくなる。


もうとっくに…あいつらも…



そう考えて、頭をふりその考えを頭から振り落とす。


いや、そんなことはない


そんなことはないんだ。


現実逃避だとわかっている。


そして、俺は化物なのか…人間なのか…わからなくなり放浪しているうちに、捕まり何処かに封印された。


すでに封印されているんだが…と思うと、なぜかいろいろな人たちの顔が浮かんでくる。

「元気してるかなぁ…」
「なんだ?羅刹の」
「いんや…なんでもねぇよ。
あんたも物好きだな…
俺なんかと関わろうとするなんてよ」
「いやいや、ここにいる時点で我は物好きよ。
我が宇宙を統べてから…もう幾年もたったわ。
まぁ、隠居だからな。仕方ないことじゃ。なぁ羅刹の…我からの頼みじゃ。
我を封印してくれないか?」
「最近はそればっかじゃねぇか…
まぁ、この一万年くらい前だろうがな。」
「別によいじゃろ。
羅刹の…お前も大変じゃなぁ。
ここに、来てもう一万にもなるのか…」
「ん。まぁ、それだけ、生きてるってことだな。」

そう、ここ法界に閉じ込められて早一万年。
今は神様なんだろう奴と過ごしている。
見た目、100歳越えの爺さんだ。
牢獄に送られ、枷をつけられ…
でも、不思議と慣れた。

「なぁ、爺さん。」
「なんじゃ?」
「あんたはなんの神様なんだ?」
「宇宙(そら)じゃ」
「宇宙ねぇ…」


そんな時…新しい住人が入ってきたようだ。
新しい住人が入って来た時、外は慌ただしくなる。
看守が遠くに行くのが合図だ。

「ん、珍しいな。
新しい奴がくるなんて…ここ1200は来てなかったか?」
「ん?そうだったか?
1500だった気がするが…」
「まぁ、どーでもいいな…」
「そーじゃな。」

すると…

俺らの檻にその新しい住人が入れられた。
看守が檻を開け、顔に袋をつけられた奴が入れられる。

「入れっ!」
「きゃっ!」

そいつは女性で黒っぽいドレスに金色の髪で俺からみてもかなりの美女だ。
男を魅了してやまない顔をしていた。

「大丈夫か?」
「あ、はい。」

俺は手を差し伸べ、その女性を助け起こす。
爺さんはなんか…うん、もうあとで懲らしめておかないとこの女性が危ない気がする。

「私は 聖 白蓮と言います。
助けていただいてありがとう御座います。」
「いんや、別に。
俺は無角 月夜。そっちは爺さん。」
「爺さんとはひどいのぉ。
我は…まぁ、爺さんでいいかの。
神じゃ」
「いいんですか!?」

聖さんは心底驚いたように、爺さんにツッコんだ。
確かにやりたい気持ちはわかる。
だが、やっては負けなんだよ。

「あの、無角さん…」
「月夜でいいよ。
俺にも家族はいる。紛らわしい。」
「では、月夜さん。
私の勘違いだったら申し訳ないのですがあなたから神力を感じます。
もしかして、月夜さんは神なのですか?」
「ん?いや、別に。俺は人間だよ?
ただ、自分の体に神様を封印しただけの普通の人間だ。」
「それは異常というのでは…」

それも気にしたら負けだ。
まぁ、人間なのは変わりようがない。だって、俺の能力になったのだから…

『人間である程度の能力』

これが俺が人間である決定的な証拠だ。
使えない能力だが…これには大きな利点がある。
俺は人間であるがゆえに妖怪、神の味方だ。
妖怪は人間の恐れを
神は人間の信仰を糧に生きている。

つまり、俺が俺である限り味方でいられるのだ…これほど嬉しいことはない。

「そういやぁ…聖さんはなんでこんなところにいれられたんだ?」
「それは…

妖怪を助けたからです。

私は僧侶でした。私には弟がいて一緒に法術を学んでいたのです。
弟は優秀でした。天才的で私より法術もうまかったです。
しかし、弟は死んでしまい、私は恐怖しました。
あの弟でさえ、死んだのだ…自分はどんなに惨めに死ぬのだろう。と思うと…私は怖かったです。
それで私は若返りの術を使い、私は若返りました。
しかし、それでは足りなかったのです。
だから、私は妖術 魔術などを学んだです。
しかし、妖怪を助けて行くうちに…私には
『人間と妖怪の共存』を考えつきました。
それを説いていたのですが…こうなってしまい…」
「なるほどのぉ…しかし…

無理じゃな」
「ああ。聖さん、こんな事を言うと失礼かもしれんが…

人間と妖怪の共存という説は結構だ。
しかし、それは確実に絶対に不可能だ。」
「っ…なっなぜ!?」

不可能なのだよ。
絶対的に。
基本的に人間は恐れによって妖怪を生み出しその信仰によって神を生み出した。
人間は…妖怪の上にいるものだ。
もちつもたれつ、このままでいいのだ。
その均衡を無理やり壊した時、それの反動は計り知れない。

と、そんなことを思っていると爺さんも何かしら言ったのだろう。
聖さんは今にも泣きそうな顔をしてうなだれている。

「なに言ったんだよ…」
「すこしな。誇大妄想を過ぎるとな…」
「まぁ、聖さんの意見はもっともだ。ただ、実行に移すとなると正直は無理だろうな。
下手したら戦争になりかねん。」
「そうだろう…しかし…言いすぎたかの?」
「あとでフォローしといてやる。
酒ない?」
「あるぞ?」
「サンキュ」

俺は酒を杯に注ぎそれを一気煽る。
爺さんもそうする。
まぁ…俺は鬼神なので酔うことはない。

俺は一息をつきこうつぶやいた。

「光の中では見えないものが暗闇の中ではよく見える…ねぇ。」

光の中ではよく見えないものが暗闇の中ではよく見える。
つまり、光は光の中ではよく見えないけど暗闇の中ではよく見える。
これは昔、俺が知り合った太子さまが言ってたことだ。
そういやぁあいつ元気してるかなぁ…

聖さんはいつか、何かを照らす光になるだろう。
だが、照らすものが違うと…それは霞んで見えてしまう。
俺はあまりにも多くの奴を見送りすぎた…

数十億の時が流れ、こうやって会っている奴にもいつか別れを告げなきゃいけなくなる。
聖さんには…確かに…理想が高すぎるが…それでもまだまだ輝ける。

「んじゃ…俺も聖さんのところに行ってくるわ。」
「よろしくの。」

俺は聖さんを探して歩いていく。
ありゃ?見当たらないねぇ。

「ん、いたいた。ありゃ?」

だが…なぜか聖さんは苦しそうにうめいていた。

「大丈夫か?聖さん…」

俺が肩を揺すると…

聖さんは、俺の腕をすり抜けて地面へと倒れた。

「えっ?聖さん?おい!大丈夫か!?」
「どうした!?」

爺さんが心配そうに近寄ってくる。

「くっそ!聖さん!!」

聖さんは苦しそうに、額に汗をにじませ倒れている。
息も荒い。
くっそっ!どうしたっていうんだよ!

俺たちは聖さんの様子を見守ることしか出来なかった…


…………

どうもunworldです。
展開が早い?知ってます。
幻想入りしたいんです。
でも、それにはこのパートを速やかに終わらせる必要があるのです。
すいません。
と、いうわけで、
原作組、聖白蓮さんの登場です。
法界での作者のイメージは監獄です。
封印と言ってもそのようなものなのかな?というだけです。
まぁ、気にしないでください。
次の回で、命蓮寺メンバーを幾人か出すつもりです。
では、次回『嫌いなものは…』でお会いしましょう

-9-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




東方紅魔郷 〜 the Embodiment of Scarlet Devil.[同人PCソフト]
新品 \1300
中古 \1400
(参考価格:\)