【第14話 乙女の旅立ち 中篇】
―シャッキー\'S ぼったくりBARでの一件から1カ月―
「ん〜?」
「どした?特訓後にいきなり鏡なんて見てさ?もしかしてナルシストに目覚めたか?『ふッ、今日の俺はまた、一段とかっこいいぜ』とか言い出すんじゃねえよな?」
今日の結果は引き分け…朝の5時から6時までの1時間内の勝負でそれ以内に勝負がつかなければ引き分けと言うルールにしているんだが……両方に目立った傷はない。
まあ…それはどうでもいいんだけど…
「まあ、お前がそう思ってるんなら、気持ち悪いからやめてもらいたいんだが…ちょっとさ、最近、戦ってる時の俺ってさ、光ってる?」
「それはナルシスト的な発言かそれともお前のよく使うオーラのことか?」
こいつ絶対知ってて聞いてるだろ……
「オーラの方だよ。」
「あー、知ってる。なんかさ、キラキラするのが無くなったってか少なくなった気がするんだよな……てか目がさ……」
「目?」
なんだろう……
「おう、いやらしい目で私のことを……あー、はいはい、嘘嘘。目がさなんかおかしいって言うか…目の色が変わったり普通に戻ったりしてたな…」
「マジか!?」
「う、うん。」
俺としてはずっと才気煥発の極みを使ってたつもりなんだが…体力消費も少なかったし……なんかいつもより素早く演算処理がなされているような感覚が……
「もしかして…才気煥発が進化した?」
「ん?どしたよ?」
「いや、ちょっと、新しい技を身につけてる最中かもしれねー、俺。」
なんか…今までの戦いの中だけの狭い分析じゃなくてもっと大きなスケールで使えそうな……
まだ中途半端だし、使いこなすにはまだまだ時間がかかりそうだけどな……
まぁ…それよりも先に解決しないといけない問題があるんだけどな……
「じゃ、今日もありがとさん。いつも通り、朝食作っとくから風呂出たら教えてな。」
ここはシャッキー\'S ぼったくりBAR。
とりあえず、先月のことを謝るのとまあ、これからのことを……
「じゃまするで〜」
とりあえず、勢いよく店の中に入る。
客やシャッキー、アレグレット…つまり、店の中の全員が注目するが気にしない。
まっすぐ、アレグレットの方へ行き。
「あ……マサヤ兄ぃ……。」
「ちょっと、アレグレットごめんな?」
と言って、よいしょっと掛け声をかけてアレグレットを抱え上げるっていうか御姫様だっこする。
「ちょっと、アレグレット借りていきま〜す。」
「え……、ちょっ…マサヤ兄ぃ……」
といって慌てるアレグレットを抱き上げながら店の外へ行き少し走る。
まあ、店を出るときに「いってらっしゃ〜い。しっかり、がんばりなさいよ〜」って聞こえた気がするけど多分、気のせいではないよな……
「よいしょっと。大丈夫か?てか、お前軽すぎるぞ?もう少し食べた方がいいんじゃね?」
「…………」
「アレグレット?」
「もぉ!大丈夫か?じゃないよ。凄く恥ずかしかったんだからね?それに私、軽くていいの!」
あ〜、怒らしちゃった……
ま、とりあえず、この前のこととあわせてまず、謝ろう。
「ごめん。」
「え…?」
真剣な表情で謝るマサヤに意表を突かれるアレグレット。
「この前はあんなこと言ってさ。アレグレットが海軍に入りたいって言ってたからまあ、勝手に先走ってしまったけど…お前の人生だしな……お前の好きなようにすればいいよ。ずっと、この島に居たいんなら俺だって大歓迎だしさ、自分の夢に向かって進むんならそれを応援したいと思ってる。」
正直な気持ちを伝える。
まあ、これしかないんだよな……
「ううん。あの時は私もごめんなさい。勝手に怒っちゃったりして…。」
「………」
「………」
なんかすげえ気まずい……
「あ…あの……」
「ん?」
アレグレットがおずおずと言葉を紡ぎ出す。
「マサヤ兄ぃはいつか、どこか遠いところに旅に出るってほんとなの?」
「はぁ……誰から聞いたって……レイリーさんとシャッキーさんか……」
「うん。二人がね。マサヤ兄ぃは近い将来、この世界中を周る旅に出るだろうって言ってたの……」
ったく……あの二人は……まあ、いずれ教えるつもりだったしな………
「ああ、俺はこの世界のあらゆる場所を周ってみたいと思ってる。いろんな光景や物語に触れたりそれを作ったりしてみたい。それに、旅をしない主人公なんて主人公じゃないだろ?」
ニヤリと笑いながら話す俺。
やっぱり、冒険とか主人公とかそういうこと言ってるとワクワクしてくる。
「ここにもまた、帰って来てくれる?」
「ああ、ここは俺の故郷だからな。月1とかは流石に無理だが…帰ってくるよ。まあ、アレグレットが海の上でも会えるんなら俺は嬉しいけどな」
「海の上?」
「そうそう、離れ離れになった兄妹がとても広い海の上で偶然に再会する。こういうシチュも結構かっこいいというか良いと思うわけよ。」
「ふふふ。マサヤ兄ぃっぽいね。でも…私……」
「だから、いいって。今すぐ決めなくてもさ。俺も2,3年はまだこの島にいるつもりだしさ…1年後でも2年後でもいつでもいいからさ。」
「ううん…駄目なの。シャッキーさんが言ったの。私、ブラコンだって…お兄ちゃんに甘えてばかりじゃ飽きられるって」
……飽きられるってあんた…なにいってんだ?シャッキーさん……
「だからね…半年……いや、3か月後にね、答え出すから……頑張って考えるから待っててね」
「ああ……わかったよ。」
「っていうわけなんだよ。」
「ふ〜ん。どっちもどっちだね。てか、あんた海出るの?私、どうすればいいの?」
「う〜ん。正直、お前のこと考えてなかったんだよな…。まあ、一緒に旅に出てもいいしな。つか、お前一人にするの結構危険な気がするしな……。」
「…お前は私の保護者かよ!まあ、あれだろ?前みたいに自分から手錠付けるようなことしなけりゃいいんだろ?あと…なんだっけ?」
「あとは、自分から海軍とか海賊とか襲わないこと。襲われたら仕方ないから徹底的に反撃してもいいわ。」
「りょ〜かい。」
ああ……でも、こいつあれだな。航海術とか全然なさそうだし…すげえ不安だ……
でも、こいつならなんか海に落ちそうになったら悪魔の実のデメリットだけ殺して…とかありそうだから怖い…で、泳いで……みたいな?
「まあ…そこら辺はあまり深く考えんでもいいだろ。別々に旅に出たとしてもまた、会えそうだしな。ああ、後、俺が出た後でもここに住んでてもいいぞ?」
「なるほど、私に家を守る主婦になれと?」
「なんでそうなるんだよ!つかもういいわ。寝る。また明日な」
「ああ……お休み〜」
―現在―
「っていうわけでさ、まあ、どうなるかわからんけどさ。聞いてほしいんだよ。あいつの決意をさ。」
「なるほど……お前さんはそんなどうなるかわからないもののためにに儂を呼びつけたわけか?」
「ああ、怒った?」
「いや……若いっていいなあって思っただけじゃ。あと、その子が海軍に入るとしても、強いのか?」
マサヤはそれを聞きニヤッと笑い、
「誰が鍛えたと思ってんだ?4000万ぐらいの賞金首なら1人で仕留められる力はあるよ。」
「ほお。それはなかなか……」
こやつに孫達を鍛えてもらうかひそかに考えているガープであった。
(SIDE アレグレット)
「どうしよ…」
約束の3カ月はすぐに経ってしまった。今日はその約束の日。
まだ、自分がこれからどうするか決められていなかった…
どうする?ここに残るか…海軍に入るか…それとも……
「ずっと、マサヤの側についてお守りでもしてもらうかい?御姫様」
「え……」
気づけば目の前には女の人がいた。短い黒い髪をした綺麗な人だ。
「まあ、あいつはそれでもいいかもしれんけどな、あいつシスコンだし…足手まといがいた方がハンデになってちょうどいいかもしんねーしさ。ただな……」
といったん言葉を切り、こちらを見る。その目を見た瞬間、体が震えだす。
「同情振りまくだけのネガティブ女がいたらあいつは最強の主人公になれねえんだよ!んな奴引き連れてるのそいつを利用する悪役かへたれ主人公ぐらいしかいないだろ」
「…うるさい!私だって……」
「頑張って強くなったもん…とかいうつもりか?強くねえよ、お前、雑魚だ。今だって、ほら足震えてんじゃん?」
「えッ………」
なんで……私の考えてることが…
「私の考えてることが分かるの?って顔してるな?だって、あれじゃん?お前、よくあるテンプレキャラじゃん?辛い過去がありました的な?親に虐待されたり、親が殺されたり、特殊な力があって迫害されたり?そんなキャラの行動にそっくりだよ、おまえ。」
まぁ……私も別のタイプのテンプレに入ってんだろうけどな……と小さく呟く。
「辛いね?大変だったねとか同情しとけば付いてくるような女?つまんなすぎ……」
―パンッ―
瞬間、空気の弾けるような音が響き渡る。
「ふざけないで!私はそんなこと思ってないし、そんな女じゃない。あなたの妄想を私に押し付けないで!」
叩かれた頬に手を当て笑うナゴミ。まるで、作戦通りというような顔をして
「マサヤに先に手出したらいけないって言われてるからさ…。どうしようか考えてたんだよ。まあ、おかげで助かったわ……まあ、私もちょっとは無茶苦茶なこと言ったけど取り消すつもりもないしさ、後は拳で語ろうや」
ここから女の戦い…いや、一方的ないじめが始まった……