【第17話 妹追加】
「ふぅ……こんなもんか……」
―ビュン―
と20ぐらいの刃に分裂していた物を一振りで剣に戻す。
「この一年で大分、様になってきたよな。」
―そう、あの感動のひと時から1年が経つ。
―1年前
「じゃあ、行きます!」
まっすぐこちらに向かい切りかかってくるサヤネ。
スピードはないけど無駄のないいい動きだ。身体を回転させながら自分の身長以上の剣で切りこんでくる。
俺はそれを右の剣で受け流しそのまま剣を逆手に持ち顔に突き出す。しかし、それはサヤネの右手に持つ小剣で防がれる。
さっと、距離をとる二人。
今度は俺から動く!サヤネに剣を突き出す。それは払われるが構わない。
彼女の体格では回転…というより勢いをつけながらじゃないとあの大剣は使えない。
というより十分な速さをえることはできない。
もう片方の剣を彼女の首へ……
「まだまだッですッ!」
―ドンッ―
サヤネはそれを蹴りで払いそのままの勢いで身体を回転させ……ヤバイ…
―キンッ―
俺は両方の剣で彼女の放ってきた大剣の一振りを受け止める…が
―ヒュン―
顔に刃が掠る。
剣の切っ先が飛んできたのだ…そして、目の前で剣はいくつもの刃に分解され…
「っと」
サヤネが勢いよく後ろに跳びその勢いで分解された刃を操り、鞭のようにしならせ、俺に巻きつかせようとしてくる…
「うぉ……」
避けるがそれはまるで、意志を持っている蛇のように俺を追いかけてくる。
飛んでくる切っ先を払うが何度でも何度でも追い続けてくる。
伸縮し、時には地を這うようにこちらに向かってくる、刃が擦れあう金属音はさながら威嚇する蛇のようだ。
足元から飛び跳ねてきたり空中で急に進路を変えたりと…
「はは、……ははは。最高だ。最高すぎるぜ!この武器!」
俺は思わず笑ってしまう。手加減してるとはいえ俺がここまでてこずるなんて……
最高の武器だな。後は、俺がどこまで操れるかだな……
「はっ…!」
俺は自分を喰らおうとしてくる蛇を払い、躱し、サヤネとの距離を詰める。
そして、剣でサヤネに切りかかる!
―キンッ―
しかし、サヤネは一瞬で大剣の形に戻し受け止め勢いを殺すとまた、剣を分解し俺の双剣を巻き込み絡め取る。
俺はすぐに剣を離し距離をとる。
剣はなくなったが…問題ない、むしろ好都合だ。
「剣はなくなったけど、まだやりますか?」
「当たり前だ。悔しいけど、俺は武器がない方が強いからな」
「私とは逆ですね。私にはこれしかないから…」
「まあ、また会う機会もあるでしょ。その時にでも徒手空拳教えてあげるよ。代わりに剣を教えてもらえると嬉しい。」
「本当ですか?約束ですよ?」
「じゃ、再開するか…」
「ですね。」
サヤネは絡め取った双剣をその場に捨て、俺に向けて剣先を飛ばしてくる。
俺はそれを拳で横から弾き、サヤネに突っ込む。
だが、その後ろからまた、切っ先が背中を突き刺そうとしてくる。
それを躱し、すかさず叩きつけるそして…踏みつける!
剣先を止めれば操作性は著しく低下する。
そして、俺はそこから構え、結構離れた位置にいるサヤネに向け
「え……」
『拳弾(ファウストパトローネ)』を叩きこむ。
―ドンッ―
「きゃあ……」
サヤネは倒れる。
急いで近づくがどうやら気絶してしまったようだ……
結構、手加減したんだけどなあ……
(SIDE サヤネ)
「ん………」
「あ、大丈夫?というかごめん。やり過ぎた」
手を合わせ申し訳なさそうに謝るマサヤさん。
そういえば、私……ああ、マサヤさんの拳から放たれた衝撃?で気を失ったんだ……
凄い……そんなことできる人がいるなんて……アレグレットが言うとおり強いなあ……
「大丈夫です。」
「ああ、まだ動かなくていいよ。えっと、部下の人に聞いたんだけど明日帰るんでしょ?今日はもう、泊まっていっていいよ。」
「え!?でも、そんなわけには……」
「まあ、ここは客人用の部屋だし。自由にくつろいでいいから。後、頭とか打ってなかったから大丈夫だと思うけど無理しないでね。」
「え……あ…はい。」
「じゃ、俺、昼飯の用意してくるからまあ、暇だろうけどちょっと待ってて。あ、汗かいたなら風呂も使っていいよ。じゃあね。」
とひらひらと手を振り部屋を出ていくマサヤさん。
「……楽しかったな…ふふ」
昔から、武器の気配を感じて身体がそれをどう扱えばいいのかを知っているかのように動いてくれた。
その瞬間はとても楽しい時間であるのだが今回はさらに凄いものだった。
見たことのないような動きができる剣、いや武器を使い闘ったあの時、破軍はずっと、まだまだいけると私に語りかけてきた。
あそこで終わってしまったのは残念だけどそれが私の実力だから仕方ない……
ごめんなさい。破軍…そしてありがとう。
多分、もっともっと秘密がある武器なんだろうけど…それは私が使う物じゃない…破軍はマサヤさんのものなんだし……
「また、やりたいな………ふふふ…」
(SIDE マサヤ)
「昨日はありがとうございました。」
「いやいや、こっちこそありがと。勉強になった。それと、勝負の時、言ったこと。本気だからさ。また、剣教えてね。」
いやあ…本当に楽しかった。
自分の剣があそこまで凄いだなんて…俺も早く操れるようにならんとな。
今日から、毎日、リアルシャドウの出番だな。
「わかりました。こちらこそお願いします。約束ですよ。」
と言ってこちらに近づきそっと電伝虫を渡してくる。
え?いいのって言ったら逃げ出しましたって言えば大丈夫って……こんな子だったんだ。イイ!
「ありがと。俺からもこれ、お礼に。」
と言って、昨日買っていたマカライトのネックレスをプレゼントする。
「マカライト、石言葉は再会。俺達の再会を願って……なんてね。ハハハ」
……キモッ、俺、キモッ!これも中二病ってやつか………
「くす、面白いですね。マサヤさん。アレグレットが羨ましいです。私、一人っ子だからマサヤさんみたいなお兄さん欲しかった。」
「なら、なる?俺の妹に。」
「え?」
「アレグレットも実際の妹じゃないし、なぜか勝手に弟になってきた奴もいるし…さ、まあ、一番なりたいのは恋人なんだけど脈なしみたいだしさ、ははは。」
「え……えっと………。」
「ははは、冗談冗談。さっき言ったの、アレグレットに言わないでね…怖いから……」
「いえ……私、なります!マサヤさん…いやマサヤ兄さんの妹に!」
……え!?また、兄妹増えた……。このまま、行けばいつかは白ひげみたいになりそうだな……ま、それはないか……
(SIDE サヤネ)
「じゃあな、サヤネ。元気でな。」
手を振ってくれる。マサヤさ…いや、マサヤ兄さん。
ここに寄ったのはただの仕事だったし、その中で天竜人に会って嫌な気分にもなっていたのに…アレグレットのお願いを聞くという仕事のついでがこんなに楽しい時間をくれるとは思ってなかった。
「本当にまた、会いたいな。」
首にかけたネックレスを見て、思う。
冗談ばっかり言う人だけど良い人だった。
今は楽しい気持ちで自分の気持ちがよくわからないけど……時間がたっても…冷静になってもマサヤ兄さんへのこの気持ちが続いていたら……
「私もアレグレットみたいにブラコンって言われるのかな……?」
サヤネはそう呟きながらクスクス笑う。手を振ってくる兄に手を振り返しながら……
―そして、現在に戻る。
いやあ、懐かしいな…
そう言えば、たまにもらった電伝虫から連絡が来る。もちろん、サヤネ……となぜか、アレグレットから………うん、最初、かかってきたときはびっくりした……
うん、忘れよう。俺は自由だフリーダムだ……と複雑な気持ちになりながらいつも通り、風呂に入り、飯を食べて…
さて、俺も海賊狩りにでも行くか…と昨日、シャッキーから聞いていた『悪い』海賊のよく出現される場所へ向かい船を出航させる。
「ん…あれ、なんだ?」
シャボンディ諸島から少し離れたところである光景に出くわした。
小さな船に子供が3人乗っている…というより遭難してる?
「お〜い。大丈夫か?」
と声をかけながら船を近付ける。
俺の姿を見て3人の少女は怖がる。
「そなたは誰じゃ。妾達をどうするつもりじゃ!」
一人の女の子が二人の前にたち塞がるように前に出て俺を睨みつける。
「え〜っと、俺はカミクラ マサヤ。海賊狩りをして賞金稼ぎしてるんだ。ここら辺じゃ、金狼のマサヤといわれてるな。君の名前は?」
できるだけ、優しく笑顔を浮かべて怖がらせないように語りかける。
「妾は、ボア・ハンコックじゃ!」
「………え?」
まじか……………