小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【第1話 課題】




(SIDE マサヤ)

「………困った。」

目の前に出来た巨大なクレーターの数々を見ながら呟く。
そして、今日何度目になるか分からないため息をつきその場に座り込んだ。

「くっそ〜、あの爺ぃ。このことを言ってやがったんだな。」

―君にとってこの島は最高の修行場所だ。次に会う日を楽しみにしてるよ。―

まだ、会ったこともないレイリーの顔と声が脳裏に甦る…なんか不思議な気分だ。
自分の記憶なのに自分の物ではないような…
まあ、状況を説明すると、
オペレータと別れて2時間ほどでこの世界でのほとんどの記憶がインプットされ定着されたのだがどうやら自分はレイリーとの修行の一環でこの島でサバイバル生活をしているみたいだ。
内容は”この島で1年間生き延びること”であり、今日はその1日目ということらしい。
先程のレイリーの台詞は現在の実力測るためといわれてされた模擬戦の後に自分に向けて掛けられた言葉であり、圧倒的な実力差を見せつけられた屈辱の記憶の一部である。
いやあ、こっちは双剣、向こうは素手で、さらにノーガードで傷もつけられないってどうなのよ?
まあ、あの世界でも屈指の実力者だからしょうがない気もするけど一太刀、いや、一回だけでも驚かせるぐらいはしたかった………まあ、それは今後の目標ってことだな。
でも、とりあえず、現状の問題をどうにかしないとな………っていうか……

「腹減ったーーーーーーーーーー!!」



(SIDE レイリー)

「うっぷ……。」

波で大きく揺れる小舟の中、レイリーは少し酔っていた。

「マサヤか……。少し見ない間に大きくなって…。まったく…子どもというのは成長するのが速い……うッ…。」

海賊王ロジャーの片腕であり冥王とまで言われたレイリーである。
もちろん、これは船酔いではない。

「あの時期の子供というのは有頂天になったりしやすいからな。少しでも刺激になればと思ったんだが…。」

そう。マサヤのように才能があり、
力が大きすぎて周りと競うことができなくなると自意識過剰というより目指すものが見えなくなりそこで成長が止まってしまうことがあるので
上には上がいることを教えモチベーションを上げさせようとしたわけである。
まあ、逆にやる気がなくなってしまう可能性もあったわけだが…あの様子では心配ないだろう。

―今のお前は技に頼りすぎている。華麗な動きと言えば聞こえはいいがここぞという時の破壊力がない。―

10歳やそこらの少年にそれを指摘するのは酷かもしれないが、
いくら相手の攻撃を逸らしたり体を崩し攻撃へ転ずるのが上手くても
相手に止めを刺す力がないようでは負けはしないかもしれないが勝つことはできない。
特に偉大なる航路(グランドライン)では剣、打、銃撃の効かない能力者や
単純な暴力だけで武道などの技を打ち破るような力自慢がたくさんいる。
そういった者を相手に生き残っていくためにも最低限の筋”力”が必要だと思い言ったのだが……

「まったく、おそろしいな…」

最初は覇気を使うつもりはなかったのだが、変幻自在で避けが攻撃に攻撃が避けにつながりどこから攻撃が来るかわからない動き、10歳そこらの少年が放つとは思えない闘気にいつの間にか武装色の覇気を使っていた………

「外ではなく内へ…たとえ相手の身体が金剛でも意識を断ち切り勝利を得るか……。」

かつて部下が言った武の理想形―それを引き継ぎ体現させようとしている少年。
力の差を教えるためにわざと喰らった一撃。
武装色の覇気を用いながらも脳が揺らされ意識を失いそうになったそれとそれを放った少年を思い出し、思わず口角をつり上げる。

「くくく…。楽しい時代がまた始まりそうだ。なあ、ロジャー。」

かつて、自分達が駆け抜けた黄金の時代、それに負けないような輝きを持つ可能性を持った新しい世代に自然と頬が緩む。まるで、子どもの成長を見ているようなそんな気分になる。

「まあ、でも…マサヤも大変だな。なんたってあいつの食べた悪魔の実は……」

ガルガルの実:重力を操ることのできる能力を得ることができる。
攻撃力では自然系と同等かそれ以上…ただし………

「強力な能力ほど制御が難しいらしいしな…」

力の制御に四苦八苦しているであろうマサヤを想像し笑みを浮かべるレイリー。
あの島で生きていくためには悪魔の実の高度な制御か自身の力の向上のどちらかを達成しなければ到底1年という時間を生きていくことはできないだろう。
まあ…だからこそ、あの場所を選んだのだが……

「まったく…良い親を持ったな。楽しみにしてるぞ、一年後を………」

子を見守るようなレイリーの瞳は先程、置いてきた弟子がいる名もなき小島を写していた………



(SIDE マサヤ)

「わーい。わーーい。うれしいな。こんなに強い能力を貰えて僕は幸せだー………っなわけねーだろ!バカヤロー!!」

怒号とともに力を解放しガルガルの実の能力、重力操作を行う。

―結果は島にまた新たなクレーターを作ったこととぺしゃんこになった動物の姿だった。

「はあ、やっぱ駄目か…。」

半日で4度目の戦闘を終えまたもため息をつく。
ここは無人島ではあるが動物がいないわけではなく…
むしろ凶暴な動物がたくさん生息する。
どいつもこいつも巨大で身体は鋼鉄のように硬い。
なので、自分の打撃や剣撃では大したダメージを与えることができないので
仕方なく食べたばかりの悪魔の実の能力を使っているのだが威力と範囲が強すぎると
今回のように相手は跡形もなく潰れてしまうので食料として狩猟することができない………
ただ、食べられる場所を残して獲物を狩る為には高威力でありながら範囲を狭くしなければならないのでかなり難しい。というより今の自分には無理だ。

「腹、減った………肉食いてぇ…」

とりあえず、集めてきた木の実等を食べながら考える。
これからの課題を………
生きていくために2つの課題がある。

1.打撃及び剣撃の性能の上昇

2.重力操作の向上

1は明らかな破壊力の不足によるものだとわかっている。
元々、自分の戦闘スタイルは対人に特化したものであり
決して無人島で猛獣を相手にすることを想定して作られたものではない。
言い訳っぽいけど仕方ないじゃん。鋼鉄以上の耐久力を持っている動物にどうしろと?
まあ、そんなこと言いながらもとりあえずはこれから先のことも考えてるさ。
今までの自分は円や螺旋の動きの中で力を上手く操って破壊力を上げていたんだがこれからは直線的な動きというか必殺技的な物を考えていこうと思う。
ただ、筋力を付けるにしても1カ月やそこらでは無理なんで力より速度を重視して考えていきたい。
そして、次は2だ。
これは慣れだと思うが、本当に難しい。
それに高威力の技は体力の消費も激しいので一日に何回も練習というわけにはいかない。
良く考えて集中して使わないとこの島がクレーターだらけになって木の実すら取れなくなり自滅Endになってしまう………この島で能力を使うのなら高威力で出力を絞るといった高度な制御が必要になる。
というわけで課題もあり初っ端から大変な目にあっているが気持ちは沈んでいない。
むしろ、こういう物語の王道的な物を自分が味わえることに喜びを感じている部分さえある。

「やっぱ、中二病だよなあ。俺………。」

今日一日でいろいろあったけどやっぱり、自分がこんな、漫画の世界に来れたことは嬉しいし、これから、想像を超えるような凄い体験ができると考えると興奮してくる。
そんな、幼い自分を感じ苦笑いしながら暗くなってきている空を見上げ現実へ戻る。

「さて、そろそろ寝るか。」

明るいうちに確保した寝床の洞窟へ向かい歩を進める。
今日の出来事やこれからの事を考えながら………

-2-
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