【第21話 東の海へ】
「白骨が3つに増えておる…」
次の日、祠に戻って見てみると一番奥の部屋には白骨が3つ円を組むように向かい合いながら座って?いた。
その様子からもとても楽しそうで幸せな感じが伝わってくる。
―これでよかったんだろ?白蛇さん―
―ああ、恩にきる―
次の瞬間、俺はまた、光に包まれた……
「普通に、喋れるんならここに連れてこなくてもいいだろ!」
また、泣かれたらどうするんだよ!とちょっと怒り気味なマサヤ。
『まずはリサ達のことでの感謝だ。ありがとう。』
「ああ、それは別にいいよ。」
『で、次なんだが……そなた、我と契約せんか?』
「契約?なんだそれ?リサみたいになれってことか?」
『ああ、そんな感じだ。我の力はほぼ無限大だがそれをこの世界で具現化するには媒体が必要となる。その媒体がこの世界での白蛇に選ばれし者というわけじゃ。』
ふ〜ん……つまり、チートか?
「えーっと、どんなことができるんだ?」
『まあ、本人の力次第ではあるが、一瞬で行きたい所まで飛んだり、不老になったり、欲しい物を作ったりかな』
「なんか、代償とかないのか?」
気になるよな……そんな便利な能力なら……
『特にない。我自身、バグみたいなもんじゃからな。そういう、決まりにあまり適用されんのじゃ。』
「なるほど……じゃあ、この悪魔の実食べてもさ海を泳げるようにしてくれない?」
ラジラジの実:radio waveでラジラジっていう凄い無理やりっぽい感じだが、その名の通り、電磁波を操ることができる能力だ。電磁波の中には光、電波、放射線があり、使いこなせればかなりのチートになるんじゃないかと思う。電場と磁場も使えるのか…よくわからないがそれはおいおい試していきたいと思っている。
『無理じゃ。』
「………使えね(ボソ)」
『仕方なかろう…そういう決まりなんじゃから』
「なんとかできね?」
『そうじゃな、ブレスレットなどのアクセサリにその実の力を移してそれを身につけているときは能力が使え、さらにカナズチという感じならできるぞ』
「まじか、じゃあ、それで頼む。」
―ヒュン―
「なんだ、さっきの音?」
『ほら、出来たぞ。』
白蛇がブレスレットを咥えている。俺はそれを受け取る。
まだ、腕には嵌めない。ここら辺よりももっと磁場とかが安定している所で試したいしな……
「おお、サンキュ。で、白蛇さんはずっと俺についてくるのか?」
『いや、我はここから動けんからな。契約を交わして力を使うための経路(パス)を通すのじゃ。』
「そういえばさ、さっきバグとか言ってたけど、それってこの世界で他の漫画の能力が使えたりすることと関係あるんだよな?」
『そうじゃな。まあ、詳しくは言えんというか我にもわかっとらんのじゃがな。』
まあ、それについては俺も少し仮説を立ててあるからこれから先も実験、検証しつつ調べていくつもりだ。
「それとさ、あんたにできないことってあるのか?」
『う〜ん…ない!といいたいが、リサの時のような天候など、定められたものを変えるためには強大な力が必要となるため媒体に負担がかかりやすくなることと、人間を殺すことができない…ってとこかな…』
「まぁ…とりあえず、契約しとくか…ただ、滅多なことじゃ使わないってことで……」
あんまり、万能過ぎたらつまらないしな……
『では、いくぞ。マサヤ、手を出せ。』
「手?ほら」
―カプッ―
「痛ってえなー!何すんだよ。この野郎」
コイツいきなり噛んできやがった…血出てないかな……と手の甲を見てみるとそこには蛇がとぐろをまいたような紋章が浮かび上がってきた。
『それが契約の証じゃ。そなたは我の力をそこから引き出せる。まぁ、本来なら胸や首等の大事な部分にしないといけないんだが…我とそなたは蛇と『死神』だから相性が良かったからな。手でも簡単にパスが通ったわけじゃ。』
ふ〜ん…蛇と相性良くっても……
「って、死神?俺が!?」
『そうじゃ、この世界にはなんというかそれぞれの属性に選ばれた者が存在する。お主は『死神』停止・損失・死と再生の象徴じゃ。そして、蛇という生物の象徴も死と再生。ほら、相性がいいじゃろ?』
なるほど、よくわからん……
「その死神って、タロットカードの大アルカナってやつのあれか?」
『おお、そうじゃ』
「それなら、死神は俺じゃないだろ。他に死を操る変なのがいるぜ?」
絶対にナゴミの方が死神向きだよな…と思ってしまう俺。しかし…
『ナゴミとやらじゃろ?そやつはお主に敗れ、死神の座から弾かれた。現在は『悪魔』の位置におるみたいじゃがな。』
「ふ〜ん…闘ったりして勝つとその属性の位置を奪えるっていうわけか…ってかなんでナゴミのこと知ってるんだよ?」
『そなたの記憶を辿ったんじゃ。パスが通ったからそんなことは朝飯前じゃ!それと属性に選ばれた者と倒しても普通はその座を得ることは出来ぬ。』
「じゃあ、なんで…」
俺は死なんて持ってないのにさ……
『そなたには停止という性質、能力があった。そして、ナゴミには死。それがぶつかり合い。結果的にそなたが残ったというわけじゃ。』
俺というよりそれはレンの能力なんだけどな……
「まぁ、わかった。だが、その属性ってのはこの世界に関係あるのか?」
そこだよな…重要なのは関係あるとしたら『世界』に選ばれた者とかがこの世界のラスボスのような気がするし……
『そこはわからんが、選ばれたものであるということは何らかの意味を持っていることは間違いないと思う。』
「なるほど…、それで俺の周りに他にそういう属性に選ばれたやつはいるのか?」
『そうじゃの…『愚者』、『塔』、『節制』の可能性を持ったものならおるがまだ、座は得られておらぬのぅ。後、そなたと一緒に来た女が『女帝』に選ばれておる』
そのまんまじゃねえか!という突っ込みはまあ、置いといて……
「他に『世界』が誰かわかるか?」
多分、それがこの世界でのキーになるだろう……
『いや、現在『世界』の座は空席じゃ。他にも空席の座もあるし、すでに埋まっている座もある。まぁ…そなたの時の同じようにこれからも変わっていく可能性があるんじゃがな』
まあ…このことに関していつまでも考えても仕方ないだろ…まだ、判断材料が少なすぎる……
「じゃあ、契約も済んだことだし…早く俺を元の場所に戻してくれ」
『わかった。もう、泣く寸前だしな。頑張れよ』
不吉な言葉を残し俺は光に包まれた……
「マサヤ!」
涙を浮かべ、飛びついてくるハンコック。
二回目なんだし…慣れろよと思う反面こんなに心配してもらえると嬉しくもある。
「ごめんな。白蛇に呼ばれてな。」
としがみつくハンコックの頭を撫でる。
ハンコックがおのれ…白蛇め、わらわのマサヤを1度ならず2度までも!とゴゴゴゴゴという音が聞こえそうな勢いで怒っているが…まぁ…気にしない。
さわらぬ蛇姫になんとやら…ってやつだ。
そのあとは、もう二度と逸れぬようにということで手ではなく腕を組んで歩くことになった…
さすがに…これは歩きにくかったんだけど今日はもうすることがないし、幸せそうなハンコックを見ていたら、まぁ…たまにはこういうのも悪くないなぁ…と思ったりもした。
そして、次の日に約束通り、迎えが来て俺達はアマゾン・リリーに帰った。
それから数日が過ぎ、俺が島を出る前日のこと、
「ハンコック…」
「駄目じゃ…できぬ……わらわには恥ずかしすぎる。」
「ほら、約束しただろ?おいで」
と言って、俺はベットに座り、自分の膝をパンと叩く。
島でいった、膝枕をしようと思ったんだが…なかなかハンコックが来てくれない…
「ハンコックがそんなに嫌がるなんて…じい様は悲しいぞ……ぅぅぅ…」
じい様って誰だよと思いながらも泣き真似をしてみる…まあ、こんなんでひっ掛ったら楽なんだけどなあ……
「そ、そんな……嫌がってるわけじゃないぞ……ただ、恥ずかしいだけで……」
といい、俺の側にやってくるハンコック…純情すぎる……
「この部屋にはお前と俺しかいないだろ?恥ずかしがらなくていいから、ほら、寝なさい。」
「わ、わかった///」
といい、ベットの中に入り、頭を俺の膝に乗せる。
そして、見つめ合う俺達。
「………」
「………」
「…………」
「…………」
気まずい…。
「ど、どう…?」
「う、うん。ちょっと硬いが幸せじゃ。」
と笑顔を浮かべるハンコック……可愛い。
「………」
「………」
それから、少しの間、無言が続く。
「え、っと、寝ないの?」
「き、緊張して…眠れんのじゃ。それに……」
「それに?」
「マサヤは明日、旅に出るのじゃろう?だから、今日はずっと、一緒にいたいのじゃ。」
「そっか……ありがとな。ハンコック」
といい、ハンコックの頭を撫でる。
「ま、マサヤ……」
「ん?何?」
「い、いや、その……もう少し…だけこの島におれんじゃろうか?」
「駄目だよ。」
まあ、こう返されるのは分かってたんだろうけど…やっぱり、落ち込むハンコック。
俺はハンコックの頭を撫でながら言葉を続ける。
「前も言った通り、俺はこの世界を全て周る。それが達成できたらさ、ここに帰ってくるから……まあ、後、時々寄ることもあるだろうし……」
ハンコックと一緒にいたいと思う。彼女と一緒にいる時間は楽しい。
ナゴミの時もそういった気持ちになったんだが…その楽しさの種類が違うというかなんというか……
共通するのは永遠に続いてほしい…そう思う気持ち……好きな漫画や小説が完結してしまう時の寂しさ…そういった物を感じたくない。
事件が起こる前の安らかな日々をずっと続けていたいという物語の否定……
対して、物語の主人公になって伝説級の自分の物語をハッピーエンドを迎えたいという思い…
それらの葛藤って感じか……まったく、面倒な性格だよな…俺って……
「ならば…わらわをそなたの恋人にしてほしい」
「は!?」
いきなり何を言い出すんだこの子は……
「わらわはそなたが好きじゃ。マサヤはわらわが嫌いか?」
「いや…嫌いじゃないけど……どうして?」
「わらわもそなたの言っていた絆が欲しいのじゃ。信じていないわけではないが、そういった絆があればどんなに遠くに離れていても大丈夫じゃと前に言っておったではないか。」
あぁ……アレグレットやユサと言った兄弟達やナゴミっていう親友っていうか腐れ縁?の話をした時にそんなこと言ったな……
「いや……でも、恋人は……」
「駄目か?」
目をうるうるさせながら聞いてくるハンコック。
「駄目じゃないけど…俺ってさ浮気性だしさ、恋人がいても違う地に行ってさ可愛い子いたらナンパするかもしれないしさ…」
「それでもかまわん!」
「…いや、駄目だろ。俺はお前が思っているような人間じゃないし、多分、お前のメロメロ甘風(メロウ)喰らったら石になるような奴だからさもっと良い奴探した方が……」
「そんなことない!そなたにメロメロ甘風(メロウ)をかけたこともあったが石になどならんかった!」
………今、この子なんて言った…?メロメロメロウヲカケタ?what?
「いい、いつ、かけたんだよ!?てかなんで?」
「い、いや、そなたが寝ていた時にこっそりと……マサヤもわらわを他の男とおんなじような目で見ているのかと心配になって……すまぬ。」
申し訳なさそうに謝るハンコック。
「まあ、寝てる時とか邪心ないだろうしな…それ、あんまり意味ないと思うぞ。だから…それ……ん…んむ…?ちゅ……れろ…ッはぁ……ハンコックなに……」
「メロメロ甘風(メロウ)!」
膝枕の状態から俺の頭を掴み顔を上げいきなり、キス→メロメロ甘風(メロウ)のコンボをしてくるハンコック……反則だろこのコンボこれじゃ、誰でも……って
「あれ?……石になってない。」
「ほ、ほら……石になっていないじゃろ。そなたには邪心がない。わらわのことを真剣に考えてくれておるのじゃ。だから…、他の女がいてもいい……わらわのことが本気ならばそれで……」
「……わかったよ。じゃあ、これから俺達は恋人だ。よろしくなハンコック。」
女にここまで言わせて逃げてたら…主人公失格だしな…まぁ…現時点でも十分失格ぽいけど…それは気にしない……
「でもな…」
といい、未だに真っ赤な顔のハンコックを立たせる。
?と言った感じで首を傾げるしぐさは可愛いし愛おしい……
「人の寝ているときに石にしようとしたり、勝手に人に口づけしたりする悪い子にはお仕置きが必要だな。」
とわざとらしく拳を振り上げる俺、それを見て目をつぶるハンコック……ベタだなあと思いつつも
「……んっ!! んうぅぅ!…ちゅ……ちゅる……はぁはぁ…マサ…?…んっ!……」
キス、いったん顔を離し、またキス…もうお互いの顔が唾液だらけになっているが気にしない。
ハンコックは顔だけではなく全身が真っ赤という感じになってなんだかギア2みたいだ…
うわ言でマサヤが……マサヤが…わらわに……とかいっているがまだまだ許さない……というかもう止まれない……一応…本人の意思を尊重するけど……って何の話かわからないって?
……まあ、そこはご想像にお任せするってことで……
俺とハンコックは正式に恋人となった。
そして、出発の日。
「じゃあ、行ってくる。皆も元気でな!」
「マサヤ……」
皆に手を振り、船に乗り込もうとする俺にハンコックが近づく。
「心配するな。俺達は恋人だ。連絡だって電伝虫で取れるだろ?」
目に涙を浮かべるハンコックの頭を撫でなだめる。っていうか……忘れてた!
「ハンコック、ちょっと目をつぶって」
「え、え……こんなところで……ちょ、ちょっと待って、皆を石に……」
―ポコッ―
「い、痛い……何するんじゃ……」
お前こそ何をするんだよと思いながらもハンコックの頭を小突く。
まあ、目を開けたままでもいいかと俺はポケットからネックレスを取り出し、ハンコックにかけてあげる。
ハンコックはそれを見て、
「これは?」
「ああ、プレゼントだよ。ガーネットっていう宝石でね。まぁ、石言葉は自分で調べてくれ…ここでいうのはちょっと恥ずかしい……」
「う、うん……」
「じゃ、行ってくる。元気でな」
といい、船を出す。
「マサヤー!絶対に絶対に帰ってくるんじゃぞー!元気でなー!」
とハンコックが手を振る。
俺もハンコックの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
「さてと…」
最初は東の海(イーストブルー)に行く予定だ。で、ある程度周ったらまた帰ってきて……みたいな感じかな。
「とはいえ……」
先程のハンコックの手を振るごとに揺れる胸……じゃなかった…それの位置にあったネックレスを思い出す。
ガーネット:変わらぬ思い
「あれはクサ過ぎたな……」
空を見上げ苦笑するマサヤであった。