小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

【第23話 強くなる!】





「あはははは、楽しいな。シャンクス」

「まったく……10年ちょっとで…こんなに成長しやがって……」

ここはドーン島から少し離れた名もなき小島…まあ、詳しくは小島だったものだ。
地面には至る所にクレーターや底の見えないほどの亀裂があり、島自体の形も小さな子供が切った果物のようなカクカクの形になっていた。
多分、今、海面に浮かんでいる部分より、斬り落とされ海に沈んだ部分の方が多いだろうと簡単に予想できる。そんな状態だった。
島をこんな形にした張本人達、両手に長さの違う剣を持つ青年と片手で剣を持つ青年。共に外装はボロボロだが実際に身体についた目立つ傷は見当たらない。

「じゃあ、そろそろ、ここもやばいから。終いにするか……」

双剣を持つ青年は小さい剣をしまい両手で大きい剣を構える。

「そうだな…。名残惜しいが終いにしよう。」

もう一人も両手で剣を構え機を窺う。
そして、金髪の青年が駆け出し、大きな剣を振りかぶり斬りつける。
それに応じるように赤髪の青年も剣で迎え撃つ。
次の瞬間、空が、島が、海が二つに割れた―――






―とある日のこと


「ったく、あの馬鹿……」

ここはドーン島のフーシャ村、ここに来てからもう、半年ぐらいになる。
まぁ…最近は、能力の制御の練習とルフィの頼みで特訓をしている。
で、今日も山に行って能力の制御に勤しんでたんだが帰ってくると村の人たちがルフィが怪我をしたと騒いでいた。
どうやら、自分で頬を刺したらしい。
ということは今日はルフィがゴムゴムの実を食べる日か。
俺はマキノさんが経営してる「PARTYS BAR」へ足を向ける。

「野郎共乾杯だ!!ルフィの根性と俺達の大いなる旅に!!」

「かんぱ〜い!!」

店の外からも楽しそうな声が聞こえる。

「お邪魔しま〜す。」

「おう!マサヤ、お前も飲め!今日も奢ってやる!!」

「サンキュ、マキノさんオレンジジュースとなんか適当に食べ物頂戴。」

「あ、マサヤ。いらっしゃい。ちょっと、待っててね。すぐに準備するから。」

俺はシャンクスの隣に座り、ルフィに向かい。

「お前、何してんだよ。村のみんなが心配してたぞ?」

「これは本気の証だ。全然痛くなかったんだ。」

いやいや、涙なんか浮かべて、丸わかりだぞ……

「そういや、マサヤ。今日はどうしたんだ?」

「ああ、シャンクス。お前に頼みがあってな。」

「なんだ?うちに入る気にでもなったか?」

「まあ、それはないから安心しろ。で、頼みなんだが…ちょっと剣の特訓に付き合ってくれね?」

「えええ!マサヤとシャンクス、戦うのか!?」

「なに〜?お頭と金狼、戦うのか?」

俺の頼みを聞いていたルフィが騒ぎ、それが店の中全体に伝わる。
もう大半の奴らがどちらが勝つのか賭けを行っている。

「……はぁ………。ったく、お前、最初からこれ狙ってただろ?」

シャンクスが俺をじっと睨んでくるがそんなの気にしない。
そして……ルフィ、GJ!

「まぁ、普通に頼んでも交換条件になんかとんでもないこと言われそうだったしな…普通に、楽しみたいじゃん?昔みたいにさ」

「ま、お前がどれだけ強くなったのかを見てやるのも悪くないな…」

酒を呷り、にやりと笑うシャンクス。

「なあ!いつ戦うんだ?」

「ん〜…今はせっかくの宴だし、明日でよくね?どっか、近くに島とかある?」

「そうだな。………小さな島ならあった気がするが。」

「よし、そこにしよう。ルフィ、お前も見に来るか?」

「おう!いいよな?シャンクス。」

「まぁ……それならいいか。じゃ、明日の朝だからな遅れるなよ、ルフィ。遅れたらほっといていくからな。」

「おう!任しとけ、ししし。マサヤとシャンクスの戦いか……楽しみだなあ。」

喜ぶルフィを見る俺とシャンクス共に顔が笑っているがそれは明日への楽しみなのか…ルフィが喜んでいる姿を見てなのか…本人達にすら分からないだろう……

「お、お頭ー!敵船から奪ったゴムゴムの実がなくなってる!」

「あぁ、その箱、さっきルフィが漁ってたぞ。」

ラッキー・ルウが慌てて、空の箱を見せてくるんだが……まあ、展開知ってるしな…と思いながらも教えてあげる。
そして、原作通りの流れに……ん?……山賊が現われないって?
あぁ……、ごめん。
この前、山の中で絡まれたんでレンジでチンしちゃった……テヘッ。






―数日後

「おっし、ここなら思う存分暴れられそうだな。」

「あんま、はりきって、海に落ちるなよ。」

「子供か!俺は。」

ここはドーン島から少し離れた名もなき小島。
ここにいるのは俺とシャンクスだけ他のみんなは少し離れて船から見ている。
まあ、ルフィも最初、近くで見たいと言っていたが危ないからと俺とシャンクスに言われて渋々了承し、船から望遠鏡で俺達を観戦している。
実際、シャンクスがミホークとライバルだったってことから察するにあれくらいの斬撃を放てると考えた方がいいしな……

「じゃ、始めるか……」

俺は破軍を両手に構え、百錬自得の極みを発動させる。
天衣無縫の極み、答えを出す者(アンサートーカー)、レンの能力やラジラジの実の能力は今回、使わない。
単純に剣術を鍛えたいというか、勉強したいだけだしな……

「おう、いつでも来い。」

シャンクスも剣を片手に構え戦闘準備に入っている。

「じゃ、READY……… GO!」

俺は足にオーラを移動させ、シャンクスのもとに飛びこむ。
横薙ぎに短刀を振るうがそれは剣の柄の部分で止められる、俺はそのまま回転し大剣で斬りつけるがそれも防がれてしまう。

「おお、見ない間に強くなったな。だが、まだまだだぜ?」

まあ…このぐらいで勝てるとは思っていないしな…と、そのまま、スケートでもするかのようにシャンクスに斬りかかる。
上から下から横から斜めから予想不可、変幻自在の攻撃を繰り出すが全てが悉く防がれる。
……そういやこいつ、見聞色の覇気も使えるんだったっけ?
それとも経験から予測してるだけか……
まあ、いいや。とりあえず……

「知り難きこと陰の如く」

「……ん?」

戸惑う…というかいきなり雰囲気の変わった俺に気づき、身構えるシャンクス。
俺はそのままシャンクスに大剣を大きく振りかぶり、斬りかかる。
避けられるがそのままの勢いで地面に剣を突き刺しそれを軸に回転し、短剣を投げさらに蹴りを放つが短剣は避けられ、剣で防がれる。
しかし、その反動を利用し今度は逆に回転し剣を引き抜き、それを振り下ろす。
またも防がれるがこれは作戦の内、大剣をいくつかの刃に分解させシャンクスの剣に巻きつける、そして…シャンクスの腹に空いている左手を当て溜めていた気を放出する。双撞掌の片手版なのだが……名前は……うん、隻撞掌にしておくか。
隻撞掌を受け吹っ飛ぶシャンクス。
…まあ、シャンクスも覇気でガードしてるし、ただ、吹っ飛ばすためにやっただけだからそんなに効いていないはず。今のうちに短剣拾っとこう。






(SIDE 観客)

「おお、お頭が派手に吹っ飛んだぜ!!」

「すげえな、金狼も。」

口ぐちに感想を言いあう赤髪海賊団の面々、そんなに心配した様子もなく、純粋にこの戦いを楽しんでいるようだった。

「すっげえ…、マサヤもシャンクスもあんなに強かったのか……」

呆然とするルフィ……自分もマサヤに鍛えてもらっているから強いとは思っていたけどまさか、ここまでとは思っていなかったんだろう……

「いや、お頭達の力はあんなもんじゃねぇ…。今のはマサヤがお頭に少しは本気出せって言っただけだ。」

副船長のベックマンがルフィに解説してあげる。
まぁ、彼も他の人たちみたいにはしゃがないだけで、結構この戦いの観戦を楽しんでいた。

「さぁ、弟分に尻を叩かれてお頭はどう出るか……」







(SIDE マサヤ)

「凄いなあ、ほんとに。俺をぶっ飛ばせるぐらいになってたか…こりゃあ、少し本気で相手しないと失礼だな。」

お、予想通り、ダメージなし。
本気で相手してもらえるようだし俺もちょっと気合い入れていくか……ッ?
さて、行くか…と思った時にシャンクスが俺に向かって一瞬で近づき斬りこんできた。
俺はそれを受け流し、短刀で首を狙うが柄頭でそれを弾かれる。
そして、器用に剣を持ちかえ上から下に斬り降ろしてくるそれを後ろにとん……いや、右に跳ぶ。

―ドンッ―

後ろに跳んで避けようとした時に浮かんだ自分が切られるイメージが脳裏に浮かび、咄嗟に右に跳んだのだったが……その判断は正解だった。
自分の横には地面が裂けたような痕、そしてその先の海も同じように裂けていた…まるで大きな剣でぶった切ったように……

「どうだ?凄いだろ?」

剣を担ぎニヤッと笑うシャンクス。
なるほど……ミホークみたいな斬撃だな。
どうやるのか気になってたが見れて良かった…見さえすればこっちのもんだ。
俺は、短剣を腰にさし、両手で大剣を持つ。

「んなもん、俺だって、すぐ使えるようになってやるよ。」

と笑いながら、シャンクスへ跳びこむ。
剣をシャンクスに叩き込む。
相手が受けて競り合いになったところに溜めていた気を身体から解放させ衝撃を与え、下がらせる―そして、無我の境地で先程、シャンクスが放った斬撃を再現する。

―ドンッ―

シャンクスがいた場所は先程と同じように地面に大きな斬撃が刻まれていた。

「……ったく。嫌味な天才だな。おまえ。」

シャンクスは何かを感じたのか俺が斬撃を放つ前に横へ跳びそれを避けていたようだ。

「まだ、ちょっと甘いか…もう少し…調整が必要だな。まぁ…少しずつ身体に覚えさせればいいか……」

「おい、人の話聞けよ。」

「ん…?ああ、シャンクス。ありがと。」

「ああ?」

「シャンクスのおかげで俺はまた、強くなれた。」

「はは、はははは!やっぱり、面白いな。お前は」

新しいおもちゃを手に入れた時のような、とても楽しそうな顔で笑うマサヤ。
それを見て、こちらも楽しそうに笑うシャンクス。

「じゃ、もうちょい。勉強させてもらうぜ。シャンクス!」

「おう、来い!マサヤ」







(SIDE 観客)

「うわぁ、金狼の奴、お頭の斬撃を真似やがった。」

「いや、元から使えてたのかもしれないぞ。というか見てすぐなんて普通できないだろ。あんなレベル。」

「そういや、金狼ってお頭の弟分なんだろ?とんでもない兄弟だな」

「というか…もう島がやばくね。あッ、また、崩れていった!」

段々、規模も激しさもエスカレートしていく二人の戦いに興奮する赤髪海賊団の面々。

ルフィも二人の戦いを見て、目を輝かせ、

「凄ぇ……俺もいつか、マサヤやシャンクスみたいに…いや、あの二人以上になってみせる!」

「はっはっは!そうか頑張れよ。ルフィ。お頭達を超えるのは大変だぜ?」

それを聞いて、馬鹿にすることなく応援する船員達。

ベックマンがそれを見て、ニヤリと笑う、そして…

「あれを見て、恐れるどころか超えると言うか……お頭、こいつは大きくなるぜ……」

と誰にも聞こえないように呟くのであった。









(SIDE マサヤ)

―あれから2時間後

ここはフーシャ村の「PARTYS BAR」。

「あぁ、引き分けの場合ってどうするんだっけ?」

「やっぱ、無効試合勝負なしだろ。金返せ。」

「いや、俺、引き分けにかけてたから、俺の一人勝ちだ!」

いつも通りというかまぁ、いつも通りの風景で宴会騒ぎで皆、楽しんでいる。

……あれから1時間くらい斬り合ったんだが勝負はつかず、最後にお互い、全力で斬り合ったんだがそれでもお互い引かずで先に島の方が駄目になってしまったわけで引き分けになった。
まぁ…剣を使うときの百錬自得の極みの扱い方とか斬撃の調整とかかなり練習出来たんで文句はないというより、満足だ。

「今日はありがとう。今日の酒は俺が奢るよ、シャンクス。」

「馬鹿野郎。弟分に奢ってもらう兄がどこにいるんだよ。お前は黙って奢られろ。」

少し、不機嫌そうなシャンクスを見て少し笑ってしまう。
あの後も、シャンクスの技や技術を見て盗み、自分の力にしていけた、まあ…向こうからすれば長年、磨いてきた技をたった一目見ただけで完璧とはいえないまでも再現されてしまうのはつまらないだろうな……

「いやあ、お前も強くなったな。俺も鼻が高いぜ。やっぱり、うちに入れよ。」

と思ってたんだが…やっぱ、シャンクスって器がでかいな。

「だから、無理だって。俺は一人か二人ぐらいで旅するのが性にあってるんだよ。シャンクスみたいに覇黄色の覇気持ってないしな…」

「そうなのか……意外だな。」

「ん……。ここはどこだ?………飯だーーーーーー!」

―ドタッ―

なんか俺達の戦いを見て興奮したのかフーシャ村へ帰る時に船の上で筋トレや特訓をして疲れて寝てしまったルフィが目を覚まして椅子から落ちた。

「……いっただきまーす!……んぐ…むぐ…むぐむぐ…ん……シャンクス!マサヤ!」

「「何だ?」」

いきなり起き上がり飯を食べ始め、今更俺たちに気づき声をかけるルフィ、俺にシンクロしながら答える俺とシャンクス。

「俺はお前らを…いつか、超えてやる。だから、シャンクス、もう、船に乗せてくれなんて言わねえ!俺は早く強くならないといけないから、マサヤ、明日から俺をもっと鍛えてくれ!」

「「そうか。わかった。頑張れよ。」」

「おう!海賊王に俺はなる!」

そう宣言するルフィにシャンクスは笑い、自分の被っている麦わら帽子をルフィに被せる。

「じゃあ…この帽子をお前に預ける。」

「?」

「俺の大切な帽子だ。いつかきっと返しに来い……立派な海賊になってな」

原作の名シーンだな……
原作では船出の時だったけど、現在酒場でございます…あれほど感動的なシーンには……

「………………!!」」

ルフィ…泣いてる!?
うわー、シャンクスかっこいい……
俺も何か……って俺、トレードマークになるものって何もなくね?
金狼って金髪のこと言ってるんだよな…
髪もらっても嬉しくないだろうしな……
負けた……これが試合に引き分けて勝負に負けるってやつか……なんか悔しい……

まぁ………いいか……

-24-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ワンピース ROMANCE DAWN 冒険の夜明け
新品 \3600
中古 \1740
(参考価格:\5980)