小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

【第26話 それぞれの現状 ユサ編】





(SIDE ユサ)

「次は…っと、この島に行かね?ロビン」

「いいわよ。そこにしましょう。」

俺は地図を広げ、手で小さな島を指し示す。
ここは西の海、なんでそんなところにいるのかって?
そんなの決まってる。あれだ。マサ兄の女のせいだ。
シャボンディ諸島を出て、5,6年くらいが経ったが、最初は東の海、次が南の海…と思ってたんだが……なぜか、出発してすぐにナゴミさん勝手に行き先を変更し…北の海に行くことになった。

で、航海を初めて1年くらいは一緒に島を周ったりしていたんだが、
「もう、航海術も覚えたし、大丈夫。今までありがと。また会おう!」
とか言って通りがかった海賊船をジャックしてどこかに行ってしまった……
まぁ、別に心配はしてないけど、というより、あの人が困るところなんて想像できないしな……それと、正直、離れられてホッとしている。あの人ほんと滅茶苦茶だ。
よくあんな人に言うこと聞かせられるよな、マサ兄は、すげぇよ……

「どうしたの?ユサ?何かあった?」

で、目の前にいる黒い髪に端正な顔立ちをした女性―ニコ・ロビン。
ナゴミさんと別れて少しして立ち寄った町で彼女に出会った。
最近では、最初に会った時よりずっと険が取れ魅力的になってきたなぁ…と思う。
まぁ…その代償もあったんだけど………

「いや、まぁ……なんで俺はここにいるんだろうと思い返したら傍若無人な義姉を思い出して、それを上手く制御してるマサ兄を尊敬してたんだよ。」

「そういえば、会ったばかりの頃にそんな話をしてたわよね。あなたのお兄さんとお姉さんに会ってみたいわね。」

とニコッと笑うロビン。
あぁ…可愛い。この笑顔を見れるだけで、賞金首になった甲斐があったわぁ。

『五色』のユサ、まあ、呼び名は賞金稼ぎしてたころと変わらないんだけどな…
船内に張り付けてある俺の顔写真の上には「WANTED」の文字、下には「DEAD OR ALIVE」と俺の名前と懸賞金2億5000万ベリーという数字が書かれている。
それを見て、俺はため息をつく。

「はぁ…、これ、絶対にアレグレット怒ってるだろうな……どうするか……」

義妹のアレグレットは海軍にいるわけだし、このことは、もう知ってるだろう……
今度会った時、俺達ってやっぱ戦うのかなぁ…とちょっと鬱になる。
まぁ、後悔はしてないし、負けて捕まってやるつもりもないけどね……

「あぁ……ごめんなさい。」

「いや……気にするなよ。俺が好きでやったことなんだしさ……それに……」

「あ…そうだったわね……ありがとう。」

まあ、数ヶ月前のあの事件から俺は賞金首になったわけだが二人の取り決めでこのことについては謝ってはいけないってことにした。俺が勝手にしたことだしね。
…でも、まぁ……

「マサ兄には言っといた方がいいよな……。ロビン、次の島が終わったら、マサ兄に会いに行こう。」

「ええ、あなたのお兄さんに会うのは楽しみね。」

西の海もあらかた周ったことだし、一度、シャボンディ諸島に帰るのも良いだろ…
それから、南の海、東の海と行ってみるかな…







(SIDE ロビン)

「ええ、あなたのお兄さんに会うのは楽しみね。」

また、自分の世界に入ってしまうユサ。
このよく考え込む癖に最初の頃は不安になったりもしたんだけど、最近では、自分もそうだったことに気づき似た者同士だと思えてなんだか嬉しくなる。

「もう、4年になるのね……」

ユサに聞こえないように呟く。






彼に初めて会った日の事、私はお腹を空かして道の端っこで座っていた。
外見がわからないようにフードを被っていたので誰も私に声をかけてこないし近づいてさえこない。そんな時に

「ほら、食べる?」

と言って差し出されたパン。
私はいらないと答え、うつむき、顔を隠す、
信じては裏切られての繰り返し……
もう、誰も信じられない……どうせ、裏切られるんなら逆に利用して裏切ってやれと考えていた時期だった。
それを諌めるように差し出された言葉と優しさに何か気まずさを感じてしまったのだ。
しかし…

―キュルルー

突然なり出す私のお腹……私は恥ずかしさで顔が真っ赤になる。

「はぁ……、まぁ、いいや。ここに置いとくから。よかったら食べてね。」

と私のそばにパンを置いて立ち去って行く人。
それから少しして気配が無くなった事を確認して私はパンを食べた。
その日はパンを貰ったことよりも、今日も生きていられたことへの安心の方が大きくてパンをくれた人のことはすぐに忘れていた。

そして、次の日。

「また、ここにいるのか。今日はサンドイッチだけど、いる?」

「うん。」

「あ、今日は口をきいてくれた。」

多分、昨日の人だろう…私が返事をしたことに喜び笑顔を見せる。
歳は…多分、私と変わらないくらいだと思う。
ちょっと、いたずら好きな感じの顔立ちに白、黒、翠、黄、赤というわけのわからない髪の色をしている少年。
こういうタイプの人には今まであったことないからどう対応すればいいのかわからない…
同じ年代の人は私を怖がって石を投げつけることはあっても笑顔を向けられることなんてなかったから……

「はい。どうぞ。」

と言って、サンドイッチを渡してくれる。
そして、私の横に腰をおろし、こちらを向いて笑う。

「な、何?」

「いや、なんか久しぶりに同じくらいの年齢の人と話せたから嬉しくてさ。」

「え?」

「俺、血はつながってないけど同い年の妹がいてさ……」

いきなり、自分の過去を話し出す少年。
楽しそうに自分の家族のことや今までのことを話す。
やめて……そんな、幸せな話なんて聞きたくない……

「やめて!」

私はハナハナの実の能力を使い少年の口を生やした手でふさぐ。
あぁ……やっちゃった……これで、この少年も今までの人みたいに……
私は慌てて能力を解除する。

「………」

少し驚いた顔の少年、そしてその口が開き……やめて…その言葉は聞きたくない……

「すげぇ……!あんたすっげえな!!」

「え……?」

予想と違った言葉をかけられびっくりする私。

「いや、悪魔の実の能力者だったとはな。俺も、っていうか俺の周りの人も能力者がいるんだけど…ほとんどの人の能力が目に見えない形で働く能力だからこういうの新鮮なんだ。」

と目を輝かせる少年。

「そうだ!ウチの船こない?って言っても船員俺だけなんだけど、少し前までは二人いたからスペースもあるしさ。」

「……うん。」

「あ、そうだ。俺はアレッサンドロ・D・ユサ。冒険家だ。よろしくな」

突然の想定外の事態につい肯いてしまう私、こうして私はこの少年―ユサと旅をすることになった。






それから、現在までユサはある秘宝を、私は歴史の本文(ポーネグリフ)を探すために一緒にありとあらゆる島を周り続けた。
旅を始めて、1年くらいで私に懸賞金がかけられていることが知られたけど、特に気にすることなく、私に対する態度もそのまま何も変わらなかった。
その頃からかな……私が彼を仲間だと思い始めたのは……






そして、今から数ヶ月前、

―ドンッ―

激しい物音で目が覚める。

「ユサ!何があったの?」

「ロビン、出てくるな。ちょっとそこで待ってろ!」

―ドンッ―

―ドンッ―

またも、なり響く轟音と衝撃、これは聞き覚えがあるというか…
たしか、ユサの得意な飛ばす斬撃だ。
兄と姉がラブラブで修行してくれなかった時期に飲み屋のおっさんに教えてもらった技だと言ってたやつだと思う。
前に見せてもらったけど、軍艦一隻は沈められるくらいの威力だったはず…
こんなに放つなんて…ユサは何と戦っているの?
それから、しばらく経って、

「よし、いいぜ。」

私が甲板に出るけど周りには何もない。
私は気になって、自分達が向かってきた方向へ飛んでいく鳥に目抜き咲き(オッホスフルール)で目を付け様子を見る。

「……ッ。ユサ、あなた。」

「ん?何?」

「何じゃないでしょ。あなた、なんで海軍の船を沈めてるの…これじゃ、あなた……」

「まぁ、どっちみち、匿ってたのは事実だからさ…しゃあねえよ。」

どうやら、近くの町で私がこの船に乗り込んでいるところを見た人が通報したらしい。
で、海軍が来て…戦闘になったと………笑いながら説明するユサ。

「……なんで……」

「ん?」

「なんで、笑ってるのよ。本当は怒ってるんでしょ?後悔してるんでしょ?私を連れてきたことに…!」

「う〜ん……まあ、これで懸賞金は付くんじゃないかな…まあ、賞金稼ぎ出来なくなったのは残念だけどさ…別に後悔はしてないよ。」

私は感情を爆発させ叫ぶがユサはそれを笑って受け止める。

「え?」

「いや、自分の大切な仲間を救えなかった時の方がもっと後悔するだろうしね。怒ってもないしさ。それに……。」

「それに……?」

「マサ兄に言われたんだよ。最初に人を殺した時にさ、『苦しく哀しい時ほど、優雅に微笑み、馬鹿なことを言え』ってさ。多分、あんたも同じだろ?」

「えッ………?」

まぁ、マサ兄は最初、サバイバルで自分より弱い動物を狩った時にやり始めて、今ではそれが素になってしまったんだろうけど…と呟くユサ。
そして、ロビンの脳裏には、昔、似たような言葉を言われた記憶が甦る…そして、今までそれを繰り返してきたことも……

「時々さ、一人の時にさ、暗闇で笑ってるだろ。あれも似たようなもんなんじゃないの?でもさ、俺、思うわけよ。んなこと、強い奴にしかできねえよって俺やお前みたいな普通の人はさ、半分くらい思いっきり気がすむまで泣いて叫んで喚いて…発散させないといけないんだってさ。」

「それにさ…俺は辛いちゃ、辛いけどこれからどうしよ〜かなって程度だしさ、だから笑ってられる。海軍が相手?臨むところだってな。俺はマサ兄の弟なんだから、そんな奴らには負けねえよってな」

といい、笑いかけるユサ。
私はそれを見て、ユサに抱きつき泣きだした。

「…ぅ……えぇええ……ん……うわああああ〜ん……」

私はユサの胸の中で泣き続ける。
今までの辛かったこと、悲しかったこと全てを涙に変えて流すように……

「あー、はい、よしよし…」

とユサが私の頭を撫でる。
子供扱いしないでよ……と言いたいけど…言葉にならない…口からは情けないけど泣き声しか出てこない。それに……撫でられることが気持ちいいと感じている私がいるから……







その後、私は疲れて眠るまでずっと泣き続けていたらしい。
あの日から楽しいことには自然に笑えるようになったし、世界が少しだけ優しくなったようなそんな気がする。実際は私が変わっただけなのにね…
そして、最近気づき始めた彼への思い、それは仲間とかいう分類じゃなくて………
でも…とロビンは呟く。
彼の尊敬しているマサ兄って人もかなりの鈍感みたいだけど…そういって笑ってるユサも同じだと思うの……

「お、見えたぞ。ロビン、降りる準備しようぜ」

「うん。ユサ………」

「ん?」

だから…私……

「私、頑張るね!」

「…?おう、頑張れ」

-27-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ワンピース サウザンド・サニー号 新世界Ver. (From TV animation ONE PIECE)
新品 \2536
中古 \
(参考価格:\3990)