小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【第27話 それぞれの現状 アレグレット・サヤネ編】







「ちきしょう……何なんだこいつ。」

「逃げろーッ。」

海軍、いや…一人の少女に自分達が手も足も出ず、やられている状況に慌てふためく海賊達。
ここは東の海、危険な海賊があまりいないので平和な海と呼ばれている海だ。
当然平和であるから海軍の支部のレベルも低く、彼らはこの近海では我が物顔で好き勝手していたのだが…まぁ…今回は運が悪かったと言うべきか……
襲った海軍の船には本部准将の乗っている船だったとは…だが、その准将の姿を見た彼らは一つの間違いを起こす。
これなら勝てるという愚かな考えでその少女に襲いかかるという愚行を……
その結果、彼らは地獄を見た。

甲板でまるでダンスでもするようにくるくると優雅に舞う少女、それに付き従うかのように海賊たちを追いかけ切り刻む刃、それは獲物を狙う蛇のようでありどこまでも追いかけてくる。遠くから見ればそれは芸術と思えるような光景であり、襲われる当事者たちにとってはまるで悪夢のような光景だった。
とはいえ……それももう終わった。

「ふぅ……これでお終いかな…」

海軍本部准将、海賊達に最初侮られていた少女―サヤネはつまらなそうに呟く。
つい、1週間前まで体験していた楽しい時間を思い出す。…っと

「あ、ごめん。アレグレット。もう戻っていいよ。」

手に持っていた、先程、海賊たちを追いかけ、切り刻んでいた刃を剣に戻し、それに語りかける。すると、剣は光を放ち、人の姿になる。

剣から人になった金髪のポニーテール、エメラルド色の目をした少女―アレグレットが伸びをし…

「ああ、疲れた…」

「私の使い方が悪いっていうの…?」

「いや、そうじゃないけど……」

「マサヤさんに使ってもらってた時の方がよかった?」

「……そんなこと言ってない。……まぁ…そうだけど……」

「あんた、失礼ね。私、一応上官なんだけど……」

「うん。そうだね。……というか、なんでサヤネ准将がマサヤさんって呼んでるんですか?前はマサヤ兄さんでしたよね?」

「アレグレット、あなたもそうでしょ。今までマサヤ兄ぃって言ってたのに〜」

年相応の言い合いを始める少女達。こうして見るととても先程の鬼神の如き強さは感じられない。周りの海兵も穏やかな表情でそれを眺めている。
っとその時、倒れていた海賊の一人が立ちあがり、アレグレットを掴み首にナイフを近付ける。

「近づくな!離れろ!この船から出ていけ。」

「あ〜、わかったわよ。皆、言われた通りにしましょう。」

といい、海賊船から引き上げていく海兵たち。
そして、サヤネは一度振り返り、アレグレットに声をかける。

「あんたほどほどにしときなさいよ。後で、その船そのまま引き渡すんだから……」

「何、訳のわからないこと言ってやがる!こいつがどうなっても……」

―シュッ―

「え?」

ナイフを首筋に当てようとしたのだが……
手が思うように動かない…というより……手がない。

「……ない…で……さい。」

―サクッサクッサクッ―

と少女を掴んでいる手と逆の方の手が包丁で斬られた大根のように輪切りにされていく。

「あああああああ!やめろ!」

男は慌てて少女を離し逃げる。

「ほら、そうやってすぐ逃げる……。私に触る覚悟もないのに私に触らないでください。」

といい、右手を剣に変えながら男に近付き、腕を振り上げそのまま斬りつける。
そして、倒れていく男を見ながら

「ああ、1週間前までは楽しかったのに…」

とサヤネと同じことを呟く。
そうして、彼女は空を見上げ、思い出す。






そう、あれは3か月前のこと



(SIDE アレグレット)

―ブルブルブル―

「はい、こちら……」

電伝虫に対応している上官のサヤネを見ている私、今日は訓練の後、一緒にお茶を飲む約束をしていたのだ。

「ああ、サヤネちゃん。俺だ。マサヤだ。元気してた?」

「え……マサヤ兄さんですか?」

「……ッ!」

思わず、立ち上がる私、サヤネさんに近寄る。

「マサヤ兄ぃ!」

「お、そこにアレグレットもいるのか…元気か?」

「ええと…、マサヤ兄さんどうしたんですか?」

「ああ、それがな……」

いつも通りのマサヤ兄ぃだが、普段、向こうから連絡が来ることはない。
だから、どうしたのか心配になったんだけど……
どうやら、東の海で海軍支部の大佐が悪さをしていてその証拠を掴んだから誰か信頼できる人を送ってほしいということだった。
とりあえず、現場に行くと約束し、その場はそれで終わったんだが、サヤネさんが通話を終え、一言、

「さあ、東の海へ行きましょう!」

と言い、ガープ中将に連絡し、許可を貰い早速、行くことになった……
あれ?サヤネさんってこんな人だったっけ?
何かとても嬉しそうなサヤネさんは気になるけど、
まぁ……でも、久しぶりにマサ兄ぃに会える……と思うと嬉しくなる。
この6年くらいで私、自分でも強くなったと思うしマサ兄ぃに会うのがとても楽しみだ。



そして、数週間後。

「ここが…コノミ諸島…とても平和そうな…いい島ね」

サヤネさんが呟く、ほんとにその通りだと思う。

「おーい。サヤネか?」

上陸するとすぐにサヤネさんが呼びかけられていた。
声がかけられた方向を見てみると、そこにマサ兄ぃがいた、飛びつきたい衝動を必死にこらえる。今日は仕事できたんだ…公私混同しないでちゃんと成長したところを見てもらわないと……

「マサヤ兄さん、お久しぶりです。」

「ああ、やっぱり、サヤネちゃん、久しぶり。また一段と可愛くなったね」

「ふふふ。そんなことばっかり言ってると本気にしますよ?っと、それで、今回の……」

となんか仲睦まじい様子を見せられ、心が乱れる。
というか……後ろで、准将とあの人って金狼だよな?付き合ってんのかな…とか言っている海兵を「今は仕事中です。私語は慎みなさい」と睨みつけ、黙らせる。

まぁ、そんな感じで我慢してたのだが……

「……っていうわけです、証言もこの村の人たちがしてくれる手はずになっていますし、これを……って、アレグレットも来てたのか?」

とマサ兄ぃが私を見つけ、呼びかける。
あぁ……もう、無理……

「マサ兄ぃ!」

と言って、飛びつく……

「ああ、相変わらず、甘えん坊だな。アレグレットは。よしよし。」

と頭を撫でてくるマサ兄ぃ…相変わらずって…サヤネさんには可愛くなったって言ってたのに…でも、撫でられるの気持ちいい……

「え〜っと、ゴホン!」

サヤネさんがわざとらしく咳をする。

「……ッ、すいません。これは………」

海兵や周りの人みんなが見ている…恥ずかしい……







と私達の再会はこういう感じだった。
その後は、証拠を集めネズミ大佐を監獄へ送り、その後の引き継ぎの人の選別や賞金首のアーロンの引き渡し、その他の事務処理で3ヶ月間、この島に滞在することになった。






で、これは仕事もあらかた片付き、落ち着いてきた日のこと。

「サヤネちゃん、暇?また、あの時みたいに剣の特訓してみない?」

軽食屋でご飯を食べていた私達を見つけ、マサヤ兄ぃが声をかけてくる。

「ほんとですか!私もやりたいです。また『破軍』使わしてください!」

「いいけど、今、俺、『破軍』しか持ってないしな…」

「大丈夫ですよ。私の剣を貸しますから、一応、良業物ですし、問題ないですよ。」

と興奮気味になっているサヤネさん。あれ?私、空気?
と思っていたんだけど……

「いや…もっといいものがそこにあるじゃん。ちょっと、アレグレット借りていい?」

「「え?」」

驚く、私とサヤネさん。

「ま、とりあえず、行こうか。」




と言って、私達は海岸へ向かった。

「ここなら大丈夫だろ。ルールは前と同じで、斬撃を飛ばすのはなしな」

「「斬撃を飛ばす?」」

首をかしげる私とサヤネさん。
マサヤ兄ぃは『破軍』の大剣を振り上げ、海に向かって振り下ろす。
すると、凄い先まで海が剣で切った様に割れた。

「「えええええ!」」

「うん。これは流石に危ないからさ、なしな。普通に剣の技術を鍛えることにしよう」

とにこやかに笑うマサヤ兄ぃ。
いや、なしというか…それ以前にそんなことできませんから…強くなったと思ったのに…マサヤ兄ぃはそれの何十倍の速さで強くなっていた……
なんというか…私の苦労ってなんだったんだろう……

「ほい。また、あの華麗な剣さばき見せてね。」

とサヤネさんに『破軍』を渡すマサ兄ぃ。
それを喜んで受け取るサヤネさん。
受け取ってすぐにそれを振り回し、喜んでいる姿はまるで子供みたい……

「じゃあ……アレグレット。おいで。」

といい、手招きをしてくるマサ兄ぃ。

「ほら、『破軍』の動き見てさ、『破軍』になってくれない?」

「……え?」

「お前の能力でさ剣になって、俺と一緒に戦うの。お前がどれだけ成長したか見たいしさ、俺なら、誰よりも上手くお前を扱えると思うからさ。」

「……………ッ」

えっと…私、今なんて言われたの?なにかとても嬉しいこと言われた気がするんだけど、頭に入ってこなかった……もう一度聞きたい。

「えっと、マサ兄ぃ、もうい……」

「え〜っと、お熱いところ悪いですけど、もうそろそろ始めません?」

「あ〜、ごめん。じゃ、アレグレット頼むわぁ」

ちょっと、邪魔しないでよとサヤネさんを睨もうとしたんだけど……怖い…向こうも私を睨んでる……と、とりあえず、今はマサヤ兄ぃの役に立つことだけを考えよう。

「……わかった。」

と言い、姿を剣に変える。

「ん〜…駄目だ。」

……え?

「アレグレット、もう一度元に戻って」

言われた通り、元に戻る。
どうしたんだろう?私、何かまずいことでもやったかな……

「なんかさ、ぱっと剣になられたらさ感動がないからさ、頑張って光とか放ちながら出来ない?あと、台詞とかさ。せっかくの共同作業だしさ……」

「……え……うん。頑張る。」

多分、普段なら怒る所なんだろうけど共同作業と言われ違うことを想像し、頷いてしまう。マサヤ兄ぃ……ずるい……

「あ、ごめん。サヤネちゃん。ちょっと待ってね。後で、てかお詫びに明日は拳法の修行手伝うから許して」

「わかりました。早くしてださいね」

「じゃあ…アレグレット。まずは………」

というわけで、take2が始まった。

「アレグレット、行くぞ!」

「うん……強固なる絆よ」

私はできるだけ体に光を纏いながら教えてもらった台詞を紡ぐ。

「全てを斬り裂く剣となり」

「我に勝利を与えたまえ!」

どんなに強くなっても昔から、こういう演出が好きなところは変わらない。

「シンクロ召還!舞い降りろ!アレグレットソード」

私は剣の姿になり、マサヤ兄ぃの手の中に納まる。

「おお、完璧!よくやったなアレグレット。あとは俺に任せろ。俺がお前を最強の剣にしてやる。」

と言って、喜ぶマサヤ兄ぃ、もう、なんか負ける気がしない……
それを見て怒っている様子のサヤネさんも気にならない。
私はマサヤ兄ぃに身を委ねた。







(SIDE サヤネ)

完敗だった……
やっぱり、マサヤ兄さんは強かった…
手加減されてたのは前も同じだけど、剣の扱いが…前にやったときよりも全然違った。
もう、私が足元に立てないほどの技術を身につけていた……この数年でどんな特訓をしてきたんだろう?
やっぱり、アレグレットが言うとおり凄い人なんだなぁ。

「じゃ、また明日。俺は……」

勝負の後も私達には基礎能力が足りないと言って一緒にトレーニングしてくれることになったし…アレグレットは能力の制御(剣になっているときに少しではあったがマサヤさんを傷つけていたので)、私は拳法の練習にも付きあってもらうことになった……
なにか、色気のない内容だけど…私は今、凄い幸せな気分。
で今、マサヤさんはココヤシ村の奥にあるベルメールさんという人の家でお世話になっている。
ベルメール家は3人家族で皆女性で、心配だったんだけど…実際会ってみて、子どもは10歳くらいの女の子だったし…問題はなさそうだった……
まあ、ナミって子は歳をとったら何か敵になりそうな雰囲気があったけど………





というわけで、それから私とアレグレットはほぼ毎日、マサヤさんと一緒にトレーニングをした。
別れるときには私達用に今後のトレーニングのスケジュール表なんかも用意してくれた…
え?私達が兄さんと呼ぶのをやめた理由?それは内緒……

と私は船内に戻り、本部への連絡を入れる。
部屋にはアレグレットもいる。

「……報告は以上となります。え、あ、はい。懸賞金二億五千万ベリーですか?はい…名前はアレッサンドロ・D・ユサ…、はい。写真は後で確認しておきます。…では、失礼します。」

アレッサンドロ・D・ユサ…何かどこかで聞いたことのある名前なんだけど……どこだったっけ………

「サヤネさん!どういうことですか?」

と思っているとアレグレットが怖い顔をして近づいてきた。



(SIDE アレグレット)

海賊を狩り、船内に引き上げ私はサヤネさんの部屋で書類を処理していた。
正確にはさっき終わったんだけど、サヤネさんは今、本部に報告をしており、話すことができない。
とりあえず、ソファに背を預け、サヤネさんの通話を聞いていると……

「え、あ、はい。懸賞金二億五千万ベリーですか?はい…名前はアレッサンドロ・D・ユサ…。はい。写真は後で確認しておきます。…では、失礼します。」

…え?今、なんて言った……の?ユサが賞金首……
突然のことに頭が混乱する。
私は、通話を終えたばかりのサヤネさんに、

「サヤネさん!どういうことですか?」

と詰め寄る。
本部から送られてきた(FAX)写真には自分が分かれた時より少し大人っぽくなったユサの顔が写っていた……





その後、慌てる私をサヤネさんは宥め、事の経緯について説明してくれた。
ユサが船の調査をしようとした軍艦を数隻沈めたらしい。
あの馬鹿…なにか理由はあるんだろうけど……
私はどうしたらいいんだろう……そうだ、マサヤ兄ぃに報せよう……
私は電伝虫を借りてマサヤ兄ぃに連絡した。




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