【第28話 北の海へ】
「そうだったのか……まあ、大変だったな。」
「いや、後悔はしてないし…」
「あ〜…そっちは別に心配してない。というより良くやった。さすが俺の弟だ。で、俺が言ったのは…ナゴミのことだよ…。」
目の前であぁ……と納得したような顔をしているアレッサンドロ・D・ユサ、俺の弟だ。そして、その横に座っている女性―ニコ・ロビン。
最初に見た時は驚いたな…
原作の時よりもずっと若く、こちらの方が俺の好みだったりするんだけど、雰囲気的にユサにぞっこんな様子だ。なんか自分のイメージと違ってたりするんだけどこっちの方がいいかなと思ったりもしている。
対して、俺の側にはハンコックが座り、その反対側にはナミがオレンジジュースを飲みながら航海術の勉強をしている。
まあ、これでわかると思うが、ここはアマゾン・リリー。
コノミ諸島から出発して半年程になる。
現在、ナミは九蛇海賊団の船に乗せてもらい、航海の経験を積みながら武術の鍛錬を受けている。
明るく素直で覚えが早いので色んな人に気にいられ日々、成長している姿を見るのはなんとも微笑ましい光景だった。
最初に来た時はナミのハンコックへのライバル宣言とか俺へのロリコン疑惑とかいろんな騒動があったが今ではそれも落ち着き、ナミもハンコックも仲の良い歳の離れた姉妹みたいな関係になっていた。
「で、これからそなたらはどうするつもりなのじゃ?」
ハンコックが二人に問いかける。
「今回はマサ兄に直接、今回のことを伝えておきたかったから来ただけなんで今後の予定に変更はないです。まず、南の………」
「まあ、ユサとロビンちゃん。急いでるんじゃないなら、この島で少し特訓でもしていけばいいと思うよ。ここの人達は皆、覇気を使ってるからそれを教えてもらえば今後の旅にも活かせるはずだし……ユサは特に覇王色の覇気を持っている可能性あるしな…」
「覇王色の覇気?」
「それは真か?マサヤ。」
「ああ、俺の勘だけどね。」
ユサはDを持つ者だからその可能性は高いんじゃないかな…
「ま、これからどうするかはこの数日で決めたらいいんじゃないの?今はゆっくり休んでくれたらいいよ。ここは安全だしさ。」
俺とナミがアマゾン・リリーに着いてからすぐにアレグレットからユサが賞金首になったと連絡があった。
アレグレットは慌てた様子でユサが賞金首になった経緯を説明した時はナゴミの仕業かと思ったんだがな……
その後はアレグレットをなだめ、俺に任せとけと言っておいた。
まぁ、ユサは海賊じゃないし海賊旗みたいな目立つものもないので、心配ないだろうとも付けたしておいたんだが……本人が船以上に目立つから心配だと突っ込まれたが……
「それに……少なくとも本部の海軍准将もお前がロビンちゃんを匿ってることは知らされてないみたいだからそれについては安心していいと思うよ。あとはユサ……」
「ん?」
「お前の周った島についてあとで詳しく教えてくれないか?」
「おう。マサ兄の話も後で聞かせてくれよ。特にハンコックさんとの馴れ初めを…」
とニヤリと笑うユサ。ロビンがちょっと睨んでいるが気づいていない。
その後は宴が開かれ、俺とユサは夜通しお互いの旅の話を語り合った。
これは後から聞いたんだがハンコックとロビンも気が合ったみたいで同じように話していたらしい。
それから1週間。
ロビンとユサはしばらくこの島に滞在することになり、俺は北の海に行くことにした。
ユサの話を聞いて、北の海に裏ボス出現地に関連ありそうな島があったことと…これは多分勘だが…その島がナゴミの過去に関係してるような…そんな気がしたからだ。
「ちょっと、明日から知り合いを拾いに北の海に行ってくる」
「わらわも行くぞ!」
「私も付いてく!」
それを伝えたら返ってきた二人の反応…まぁ、予想はしてたんだけどな……
まあ、ハンコックは論外でナミも普通の旅なら良いんだけど、今回は裏ボス攻略ということで危険だから却下。
というわけで俺はまずハンコックの方を向く。
「ハンコック……」
「わ、わらわもマサヤの役に立ちたいのじゃ……」
その気持はもちろんうれしい。
しかし、ハンコックにはこの島を守っていくという使命がある。それに……
俺はハンコックの頬に手を当てる。
上目遣いでこちらをみるハンコック…やっぱり可愛い……
「役に立ってるよ…ハンコックがいるだけで俺は救われてるんだ。お前がこの島にいてくれるおかげで俺はここを帰るべき場所って実感できる。待ってくれている人がいるから頑張って帰ろうって思える……実際、ここだけなんだぜ?俺が他人といて安心して休める場所って……」
そういって、ハンコックの唇に自分の唇を重ねる。
「ちょっと…マサ…人が……ん、んぷはぁ、ん、ちゅ、ちゅちゅる…はぁ…」
そういや、ナミやユサ、ロビンもいたなぁ……と思いだすが、やばい、止まれないって感じでお互い顔が唾液まみれになるまで口づけを堪能した。
顔を離すと真っ赤にゆであがったハンコックの顔…ふらふらになりながらも
「…マサヤ、わらわはしっかりとこの島を守ってみせる。それがそなたの妻としての役目なのなら……」
と言ってソファに座りこむ。一応、まだ結婚してないと突っ込んでおく。
それを見て少し顔を赤くしているユサとロビン。
ナミは少し怒っている。
「ぶー、なんでハンコックお姉ちゃんにだけキスするの?ずるい…」
「そりゃ、俺とハンコックは恋人だからだよ。」
「私は?」
「う〜ん。妹?いや、最初会った時、おじちゃんて言ったから子供ってとこかな?」
「……いじわる。…ケチ。」
やばい。泣きそうだ。ちょっと、からかい過ぎた……
俺はナミの頭を撫でながら身をかがめてナミのおでこにキスをする。
「ほら…これでいいだろ?」
「口じゃない……」
「お前のファーストキスは大事に取っとけ。女性のファーストキスは凶悪な武器になるからな。」
「武器?」
「おう、俺はハンコックにその武器を使われてメロメロになったんだよ。だからなお前も大きくなって好きな人ができたらその武器を使ってメロメロにしてやれ。」
「うん。大きくなってマサヤをメロメロにする。」
「いや…俺じゃなくて、ル……まぁ…俺でもいいけど、俺は強い子じゃないと駄目だからな、ハンコックみたいに強くて綺麗な人になれよ。」
「うん!わかった。」
「ってことで、今回はこの島でお留守番な。ちゃんと、勉強も鍛錬もするんだぞ」
「えーーーー」
「しょうがないな……帰ってきたら、お前らの遠征に付いていってやるから、それで勘弁しろ。まあ、船長が許してくれればだけど……」
「え?ほんと?」
「それはまことか?マサヤ」
なぜか…ハンコックまで反応してるし…
「わらわは歓迎じゃ、では次に帰ってきたときはわらわとマサヤのハネムーンじゃな。」
「違うよ!私がマサヤと約束したんだから!」
……まぁ、なんか色々と二人が言い争ってるけどこれで一段落だな。
「ユサ、あなたのお兄さんってなんというか……凄い人ね。」
「ああ……、いつの間にか知らないうちにアレグレット、ナゴミさんの他に3人も増えてたしね……なんというか…追いつけそうにないよあの人には。」
「いや……頼むから追いつかないで……」
とホッとしているマサヤを見てひそひそと話す別の二人。
こうして、マサヤは北の海へ行くことになった。