小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【第29話 完璧な子供 前篇】





(SIDE マサヤ)

「ここかな………」

ここはステロール島と呼ばれている島で半世紀ほど前から凶暴な動物が増え、人が住めない環境になってしまった島らしい。
島の奥にある研究所からの廃液が川の水に流れ、それを飲んだ動物や人間が凶暴化し、争い合い、人間が全滅したという噂が流れているが…真相はわからないとのことだった。
ユサとナゴミはここに訪れ、探索をしたらしいのだが研究所含め人間は一人もいなかったらしい。
動物達は凶暴なだけじゃなく身体能力も異様に高く、ユサも少し苦戦したと言っていた。
まぁ……あれだな。裏ボスの出現場所にぴったしな感じの場所だよな。
と裏ボスの地図を出す。

―ポンッ―

思った通り、地図はすぐに消えた。つまり……

「ビンゴ……だな。」

効果範囲をこの島全体にし見聞色の覇気を使う。
先程も同様の作業をしたのだが、その時とは違い、研究所の地下内に15人程度の気配を感じられた……ただ、少し気になるのが……

「……子供……?」






(SIDE ナゴミ)

「やっぱり、ここが一番しっくりくる。」

奇しくも同時期にマサヤとは反対方向からステロール島に上陸したナゴミ。
ユサと旅をしていた時に感じた懐かしい感じ、その正体を調べないといけない。
そんな気がしていたのだが、ユサと別れた時に奪った海賊船のせいで海軍に追われ、いつの間にか知らない土地にいた。
それから船を手放し、新しい船を購入する為に数年間、傭兵や賞金稼ぎをして金を貯めそこそこに見栄えのいい小船と地図、やその他食料等を購入してもう一度、北の海を探索することにしたのだ。
そして、たどり着いた誰もいなかったはずのこの島……だが、今は人の気配を感じる。
彼女は見聞色の覇気を習得していないが…研究所の方に何者かの気配がするとそして、自分はそこに行くべきだと直感が告げていた。

「よし、じゃ、行ってみるか……」

ナゴミは研究所に向かい歩きだす。
自分が監視されていることに気づかぬまま……






(SIDE マサヤ)

「……ちッ。」

思わず舌打ちしてしまう……
自分の周りを囲む大勢の動物達。
研究所に向かうマサヤを足止めするかのように島中の動物が集まってきていた。

「シャアッ!」

と凄いスピードで跳びかかってくる虎。
…なんでこんな所に虎がいるんだよ!と突っ込みながら剣で斬り伏せる。
斬撃を飛ばしまくってもいいけど…あんまり目立ちたくないんだよな……
地下室への潜入ってスニーキングミッションしてみたいじゃないか!
まぁ……こんなに自分の周りに動物がいる時点で失敗というか、向こう側にばれてる気がするんだが……気にしない。

「…じゃあ、お前ら、弾き飛べ。」

とブレスレットをはめ『電短帯監獄 (プラリアルプリズン)』を発動させる。
マイクロ波により周りの動物達の中の水分子が振動…以下略で周り全ての動物達の体が内側から弾け飛んだ。

「あれ?一人増えてる?」

見聞色の覇気をもう一度発動させ島の様子を見てみるが動物の気配はすべて消えたが代わりに、地上に人の気配があった。
それも、かなり強い気配……というより……なんか凄い懐かしい……もしかしなくても、これって……

「ナゴミだよな……」






(SIDE ナゴミ)

「……ッ」

繰り出される拳を避け掌底を繰り出す。
相手は吹っ飛び倒れ、そのまま動かなくなる……これで3人目。

「ッと……」

横から突き出された拳を受け止め両手でつかみそれを自分に向かってきている他の相手に投げつける。投げられた敵とそれに当たった敵も吹き飛び、動かなくなった。
見える範囲で残った敵の数は8人程…全員が10歳前後の子供たちだ。

「カハハハ、ちきしょう……やべえな。」

「よくやるね。ナゴミ、君とこの子たちの性能はそんなに違いはないはずなのにね……これは興味深い…薬の量の違いか……いや、身に付けた技術が……」

子供たちの奥にいる男―――確か、クリスと名乗ってたな。
クリスの言った通り、自分と目の前にいる子供たちとの運動能力や反射神経などに差はほとんどない。
普通に戦えば、少しであるが自分の方が上のような気がするが今、自分が戦っている空間は海楼石でできており、力が抜けるので相手の方が実際には高いだろう……
それでもなんとか優位に戦えている理由も彼の言った通り、身につけた技術によるところが大きかった。
昔は自分も基本性能に頼った単純な戦い方だったがマサヤとの特訓の中で自分と同等の能力を持つ相手と闘うために技術が必要性を感じそれらを身につけていったわけだ。
……ったく、あいつにはほんと感謝してばかりだな。

「…ってゆうか!てめえ、何者だよ?なんで私のこと知ってんだ?ストーカーか?」

「なるほど、私のことを覚えていないのか…いや、ここであったことを忘れたのか…なるほど、精神を守るために記憶を失うか……よくある話ではあるが…興味深い…」

「一人で納得してんじゃねえよ。ちゃんと説明しやがれ、このロリコン野郎。」

飛びかかってくる子供を躱し、頭を掴み地面に叩きつける。
打ち込まれた蹴りを屈んで避け足払い、倒れたところに蹴りを入れる。
あと、6人……

「そうだね。親が子供に物を教えるのは自然なことだ…なら私もそれに従うか。ナゴミ、お前はな、この研究所で私の子供として育ち、そして失敗作として捨てられたのだよ。」

「子供?全然、似てないだろ?てか失敗作ってなんだよ?私は外見的に完璧だろ、カハハハハ」

掴みかかってくる子供の手を取り1本背負いで地面にたたきつけ頭を踏み止めを刺す。

「それはそうさ、お前も私が人攫いに頼んで連れてきてもらった私の子供だったのだから。」

「ハハハハ、狂ってんなあんた。で、自分の子供をこんな風にして何がしたいんだよ。つか、失敗作の意味さっさと言えよ」

攻撃される前に今度はこちらから相手に向かい突っ込みフェイントを入れ相手が乗ってきたところにカウンターで拳を叩きこむ。

「まったく…相変わらず、言動が乱暴だな。まず、お前を失敗作だと言ったのは先ほども言った通り、精神の崩壊を起こしていたからだ、身体の面ではお前の能力で何とでもなったがな…それさえなければお前は完成作に非常に近い存在になれていただろう。それと、私の目的は死なない子供を作ることだ。」

「わけわかんね〜よ。つか、今の私は完成作じゃないのか?なんで過去形なんだよ。」

身近にいる子供を床に叩きつけると横からの蹴りが来たのでそれを避けさらに正面からの拳を躱……

「ッと………ぐッ」

ドンッと身体に衝撃が走る。
避けようとした時に叩きつけた子供に足を掴まれ、拳が左の肩に当たってしまったのだ。
痛みに耐え、右手で殴り返し、空いている足で掴む子供の頭を踏みつける。
あと…2人……だが、左の肩は多分骨折してるだろう……

「一度捨てた失敗作など、その時点でわたしの子供ではないからな。そんな物がどんな存在になっていようと私には関係ない。」

「素敵な考え方だな…で、行きついたのがこんな感情の抜けたような子どもたちか?これのどこが完成形なんだよ。」

正面から殴りかかってくる子供をハイキックで迎え撃ち……

「うわ……」

倒した子供のすぐ後ろに隠れていた子供にタックルされ押し倒され馬乗りされたの状態になる。

「精神崩壊して使い物にならなくなるよりマシじゃないか。恐怖を感じることもなく感情に流されることなくどんな場面でも肉体をスムーズに動かせられる。これもひとつの完成形だよ。まぁ……残り一人まで粘るとは大変興味深いデータが取れたよ。ではさらばだ。ナゴミ」

……私の人生ってこんな感じで終わるのかよ……確かに戦いの中で死んでみたいって、昔…ってかマサヤと戦ってた時は思ってたけどさ…今回のは全然楽しくなかったしな…なんか、捕まえてきたカブトムシ同士を戦わす子供のような視線で見られて気持ち悪かったし……
あぁ…マサヤ、私が死んだらどう思うんだろうな…あいつ、結構おせっかいやきってか心配性だったしな……よくからかったりしたけど、半分くらいは本当だったんだぜ?
最後くらい素直な気持ちで言ってみるか……

振り下ろされる子供の拳、その威力は私の放つものと変わらない。
つまり、当たれば死ぬ……こんな時にこんなセリフいうなんておかしいけどさ……

「カハハハ、マサヤ、愛してるぜ。」

こんな死に方もありかなって思えるんだ…と目をつぶる。

「俺も愛してるぜ、ナゴミ」

―ドンッ―

お腹から消える子供の重み。
そして、抱きかかえられる感触、目を開けるとそこには笑っているマサヤの姿があった。
その顔を見て、安心すると同時に勝手に口が開き、

「なんつータイミングで来てんだよ。絶対、お前、結構、前から待って……ん、ちゅ、ちゅちゅる…んふぅ…ごくッ…はぁ……っていきなり、何すんだよ」

「まあ、これで機嫌直せ、つか体は正直だぜ?もう治ってるだろ?」

と地面に足を下ろされる。
自分の体を確認してみるが左肩は元に治っていた。
……相変わらずやることがキザだよな……
と思わず、笑みが浮かんでくる。
敵としても面白いし、味方にいれば頼もしい……ほんと最高だよ、お前。






(SIDE マサヤ)

いやあ、ばれてたのか……いきなり愛してるって言われてびっくりしたけど、まぁ、いつも通りの感じでよかった。

「で、クリスさんだっけ?あんたの子供、全部潰しちゃったけど、どうする?」

「もう一人の侵入者は君だったのか。よく、あの動物たちをこんな短時間で倒せたね。」

「まあ、俺も能力者みたいなもんだしな」

面倒だったからレンジでチンしちゃったからな。

「なるほどね。まぁ、あの動物達の処分にも困ってたから正直助かったよ。半世紀前からの遺物だしね。人間はすぐに殺し合っていなくなったのに動物達はなぜか川の水を飲んでも互いに殺し合うことはなかったからね。」

「予想なんだが、川に薬を流して人に飲ませてどんどん濃度を濃くしていって人が狂う臨界点を調べてたとかそういう落ち?この島に人がいなくなったのって。」

「おお、君は察しがいいね。ナゴミとは大違いだ。で、先程の質問に質問を返すよう悪いんだが…私をどうするつもりかね?」

「ああ、それによって出方を変えるってわけか……そうだな。別に今更、偽善者ぶるつもりないしさ、あんたのやったことをとやかくいうつもりはないし……やり方とか思想はどうあれ、その信念は尊敬するんだが……」
……やっぱ、主人公らしくない考え方だよなあ…と思う。

「だが……?」

俺はナゴミをちらっと見て、

「俺の女をリンチして殺そうとしたのは許せないからな。ここをぶっ壊さしてもらう。」

「俺の女って…いつ、私がお前の女になったよ?」

「いや、さっき…愛してるっていったじゃん?」

「んなの、真に受けんなよ。バーカ」

久しぶりのやり取りに自然と笑みがこぼれる……やっぱり、これいいわあ。

「そうか……君とは分かり合えそうな気がしてたんだが…残念だ…二人まとめて死んでもらうとするか……ホノミおいで。お姉ちゃんに会えるよ。」

とクリスの奥にあるドアが開き、一人の女性が出てきた。

「っておい……」

思わず、ナゴミを見てしまう…なんというか……似すぎ?

「双子?」

「ああ、そうだよ。人攫いが双子の姉妹を連れてきたんだ。双子の場合、体質も良く似てるからね、ナゴミに先に投薬して様子を見て大丈夫そうならホノミにという感じで実験していたのだよ。それで運動神経や反射神経といった人間の能力の臨界点、いっぱいまで能力を上げられたのがホノミというわけだ。能力はナゴミ、君以上だよ」

「でもさ、俺達二人いるんだぜ?流石に勝てるだろ?」

「誰がこの子だけに戦わせると言った?子供が頑張るんだから親も頑張らないと駄目だろう?」

といい、首筋にいくつもの注射を刺し、口からも薬を投与するクリス。
痩せていた身体が膨らみ筋肉の鎧に変質していく。
身体の変化が終わった時には、もはや、別人になっていた。

「なんつーか、すげえな。お前のお父さん。敵ながら天晴れだわ。壊れ具合とか」

「いや、もう私は子供じゃないみたいだしさ。で、どっちをやる?」

「俺はクリスやるから、姉妹で仲良くやってろよ。あそこなら海楼石の効果もないだろうしな」

クリスやホノミがいる部屋は今自分達がいる空間と繋がっているが作りが異なり、海楼石もないように見える。多分、ここが実験室で向こうはそれを観察する場所といったかんじなのだろう…

「わかった。マサヤ……死ぬなよ。」

「ああ、この戦いが終わったら結婚しようぜ」

「カハハハ……バカ野郎…」

俺とナゴミはそれぞれクリス、ホノミに向かって走り出した……のだが…

―ードンッー―

「いててて……まったく…恰好つかねえな。おい、大丈夫か、なごなご」

「まぁ…衝撃は受け流したし、大丈夫だけどさ。つか、なごなごってなんだよ?」

俺とナゴミはクリスとホノミにそれぞれ向かって行ったのだがいきなり二人とも入口付近まで吹っ飛ばされた。
それも技や技術ではなく単純な腕力によって…俺は百錬自得の極み、ナゴミは化剄によってその衝撃に軽減、もしくは受け流したのだがそれでも多少のダメージは負っている。

「なんか、ちょっとやばそうだから、ほら、これやるから頑張れよ。」

と回復薬を渡しておく。

「ほぅ。今のを喰らっても大丈夫なのか…やはり、興味深いよ君は。」

といつの間にか実験室(俺が勝手に名付けた)の中央にクリスとホノミは立っていた。
能力でパパッとやっつけようと思ったんだがな……
まぁ、向こうもそれは考えてたってわけか……
俺は天衣無縫の極みを発動させる。
俺の体が金色に輝く。
能力が使えないんなら、必然的に肉弾戦になるわけだしな……限界まで身体性能を上げとかないと…

「じゃ、気を取り直して、もう一回行きますか……。」

ということで、今度こそマサヤvsクリス、ナゴミvsホノミの戦いが始まった。

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