小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【第30話 完璧な子供 中篇】




(SIDE マサヤ)

「ったく……どんな身体してんだよ。」

目の前の筋肉ダルマを見ながらマサヤは呟く。
驚くべきはその破壊力ではなく再生力。
俺がクリスにダメージを与えても瞬時に回復しながら反撃をしてくる。
まぁ、クリスの力だけで海楼石でできた床をもへこませる出鱈目な破壊力によって彼自身の筋繊維等もボロボロになっているんだがそれすらも瞬時に回復しさらに強固な物になっていく。

「少年達の仕組みまではなんとなくわかったような気がしたんだが……お前のは全然わかんねーよ。」

「ほう……ではそれを聞かしてもらおうか……」

そう言いながらクリスは自分へと向かって攻撃を繰り出す。
俺もそれを避け、受け流し、反撃しながらも口を開く。

「ナゴミやさっきの少年達の怪力の正体は変異した筋肉。多分、何かの暗示で心理的限界を生理的限界まで高め……いや、それじゃ効率が悪いか……筋肉に電極でも刺したのかな?……っと」

「……ガハッ…」

クリスの懐に入り、双撞掌 収を打ち込む。
普通の人なら30mは吹っ飛ぶくらいの力は入れていたはずなんだが…5mちょい下がったぐらい……だが、内蔵にダメージは与えられていたみたいでクリスは血を吐く。

「で、生理的限界での筋収縮をさせ全身の筋肉を壊しそれを薬を撃ちまくって修復して強化を繰り返す、筋トレの無茶苦茶バージョン的な感じだな。ただ、そのサイクルのスピードが速すぎたせいで筋肉が太くなろうとするのをやめて筋繊維の1本1本が強靭なものになり、ナゴミみたいな細い体でも化け物並の力が出せるようになると……まあ、前提からして滅茶苦茶だとは思うがそんな感じかなと思うんだがどうよ?」

自分の妄想であり、それをこの世界で実践してみた結果、たどり着いた答えなんだが…ナゴミに追いつくために、天衣無縫の極みや自己暗示等と回復薬を利用してやってみたからな…まぁ……結果は見ての通りだ。

「ほう……。」

「後は、反射速度や思考速度を速める物質を大量に生成する薬や心理的限界を引き上げるための薬とか人工的に作った脳内麻薬を乱射って感じで判断力や思考力を上げて文字通り、全力が出せるように調節する。精神崩壊が起きるのもこの段階ってとこか……」

「反射速度や思考速度を速める物質を大量に生成する薬は効果時間が少ないので戦闘や実験前に打つだけだがね。まぁ、ほとんど正解だ。ナゴミの場合は彼女の能力でその薬を打った状態が元の状態と勘違いされて、常時、その状態になってしまったんだがね。だが、そのナゴミでさえ最終的には精神崩壊を起こしたからね。だからその後の子にはね精神安定剤の投与と暗示をかけているんだがそれでは少し性能が落ちるんだよ。」

ナゴミの死で死を消す能力は死の原因となる傷などを消すというかなかったことにすることにより為されるのだが、この原因の判定があいまいで死ねば全ての傷が治ってしまう。だから、最初戦った時は殺さないように両手両足の骨を一本ずつ折って動けなくしたんだよな…
で、この場合、薬による状態の変化は能力自体が上昇しているためそれは死の原因とは見られず、急激な血液や神経物質の流れやに耐えられず破裂した血管や脳等の身体のパーツがそれに耐えられるように修復、強化されていったと……やべえ、自分で何言ってるのか理解できねえ………

「じゃあさ、正解のご褒美にあんたの秘密を教えてくれよ。」

俺は続けて寸剄を打とうとするがそれを待ち受けていたように迎え撃ってくる下からの拳。俺は咄嗟に寸剄の方向を変え拳にぶつける。

―ドンッ―

ぶつかる拳と掌。
何度かこれで相手の攻撃を相殺していたのだが……

「がッ………」

右手が弾き飛ばされあまりの勢いに肩が抜ける、まぁ…所謂、脱臼だ。
続くクリスの追撃を避けながら距離をとる。

「そんな秘密なんて大層な物ではないさ。自分の能力は自分に使うのが一番効き目があると言うだけのことさ。」

「なるほど、薬はお前の能力で作り出したっていうわけか……」

とクリスの話を聞きながら回復薬を飲む。
一瞬のうちに肩の怪我は完治、それを感じながら再びクリスに突っ込み拳を突き出す。
拳は受け止められそのままひねり上げられるが宙へ飛び、腕が折られるのを防ぐ、そしてクリスの後頭部に百錬自得の極みを込めた蹴りを入れる。
威力、角度共に完璧だ。流石に脳を破壊してしまえば終わると思っていたのだが……

「ッて………うわッ!」

俺の拳を掴む手は開けれず、逆にそのまま俺を投げつける。
数十メートル程飛び転がったが幸い、そんなにダメージはない。
ただ……

「なんか…だんだん強くなってね?」

「ただね。効き目があり過ぎると言うのも困ったものでね…自分を回復させる薬の効果よりも生理的限界による肉体の破壊の方が早いのでな、心理的限界を段階的に引き上げているというわけだよ。5分ごとにレベルが1つ上がっていくと考えてくれたまえ。現在は15分過ぎているからレベルは4というわけだな。」

「つまり、破壊の速度が回復の速度を追い越せばお前は自滅するわけなんだな。で、レベルいくつまであるわけよ?俺、そろそろやばいんだけどさ。」

「30分―つまり、レベルは6まである。レベル1から生理的限界の75%から始まりレベルが1上がるごとに5%ずつアップしていく。30分を過ぎれば、私の体は耐えられないだろうね。」

「あと2段階もアップするのかよ……勘弁してくれよ」

と言いながらもマサヤの顔には笑み、そして闘気が立ち昇る。
マサヤの身体が一層輝きが増し、他を圧倒するような気迫が流れ出す。
そして、一陣の風となり、クリスへと向かっていった……






(SIDE ナゴミ)

「なるほど…妹相手に全力でさらに小手先の技を使ってようやく五分以下か……カハハハハ、泣けてくるぜ。」

「…………」

思わず口から出てしまう愚痴。
ホノミと戦っている内に忘れていた記憶が甦ってきていた。
確かに自分達はクリスの子供としてここで実験台となっていた。
ただ、自分が全ての薬のモルモットになるからホノミには手を出すなと言っておいたはずなんだがな……可愛い子供との約束を破るなんてとんでもねえクソ野郎だ……
まぁ……とりあえずそのクソ野郎の処理はマサヤに任せて私は目の前のホノミをなんとかしなければならないのだが……
現在、ナゴミは外装はボロボロであるがほほ無傷、ホノミは左手を骨折しており、そのほかにも小さい傷が目立つ…という状態になっている、まあ、これはナゴミが回復薬を飲んでいるから優勢のように見えるだけであり、外見的にはナゴミの方がボロボロな状態であった。

「…ったく……なんか喋れよ。久しぶりの再会なんだからさ、なんかこう…心温まるものがあってもいいんじゃねえの?」

「……………」

先の少年達のように感情の消えた瞳がこちらを見つめるだけで何の反応もない。
淡々と攻撃してくるだけ……正直、つまんねぇ……
妹を助けたい、というかなんとかしてやりたい気持ちはあるけど…それとバトルは別物…やるんならとことん楽しみたいじゃん?
でも、相手がこのテンションじゃあねぇ……
と言いながらも、気は抜いていない。
相手に意志とか気迫とかそういうのはないけど実力だけはある。
これがまた厄介で…感情がないせいで相手の動きが読みにくいし、恐怖も感じないのか…受ければ致命傷の攻撃にも逆に突っ込んで迎撃してくる。

「………あ、あ、あ、……」

「ん?なんだ…?」

ホノミが突然自分の体を抱き震えだす。
ナゴミはそれを見続けることはなく、チャンス!とホノミに殴り掛る。

―ゴンッ―

鈍い打撃音とともに吹っ飛び、転がっていくホノミ。
しかし、すぐにホノミは何事もなかったかのように立ち上がり、自分を攻撃したナゴミを見て、

「あああ!痛い痛い痛い……殺す殺す殺すッ!」

と叫びながら突っ込む。
ナゴミは繰り出された右拳を左手で弾き、右ストレートを叩きこむ……がそれは何かに弾かれた…見てみるとそれは折れた左腕だった……
そして、そのままその左腕がこちらに迫るがそれを取り極め、地面に投げつける。

「なんなんだ…?折れた手で殴りかかってくるなんて……すげえじゃん。」

自分は両腕両足を折られて動かそうとしても動けなくなり、マサヤに敗北したんだがコイツはそれを物ともせず動かしている……

「ああ、始まったか……」

マサヤと戦いながらクリスはホノミを見て呟く。

「ああん?どういうことだ?」

「実際、ホノミと君の身体的強度や筋力はそんなに変わらない。まあ、若干だがホノミの方が上ではあるが、私が注目したのは……」

お互い、相手と戦いながら話をし、それを聞く、ナゴミとクリス。
クリスの話によると、自分がいなくなってからホノミは他の子供達やクリスを恨むようになり精神力が怒りによって身体を凌駕するようになった。
そして、いくら骨折しようが関節が砕けようが意志がそれを強制的に動かす…とのことだった。
ってことは、こいつ感情のままに死ぬまで動き続けるんだよな?怖ぇ〜……

「で、私を見て何の反応も示さないのはなんでなんだよ?」

「その辺は暗示をかけて彼女にはこの部屋にいる人は全員、お前を殺した奴と思わせるようにしたのさ。その方が実験もスムーズに進めることができるからね…ただ、普段は暴れないように精神安定剤を打っておとなしくしてもらっているんだがね……」

「なるほどな。ってことはあんたも襲われるんじゃないか?」

途中で話に割り込むマサヤ。

「そうですね。だから、早くあなたを倒して、ここから出ていきたいのですがね……」

「おお、そうかい。おい、ナゴミ、これをホノミに飲ませろ。」

とマサヤが何かを投げつけてくる。
受け取ってみると、身体の傷を治すものとは別の液体みたいだ。
そして、一層、激しく戦いだすマサヤとクリス。

「ってなわけで残念だけど…フォローはできないぞ。頑張れ、ナゴミ。死ぬなよ。」

「カハハハ、誰に言ってんだよ?任しとけ。」






(SIDE マサヤ)

「ちきしょう……もう、ほとんど気が残ってねぇ…」

しかも、もうそろそろ25分が経つ。
体内の錬気が追いつかないほどの量の気を出力し続け、身体を強化し、なんとかレベル5まで喰らいついていたのだが…それが長く持つ筈はなく体力、気力ともに既に空の状態になっていた。
回復薬を飲みたいがそんな隙を与えてくれるわけもなく、『答えを出す者(アンサートーカー)』で相手の攻撃を予測し、避けるだけで精一杯だ。
あと5分このまま避け続ければ勝てるけど…それじゃあ、おもしろくない。
ここらへんで何か新しい力に目覚めたりとかしたいんだけどな……

「何だい?考え事かい?余裕だね」

―ドンッ―

「……ガッ………ハ……」

マサヤは壁に叩きつけられ崩れ落ちる。

「……なんつー、パンチだよ……化頸でも受け流せねえ…」

咄嗟に化頸で衝撃を受け流したはずだったが、体の芯にダメージが伝わっている。
これは覇気を纏った者の出す攻撃に似ている気がする……

そう思い、俺は立ち上がりながらクリスを見る。
彼の全身からは尋常ではない気が溢れ出している、本来、気は鍛錬を重ね技術を身に付け、それによって体内で具現化しないとあまり効果が出ないものであるが……
多少の武術の心得はあるのだろうが……そういった気という非科学的な考えを持たないクリスがそんな技術を持っているはずがない。
つまり…高濃度かつ大量の気はそれだけでも十分な武器になりえる……というわけか……

なるほど…見れば見るほど凄い気だよ。
これから先の人生全てを賭けた生命力というか…なんというか……己の器から溢れ出すほどの神々しいほどの気の量…自分の気の総量を遥かに凌駕するそれを感じ自然と体が震える。

そして、離れたところからはこれは多分、ナゴミだろう…不器用ながらも体内から気を練り上げ使用しているのが感じられる。
その相手をしているホノミちゃんの体内を廻る気も形にはなっていないが凄い物だと思う……
そして、自分の首から伝わる気……これは多分レンの物だろう……ネズミのくせになんでこんなにあるんだよ……俺の総量とほぼ同量じゃねえか……
他にも周りの物や空気、大げさにいえば世界全体からも気を感じられる……

なるほど……自分の気が無くなったことで他の人や物の気を感じられるようになったってわけね。普段、自分のことにしか興味ねえからな、俺………

「ほう……考え事の次はよそ見かい?」

クリスが俺に向かい拳の雨を降り注がせるが俺はそれを見ることもなく避ける。
やっていることはただ、相手の気の流れを感じているだけ。
それだけで相手が何をしてくるのかがわかってしまう……たとえそれが意識的であろうと無意識であろうと……そして……

―ドスンッ―

「………ッ」

拳と拳がぶつかり合う……
max状態の相手にmin状態の自分が敵うはずがない…いや、多分自分が全開の状態でも敵わないだろう……それなのに……
クリスの攻撃は俺の攻撃により相殺される。
さらに俺は手刀や掌底、拳でクリスを追撃していく、初めは同程度だった威力が数を重ねるごとに均衡が崩れていき、クリスが押され始める。

「な、なぜ……」

「まぁ…、同じ人の気を使ってるからな…お前みたいに気が練れないやつが相手じゃ、最悪でも引き分けだしな……密度を上げられる分、俺の方が有利ってわけだ…」

自分の体力と気はごく少量…なら、どうやってこんな化け物を倒すのか……
まあ、答えは簡単で身近に巨大な力があるんならそれを利用しちゃえ的なノリで、クリスやその他のものから感じる外に流れる気を少しずつ両手や両足等の意識しやすい場所の周辺に集め、気を練りそれを攻撃とともに放出する技―『万流錬気掌 破(ディヴァイン・グレイス)』。

「うっし……復ッ活ッ!」

まだ、慣れていないため周りの気をそのまま体内に吸収することはできないので『万流錬気掌 破』を体内に放出し、その気を吸収する技―『万流錬気掌 集』。
によって、身体に気が周りこみ、それが生命力となり、身体の傷が体力が回復していく。

まぁ…実際、こんなに効果が出るのは使用しているクリスの身体から溢れる気が凄いからであり、普通の人や物の周りにある気ではここまでの量を瞬時に集めることはできないし、異なる気を混ぜ合わせ、密度を上げるのも現在の自分では難しい。

というわけで内側から練った気で天衣無縫の極みを発動させ身体の出力を上げる。
そして、それとは別に右手の外側で気を練り、攻撃に備える。

「なるほど、相手の力を利用して自分の力にする…どこかで聞いたことがあります。確か合気…でしたか……それと似たようなものと考えればいいのでしょうか?」

「まあ、そんな感じだと思ってくれても構わないさ。まぁ、利用するのは相手の力だけじゃないんだけどな……」

「自分に力がなくても敵自身の力で敵を倒し自分を守れる。素敵なものですね。ですが、あなたがそれができるようになったのはいつですか?どのくらいの年月、どれくらいの訓練をしましたか?普通の人にもそれが絶対にできると言えますか?」

「は……?」

「私は絶対に認めない。子供にそんな時間はない。才能が必要な物もいらない。全ての子供が理不尽な暴力から身を守れるように……大人達のふざけた戦いに巻き込まれて死ぬなんてことがなくなるように……私は…作って見せる…完璧な子供を……」

「なんか、無茶苦茶だな……まあ、いいけどもう、30分過ぎたぞ?お前そろそろやばいんじゃね?」

「そうだね。身体は持たないだろうね。だが……私もホノミと一緒でね……」

と、クリスの体は段々と大きくなっていく、破壊されながらも肥大化していく筋肉は何かのモンスターのようなとても気持ち悪い光景だった。

「私も精神力が身体を凌駕したって奴でね。身体が壊れてもこの意志がある限り、決して止まることはないのだよ。さあ……これが、レベル7だ。存分に戦おうか……」

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