小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【第31話 完璧な子供 後篇】






「……なんだ?ホノミか。入ってこいよ。」

ここはアマゾン・リリー。
ステロール島での出来事から1年が経った。

俺はあれ以来、周囲のものの気を感じそれらの気を自分の気と交流させ、練りこみ、自分に取りこむ、という作業を息をするのと同じように…つまり無意識にできるように鍛錬してきた。
そして、それが結果的に自分の気の器を広げ、自分をさらに強くしていく…そんな感覚が楽しくてたまらなかった。
まぁ…一見してみると地味に瞑想してるだけなんだけどね……たまに人でもやるんだが…覇気とか無我を操れる人のはちょっと難易度が上がって取りこみにくいからな…そこら辺は今後の課題ってところかな……っといけね…忘れてた。

「どした?いいよ。おいで。」

扉の前には確かにホノミの気配を感じるんだが……何がしたいんだろ?
俺はドアに開け、その前で立っていたホノミを見る。

「どうしたんだ?なんか用事?」

「えっと…あの……お姉ちゃんが……特訓するからマサヤお兄ちゃんを呼んで来いって」

あぁ……なるほど……。
つかそれぐらいしかないよな…いくら他の人よりは懐かれてるとはいってもホノミが一人で俺の部屋に来ることなんかないだろうしな……

「わかった。で、どうしてずっとそこで立ってたの?」

「だって……私が呼びに行くとお兄ちゃんとお姉ちゃんが喧嘩するもん…」

……喧嘩?はて?いつもの挨拶のことかな?
まぁ、会えば軽口を叩いてるしな俺達……多分、それのことかな。

「いや、喧嘩じゃないよ。俺とナゴミは多分、仲良しだ。」

「仲良しじゃないもん!その後はいつも殺し合いしてるし……」

「いや、それが訓練なんだって…俺もナゴミもいつも笑ってるだろ?」

周りからはそう見えてるかもしれないけどさ……

「もっと仲良くしてよ。時々、夜に…」

「ちょっと待った!なんでそれ…ってかもう、行こう!ナゴミ待たせると怒られるぞ。」

というわけで俺は日課であるナゴミとのトレーニングをやりに闘技場へ向かう……
お互い、ここに帰って来てから、俺はさっきも言った通り万物との錬気、ナゴミは無我や覇気の習得を課題とし鍛錬を重ねてきていた。
まぁ、強さ的に練習相手になるのはやはりお互いしかいないわけで…ほぼ毎日シャボンディ諸島にいた時と同じように特訓をしているわけだ。

で、その練習場所は闘技場くらいしかなかったので空いている時間を使い、そこでやっているわけなんだが……たまにというかメンバーは毎回違ったりするんだが、観客達が現われる。
ユサやロビン、ニョン婆、ハンコック達が来ることもあるし、マーガレットのような一般の戦士の方々、たまにレイリーとかも見に来たりしている。
巷では入場料が取られているとか…案外ちゃっかりしてるよね、この島の人って…

「おっす、待ったかい?マイハニー」

「かなり待ったぜ、ダーリンってな、カハハハハ」

「じゃ、準備はできてんだろ?早速やるか?」

「きゃ、ヤルなんて…皆見てるのに……」

「ふざけるんなら、帰るぞ?」

「あー、ごめん。なしなし今のなし。あとさ、この後、無我の練習もしたいからテニスコート行こうぜ?」

「ああ、いいよ。ちょうど俺も久しぶりにやりたいと思ってたしな……」

ん?テニスコート?と思う人もいるかもしれないが、俺がハンコックに頼んで作ってもらったものがあるんだ。
現在では皆の遊び場として使われており、いろんな覇気を使ったショットとかが生み出されていて他人のプレイを見るのも結構、面白いんだよな。
特訓の為だけではなく遊びとしても使っており、たまにハンコックと一緒にテニスをして遊んだりしている。

「じゃ、そろそろ始めるか」

「おう、いつでも来いよ。」

こうして、アマゾン・リリー名物の『最強!夫婦喧嘩』が始まった。






―1年前のこと

(SIDE マサヤ)

「はぁはぁ……、ったく……この化け物が……」

「その化け物と渡り合っている君も十分化け物だと思うのだが……」

「俺は化け物じゃなくて主人公だからな、そこんとこ間違えんなよ、おっさん」

俺は外れた左肩を強引に戻して構える。
先程は押していた『万流錬気掌 破』でさえ、相討ちになってしまう…それほど、クリスの筋力が馬鹿げているんだろう…
相手は腕が壊れてもそのままそれをぶつけてくるからな…相討ちじゃ駄目なんだよな……
俺は内の気と外の気をそれぞれ最大まで練り合わせるそして、クリスへ駆ける。
速く早く迅く――人の認識を追い抜けるほどの速さでクリスに迫る。

―ドンッ!―

しかし、クリスはそれを迎え撃つ、ぶつかり合う拳と拳…
今度はクリスだけが吹っ飛ぶ。

「やっと、成功したか……」

内の気と外の気をそれぞれ最大まで練り合わせ、相手に攻撃を当てる瞬間にそれらを混ぜ合わせ放出し爆発させる『万流錬金掌 極(ディヴァイン・アルケミー)』。
何度も挑戦していたのだがタイミングなどが難しく上手くいかなかったのだがやっと成功した……威力はご覧の通り……クリスの体が海楼石でできた壁にめり込んでいる。
あれじゃ、出れないんじゃないかな……あんなに接触したらかなり力抜けるだろうし…
動いてないから意識失ってるのかもしれないしな、もしかしたら死んでるかもね。
まあ、面倒だから確かめにはいかないが……
ってことで俺はナゴミに向かって叫ぶ。

「ナゴミ!俺は勝ったぞ!!お前も負けんなよ片手落ちなんて許さねえからな!」

叫んだ後、マサヤは疲れたと呟き奥の部屋へ進み、そこにある椅子を繋げて眠ってしまった。






(SIDE ナゴミ)

「ナゴミ!俺は勝ったぞ!!お前も負けんなよ片手落ちなんて許さねえからな!」

マサヤの叫び声が聞こえる。
あんな筋肉ダルマに勝つとは……この数年間で随分、差を広げられたなあ…と苦笑する。
もう、あいつの遊び相手になれないと思うとなぜか悲しくなってくる。
自分には強さしかない…それが無くなったら…あいつの側にいられる理由が無くなる…
だから、私はもっと強くならないと……こんな所で躓いてる場合じゃないよな。
まぁ……あいつなら、それでも構わないっていいそうだけどな…あいつ変態だし…

「よし、そろそろ終わらせるぞ…」

と集中する。
昔、マサヤとユサがやっていたテニヌという物で自分が一度だけ開いたという無我の扉。それをもう一度…開く……
まず、無我の境地へ至り、意識を保ちつつ、その奥にある扉を目指す……前回はここで力尽きた……だが、一歩ずつ近づき…その扉に手を伸ばし……掴む。
そして……

ホノミが潜り込むように身を低くして突っ込んでくる、そして下からナゴミの顎を目掛け、アッパーを振り上げる。
ナゴミはそれを予知していたかのように避け両手を組みそれを振り下ろす。
ホノミはそれを諸にくらい地面に叩きつけられるがすぐに立ち上がろうとするがそれを蹴飛ばし仰向けにする。
マサヤからもらった薬を口に含みホノミに近付く。
そして、ホノミに馬乗りになり両手に百錬自得の極みの気を移動させ両手を封じる。
さらに、顔を近づけ口から口へ薬を無理やり飲ませる。
薬を飲まされたホノミは少しすると正気に戻り、

「え………お姉ちゃん……?」

「ああ、お前の大好きなナゴミ姉ちゃんだぞ。」

とナゴミはホノミの髪を撫でる。
馬乗りの状態なのでかなりシュールな絵になっているが当人同士が気にしてないので別にいいんだろう…

「よかった。お姉ちゃん生きてたんだ……なんだか、私疲れた。少し寝るね…」

と言って気を失うホノミ。
ナゴミはそれを見て笑い、ホノミを担いでマサヤが向かって行った部屋に向かって歩いていく……
そこで見た光景は、椅子を繋げてぐーすか寝ているマサヤの姿……人が頑張って追いつこうとしてんのに……
なんか猛烈に腹の立った私は、近くのベットにホノミをおろし…マサヤに近付き……






(SIDE マサヤ)

「ん…………」

何か身体に重みを感じる……というか……これって金縛り……?
恐る恐る目を開けてみるとそこにはニコニコと笑うナゴミの姿があった。

「あ、ナゴミか…勝ったのか。よくやったな。じゃ、おやす……っていてッ」

なんか眠り足りないので二度寝しようとしたら頭を叩かれた……

「マサヤ、お前さ、人が頑張ってんのに自分はここでぐーすか寝てるってのはどういうことですかね?」

「いや、姉妹水入らずってことで俺はお邪魔かな〜っと……っていたッ、殴るなよ。」

「あんたもホノミの兄弟になるんだからいないと駄目だろ?」

「は?」

俺は訳が分からず、聞き返す。

「ほら、1時間前に言ってたじゃん?この戦いが終わったら結婚しようぜってさ。ってことはさ、ホノミはあんたの妹ってことじゃん?Did you understand?」

「what?あれはじょう………んぐうっ…んううっ……ちゅ……はぁ…」

「人はそれを結婚詐欺と言うんだぜ?自分の言ったことに責任持ちなよ。主人公だろ?」

……いや、死亡フラグっていう人の方が多いと思うんですけど……つか、そこで主人公出すのは反則……と色々と考えたりするんだが…

「はぁ………、まぁ…いいか。大事にするとかは約束できないけどさ、退屈はさせない。それだけは約束するからさ。結婚………しよっか?」

「は?マジで?いいのか……やっぱ、お前……おかしいよな。つか、ここで私が振ったらおもしろいよな?」

「まぁ、それでもいいぞ。本当に今回、久しぶりに会えて嬉しかったしさ。なんつーか、お前と一緒にいるのはやっぱ、楽しいなって思ったしさ、親友とか恋人とか夫婦とか二人の関係がどうなろうともそれは変わらないんじゃないかって思えたし……ただ………」

「ただ……?」

「俺、既に恋人いるんだよな……ハハハハ」

「カハハハハ……そうか、恋人がいるのか……じゃねえよ!で、よく人にプロポーズしたな……まぁ、私は別に構わないけどさ。相手は納得するのか?」

「まぁ、実は……」

とハンコックとのことを説明する。
するとナゴミは笑いだす。

「カハハハハ、お前そりゃ…なんだ?ハーレムでも作る気か?いつか誰かに刺されるぞ?まぁ…お前の背中は私が守ってやるけどな。」

「え?」

「だから、お前の背中は私が一生かけて守ってやるよ。お前の方からプロポーズしてくれたご褒美だ。まぁ……今はまだ私がお前の背中を追いかけてるところだろうけどよ。いつかは追いついて背中合わせになって一緒に戦ってやるよ。」

「ああ、ありがとう。でも…たまには並んだり、向かい合って戦ってくれると嬉しい。お前は敵でも味方でも楽しいからな………ってことでそろそろ、そこ、どいてくれ。起きるからさ。」

と言うがナゴミはどいてくれない。
ニヤニヤとこちらを見て

「うちゅっ、ちゅっ……むぐうっ、ちゅ、ちゅ、……はぁ……」

「……はぁ……ちょ、何すんだよ?」

「いや、私達、晴れて夫婦になったわけだろ?なら今夜は初夜ってわけだ……」

………う〜ん…なんだろう…このはめられた感じは…なんかくやしい……だから…

『相対虚空 (ウィ・アーカーシャ)』を発動し椅子から抜け出しナゴミを抱きかかえホノミが寝ているベッドの2つ先にあるベッドに移動。
そして、『相対虚空 (ウィ・アーカーシャ)』を解除。

その後のことはまぁ……ご想像にお任せするということで……

次の日、俺達はクリスやその子供たちの墓を作り、埋葬した。
研究所にあった日誌によるとクリスは軍隊を退役後、孤児院を開き子供たちと一緒に暮らしていたらしい。
で、戦争で敵軍に子供たちを全員殺されてしまい……その時の子供たちの脆さや判断力の低さを嘆きあのような研究をしてしまったとのこと。
人攫いに頼み、連れてくる子供は虐待をされていたり、戦争で親を亡くした子供のみだったらしい。
まあ、子どもを実験台にして駄目なら失敗策として切り捨てたり、滅茶苦茶な人だったけど熱意というか信念には尊敬したからさ……
俺はこの子達を守っていくよ……とナゴミとホノミを見ながら思う。
まぁ…守る必要もないんだろうけどね…
っていうか……ナゴミが捨てられてから俺に会うまでの間の記憶は謎のままだったな……






ってなわけで、

「今回も勝利〜。」

俺はガッツポーズをした後、倒れているナゴミに手を貸し立ち上がらせる。

「ちきしょ〜。やっぱ、勝てないか……天衣無縫の極みは体力消費がでかすぎるんだよな…」

ナゴミは悔しそうに先程の戦いを分析していく。
その姿を見てマサヤは楽しそうに笑う。

「あん?なんだよ?そんなに私に勝ってうれしいのか?」

「いや、なんか幸せだなって。こんなにすごいスピードでさ、追いかけてくれるやつがいるなんてさ。」

「まあな。頑張らねえと物凄いスピードで置いていかれるからな。大変だよ。まったく……」

というナゴミの顔もやはり、笑顔。
幸せそうな二人を観客も幸せそうな顔で見ている。
ちなみにこの風景もアマゾン・リリー名物『最強!夫婦仲直り』となっている。

とまぁ……最近の俺の生活はこんな感じだ。
アマゾン・リリーに帰ってきたときはハンコックにナゴミとのことを話して、ハンコックの愛の12の試練を通過して俺とナゴミの結婚を認めてもらった。
ちなみにその数週間後にハンコックとも結婚することになった。
まぁ、それに関して、ある女帝の力で男子禁制の島に一夫多妻制という訳のわからない法律ができたというのも嘘のようなホントの話。

で、まあ……ホノミは目が覚めてからずっとナゴミにべったりで必然的に良く会う俺とも仲が良くなり今ではマサヤお兄ちゃんと呼んでくれる。
ほんとに二人は良く似てるので時々、ナゴミにそう言われてる気がしてなんというか…ギャップで萌えたりすることがある。
まあ、時々、この姉妹はすり替わって俺を騙そうとしてくるんだがあれ以来、気で物事を感じることができるようになってからはそれで見分けることができるんだけど……なんかすり替わってる時の演技とかが面白いからどっちがどっちか迷うふりをしていつも正解して悔しがらせている。

ユサとロビンはもう少しの間、滞在し、覇気について鍛錬していくそうだ。
ナミはナゴミやハンコックの件でいろいろとあったのだが…ハンコックの影響からか私もいつか二人に負けないようになると宣言して、毎日、航海術と武術の特訓に励んでいる。

というわけで今日もアマゾン・リリーは平和でした まる

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