小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【第46話 成長のきっかけ 2/4】





(SIDE マサヤ)

「て…てめぇ!何しやがった!?」

先程までの勝ち誇った顔から一転、信じられないものを見るような目でこちらを見る眼帯をつけた男ーヨートク。
俺はそんな男を見下しながら笑う。

「まぁ、そう怖がるなよ。お前が俺にリベンジしたいように “俺もお前にリベンジしたい” んだからさ」

そう…今回は俺の…いや“私の”リベンジなのだから……

そう心の中で呟き、集中し目を閉じた次の瞬間、

「なに!?」 「そんな!?」 「えッ?」

ヨートクだけではなく周りの人達も驚嘆の声を上げる。

…え…?マサヤ兄ぃ?…

さらに今、剣となり俺に握られているアレグレットまでも驚いているが、

「心配しなくていい。俺は俺だ。安心して身を任せろ。俺がお前を導いてやるからさ」

マサヤはそう言って、アレグレットソードを一振りし、

「さぁ、やろうか!」

と未だに呆然としているヨートクに向けて走り出した。










(SIDE サヤネ)

「はッ!タッ!えいッ!」

気合とともに棍を振り下ろす。
そして、そのまま切り上げ、持ち手を変えそのまま棍を垂直に…

「サヤネお姉ちゃん、もうそろそろ……」

オレンジ色の髪をした少女ーナミが少し遠めの場所から静止の声をかける。

「はぁ…はぁ……」

気が付けば息が上がり、肩で息をしている自分に苦笑するサヤネ。

…まだ、万全ではないとはいえ、ここまで弱っているなんて……

ーブンッー

私は身体中に出来た乳酸を除去するため、いきなり動きを止めることはせず、疲れないぐらいの軽めのものに変え、流していく。

…あぁ、そうか…私、弱ってるんじゃなくて…

「何、焦ってるんだろ……」

流す動きに切り替えてからの動作がとても緩慢なものに感じる。
例え、身体が弱っていようとも全体的に体力の耐久値が下がるはずだから、本稽古とクールダウンの差は同じぐらいであるはずなのに……
そこから、考えられることは先程、彼女が言ったように焦りによるオーバーペースでのトレーニングをしていたということ。

ーカランー

棍を地面におき、今度は伸脚、屈伸、前屈、アキレス腱伸ばし、その他にも手や足の筋を伸ばしていく。

「ふぅ……」

「サヤネお姉ちゃん、お疲れ様ー。はい。」

と言って、タオルと飲み物を差し出してくれるナミ、私はそれを受け取り、

「…んッ、ゴクッ…グッ…ゴホッ、ゴホッ…」

一気に飲み干そうとしたのだが喉に流し込んだその液体は水ではなく、酸味を帯びた果汁……つまり、オレンジジュースであった。

「サヤネお姉ちゃん、大丈夫?」

と近づいてくるナミに大丈夫と手を振り、2、3度咳をして喉の調子を整える。

「ナミ、何でオレンジジュースなの?」

「え?ダメだった?」

「ダメじゃないけど…」

「私もマサヤもオレンジジュース好きだから…」

「わ、私も好きよ。ありがとね、ナミ。」

理由になってない理由に苦笑しながらナミの頭を撫でるサヤネ。

「それにしても…サヤネお姉ちゃんって凄いよね。あの棍を自分の身体みたいに…」

私が先程まで使用していた棍…あれは元々、ナミのものであり、動いていいという許可を得た私はそれを借りて、リハビリをしていたのだが…

「でも、リハビリであれはオーバーペースだと思うよ?マサヤに怒られちゃうよ?」

「ごめんね。久しぶりだからつい、調子に乗っちゃって……あの本あげるからマサヤさんには内緒にしてね。」

「うん!わかった。女と女の約束ね!」


前回、アーロンの件でこの島にきた時から、ベルメールさんが元海兵ということもあり、私とアレグレットは彼女達と仲良くなっていた。
そして、今回は傷付いた私達のことを気遣い、彼女達の家に居候させてもらったのだ。

『怪我した時はね地面に足をつけて仕事から離れてゆっくり休んだ方がいいのよ…心も体もね』

とベルメールさんは笑いながらではあるが強引に私達を迎え入れたのだ。
彼女達は私達を本物の家族のように扱ってくれ、特にナミやノジコは私達を姉のように慕ってくれて私達もナミ達を妹のように可愛がったのだった。

だが…一昨日、アレグレットは一足先に完治してマサヤ兄さんと一緒にヨートクを探しはじめた。
私もマサヤ兄さんに一緒に連れて行ってとお願いしたのだが、もう2,3日安静にしているようにと言われて置いていかれたのだ…
私は自分の失敗の尻拭いをマサヤ兄さんにさせているような気がして…申し訳ない気持ちと焦る思いでこの日を今か今かと待ち続けた。
その様子をベルメールは『若い、若いわねぇ』と笑いながら見ていたのだがサヤネは気付いていなかった。

「よし!この調子で慣らしていって、私もヨートクを……」

「その必要はねぇぜ。お嬢ちゃん。」

「「…ッ!」」

私達は驚き、後ろを振り返る。

「よぉ〜、久しぶりだな。嬢ちゃん。元気だったかい?」

「ヨートク!」

私は足元にある棍を拾い、ヨートクに近づき、突き出す。

棍は彼に触れるとともに消えるが、それを予想していた私は更に深く、ヨートクの胸元に潜り込み、掌底で鳩尾への一撃を与えようと思ったのだが……

ードンッー

自分の持っていた棍に何かが当たる感触…シュミュレートしていた展開とは違い、棍は消えることなくヨートクの腕に受け止められ、それを見て一瞬、動きを止めた私に向かって…

「甘いなッ!」

ードコッー

「グッ……」

ヨートクの容赦のない一撃が私を襲う。

ヨートクは地面に倒れたサヤネに近づき、棍を蹴飛ばし、サヤネの首を掴み、持ち上げる。

「いやぁ、まさかお前ら海軍があの金狼の知り合いだったとはな…お前らが無人島にきた時にもしやと思ったが…ここで、張ってて正解だったみたいだな……これで、奴に仕返しが出来るぜ、ハッハッハハハ」

と機嫌良さそうに笑うヨートク。

…まさか、自分達がマサヤ兄さんを釣るために泳がされていたなんて…

ギリっと唇を噛み締める。
悔しい…自分への怒りやマサヤ兄さんへの申し訳なさで涙が出そうになる。

「おっと、妙な真似はするなよ?まぁ、してもいいがなどうやらこの島には代わりが沢山いそうだそな…」

と言って、ここ数日間私が住んでいた家の方向を見つめるヨートク。
私の様子を自害しようとしてると思ったのか、お前が死ねば次はあの家族だと忠告をしてくる。
もちろん、彼女は諦める気はないのだが……

…そういえば、ナミちゃんは?…

首が固定されているため、見づらいのだができる範囲で辺りを見渡し……

…なッ!

ヨートクを挟んで私との正面、つまり、ヨートクの真後ろに私が飛ばされた棍をヨートクに向け、叩きつけようとしているナミと目が合う。

「くっ…」

ナミを見るサヤネの目を見て、ニヤリと笑うヨートク。

…!…こいつ、もしかして、気付いている!?…

「…ナ…ミ…!」

声を出そうとするが上手く出せない…それに…もう…

ナミの持つ棍はヨートクに吸い寄せられるように…彼の体に当たり、

ードンッー

棍は“自然”にヨートクに衝撃を与え、彼を飛ばす。

「え…どうして…」

自由になった首を動かし、少女が1億越えの賞金首を吹っ飛ばすという光景を見て、サヤネは呆然と呟いた。







(SIDE ナミ)

「よしッ!」

敵が自分に気付いていることも知っていたが相手の様子からこちらに反撃する気がない…いや、“反撃する必要がない”という余裕が感じられていたので相手が自然系の能力者だと思い、棍に覇気を纏い攻撃したのだがどうやら、吹っ飛んだヨートクと驚いているサヤネさんの顔を見る限り、正解だったようだ。

「やるじゃねぇか可愛い子ちゃんよ。まさか、その年で覇気を使うとな…」

砂を払いながら、何事もなかったかのように立ち上がるヨートク。

「だが…棒の扱いはまだまだなんじゃねぇか?力が乗ってねぇぞ?」

「ご指導ありがと。じゃ、今度は力入れてみるね」

と言って、ヨートクに近づくナミ。
しかし、その足はすぐに止まり、横から飛んでくる半透明な球体を避ける。

「ハッ!やっぱり、気付いたか…悪いな、嬢ちゃん。そう、何度も女の子に殴られて喜ぶ趣味はないんでな!」

と言って、身体中から半透明の球体を大量に出すヨートク。
そして、その球体は数個の彼の周りに回転するものを除き、一斉にナミの元へと飛んでいく。
ナミはそれを避け、時には覇気を纏った棍で破壊しながらヨートクへ近づく。

「もらった!」

ついに棍の当たる位置まで辿り着いたナミはヨートクに棍を振り下ろす。

「惜しいな…」

棍が目の前まで迫っているのに余裕の表情を見せているヨートク。

…気になるけど…

「くらえッ!」

構わず、全体重を棍へ乗せる。次の瞬間、

ーキィィンー

高らかに金属音が鳴り響く。
見れば、何時の間にかヨートクの手には刀があり、それがナミの振り下ろした棍を受け止めている。
ナミは一瞬、目を見開くが、すぐに気を取り直し、距離をとって構えなおす。

「本当に惜しい…もし、お前の棒術の腕がもう少しマシならば……そして、そこのお嬢ちゃんがもしも覇気を使えていたら、俺を倒せていたかもしれないのにな…」

そういいながら剣を一振りし、ナミに向かい剣を振るってくる。

ナミはそれを避け、あるいは受け流して反撃の機会を待つ。

「なかなかやるじゃねぇか!だが、これでどうだ?」

と振り下ろした剣を避けようとしたナミに向けて球体を放つ。

ードンッー

ナミに球体が当たり、砂埃が舞い上がる。

「ナミちゃん!」

ダメージで動けないサヤネが心配して叫ぶが

「大丈夫です。サヤネお姉ちゃん。」

そんな声と共に砂埃が消え、そこには傷一つついていないナミの姿があった。そして、

「なるほど、お前も能力者ってわけか……」

ヨートクから余裕が消え、真剣な顔になる。
逆にナミは目の前に半透明な盾を作り、

「女の子は大切な物を大事な時のためにとっておく物なのよ?」

と言ってニコリと笑い、棍を構える

「はっ、最近のガキはこんなにマセてやがんのかよ!いいぜ?本気出してやるからよ!存分に楽しもうぜ!」

ヨートクも笑いながら、球体を大量発生させ剣を構える。

「「じゃあ」」

「いくわよ!」 「いくぜ!」

こうして、二人の本当の戦いは始まったのだった……

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