小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【第47話 成長のきっかけ 3/4】






(SIDE アレグレット)


船を港に止め、地面に足をつける。

「今日もいなかったね…」

「あぁ、そうだな。もしかしたら……」

と言って目を閉じ、何やら集中するマサヤ兄ぃ、私はその邪魔にならないように少し離れた場所でマサヤ兄ぃを見る。
少しの間、マサヤ兄ぃはそうしていたがすぐに目を開け、

「やっぱりだ…おい、アレグレ……」

「アレグレット准将!」

とマサヤ兄ぃの言葉を遮るように部下の海兵が私を見つけ、慌てた様子で近寄ってくる。
敬礼しようとする部下を制し、内容を促す。

「はッ!本日の昼過ぎに船にこのような手紙が……」

と差し出された手紙を受け取り中身を確認して、

「マサヤ兄ぃ!」

「わかってる!サヤネと……ナミが攫われてる…早く行くぞ!」

「うん!」

「…!」

なぜ分かったのかという部下の顔、私も小さい頃レイリーさんに覇気について教えてもらっていなければ同じ顔をしていただろう……
私は何も言わず、マサヤ兄ぃについていく。
そして、街を抜け、人が通らないような道へ入った時に私は口を開く。

「ねぇ、マサヤ…さん。」

「ん?」

「本当に私、ついて行っていいの?私…役に立てないかもしれないよ?」

「アレグレット」

マサヤ兄ぃは立ち止まり、こちらに振り返って私の目を見つめる。
私は怒られると思い、目線を下げ俯くが、マサヤ兄ぃは私の頭を撫でながら、

「役に立つ、立たないじゃないんだよ…俺はお前と一緒に戦いたいんだ。もう、お前には俺の背中を任せられるからな…」

「…え?」

と爆弾を投下してくる。
さらに、爆撃は続き、

「俺が守ってやらないといけなかった弱い少女はもういない。お前はちゃんと俺との約束通り、強くなったじゃないか?極上の女まであと少しだ、頑張れ。たった一回の失敗でメゲるなよ。」

『俺の妹に相応しい女になって見せろ!俺が自慢したくなるような極上の女にな!!』

今の私の原点。
大事な大事な思い出が蘇る。

「マサヤ兄ぃ、忘れてなかったんだ……ずっと、覚えてて……」

「当たり前だろ?大事な妹との約束だ。俺は首を長くして…って何で泣いてるんだよ?」

「ま、マサヤ兄ぃが悪いんでしょ?もぅ…」

と言って顔をマサヤ兄ぃの胸に押し付ける。
マサヤ兄ぃは濡れるだろ…と言いながらも私を抱きとめてくれる。

「ったく…何年経っても泣き虫なのは変わらないんだな……」

「マサヤ兄ぃだって変わってないよ…」

「そんなことはないぞ?俺は日々…」

ほら…マサヤ兄ぃも昔と変わらず、バカなこと言って私の気を紛らわそうとしてくれる。
マサヤ兄ぃは本当に…昔から優しくカッコいい兄で、私の大好きな人で…もぅ…ダメ…我慢できない……
私は自分の気持ちが抑えきれず、

「マサヤ兄ぃ!私、マサヤ兄ぃが……」

ついに長年秘めていた想いを打ち明けたのだった……







(SIDE マサヤ)

「じゃ、行くか。」

やっと、泣き止んだアレグレットを促し、先へ進む。

…にしても…ついに来たか…

まぁ、いつかはくると思ってたんだけどな…
思えば、アレグレットが海軍に入った日からかな?
ただの兄と妹の関係が変わってしまったのは……
それからは滅多に会えなくなったけど、会うたびにアレグレットは強く、そして美しく、大人になっていった。
それが自分との約束を果たすために頑張った成果だと知ってたからとても嬉しかった。

『私、マサヤ兄ぃが好きなの!愛してるの!私、マサヤ兄ぃのものになりたいし、マサヤ兄ぃを私だけのものにしたい…』

堰を切ったように溢れ出すアレグレットの想い。
その気持ちは嬉しいし…応えてあげたい…しかし…

『俺にはもう、大切な人達がいるんだ。それに俺はもぅ、誰か一人だけのものにはなれない…』

分かってた…分かってたつもりだった…深く踏み込んでしまえばこうなることも…
だけど、いつも…

“関わった人を…好きになった人を皆、幸せにしたい”

そう思ってしまうのだ…
人間の手は二つだけ…いくら力が強くても、いくら不思議な力を持っていようとも、その小さな手のひらですくい上げられるものの数には限りがあり、それ以上は手をすり抜け落としてしまう。
放っておけば少しの傷で済むものを持ち上げ高い場所に持っていき、落として粉々にしてしまう…だから…

もし、そんなことができる者がいるとすれば、それは“神”だけだ。
それなのに……

『知ってた…ナゴミお姉ちゃんでしょ?…分かってたの…だって、妹なんだよ?私。ずっと、マサヤ兄ぃを見てきたもん!わかってるもん。マサヤ兄ぃを私のものに出来ないって…でも、何故か…それでも…マサヤ兄ぃは私を“幸せにしてくれるってわかるの”…だから……』

その後に続いた言葉に俺は思わず、頷いていた。
泣きながら、今度は自分から俺を抱きしめるアレグレットに三つの条件を出し、アレグレットもそれを飲み、俺達の婚約は成立した。
条件は何かって?
1つ目は俺のことをこれからマサヤ兄ぃと呼ぶこと、
2つ目はして欲しいことがあったら素直に言うこと、
そして、3つ目は…秘密だ…まぁ、これが一番難しいことだがアレグレットならきっと出来ると思う…なぜかは知らんが…

とまぁ、こんなわけでそれから少しの間アレグレットを宥め、ようやく泣き止んで今に至るというわけだ。
まぁ、色々と考えたいこともあるが…今はやるべきことがあるからそれがすんでからにしよう…というわけで……

「そろそろか…アレグレット…剣になってくれ。」

「うん!強固たる絆よ」

「全てを斬り裂く剣となり」

「我に勝利を与えたまえ!」

「シンクロ召還!舞い降りろ!アレグレットソード」

「って、これよく覚えてたな…」

…だって、私が初めて、マサヤ兄ぃと一緒に戦った時のことなんだもん……

…可愛い…思わず、抱きしめたいが今の彼女は剣であり、俺にそんな刀大好きとか言って頬ずりするような変態的な性癖は持っていないので、後ほど変身が解けた時にしようと心に決めるマサヤであった。







(SIDE ナミ)

「うッ……」

鈍い痛みと共に目を覚ます。

「おぉ、起きたか嬢ちゃん。惜しかったなぁ。」

と意地の悪い笑みを浮かべながら話しかけてくるヨートク。

…そっか…私、負けたのか…

ヨートクに与えられた傷が熱を帯び、じわじわと痛みを与えてくる。

「まぁ、そんな顔するなよ。お前は良くやった方だぜ?ただ、惜しいのは…」

ヨートクはナミが負けた理由を話し始める。
それは悔しいことに的確であり、今、ナミが思っていることと同じであった。

ナミの見聞色の覇気で相手の動きを読み、攻撃を避け、受け流し、あるいはタテタテの実の能力によりその座標に盾を作り、受け止める。そして、敵の隙を作り、攻撃するという彼女らしい理に適った戦い方…ただ惜しむべきは…

…攻撃力不足…

戦闘中にも言われたことだが、まだ、ナミの棒術はサヤネのそれのような華麗さ、力強さ、キレといったものがなく、弱いわけではないのだが一流の相手と戦うには荷が重いレベルなのだ…

「…それに加えて……武装色の覇気の制御が甘い…まぁ、使えるだけでも……」

…わかってた…

自分にとって見聞色に比べ、武装色の制御は難しく、武道の型のようなものならともかく、瞬時の判断が連続的に必要となる先程のような戦いでは武器に覇気を纏わらせるのも一苦労なのだ。
それに気付いたヨートクが隙を突き、棍を球体に変えたことにより、私は防戦一方になり、負けてしまったのだった…

「…まぁ、俺に負けたとはいえ、…どちらも今ここで殺すには惜しい逸材だ…どうだ?俺の仲間に…」

「「断る!」」

ヨートクの言葉を遮るように私とサヤネお姉ちゃんの声が重なる。
その反応を予想していたのか、ヨートクは愉快そうに

「まぁ、いい。俺が金狼をぶっ殺すまでよく考えておくんだな!ハッハハハハ!」

と高らかに笑うのだった。




(SIDE サヤネ)

「…ハッハハハハ!」

耳障りな声が頭に響き、サヤネは顔をしかめる。

「なんで…こんな奴に…」

「負けたのかって?ハッ!そりゃあお前が弱いからにきまってるだろう?最初は相性、次は怪我…まぁ、そう思っても構わんが結果は変らねぇ!俺が勝者で、お前が敗者なんだよ!」

「クッ……」

悔しいがヨートクの言う通りである。

過程はどうであれ勝った者が強く、負けたものは弱い。
勝者が歴史を作り、敗者がそれに従い平伏する、それが人の世である。
だから、正義は常に強く、正しくなくてはならない、そのため、自分達の負けは許されない。

それはサヤネが海軍に入隊した頃に何度も聞かされた言葉だ。
今でも彼女はそれが正しいなんて思っていないが、人を守るためには強さが必要であることは十分わかっていた。
だから、サヤネは今まで頑張ってきたのだ。

女性の中でも小柄な部類に入り、力もなかったサヤネ。
しかし、彼女には不思議な力があった。
その力とは悪魔の実の能力ではなく、覇気のような元々、彼女に備わっていたものであり、武器の気配を感じ取ることができる、触った武器の記憶を読み取り、その動きを真似できるというものであった。

サヤネはこの能力を活かし、海軍の中で成果をあげていった。
それでもサヤネは能力に驕ることなく、毎日毎日、剣を振り、自分の力を高めていった。

しかし、それでも届かない壁がある。
実体のない自然系やヨートクのような能力者である。
これらの相手への対策として大きく分ければ二つある。
海楼石と覇気だ。

まず、前者であるが能力者の能力を封じられる物であり、サヤネも勿論、海楼石の手錠を持っているのだが…そもそも、そういった実力を持った能力者は手錠をつける隙自体がなく、また、能力がなくても十分強い場合が多い。

よって、武器を海楼石で作り、その武器で倒すのが現実的であるのだが…サヤネは先程も言った様に小柄であり、他の少将たちと比べ力も弱いため、武器は敵を一刀の元に断ち切れる刀や剣が望ましい。

しかし、海楼石で刀を作る鍛冶屋がいるはずもなく…一度は頼んで作ってもらったこともあったが、切れ味のないなまくら刀が出来てしまい、とても使い物にはならなかった……だから、マサヤの『破軍』を見た時に感動したのだ…

そして、もう一方の覇気であるが、昔からお世話になっている上官のガープに特訓してもらったこともあるのだが…どの色の覇気も出すことが出来なかった……

よって、私にはそういった能力者に対抗する術はない……

「私は…ここまでなのかな……もっと…もっと…強くなりたいよ……」

泣きそうになる気持ちを抑えるが、心の叫びは抑えることはできなかった。しかし…

「なれるさ、サヤネちゃんなら…きっとなれるよ」

「え?」

それに答えるように、聞こえてくる優しい声。

「よ!サヤネちゃん、ナミ、待たせたな。」

「マサヤ!」 「マサヤさん!」

私達は声のした方を見て、すぐにマサヤ兄さんを見つける。
アレグレットが変身した剣を持ち和やかに笑う、いつも通りのマサヤ兄さん、その顔を見ているだけで、もう助かった気分になってくる…
それはナミちゃんも同じ様で、ほぅ…と安堵のため息をもらしていた。

「よぉ〜、久しぶりじゃねぇか!まったく、人質がいるっていうのに遅かったな?いったいなにしてたんだ?」

「良く言うぜ…こそこそと隠れて覗きやがって…お前、ストーカーか?」

「言葉には気を付けな。金狼。これが見えねぇのか?」

と私達の周りにナミちゃんの能力でも防ぎ切る事の出来ない量の球体を発生させるヨートク。

「動くなよ?少しでも変な真似したらこいつ等がどうなっても知らねぇぞ?」

私達は縛られているため、避けることはできないし、マサヤ兄さんと私達の距離はまだ30mは離れているので見事に人質としての役目を全うしている。

「で、俺をなぶり殺しか?趣味が悪いな?」

やれやれといった感じで肩を竦めるマサヤ兄さん。

「現実的って言ってもらいたいもんだな!確実に敵を倒せる手を打つのが俺のポリシーなんでな!」

とマサヤ兄さんの態度をただの強がりと思ったのか余裕綽々の様子で応えるヨートク。
それを聞いてマサヤ兄さんは心底つまらなそうなかおになり、

「海賊が現実主義なんて言葉使うなよ…中途半端なやつだなぁ…ナミ!サヤネちゃん!」

「「はい!」」

突然、大声で呼ばれ、反射的に応えてしまう私達。

「悪い。少し乱暴になるかもしれないけど、許してな」

「おい!金狼、何を…」



「してるん…なッ!?」

「大丈夫か?ナミ、サヤネちゃん。」

と言って、私達を“見下ろす”マサヤ兄さん。
何時の間にか私達は拘束を解かれ、マサヤ兄さんの胸の中にいた。

「え…えッ!?」

驚く私達を優しく地面に下ろし、何やら瓶に入った液体を差し出してくる。

「これ飲んで、そこら辺で休みな…後は俺たちに任せとけ。」

と言って、地面に突き刺したアレグレットソードを引き抜き、ヨートクを見据えるマサヤ兄さん。

「サヤネちゃん、今回のお詫びに少しだけ、君の可能性を見せてあげるから、よく見ててね…」

「え?私の可能性…」

私にしか聞こえない声で呟いたその言葉を反芻する。

「君には…」

「て…てめぇ!何しやがった!?」

マサヤ兄さんの言葉はヨートクの言葉に掻き消され私には届かなかった。
マサヤ兄さんは目で私に離れるように指示し、私もそれに従い、ナミちゃんと一緒に安全な場所まで退避する。

「……“俺もリベンジしたい”んだからさ」

マサヤ兄さんがリベンジ?
マサヤ兄さんが言った言葉が気になった私が足を止め、振り返ってみると、そこには……

「そんな!?」 「えッ?」

驚く私、そんな私とマサヤ兄さんのいた場所を交互に見るナミちゃんとヨートク。
一度、目を瞑り、もう一度開けてみるが、その光景には変化がなく、私の視線の先にはアレグレットソードを持つ“私”がいた……

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