小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【番外編 クリスマスプレゼント 3】





(side ルティス)


「綺麗だなぁ…」

窓際で石を月にかざしてうっとりと呟く少女。
その姿は様になっており、男が見れば見惚れてしまうぐらいの美しさを醸し出しているのだが…

「お姉ちゃん…いつまでそうしてるの?風邪ひくよ?」

「えへへ…美味しいって言ってもらえた…また食べたいって…」

「……はぁ…駄目だ、こりゃ……」

すっかり夢の世界へ旅立ってしまった姉を見ながらルティスはため息をつき、3人分の食事の後、自分にとっては楽しいひと時であり、姉にとっては至福の瞬間であっただろうその残骸を片づけ始める。

「ま…仕方ないか…」

ーありがとう。美味しかったよ…また、お邪魔してもいいかな?ー

姉の頭の中でリピート再生されているであろう一コマを思い出し、苦笑を浮かべるルティス。
その手首にも姉が持つものと同じ赤い石がつけられている。
それは数時間前に私達の恩人ー姉の憧れの人からもらったものであり、数日前に一番はじめに渡すと約束されたプレゼントである。

「本当に律儀な人だなぁ」

約束通り、彼はこの島に戻るとすぐに私達に会いにきて、今、自分が手首にかけ、姉が手に持って見つめているブレスレットを渡してくれた。
最初の頃は彼のことを疑っていた時期もあったが島の人からの慕われっぷりや自分や姉への対応を経て、いつのまにか本当の兄のような存在になっていた。
そして、今窓から外の景色と彼からの贈り物を眺めている姉に視線を戻し、姉の望みが間違っていないことを確信し、

「夢が叶うといいね…お姉ちゃん。」

そう呟くルティスも幸せそうな表情になっていた。












(side ホノミ)


「ったく…あの馬鹿は…」

頬杖をつきながら目の前の駒を動かすナゴミ、その手には赤いブレスレットがつけられている。
それは現在、自分の手にもつけられている物であり、二人にとって大切な人からもらった贈り物である。
特に姉にとっては……

「チェックメイトだよ、お姉ちゃん。」

「うわぁ、やっちまったか…」

そう言って背伸びをする姉を見てクスリと笑ってしまう。

「ん?どした?ホノミ」

「いや…お姉ちゃんも乙女だなぁって…」

「?」

「マサヤお兄ちゃんのことが気になるんでしょ?」

「んなわけないだろ。まぁ、突然こんなもの渡されたからびっくりはしたけどな…」

カハハと笑いながら、現在、マサヤお兄ちゃんがいるであろう方向に視線を向けるなごみ。
こんなものと言いながらもブレスレットを大切に身につけている姉を見ていると自然と笑みが浮かんでくる。

「そんなこと言って、心ここにあらずって感じだけど?」

それは目の前の盤面の状態が物語っている。
ナゴミは性格や言動から乱暴な印象を受けるが、実際のところ知識も高い。
そんな彼女がこんなに一方的にやられている状況…

「まぁ、妹の世話も終わったみたいだしな…これから…」

「いっぱい、相手にしてもらえるもんね?」

「いや、私がしてやるんだよ。最近、体がなまってたからな…たっぷり相手してやんよ!カハハハハハハ」

そう言って、楽しそうに笑うナゴミ。

…本当に楽しそうだなぁ…というより何の相手なんだろう?…にしても…マサヤお兄ちゃん…大変だなぁ…

ホノミはその楽しそうな姉の様子と今後の兄の苦労を思い浮かべるのだった。









(side ハンコック)


「ただいま、ハンコック」

「おかえりなさい……マサヤ…」

私は最愛の人を抱きしめ出迎える。

「…また、情熱的な出迎えだな。これからは当分こっちにいるから、よろしくな」

「そうか…妾は嬉しいぞ…チュ…」

マサヤの頬に口づけをするハンコック。

「チュ…それにしても……ハンコック、お前積極的になったよな」

ハンコックのおでこに口づけをして、微笑むマサヤ。

「だ、駄目か?こ、こんな女は嫌いか?」

「嫌いならこんなことしないだろ?…チュ…チュル…チュ……」

「…ッはぁ……そ、そうか…よかった。マ、マサヤ…もう一度……ん…ちゅ…ちゅる…んうぅ…」

「ん…そ、そうだ、ハンコック、お前に渡したいものがあるんだ…」

「わらわに?」

「うん。これ…」

差し出されたのは赤い石が繋げられたブレスレット。
私はそれを受け取り、腕につける。
すると、身体中にまるでマサヤに抱きしめられた時のような温かさを感じられた。

「…これは?」

「海温石っていってな…それ自身が熱を出す石なんだ。もうすぐ、寒くなってくるしな…ちょうどいい温かさだろ?」

「うん。まるでそなたに抱きしめられているようじゃ」

「まぁ…それは間違ってないっていうかな…正しいんだ。」

「え?どういうことじゃ?」

「その海温石っていうのはな親子石でな、親石を持っている物の温度が子石に伝わるっていう仕組みになってるんだ…それをある海王類が自分の体内の中で子供を育てるために蓄積してるんだよ」

マサヤは首にかけたネックレスを取り出し、一際大きい赤い石を私に見せる。

「これがマサヤの体温?」

「そう…離れてる時も近くにいると感じてもらえるように…ってな。大事にしろよ?結構、入手するの苦労したんだからな!」

そう、笑いながら話すマサヤ。

「ありがとう…でも…」

ハンコックは受け取ったブレスレットをそっと静かに傍に置き、抱きついてくる。

「ハンコック?気に入らなかった?」

「違うの…マサヤのプレゼントは嬉しいし、使っていきたいと思う…じゃが…」

「?」

「近くにいる時は直接抱きしめて欲しい。温もりだけじゃなくて、強く抱きしめてくれる腕の力強さ、優しさ…あなたの全てを感じていたいの」

普段は絶対に言えないような恥ずかしい言葉が自分の中からどんどん溢れ出てくる。
そんな私の願いを叶えてくれる最愛の人の腕、その中で私はとても幸せな気分に浸っていた。







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