小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【第7話 少女の記憶】




少女の名前はアレグレット。
シャボンディ諸島周辺の島に住んでいた特別裕福というわけでもないごく普通のありふれた家庭に生まれた少女だった。
それが突然、人攫いに父親、母親を殺され、自分も攫われ売られそうになったわけだ。
それも、よりによって、彼女の誕生日の前日に……
あの後、アレグレットをシャッキーに預け、
彼女の住んでいた家へ向かった。



酷い状態だった…家の中はめちゃくちゃで父親は首を飛ばされ、母親は心臓を一突き。
10歳の何の耐性もない子が見たら耐えられない状況だろう……
よく精神が壊れなかったもんだ……精神を守るため脳が自然にあの状態を作ったのだろうか……すごいね…人体ってちょっと、不謹慎か…自重しよう……

「ん?……これは?」

母親の手は小さな箱を持っていた。綺麗に包装されていてまるで、誰かへのプレゼントのような……
箱を取り、中身を見てみると小さなネックレスとメッセージカードだった。

―お誕生日おめでとう。アレグレット―

「………アレグレットっていうのか、あの子……」



というわけで、救出から2日後にやっと意識を取り戻したアレグレットに母親が持っていた小箱を渡した。
中身を見た瞬間やっぱり、アレグレットは号泣した。

「辛ければ泣けばいい。おまえが泣きやむまでここにいてやるよ。」

…俺は彼女が泣きやむまでずっとその頭を撫で続けた。





で、現在だが少しは落ち着いてきたようでシャッキー\'S ぼったくりBARの俺の特等席の隣でオレンジジュースを飲んでいる。
ちなみに俺のグラスにもオレンジジュースが注がれてる。え?どうでもいいって?…まあ、そうだけどさ……

「で、マサヤ。これからどうするつもりなんだ?」

「う〜ん。どうするかなあ?シャッキー、引き取ってくんない?」

「まあ、別に良いけど…その場合、その子にはここで働いてもらうことになるからねぇ……ちょっと、アレグレットちゃんにはキツいんじゃない?」

「?」

今、アレグレットの横(俺じゃない方に)レイリー、そしてカウンターの向かい側にシャッキーという形で今後について話し合いをしている所なんだが……
まあ、シャッキーに預けてここで働きながら暮らすっていうのが一番無難そうなんだが、ここは客の大半が荒くれ者という職場環境としては普通の人から見れば難易度の高い場所なのだ………うん。無理だな…却下……

「マサ兄ぃ。わたしねむい。つかれたぁ…」

気付くとアレグレットが目をこすりながらこちらを向いていた。

「アレグレットちゃん。奥で寝てもいいわよ。」

といいながらアレグレットを奥の寝室へ連れて行くシャッキー。

「やっぱり、あの身体には海楼石はキツいんだろうなあ……」

能力者であれば大人でさえ、力が抜けてヘロヘロになってしまうほどの物だし、
俺もアレグレットに付けるまでは身につけていたんだが結構だるかった……
いや、なんで俺あんな縛りプレイしてたんだろう……

「あ、そういえば、レイリー。彼女の食べた実、何かわかった?」

アレグレットを救出した後、落ちていた悪魔の実を持ち帰りレイリーに調べてもらってたんだが……

「ああ、あれは超人系のブキブキの実というやつでな。自分や周辺の物や人を武器に変えることができるという能力で…」

…姿を武器にするだけじゃなく自分に武器の効果を付けることができるらしい。
人の姿のままで触れた物を刀のように物を切ったり、銃でハチの巣にしたり……
まあ、相手にしてみたら結構やっかいな能力だよな……
何も知らないで触れたらあの人攫いみたいに首が吹っ飛ぶんだもんな…怖ぇ…

「つか、なんで首が吹っ飛ぶんだ…何の武器の効果なんだ?」

「それがな…聞いてみたんだが、彼女は今まで武器ってのを見たことなかったらしい……」

「?」

「通常、こういった姿を変える能力は能力者のイメージにより形、その効果を再現させるわけなんだが…アレグレットの場合、今まで剣やナイフ、銃等触れたことも見たこともなかったらしい。親の姿を見たのも殺されて少し経ったところだったから現場も目撃してなかったみたいだしな。」

ふぅ…と息をつき、レイリーは続ける

「まあ、これは推測なんだが、武器になれと言われて剣を見せられて怖くなって逃げようとしたところを捕まえられた時に防衛本能が過去の記憶を頼りに武器の目的――物で人を傷つけるという場面を取り出しその現象を再現させたんだろうな。」

「ちょっと、待て。さっき、武器の記憶はないって言ってなかったか?」

「いや、意識している記憶の中にはないが潜在的な記憶の中に残っていたんだろう、彼女、5年前にこの島に来た時にモニターで斬首刑を見たらしいんだ……」

「5年前…斬首刑……?…あッ!」

「そう……ロジャーの処刑だよ」

記憶には感覚記憶と短期記憶、長期記憶があり、感覚記憶で自分の興味に残った物が短期記憶になり、そしてそれがさらに長い間覚えていられるようになった物が長期記憶になる。
例えて言えば、正面からすれ違った人をあなたは絶対に視覚の中にいれてるはずだから見ている、そしてその人の顔が可愛かったりしたら数時間くらいはその顔を覚えているだろうそれが興味をもち短期記憶になった感覚記憶。
しかし、その子が付けていた時計は覚えていないだろう…視界には入っていたはずなのに…これが短期記憶にならなかった感覚記憶だ。
まあ、ここまでは関係ないんだけどね(汗)
で、重要なのは長期記憶。
長期記憶になるとその情報が脳から無くなることはないといわれている。
忘却というのはその脳での情報の検索の失敗であり、その情報が消えてなくなることはなく、ふとした時や物事をきっかけに思い出す?ことが可能であると認知心理学でいわれているらしい…
…まあ、うろ覚えなんだけどね。この情報自体。

てな、わけでアレグレットが唯一持っている武器の記憶が斬首刑の記憶で無意識に自分に触れたものの首を切断するという状態になってしまったと……
う〜ん、困った……ずっと海楼石のブレスレット付けるわけにもいかないしな。
今の状態じゃ、可哀想だし。
アレグレットは良い子だから俺が言った通りずっとブレスレットを付けているけど、
何かの拍子に外れてしまったりして人にぶつかったりしたら……
そして、一番その時の被害者になりそうなのは俺……
やべえ、あいつ。早くなんとかしないと………

「どうすればいいんかな?」

「まあ、能力の制御ができるようになればいいんだが…彼女の能力の武器自体がちょっと、トラウマの原因になっているしな……」

そうなんだよな…料理で使う包丁ですら見たらびくッってなっちゃうくらいだもんな武器というか刃物恐怖症か?
……大変そうだな…。

「ま、妹を助けるのが兄の役目でしょ?頑張りなさいよ。少年。私も応援だけはしとくから。」

「応援だけじゃなくて、手伝ってほしいんだけどね?」

いつの間にかアレグレットを寝かしつけカウンターに来ていたシャッキー。
まあ、なんだかんだいいながら現在も十分助けてくれているので感謝はしているんだけどね。

「息子と娘の成長を見守るのが親の役目でしょ?あんまり、甘やかしたらいけないのよ?
って話は変わるけどさ」

「ん?」

「なんか最近、ここに来たルーキーがあんたのこと探してるみたいよ?えーっと、なんだっけ?懸賞金6000万の『恐犬』のボブだっけ?そんな奴」

「誰それ」

ほんと、聞き覚えのない名前を言われてはて?と首をかしげてしまう。
そんな狂犬病みたいな名前の知り合いいないぞ。ってか怖いよね狂犬病…

「なんか、あんたを倒して名を上げようとしてるみたいよ?どうする?そいつら、あんたがいう『悪い海賊』だけど?」

「面倒だな。でも、なんか早く潰しとかないともっと面倒なことになりそうだしな……よし、じゃ、そいつらの情報くれ。ほら600万ベリー。」

「はいはい。ってか最初から言ってるけどお金いらないわよ?」

「いや、一応商売なんだしさちゃんとしてないとね。それに一種の親孝行だと思っといてよ。一応、俺息子なんでしょ?」

にやりとしながら言ってみる。
さっき、からかわれた仕返し…じゃないけど一応、言っておく、まあ、半分くらいは本心なんだけどね。

「あ〜、あんたみたいな息子を持つと大変だわ。ま、近いうちに調べ上げとくからまた、数日後に来なさい。それとその間は私がアレグレットちゃんを預かっといてあげるわ。」

「サンキュ…」

シャッキーってほんと良い母親になれそうだよな適度に甘く、適度に厳しい。
そこでなんか飲んだくれてるおっさんとは大違いだ。
子供を無人島に置き去りにしそして、半年以上忘れている奴とはな…
まあ、あの時のこと根に持ってるわけじゃないけどさ…
…いや、ごめん。結構、根に持ってる。
まだまだ、俺も子供だなあ、と思いながらため息をつく。

「さて、これから、どうしよっか……」



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