小説『ONE PIECE【changed the course of history】』
作者:虹犬()

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【第8話 妹】





「ほら……な?俺は死なねえって言っただろ?知ってるか?主人公ってのは無敵なんだぜ?たとえ、海賊だろうと能力者だろうと…そう、白ひげにだって俺は負けねえ!」

表情を緩め優しい笑みを浮かべアレグレットを抱き締める。
腕のあちらこちらに切傷ができるが気にしない。

「だからな、おまえはそんな最強の主人公の妹なんだ…だからそんな能力ぐらいに翻弄されんな。真っ向からねじ伏せろ。そして……」




―2時間前

「なるほど、まあ、どこにでもいそうな小物だな…そいつら。」

ここはシャッキー\'S ぼったくりBAR。
今は先日、頼んでいた『恐犬』のボブの情報をシャッキーから聞いている所だ。
『恐犬』のボブ ― 略奪、虐殺その他諸々、比較的小さい島の島民を狙い悪事を繰り返す聞くからに小物臭漂う海賊だった。
でも…いや、だからこそ……

「なんでこんな奴らが俺と倒そうなんて思うんだ?今まで弱い者いじめばっかしてきたやつらだろ?」

「あ〜、それは多分、あれね。海賊にとって懸賞金が上がることは名誉なのよ。で、その懸賞金を上げる方法は海軍に自分達の危険性の認識を上昇させること………」

「ああ、つまり、あれか、手っ取り早く懸賞金上げるために名の知れたほかの海賊倒したり、海軍倒したりするのがいいんだが。そんな勇気ないから。ここらへんじゃ、そこそこ知られてる俺を殺して名を上げようと?」

「まあ、そんな感じでしょうね。他にも少人数の有名な賞金稼ぎはいるけど一人で行動してるのってあんたくらいだしね。」

まったく…これからこんなの増えたらここで平和に過ごしていくこともできなくなるぞ…
結構、快適な生活だから気に入ってたんだけどなあ……
ま、とりあえず、今回はこいつを潰すか…

「じゃ、いってくるわ。情報サンキュ」

「あっ、ちょっと待って。そいつら片付けた後でいいんだけど…アレグレットを探してきてくれる?買い物に行ったっきり帰ってこないのよ。」

「………………は?」

…………なんかすげえ、嫌な予感がするんだが………






(SIDE アレグレット)

「卵は買ったし…あとはお肉と野菜かな…?」

シャッキーさんのお店でお泊りさせてもらってるアレグレットです。
今は、シャッキーさんのお店の食材が切れて閉店にするって言い出したから私が食材を買ってくると言って、この商店街にやってきました。
お店はこの前にマサヤ兄と一緒に来たので大丈夫だとおもいます。
レイリーさんもシャッキーさん、マサヤ兄も皆優しくしてくれるので私も何か役に立ちたいから…

「…あ、あのお店だ。」

目的の店に入ろうとすると…

「ねえ…、お譲ちゃん。ちょっとごめんね。」

「え…?」

声をかけられ振り向こうとしたけど力が入らないし…眠くなっ……





(SIDE ボブ)

「まだか……」

『金狼のマサヤ』―調べてみるとどれもこれも信じられないような話ばかりで本物の怪物であることはすぐに分かった。
弱点はないかさらに調べてみたところマサヤは最近、10歳くらいの女の子をどこからか連れて帰り、一緒に暮らしているという情報を得た。

―こいつを人質にすれば……

ということで、その少女の情報について調べ、現在はシャッキー\'S ぼったくりBARに預けられていることがわかったんだが…
シャッキー\'S ぼったくりBARのシャクヤクは元海賊であり、冥王レイリーとも仲が良いといわれている。
そんなところに誘拐しに行くのは自殺行為である。
なんとかその少女が一人になる機会を待っていたのだがもう、5日になる。
そろそろ別の作戦を考えるかと思っていたその時……

「お頭、例の子供を連れてきました。」

…きた!これからは俺の時代だ!待ってろよ、金狼。

「よし!行くぞ!野郎ども!」





と広場に来たもののどうやってマサヤをおびき寄せるかを考えてなかった…

「うん?ここは…どこ?」

後ろで部下が担いでいた少女が目を覚ます。

「おじさん達、誰?」

意識があるんなら自分で歩かせた方がいいと思い地面へ降ろし、目線を合わせて話しかける。

「やあ、お譲ちゃん。おじさん達はね。海賊といって悪い人たちなんだよ?」

「か…いぞ…く……きゃああッ、たすけッ…………」

海賊…自分の父と母を殺した奴ら……思い出したくない過去が頭をよぎり、
アレグレットが叫ぼうとするのを手でふさぎ、ニヤニヤと笑うボブたち。
そして、その目は後ろ手に縛られているアレグレットの手首についている黒い輝きを放つ綺麗なブレスレットに移った。

「若い時からこんな良い物を身につけて…いけないなあ、おじさんがちょっと持っといてあげよう。」

「やめ………て!」

そういって暴れるアレグレットを抑えながら部下の一人がブレスレットを外す……その瞬間―

――ザシュッ―

「え…」

少女のブレスレットを外した者、彼女を抑えていた者の首が一瞬にして切断され床に落とされる。
驚愕するボブとその部下達。

「てめえ!何しやがった!」

「え?……え?」

何のことかわからない…といった表情で呆然とするアレグレット。
だが、ボブ達はそんなことにはおかまいなく、逆上し部下の一人がアレグレットに殴りかかる。

―ドンッ ザシュッー

少女は衝撃により飛ばされ、触れた者も先程と同じように首が切断される。

「…い、いたい……。何…こ、れ?……血?」

「この野郎!また俺の仲間を殺しやがって!」

「ころ…す?」

初めて他者から与えられた痛みに戸惑う彼女に浴びせられる『殺す』という言葉……

「おい!こいつに触れたら死ぬぞ!距離をとってやるんだ。マサヤのことは後で考えろ!」

仲間を殺されもうなりふり構わないといった感じで剣や銃を持ち出し一人の少女を殺そうとする海賊たち………

「いや………まあ、今ここにいるんで後回しされたら悲しいんだけどね……」

「ッ!」

それが彼らの大半が最後に聞いた言葉となった。





(SIDE マサヤ)

「いや……まあ、今ここにいるんで後回しされたら悲しいんだけどね……」

『相対虚空 (ウィ・アーカーシャ)』を発動。

正直、失敗した……
自分の周りにもっと気を配るべきだった…
と思いながらもちょうど良い機会だと思う。
アレグレットに能力のことはいずれ言わなければならなかったしこれからのことも……
まあ、今、この瞬間は…こいつらを皆殺しにしよう。

近くにいるやつらには『黒空間線』を
遠くにいる相手には『重圧掌 吹』を多重展開して飛ばす。
広場には海賊だけではなく一般の人たちもちらほらと見かける。
怒りにまかせて『重圧縮痕 序曲』をぶっ放したいがそういうわけにもいかないので慎重に見分け潰していく。
直径70mの大きさの広場なのでこのくらいであれば全員の”時を止められる”
逃げ待とう人がいないので楽ではあるがそろそろレンも限界みたいだ…

『相対虚空 (ウィ・アーカーシャ)』解除

体感速度が戻された人々が一瞬で変わってしまった景色に驚き騒ぎ出す。
その中には海賊の残党たちもいるのだがそんなのは気にしない。
まっすぐ、アレグレットに近付く。

「あ、あ……マサヤにぃ……わたし、わたし……、殺したの…?わたしが…?」

「大丈夫か?アレグレット。」

「たすけ……ッ!駄目…!わたしに触ったら……!」

突然、現われた俺を見て助けを求めるように手を伸ばすがさっと何かを思い出したようにその手を引っ込める。

「このやろ〜!何しやがった!」

振り向くと残った海賊の一人が刀を振りかぶりこちらに切りつけてきた。

「マサヤにぃ!危ない…」

振り下ろされる刀を右腕で受け止める。
気を集め防御力を増した為、ダメージはさほどない。
―少し皮を切って血がにじんでるぐらいだ。
素手で渾身の一撃を受け止められ驚愕している相手に『重圧掌 打』を打ち込み倒す。

「マサヤにぃ……血が……大丈夫なの?」

「ああ、俺は無敵だからな。死なねえんだよ…たとえお前に触ってもな」

「…ッ!もしかして、知ってたの?…わたしが…その……」

「ああ、お前が触れば人を傷つける能力を持っていることはな」

「そうなんだ……わたしね、人を殺しちゃったの……それも3人も…触られただけなのに…わたし、変になっちゃったの?もう誰にも触れないの?」

不安そうにこちらを見つめ問いかけるアレグレット。
その身体は小刻みに震え今にも身体が崩れ落ちそうになっている。

「その顔…殴られたんだな?」

「え……」

「顔、腫れてるぞ。痛かったんだなぁ…」

「うん。…ひ…っ……く。いたか…った……こわかったよぉ」

見たところ人に殴られるという体験は初めてだったんだろう…
今になってそれを思い出したのかブルブルと身体を震わせ自分の肩を抱きしめる。
痛みを与えられる恐怖を知ったことで逆に相手を傷つけることへの恐怖も知ったのだろう…
本当に優しい子だ……だからこそ……

「相手を傷つけるのが嫌なら傷つけなければいい。自分の力なんだから自分でコントロールするんだ。」

「でき…ないよ。わからない。人に触れるのが怖い……だけど…私……」

「大丈夫。お前は俺の妹なんだし、きっとできる。俺が教えてやるから……」

俺はアレグレットに手を伸ばす。

「だめッ!触らないで……マサヤにぃが死んじゃう……」

そして、触れられるのを恐れ目をつぶるアレグレットの頭を撫でる。

―ザシュッ―




(SIDE アレグレット)

頭を撫でるマサヤにぃの手の感触…いつも私を安心させてくれる感触。
それを感じた瞬間…

―ザシュッー

聞きたくない何かが切れる音が聞こえる……
目を開きたくない…もし、これでマサヤにぃが死んでいたら……
そう思うだけでぞっとしてしまう。私が一層固く目を閉じていると

さらに頭を撫でる感触と

「ほら…な?俺は死なねえって言っただろ?知ってるか?主人公ってのは無敵なんだぜ?たとえ、海賊だろうと能力者だろうと…そう、白ひげにだって俺は負けねえ!」

優しい表情を浮かべ私を抱き締めてくれる。
なんだろう…なんだかとても幸せな気分になる。
マサヤにぃが一緒にいてくれれば何でもできそうなそんな気持ちになってくる…

「だからな、おまえはそんな最強の主人公の妹なんだ…だからそんな能力ぐらいに翻弄されんな。真っ向からねじ伏せろ。そして、俺の妹に相応しい女になって見せろ!俺が自慢したくなるような極上の女にな!!」

「う…ん。うん!マサヤにぃの妹になれるように…がんばる…」

頑張って笑おうとしたけど……上手く笑えない。
私、今…どんな顔してるんだろ?
早く、強い子になってお兄ちゃんに認められたいのに……

……お父さん、お母さん……二人はいなくなってしまったけど私には新しい家族ができました。
ちょっと変なお兄ちゃんだけど私の大事な家族です。
この人に認められるように私、これから頑張るから見守っていてね。
ただ……今日はもう、疲れたから……ねむ……り…ます…




(SIDE マサヤ)

「ふぅ……寝たか」

腕の中で眠りについた少女を抱きかかえていく。
眠っている間、能力は発動しないのかもう、腕に傷がつくこともない。

―主人公ってのは無敵なんだぜ?―

自分が言った言葉に苦笑する。
主人公って無敵って…どんな中二病だよ……
しかも妹を連呼してさ…まるでシスコンじゃねえか…
それもあの場所には一般人もいたんだよな……やべえ、すげえ恥ずかしい…

「いてぇ…」

腕の傷を見て呟く

『アレグレットの防衛本能が記憶にある武器の効果…というか現象を再現させている。』

というレイリーの推測を頼りに彼女の奥深くに眠る斬首刑の記憶よりも鮮明に写る
”武器によって人が傷つく場面”を目の前で見せることにより彼女の再現する現象を首切りから腕を切るに変えたのだ。

といってもまあ、推測自体が間違ってる可能性もあったので実際はヒヤヒヤものだった…
まあ、その時のための対策もしてたんだけどな……

ってことで俺も疲れたからもう帰って寝よう……






(SIDE ???)

「『主人公ってのは無敵なんだぜ?たとえ、海賊だろうと能力者だろうと…そう、白ひげにだって俺は負けねえ!』…か。面白い奴を見つけたよい…。」


-9-
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