小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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三人が翔大を捜そうと動き出した頃、その張本人の翔大は、食べ物を求めて歩き回っていた。
店で試食を探したり、人にねだったりもした。
そんなことはやりたくなかったが、それ以上に家に帰りたくない気持ちの方が大きかった。
まさか、自分の親があんなに最低だなんて思ってもいなかった。
今まで一緒に支え合い、思い出の中にいた友達。
そんな大きなかけがえのない存在を見捨てることなど出来るはずがない。
だからこそ、こうして家出までしてあの親から逃げているのだ。
だが、親から逃げると同時に、友達にも会うことが出来ない状態になっている。
こんなにも辛い思いをしている今だからこそ、会いたい。
今まで助け合ってきた仲間に・・・。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
あれから聖弥はずっと走り続け、かなり疲労が溜まっていた。
どこを捜しても見つからない。
「どこに行ったんだ・・・」
その時、聖弥はあることが気になった。
なぜ翔大が家出したのか。
聖弥はまず、それを確認しようと思った。
そうすれば何か手がかりが見つかるかもしれない。
聖弥は再び翔大の家に戻り、尾崎を呼び出した。
「すみません、気になったことがあるんですけど、翔大君が家出した理由って分かりますか?」
尾崎は思い当たることがあったが、あえて触れないことにした。
「ごめんね、分からないの」
「そうですか・・・」
親が知らないなら、翔大が家出した理由なんて分かるはずがないと思った聖弥は、再び翔大を捜しに行くことにした。

その頃、愛里と美奈は、翔大が行きそうな所を考え捜し回っていた。
近くの公園、小学校、店、大きな通りなど。
とにかく、がむしゃらに捜し回った。
だが、それでも見つからなかった。
「愛里、見つからないよ・・・」
美奈が弱音を吐いた。
「諦めないで。きっと見つかるって!」
「でも・・・数十分もこうして走ってるじゃない・・・」
「諦めたら今までの努力が全て無駄になるんだよ!」
「私、体力の限界だよ・・・」
「もう少し頑張って!」
「うん・・・」
「あ! ちょっと待って・・・・・・・・・あれ、翔大じゃない?」
愛里はそう言うと、ある方向を指差した。
美奈もその方向を見ると、翔大がこちらに向かってとぼとぼと歩いている。
「翔大!」
愛里はこれ以上は出ないというぐらい大きな声で翔大を呼んだ。
そして、愛里と美奈は翔大に向かって走っていった。
「翔大、どうしたの? 家出なんかしちゃってさ」
美奈の質問に翔大は申し訳なさそうに下を向いて答えた。
「俺の親が最低なんだ。だから、一緒にいたくなくて、逃げ出したんだ・・・」
「え? 最低って、どういうこと?」
愛里が疲れたのか息を切らしながら質問した。
「俺の親が、聖弥とは仲良くするなって言うんだ。今まで助け合い、支え合ってきた仲間なのに。不幸がうつるっていう理由で・・・」
「あ、それ私も似たようなことお母さんに言われた。聖弥が昨日父親に包丁を向けたらしくて、危険だからだって。仲良くしたら家から追い出すよって言われちゃった・・・」
美奈がそう言って下を向いた時、聖弥が走ってきた。
「おーい! みんなー!!」
「聖弥・・・」
翔大は聖弥の方をチラッと見たが、また下を向いた。
「翔大、捜したんだぜ」
「・・・ごめん」
「なんで家出なんかしたんだ?」
その質問に翔大と美奈は黙っていた。
そして、愛里が口を開いた。
「なんか言いにくそうだから、私から言うね。実は、翔大も美奈も親から聖弥と仲良くするなって言われたんだって。翔大の方では不幸がうつるからっていう理由で、美奈は聖弥が危険だからっていう理由で。」
「そうなんだ・・・。でも、危険って?」
「昨日、聖弥がお父さんに包丁を向けたっていう噂があるらしいよ」
「俺、向けてないのに・・・。そうか、それで朝、美奈がああいう態度だったのか・・・」
「ごめん・・・」
「気にすんな。親から言われたんだ。仕方ないよ。それより、その噂はどこから流れたんだ?」
その聖弥の問いに答えられる人は誰もいなかった。
そして、再び聖弥が口を開いた。
「じゃあ、美奈の母さんに訊いてみるか。そして、最終的に噂を流した張本人が見つかったら謝らせよう。その犯人のせいで翔大の親子関係も悪くなったんだから」
そう言った聖弥を見て、愛里は
『こんな時でも自分より翔大のことを優先してるのね・・・』
と心の中で感心していた。
「じゃあ、私の家に行ってお母さんを呼び出さないとね!」
そして、四人は美奈の家へと向かった。

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