小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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二時間目の途中で、教室のドアがノックされた。
入ってきたのは保健の先生だった。
保健の先生は美奈の荷物をまとめると、ちょうど授業を行っていた担任の先生に
「大沢美奈さんの体調が悪いので、帰らせます」
と伝え、教室を出ていった。
愛里と翔大は大丈夫かな、とお互い顔を見合わせた。

小林は病院の全ての監視カメラの映像が映し出されている部屋、警備室に案内された。
小林は、そこにいた警備員に軽く会釈し、ポケットから警察手帳を出した。
「警察の者です。監視カメラの映像を観せていただきたいのですが」
「ええ、いいですよ。プライバシーのこともあるので、入口とロビーと廊下にしか設置していませんが、お役に立てるならいつでも観せますよ。いつ頃の映像を観ますか?」
「ええ・・・念のために昨日の映像全てを観せてください」
「分かりました」
警備員は映像が入っていると思われるビデオテープを何本か取り出し、袋に入れると、小林に渡した。
「それが昨日の映像全てです。真犯人見つかるといいですね」
「そうですね・・・。かなり残忍な犯行でしたし・・・。我々が早く捕まえないと、こういう事件がまた起こるかもしれません」
「それは最悪ですね・・・」
「ええ。ですから、これから犯人を捕まえるために警察署に戻り、この映像を確認します。本日はありがとうございました。これからも引き続き捜査の協力をお願いします。お仕事頑張ってください」
「はい。捜査頑張ってくださいね」
「ええ」
小林はすぐに病院を出ていった。

警察署に戻った小林は早速ビデオテープをデッキに入れた。
自分が重要な部分を見落とさないように、部下を呼んだ。
部下が来ると、小林はビデオを再生した。
まず、事件が起こった午後二時の三十分前まで早送りし、そこから再生した。
人が来なかった時は早送り、来たら一時停止を繰り返し、ついに映像は事件の十分前のものとなった。
そこで小林は映像を止めた。
「やはり・・・」
一人の少女がユラユラと左右に揺れながら歩き、病院の中へと入っていった。
その少女はゆっくりと廊下を歩き、聖弥がいる病室へと入っていった。
音声がないため、悲鳴などの声は聞こえなかったが、事件が起きた時間と、少女が病室へ入る時間がピッタリと一致した。
しばらくすると、看護婦が病室の前で一度立ち止まり、口を抑えた後、すごい速さで走っていった。
この看護婦が先程の目撃者だ。
少女は看護婦が走り去った後、すぐに病室を出た。
だが、急ぐわけでもなく、またユラユラと歩いて病院を出ていった。
彼女の顔は狂気に満ちていた。
「・・・・・・」
部屋は沈黙に包まれていた。
小林はビデオテープをデッキから出し、部下に命令した。
「大沢美奈の写真を持ってこい」

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